表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/66

3の3 大地震救出作戦

今回は初の試み!

「カイト、助けに行こう!」


地震によって倒壊した建物を観たマールは弾ける様な勢いで告げた。


【ビービービー】


その場にいた三人の魔法少女、茜、青葉、絵里香の端末が同時に鳴り始めると、茜が手を挙げてからスピーカーモードにしながら通話ボタンを押す。


「はい」


『茜!?今どこ?みんなは近くにいるの?無事?』


ヒステリックな篠崎の声がカイトの部屋に響き渡る。


「はい、みんなでカイトの家に居ます」


『そう、良かった…直ぐにみんなを連れて戻れる?』


唐突な招集に茜は目を丸くする。


「出動ですか?」


茜の返答に、篠崎はため息を漏らす。


『バカな事言わないで、避難よ。あなた達を管理下に…』


「マールが既に現地へ向かっています、我々も国民の窮地に黙っている事など出来ません、彼女に続く事にします」


茜はそうマールに笑いかけるとマールは満面の笑みでグッと親指立てて見せた。


『は?…はああ!?…』


茜は篠崎の反応を聞くなり通話を切ろうとする。


『ダメって言ったら電源落として行くつもりでしょ?それくらいはわかるわ…はあ、わかった。とりあえず一旦基地に集まって策を練りましょう』


篠崎も災害支援に関しては思うところがあったのか、渋々賛同を示す。


「だってよ、どうすんだカイト?」


そんな事言われましても…そう考えながらも立ち上がりながらマールに目を向ける。


「一先ずはケーキを食べましょう」


「は?け、ケーキ?」


「そうだった!ママのタルトがあったんだ!」


マールは思い出すなり一階へ駆けていった。


「災害による救助は初めてです、篠崎さんも交えて少しだけ話を詰める必要がありそうです」


「成る程な、んじゃ!ご馳走になるぜ!」


「楽しみですカイトのお母さんのタルト!」


茜と青葉はマールを追いかけて行き、残されたカイトと絵里香も後を追いかけた。そこからカイト達は母の作った大きなイチゴタルトをみんなで食べてから準備に取り掛かる、機動力に優れたマールを先に現地に向かわせるべく運動に適した格好に着替えさせ、着替えを詰め込んだリュックサックを持たせた。


「マール」


玄関で靴紐を結んでいたマールをカイトは直前で呼んだ。


「なあに?」


振り返るマールにカイトは簡単な指示を告げる、それを聞いたマールはやや困り顔をする。


「え…そんなに…覚えていられるかな…」


「大丈夫、母さんに勉強を教わったあなたなら最早怖いものはありませんよ!」


「あはは…そうだね!」


マールはよっと立ち上がりこちらに振り返る。


「じゃあねカイト!」


「ええ、といってもどうせすぐに会話しますよ?」


するとマールはムッとした。


「こーいうのはだいじなの!!おさむらいさんが言ってた!」


最近父と一緒に観ている時代劇の話だろうか?


「たしかに…!」


プリプリと怒るマールに静かに歩み寄ったカイトは、ぽけっとしたマールの額にキスをした。


「……ではまた」


顔を離して見れば、マールはタコのように顔面を真っ赤にして見上げており、次の瞬間には強烈な右ストレートが腹に突き刺さっていた。


「ごはあ!!」


かなり痛い…怒らせてしまったようだ。カイトをぶん殴ったマールは今まで見たことの無い面白い顔をした後、すごい速さで玄関から飛び出し、現地へ向かって走って行った。


そうしてマールを先に向かわせたカイト達は、警視庁地下にある魔法少女保護対策課の基地へと向かい待っていた篠崎と合流、指揮を執るカイトのみ司令室へ通され他の魔法少女達は準備のため別れる事となる。


「一先ず、防衛省には話を通してある。彼らも魔法少女達が見たくて仕方がないみたいね…二言返事で陸海空幕僚達から参加要請が入ったわ」


「魔物や亜人対応以外で魔法少女達をみる絶好の機会ですからね…それは仕方ないでしょう」


カイトは用意された椅子に座り首にマイク内蔵型のインカムを取り付け、目の前の大モニターに目を向ける。大モニターには神奈川県全域のマップが映されておりリアルタイムで自衛隊の動きを閲覧できる状態になっており、その両端には全魔法少女達の視界が映されたカメラからの映像が表示されている。一番上だけ写っていないのはインカムをつけていないマールのものだ。


「私は今からでも反対よ」


篠崎はため息混じりに告げる。


「実のところ、わたしも篠崎さんと同じ意見なんです…」


優れた杭は必ず使い潰される。超人的、超常現象的な力を持った彼女達が活躍すればするほどに、世間は彼女達を認知してしまい…その結果望まぬ方向を求められては今までの苦労が徒労になってしまう。


「だ…だったら…」


「ですが、勇者という神託は、どんな状況であっても窮地の人々を見捨てることが出来ない困った神託なのですよ…」


そう、苦笑して見せると篠崎も諦めたように笑う。


「そう、なら…私たち大人が、しっかりと支えてあげなきゃだめね?」


【魔法少女隊、発進】


PM14:25 神奈川県某所


「現地とうちゃーく」


一人早く走ったマールは被災地へと到着する。


「えーと…どこにしようかなあ…」


大型の地震により視界いっぱいに広がるのは倒壊した建物、崩れて道路を塞ぐ土砂、砕けて地割れのようなアスファルトの道路、倒壊した建物は破片をあたり一面に散乱させ、あまりに凄惨な惨状に顔を顰めながらも、カイトの指示通りに周囲一帯を見回りながら走り回りついには良さそうな場所を見つける。


「あの辺がよさそう!」


マールは速やかに走り出し、よさそうな広い空き地へ移動する、元は大きめの公園だったのだろう、空き地といえど様々なものが地面を埋め尽くすほどに散乱し泥の様な酷い悪臭が鼻をつく。


「酷い臭い…」


常人の数倍鼻のきくマールはあまりの悪臭に不快感を表しながらも、ゆっくりと目を伏せた。


「すー…はー…すー…はー…」


大きな深呼吸をなん度も何度も繰り返しながら意識を集中、右手に握られた剣の持ち手のような杖を強く握りながら振り上げる。


「【ストームコール】」


それは、風の最上位魔術で竜巻や嵐を召喚し、周囲一体を薙ぎ払うものだ。しかし、マールは柔らかな声で、囁くように詠唱を呟くと、暖かな暖かい風が巻き起こり、周囲を埋め尽くす瓦礫や破片、土砂など、様々なものを絡め取りながら、一箇所に纏めて山にする。あっという間に大きなスペースができあがる。


「足場も良く無いな…」


アスファルトの道路には大きな亀裂が至るとこに走って砕け、足を引っ掛けそうな嫌な段差をうんでいる。マールはそんな地面に手を触れた。


「【アースクエイク】」


今度は力強く叩きつけるように詠唱を告げると、マールを中心とした周囲の地盤が激しく揺れ動いてアスファルトをまとめて粉々に砕いて平らな地盤を形成した。


「いよし!かんりょー!あとはっ」


マールは自ら積み上げた瓦礫に目を向けると、手にした杖を軽く振ると、その先からヒートショットという魔術の火が放たれて瓦礫に当たると、その小さな火の粉は瞬く間に燃え上がって大炎が天高く燃え上がる、それはまるで、自らの位置を知らせるよう…。


【狼煙を確認しました、全機着陸してください】


何機もの大型輸送ヘリが飛んできて次々に着陸、同時に魔法少女達が被災地へ降り立ち自衛隊も続く。


「マール!!」


魔法少女達を確認するなりいち早く救助へ向かおうとするマールの元へ茜が駆け足でやって来る。


「茜?なにその格好…」


茜は制服はそのままにサスペンダーベルトに黒のポーチに、肘と脛を守るプロテクターを身につけ、腰にはピンクの動物柄の布に包まれた刀を下げている。


「あん?時間ねえから制服のままなんだってよ、んなことよりほらっ!」


茜から何かが投げられ、マールは反射的に受け取ると、その手にはみんなが首につけているものと同じインカムがあった。


「おお、わすれてた!さんきゅー!」


茜から受け取るったインカムを首に取り付けて電源を入れ、骨伝導のイヤホンを頭の両側頭へ取り付ける。


『聞こえますか?』


「あは…うん、よくきこえてるよ!」


骨振動と共に聞こえて来る頼りなさそうな少年の声に、マールは思わず苦笑しながら返した。


カイトの側も、インカムに取り付けられたマールの視界モニターが画面へ映し出される。


『それでは、マールも合流した事ですし現時点を持って状況を開始します』


【了解!】


PM14:37 状況開始


状況開始と共に、魔法少女達はカイトからあらかじめ受けていた指示通りに各々の持ち場へと別れ、一斉に行動を開始する。


総合力・機動力に優れたマールを生存者救助に専念させ、茜、絵里香、綾奈の三名は自衛隊と共に拠点の作成支援、回復術師である霧香は救護テントが設営されるまでは体力を温存してもらい、重量物の運搬が可能な栞には土砂に埋もれた道路の開通を指示した。


「カイト君、なんで災害支援に武器なんて必要なの?」


カイトの隣でみていた篠崎が純粋な疑問を投げかけてきた、マールを除く魔法少女達は全員各々の武器を持参しているのだ。


「必要です、私が亜人ならばこのような機会を逃したりはしません、やつらは必ず現れます」


カイトの表情から、篠崎にもそれが本当だと理解できてしまう。


「…念の為、各幕僚にも亜人襲撃の可能性を伝えておくわ…」


「頼みます」


大きなタブレットを手に取り操作をし始める篠崎をみて、カイトは首のインカムへ触れる。


「茜さん」


『なあカイト、そろそろ呼び捨てにしねえか?さん付けは…むず痒い』


「す、すみません…ええと、茜」


『おう、なんだ?』


「その場は絵里香さんに…」


『絵里香です』


や、やり辛い…


「え…絵里香に任せ、一旦マールと合流してください」


その指示に茜は目を丸くする。


『合流はいいけど、どこにいるんだ??』


「彼女が作った道標を辿ればいいだけです」


『あ?道標??』


茜はそう言って目を向けると、いつのまにか着の身着のまま避難していた人々がこちらへ向かって列になっていることに気づく。


「…まかせな!すぐ合流する!」


茜は人々に拠点の位置を呼びかけ、誘導しながらも人の波に逆らうようにかけて行った。


「おら霧香!被災者が来たぞ!しゃんとしろ!」


大量の被災者の到来をまのあたりにした綾奈は救護テントの奥で寝起きの霧香に声をかける。


「あーちゃんはげんきだねー…ふあ…」


霧香はわたあめのようなふわふわな髪をゆらしながら気怠げに立ち上がると、早速救護テントへ担ぎ込まれた男性へと歩み寄る。男性は腹部を折れた木材が貫通しており、手の施しようが無い状態だった。


「こ、こら離れなさい」


完全防菌の衛生課員は制服姿のまま来た霧香を追い払おうとする、しかしそんな彼の手を綾奈が掴んで睨みつける。


「退け…」


綾奈に凄まれた衛生課員は大人しく引き下がると、霧香は男性の頬にペタリと触れる。


「あーちゃん、あいずしたらこれ抜いて?」


霧香に言われた綾奈は男性の腹部を貫いた木材を見て顔を顰めると、指の先から魔術の糸を展開、男性を貫いている木材へと巻きつける。


「いーよー」


なんとも魔の抜けた合図、綾奈は即座に手を引き、強引に木材を引き抜いた。本来ならばこんなことをすれば被害者の男性は速やかに死に至るだろう、しかし、回復術師である霧香にかかればどうだ。穴の空いた腹部はまるで巻き戻しのように瞬く間に修復されて塞がり今にも事切れそうだった浅く荒い呼吸が、深く穏やかなものへと変わる。


「…あたたかい…」


気絶の間際、薄れゆく意識の中で彼ははっきりとそう言った。


「はいおっけーはこんで!」


「は…はい…はい?」


衛生課員は驚愕だろう、死を待つだけだった筈の男性が穏やかな顔で眠っているのだから何があったのか理解できぬだろう。


「ほーら、つぎー!」


霧香はあまりにのんきに告げながら椅子に腰掛けると、綾奈はにこやかに霧香の肩を揉んでいる。


「見ただろう?霧香が触れればどんな大怪我でも生きていれば必ず助かる!!!いまにも死にそうな奴から順に連れてこい!」


「は!はい!重症者をどんどんこちらに連れて来てくれー!」


衛生課員達は慌ただしく声を張り上げ、同時に次々と重症の患者が運び込まれはじめた。


「小さな女の子がこちらへ向えと叫んでいまして」


被災した人々は口々にそう言った、応対した絵里香は周囲を見渡す。


「思った以上に被災者が多いです、霧香もどんどん治しています、このままではスペースが足りなくなりますどうにかなりませんか?」


絵里香は首のインカムに触れ冷静な状況分析をカイトに伝えてくれる。


「わかりました、少し時間をください」


司令室の優秀なスタッフ達が直ちに拠点の見取り図を作成し、次々とスペースを埋めて行く。


「ヘリを退かしたらどうかしら?」


篠崎は先遣隊としてやって来たヘリ部隊の発着場を睨む。


「では、ひとまずはそれで…」


しかし、その程度のスペースではすぐに足りなくなる、そう考えたカイトは、指示をしつつもインカムに触れる。


「青葉、他に拠点にできそうな位置を探して下さい」


『了解!』


現在青葉は、小型の偵察ヘリに乗って上空を巡回しており、そのスカウトの目で得た情報を魔法少女対策課の司令室へ伝達する任務についていた。


「自衛隊に輸送ヘリを動かすよう伝えたわ」


篠崎の言葉通り、着陸していた自衛隊の輸送ヘリが次々と離陸して飛んでゆく。


「絵里香さん、足りますか?」


「はい、これなら一先ずは大丈夫です!」


絵里香は大きく息を吸う。


「皆さん!!こちらにスペースを確保しました!予備のテントも全て出してください!」


絵里香は甲高い声を響かせ、駆け回る自衛官達に指示を飛ばすと、自らも天幕の設置へむかう。


「栞、そちらはどうなっていますか?」


カイトは栞の視線モニターに目を向ける。


「おう!!順調やで!!後はこれをっ!どければ!」


栞は全長10mはあろう巨石を持ち上げて移動させ、道路脇の森に放り投げる。本来ならば大型のクレーンが無ければ退けることのできない巨岩を、栞は次々とそのちいさな身一つで持ち上げて道路脇に放り投げて大型車両一台が通れる程度の間隙が土砂の中に作り出す。栞が開けた間隙の先には増員や支援物資を満載した大型トラックが今か今かとその瞬間を待っていた様子で、次々と通ってキャンプ地となっている拠点へ向かって行く。


「ん?…」


カイトはスマホの時間を見た、栞を投入して30分とかからずに生命線となる補給線を確保したのだ。


「予定時間よりだいぶ早いですね、さすがは栞です」


「なははは!ウチが本気になればこんなもんやで!!」


カイトに褒められて気をよくしたのか、栞は自慢げに高笑いして調子に乗っている。調子に乗った栞は扱いを気をつけないと暴走してかならずやらかすため最新の注意をしなければならない…カイトはそう考えながら口を開く。


「栞、その調子で道路を塞ぐ土砂や瓦礫を片っ端から撤去をお願いします!」


「がってん!まかしとき!」


栞は元気にかけて自衛隊のトラックに乗り込むと次へ向かった。


「みんな!!この方角にすすめば自衛隊がいるぞ!!」


一方、茜は路頭に迷う被災者達に拠点の方角を指し示しながらも声を張り上げ誘導しながらも被災者達が歩いて来る道をひた進む。


「ん…」


そのゆく先々に、ぽつりぽつりとだが座り込んでいるものたちが見え始めた。


「おいおいなんだ…?こりゃ」


老若男女構わず一人や二人という生やさしい人数ではない、ざっと見ただけでも視界には数十人もの人々がいた。


「おい、なにして…」


側で座り込んでいる男性に駆け寄った茜だったが、彼らが座り込んでいる理由を直ぐに理解し口を閉ざした。


「大丈夫か?」


茜は問いかける、目の前の男性は片足を失っていた。


「ああ、さっき小さな女の子が瓦礫の中からここまで引っ張り出してくれてね…なんとか生きている…足はこの有様だから歩けはしないのだけど…」


男は照れくさそうに笑いながら、失った片足を撫でている。


「女の子がいうには、足もちゃんと治るっていうんだよ…本当なのだろうか」


諦めた…という感じでは無い、男の目は生きる意志に満ち溢れていた。


「ああ、本当だ。第一拠点に霧香って名前のわたあめがいる、そいつならなくなった脚も生やしてくれるさ」


茜はそういうと、男は穏やかにそうかと頷いた。今し方片足を失ったとは思えない男の様子に茜は一種の不気味さを感じつつも先を急いだ、茜が思ったとおり、道行く先々で男の様に座り込んでいる者達は、その誰しもが脚に何らかの問題があり、満足に歩行が出来ないもの達ばかりであった、マールは歩けない者たちを道路の真ん中に引っ張ってきてわざと目立つ様に置いており不自然な事にその誰しもが生を諦めておらず目を輝かせていた。その誰もがいう。


【小さな女の子に生きろと言われた】と…


「なあカイト…これが…勇者なのか?」


数多の人々の窮地を救い、生きる希望を指し示す者。茜は、興奮を抑えきれずにインカムを掴んでカイトに問いかける。


『そうです、これこそが勇者です…すごいでしょ?』


カイトは誇らしげに返して来た、茜は感激していた、この状況をたった一人で作り上げたあの小さな勇者に。


『ですが、あなた達【魔法少女】全員が辿り付ける場所でもあります…早く追いついて下さいね』


「焚き付けんな、言われるまでもねえ!!」


茜は歯を剥き出しにして笑うと再び進み出した。すると誰かの呼ぶ声が聞こえそちらへと振り向く、そこには年配の女性がいた。


「どうした?」


茜が駆け寄ると、女性も例に漏れずに両足が潰れており身動きができない状態だった。ただ、よくよく見れば回復されたような痕跡があり、破れた皮膚はそのままだが出血は止まっている。


「さっき女の子がひっぱりだしてくれたの。かなり痛かったけれど、脚の出血もとめてくれてね?かならず助けが来るからここにいてと言われたのだけど…あなたがそうなの?」


女性は不安そうにしていた、茜はそんな女性に明るく笑いかける。


「いや違う、そいつが言ってるのは自衛隊員の皆さんだ。今はあっちで拠点を作っているからもうすぐ来るはずだ」


「そう…」


命に別状は無いとはいえ心細いのはそうだろう。


『茜、そこをスポットしてください』


直ぐに状況を見ていたカイトが指示を出す。


「あ?スポット?どうすんだ?」


『大丈夫です、もうこちらでみえてます!救助部隊に通報済み!』


声がして空を見ればそこには偵察ヘリがゆっくりとホバリング飛行で旋回しており、急を伝える赤と青のライトがチカチカと点灯している、早急な救護が必要な人がいる位置情報を逐一全自衛隊に通達する。


「茜ちゃん、30秒後にタンカが来るので其処は大丈夫ですよ!」


「了解、あと30秒で担架が到着するってよ!」


茜は不安そうな年配の女性に声がけをして元気付けると、再びマールが向かったと思われる先へと駆け出した。


「お願いだよ!みんなも助けて!!」


茜がようやく追いついたのも束の間、マールは子供に泣きつかれていた。


「…ごめん無理だ」


マールはそうキッパリと断ると、彼の手を払って倒壊した隣の民家へと向かおうとした。


「なんでだ!!?」


子供は追い縋るようにマールのシャツをがっしりと掴んで離さない。


「君の家族はみんな死んでる、だから助けてあげられない」


マールは振り向くこともなく告げると、ショックを受け固まった少年の手を強く払って隣の民家に飛び込んでゆく。


『…茜、今は生存者優先です』


「わかってんよ…」


茜は全ての家族を失い立ちすくむ少年に過去の自分を重ねてしまう。しかし、そうしている間にもマールが民家の壁を派手な音を立てながら破壊すると、両手に若い男女を掴んで出てくる。


「アカネ!?ちょうどいいとこに来た!!このふたりを道路に連れてって!!」


マールは機械的な力で軽々と気絶した二人をその場に寝かせると、再び奥へと入っていく。


「わ、わかった!」


茜は言われるがままに寝かされた二人の男女を米のように担ぎ上げて道路へと連れ出すと、奥へ行った筈のマールが三人もの子供を掴んでやって来ると雑に道路へ放る。


「アカネ!早く下ろして!次行くよ!」


そう言いながらもマールは次の民家へ突入する。


「は、はええよ…」


マールから渡された男女を優しく子供達の側へ降ろすとマールの後を追う。辿り着く頃にはマールは中から男女を抱えて外へと出てくる。


「ほらどいた!邪魔だよ!」


そう言って道路の真ん中に引っ張り出して雑に放り出すと次へ向かってかけていく。


「助けに来たよー!!」


崩落した屋根を片腕で持ち上げて粉々に破壊し、中へと踏み込んだマールの眼前には二人の男の子が映る、しかし彼らはマールなどそっちのけでその場を動こうとはしない。


「どうしたの?早く避難しな?」


マールは歩み寄りそれを見て納得する。彼らの足元には瓦礫に両脚を潰された彼らの母親がいたからだ。


「大丈夫?どんなかんじ?」


マールは手で少年達をどかすとしゃがみ込み、女性に問いかける。


「う…うう…足が」


母であろう女性はうめく様に呟いた、どれだけこの状態だったのだろう?すでに唇は青く染まっており見るからに衰弱していることがよくわかる。


「おっけ、すぐ助けるよ!!君達は外に出て!!」


マールは力強く発言するなり素早く彼女の脚を潰している大きな瓦礫に手をかける。


『!、待ってマール!』


瞬間、カイトの声が響きようやっと追いついてきた茜がマールの手を掴んで止め、マールはキョトンとしているがムッとすると茜の手を振り払ってから首のインカムに触れる。


「な、なに?なんで?!」


事態が分からず声を荒げるマールにカイトは淡々と告げる。


『マール、救助前に埋まっている人とその状態は、必ず私に見せるように伝えましたよね?』


えっと惚けた顔をするマールにカイトはため息を吐き出し淡々と続ける。


『二人とも、彼女の脚をよく見てください』


二人は身を寄せて瓦礫に挟まれた脚をまじまじと見つめる。


『マール、どうなっています?』


茜が気を利かせてスマホを取り出し、ライトを起動して潰れた足を明るくてらす。


「めっちゃ…いたそー」


それは見ればわかるよ…


「…えっと、紫色になってお肉が少し膨らんでるな」


茜がいてくれて良かった。


『はい、潰れた場所が圧迫されたまま化膿しています』 


「よ…よくわからない…」


『瓦礫をどかしていたら、そこに溜まった血液が全身に一気に流れて死にます』


「……は?」


聞いたマールは本当に知らなかった様子で驚いて目を見開き固まる。


『クラッシュ症候群というものよ』


篠崎が補足するクラッシュ症候群とは、石などに潰され、圧迫された状態でその場所に血液が溜まってしまっている状態、傷口が化膿したばい菌が大量の血液に入り込んだ状態で開放すると、汚染された血液が一気に身体中に流れてしまい速やかな死に至るというもの、それを聞いたマールは顔面蒼白となる。


「そ、それじゃ…僕が助けた人達…」


『心配いりません、ちゃんとわたしが見ていましたので』


そこでマールは、助ける前にしつこくカイトに状態を見せろと言われていた事を思い出す。


「あ…あれってこういうのがあるからだったの?!」


『はい、そのとおりです』


カイトは手元の携帯端末に被災者の位置情報と緊急性を打ち込んで救助班のラインに共有している。


「よ…良かったぁ…」


ヘナヘナと脱力したマールはその場にへたり込んだ。


「で?なら、こういう時はどうすればいいんだ?」


「そ、そうだよっ!このままにしておくわけにもいかないよ!?」


冷静な茜はインカムに触れながらも問いかけ、マールが続く…クラッシュ症候群の治療には時間がかかる、マールをここに止めるわけにはいかない…しかし…カイトが判断に迷っていると、隣にいた篠崎がマイクのボタンを押す。


『膨らんでしまっている部分から上を切断しなさい』


「わかった!」


マールはそういうと立ち上がりながら杖を握る。


『茜、マールが切断したら切断面を綺麗な布で覆って地面につかない様に』


「き、綺麗なぬの?」


『メディカルパックに包帯が入ってます』


「ああ!」


茜は腰のポーチから包帯を取り出すと配置につく。それを見たマールは小さく頷いて女性の前にしゃがみ込む。


「お母さん、今から脚を斬るよっ!」


脚を潰された痛みで既に意識が朦朧としていたが、脚を斬ると言われれば流石に少し考えるような表情を浮かべ、そして決心すると涙ながらに頷き、承諾した。


「茜!1、2、3で行くよ!」


マールの呼びかけに茜は身構える。


「こい!」


「いーっ!!」


同時マールは杖から水の刃が生成すると、女性の潰れた脛から下を断ち切った。


「ちょっ!?はやっ!?」


茜は流石の反射神経でキャッチすると、素早く切断面を包帯で覆う。幸い、女性は切断と同時に意識を失っていた為痛みを感じる事はなかっただろう。


『マール、一先ず回復で傷口を塞いでください、それで感染症は防げます』


「はい!」


マールはそんな母親の切断面に包帯越しに触れると回復術で傷口を埋めて出血を止めると、彼女を軽々背負って外に出る。


「か、母さん!」


「母さ……!」


外で待っていた二人の子供は、変わり果てた母親の状態を見て絶望に表情を染め上げた。マールは無反応で気絶した母親を道路に寝かせると二人の子供は駆け寄り、そしてキッとマールを睨みつけた。


「おいガキ…」


そんな二人の態度にカチンときた茜は叱ろうとした、しかし、そんな茜をマールは掴んで止める。


「アカネ!ダメだよ」


真顔のマールに止められ、茜は出かけた言葉を飲み込んだ。


「時間を取られすぎちゃった、急ごう!!」


「ああ!」


二人は踵を返して先へ進もうとした。


「やっぱりいた!!この辺りで人を助けて回っているのはあなた達!?」


唐突に走って来た年配の女性がマールの腕に飛びついて来た。


「あっちであたしの旦那が取り残されているの!!お願い、早く助けて頂戴!」


彼女が指差したその先は、既にマールが通って来た道なのだ、マールは目を見開き小さく息を呑む。


「ごめんおばちゃん、そっちはもう見たんだ」


マールは手を引こうとする女性の手を払う。


「何言ってるの!?わたしが居るっていってるんだよ!?」


「いるのは知ってる、でも今は生きてる人を優先したいんだ…だから無理」


尚もしつこくマールの手を掴む女性、ショックで錯乱している様子で思い通りにならないマールに苛立ち、ヒステリックに喚き始めた。


「私がいるつったらいるんだよ!!何だい!?その口の聞き方は!!?歳はいくつなの?!最近の子はお母さんから目上の人の言う事を聞くように教わらないのかい!?」


『スパークウェブ、手加減で』


景色の全てが凍てつきそうな程に冷たい声音が響くと、マールは反射的に女性の手を掴む、すると掴まれた女性は唐突に白目を剥いて脱力し、地面に倒れる前に受け止める。


「…ごめんね」


絞り出す様に告げたマールは女性をその場に寝かせる。


「アカネ、行くよ」


それだけいうと、マールは駆け出した。


「一般人を攻撃させたの!!??」


篠崎はデスクを叩いて立ち上がりながら怒鳴った。


「戦場では錯乱したものを気絶させるのも大事な事ですよ?ああいう存在は高まった士気を下げるばかりか実害すら被り…」


「ここは戦場なんかじゃない!!!」


「いいえ、ここは戦場です」


カイトは篠崎と向き合っても一切引かずに睨み合い、指揮所の注目が一気に集まると、篠崎は小さく咳払いして座り込む。


「……使用したのはスパークウェブという魔術です」


「その…スパークウェブって何なのよ…」


篠崎は魔術を知らない事をカイトは思い出し、苦笑する。


「風属性の初歩的な無詠唱魔術です、効果は打ち込んだ相手を痺れさせる」


「まじゅ……本田の報告に超常現象を扱うってあったわね……ホント何でもありね、あの子…」


篠崎は呆れる様に口にした。


「で?」


尚も問いかける篠崎にカイトは続ける。


「言葉通り痺れるだけです。ダメージもなければ外傷も付きません、彼女は自分がいつ、どこから打たれたのかすら気づけないでしょう」


自信満々に告げるカイトに、篠崎は盛大なため息を吐き出してゆっくりと席に着いた。


「あのババア!…あそこまでいうことないじゃんな?しかも、助けてくれた相手に向かって…」


隣を駆ける茜は愚痴が止まらないと前を走っていたマールが吹き出した。


「あはは!アカネは怒り過ぎ!!あんなのを気にしたらきりないよー?」


そう笑い飛ばしながらも、一つの家屋に向かって飛び込み瓦礫を蹴飛ばしてぶっとばすと、背後に閉じ込められていた家族を次々引っ張り出した。


「コーヒーをとって来ます」


カイトは席を立つと、篠崎はこちらに目を向けた。


「私の分も貰ってきてくれる?」


ちゃっかりしている…。


「はい、わかりました」


カイトはそう言って、静かに司令室の外へ出て行った。


『拠点にできそうなスペースを見つけました!』


程なくして、モニターから大きな青葉の声が響き、聞きつけたカイトはコーヒーを二つ手にしたまま駆け足で席につくと大型モニターに映された画面と、手元の全域マップを同時に見ながらインカムに触れる。


「どこですか?」


手にしたコーヒーカップを篠崎へさしだす。


『いま、スポットします』


青葉はマップに色を付け、カイトはすぐにスマホを操り情報を調べる。


「どこ!?どこにあるの!?」


聞いていたマールが叫んだ


『私のヘリが見えますか?』


青葉の乗る二人乗りの小さなヘリは素早く高度を落とし、マールはそれを確認する。


『このヘリの真下です!』


「よし、いくよ!アカネ!!」


「ああ!」


青葉が見つけたスペースは大きな学校の校庭だった。学校ならば避難に使われそうなものだが、校庭には被災者は一人として見当たらない。それもそのはず地震に強いはずの校舎は脆くも崩れて倒壊し、今はただの大きな瓦礫の山となっている。体育館も派手に倒壊しており、散乱した大量の瓦礫が校庭中に降り注いでいた。


「これじゃあ使いものにならないのも頷けるわね…」


「ふむ…なるほど」


「?…カイトくん?」


カイトはジッとマップと青葉の視線モニターを睨みつけ、そして首のインカムへ触れる。


「マール、その立地、是非とも欲しいです…綺麗にできそうですか?」


マールに指示を出すと、マールは茜の視線で親指を立てて笑う。


「アカネ!離れてて!」


「あ…ああ…」


茜は素直にマールから離れると、マールは手にした杖をゆるりと構えて深呼吸を繰り返す。それだけで彼女の身体が青く光輝いた。


「【ストームコール】」


先ほどよりもさらに優しく、囁くようなストームコールの詠唱と共に穏やかな風が流れ、校庭に散乱した瓦礫を掬い上げるとすでに崩れた校舎に運んで集積していく。


「ほんと…なんでもありなのね…あのこは…」


次々と瓦礫を綺麗にまとめて行くマールを見て篠崎はそんな言葉を漏らした。


「マール、体育館のスペースも欲しいです、細かく砕けませんか?」


「人使いが荒いなあ…まったく…」


マールはブツブツと愚痴を漏らしつつも、素直に潰れた体育館にかけよると、地面に手を触れる。


「【アースクエイク】!!」


地面に叩きつける様に怒鳴り付けながら地面を叩くなり体育館が一瞬で砂の様に崩れ落ち、あっという間に砂地へ姿を変える。


「…第一拠点は…こうやって作られたのね?」


司令室は初めて見るだろうマールの超常現象の一つ一つに驚きの声をあげる、今度…綾奈の為にも魔術の講習を開いた方がいいかもしれない。


「おっけ、第二拠点確保かんりょー」


そうしている間にも、マールの視覚には綺麗に平らにされた校庭が視界いっぱいに拡がっている。


『ご苦労様です、マール』


「ふむ…かなりスペースがあるしここに補給物資を集積するのに良さそう…どうかしら?」


篠崎の提案にカイトはマップを凝視し、そして頷く。


「良い考えかと、ここに物資があれば隊員を幅広く展開する事が出来ます…」


カイトはそう言いながらもジッと第二拠点のマップを睨む。


『ひとまず位置をスポットしますね』


青葉は即座にスポットを落とし、周囲の全自衛隊に位置を共有した。程なくして、そのスポットに群がる様に至る所から様々な輸送ヘリが飛んできて着陸、多くの兵員ど補給物資を下ろしては飛び立つを繰り返す。


その中には中型の車両を搭載したチヌークなどもやってきて瞬く間に校庭の大きなスペースを自衛隊が埋め尽くす。


『全魔法少女隊へ通達、これより15分の小休止を行います。各隊員は速やかな栄養補給を実施してください』


司令室のオペレーター達が魔法少女達各員に通知する。


「そんなよゆーないっての…行くよっアカネ!」


マールはそう言ってさっさと行こうとするが茜が掴んで止める。


「アカネ?」


「小休止は前もってカイトが予定していたものだ、飯が届くんだってよ」


「はあ?…ご飯??ちょっとカイトどう言う事?」


マールは不満げにインカムに語りかける。


『この作戦は長丁場になります、最大戦力であるあなたをバテさせるわけにはいきませんので』


「………わかったよ、でもご飯なんてどうすんの?言っとくけどこの辺りに野生生物なんていないから狩猟も無理だよ?」


珍しく素直に従ったマールは、どかりとその場で胡座をかき、茜も続く。


「今、絵里香が輸送中です。間も無く到着するかと」


「あ?絵里香が?…」


そんな茜の反応に自衛隊とは違う見慣れない大型のヘリのような、航空機のような航空機がゆっくりと着陸体勢に入るのを見てインカムに触れる。


「カイトー…なんか変なの来たよ?じえーたいにあんなのいた?」


カイトは茜の視覚モニターを観る、所属不明のカーキ色の大型航空機には見覚えがない。近代兵器に疎いカイトにはそれが何か分からなかった。


「あれはオスプレイね、さっき協力要請を受けたの多分座間にいる米軍よ」


アメリカ軍…その瞬間、カイトの脳裏を様々な嫌な予感が駆け巡る、そんなカイトの顔から察したのか篠崎はため息を漏らす。


「心配ないわ、ペンタゴンに知り合いがいるの。だから魔法少女に関する情報も伝えてある」


篠崎は流石の根回しである、しかし、米軍に魔法少女達の優位性を長々と見せたくはない。


「でも、マールちゃんについては伝えていないから…そこは注意しないといけないわね」


着陸したオスプレイの後部ハッチが開き大量の支援物資と共に屈強な男達が降りてきてあっという間に整列する。その数二十人と少なく人数としては心許ない。


「なんだ…?あれは…」


整列した米兵達は珍しいものを見る様に校庭に座り込んでこちらを見ている二人の少女を見つめていた。


「少佐、彼女達は被災者ですか?」


少佐と呼ばれた男はゆっくりと振り返り青い瞳は茜とマールを交互に見た。


「節穴かお前は…これほどの地震被害をうけた被災者があんなに身綺麗なわけがないだろう?」


男はマールと目が合う。


「ペンタゴンからの情報にあった魔法少女隊だろう…」


「魔法少女…?それは、日本のコミックやアニメにでてくる…?」


「ああ、そうらしい…俺も詳しくは知らん」


少佐と呼ばれた男はそういうとスイッチが切り替わったかの様に表情が固まると部下の肩を叩き、叩かれた部下も冷たい機械の様に表情が消えると瞬く間に整列して一糸乱れずに統制された動きで男に敬礼を向ける。


「これより!我が友を救出する!!各班に別れっ!」


男の指示で米軍の兵士達はバラバラに動き始めた。


「お待たせ!」


唐突に背後から声をかけられ、マールも茜も一緒に驚愕する、背後には絵里香がOD色のナップザックを三つ手にしていた。


「はいこれ!」


絵里香はそのナップザックを二人に投げる。


「さんきゅー!」


「ありが…とう?何これ…」


受け取った茜とマールはナップザックの中を覗き込む。その中には2本のミネラルウォーターと、3本のチョコ味のカロリーバーが入っている。


「わー!?これ!おいしいやつだ!!!」


マールは大喜びで中のカロリーバーを取り出すとその場で包みを剥がしてすぐさま嬉しそうに頬張る。


「飯って…カロリーバーかよ」


茜は愚痴をこぼしながら自分のカロリーバーを取り出すと渋い顔をしていた。目の前に絵里香も腰掛け袋からカロリーバーを取り出すと自分の分を齧る。


「我慢してください、それに、カイトがいうには我々冒険者体質にはいい食糧らしいですよ?」


そう言いながらもニッコニコで二つ目をかじっているマールを指差した。


「うっ…あたし…チョコ苦手なんだよなあ」


茜はしぶしぶ苦手なチョコバーを口にした。


「で?お前は何しに来たんだ?」


「カイトの指示です、第一拠点には寮食車両が付いてひと段落しましたし」


絵里香もその概要に気づいていない様だった。


「ぜんぜんたんない…」


二人が話してるうちにマールはあっという間に3本のカロリーバーを平らげ、物足りない様子でカバンを漁る。


「おお!?なんかある!?」


マールが取り出したのはゼリー飲料だった、マールはそれをまじまじと眺める。


「なにこれ、食べれるの??…」


「それは、ここを」


絵里香は好奇心旺盛なマールの手にあるゼリー飲料の蓋を掴むとぱきりと音を立てて外す。


「おー!?」


「あとはあんな感じです」


絵里香の指差した先では茜がゼリー飲料を潰しながら飲んでいた。


「あまい!!美味しい!!」


マールは目を輝かせながらゼリー飲料をちびちびと飲み始めた。


「おら!ヤバいやつから運び込め!!」


一方、第一拠点の救護テントでは…綾奈が大声をはりあげながら瀕死の重症者を次々と奥の霧香へと端渡す。


「はいつぎー!」


今し方運び込まれた手足を欠損した男性が、あっという間に5体満足で出てくる。


「はいつぎー!」


霧香はつぎつぎと運び込まれる重症な人々に触れては回復術を打ち込んで瞬く間に治していく。


「つぎー!」


手足がちぎれたものはもちろん、内臓が破裂したものや果ては頭が半分かけてしまったものや、瓦礫に下半身を潰されてしまったものなど普通ならば助からないと捨て置かれてしまう人まで…霧香の回復術は例外なく瞬く間に癒してしまう。


「あーちゃんつかれたぁ…」


霧香の泣き言を聞いた綾奈は戻って来て彼女の額の汗を拭ってやる。


「ちょっと休むか?…」


綾奈の問いかけに霧香も気丈に首を横に振る。


「やすんだらいまならんでるひとたちがしんじゃうの…だから頑張る」


舌足らずに言葉を紡いでは立ち上がり、新たに担ぎ込まれた女性に触れるとその傷を瞬く間に癒した。


「カイト、こっちは小休止してる余裕ねえぞ?どうしたらいい?」


綾奈は苦しそうな霧香を観ていられず、カイトにといかける。


『先程絵里香が配布したナップザックにゼリー飲料があります、それを与えてください、それならば動きながらでも摂取できますので』


「わかった!」


カイトの指示を受けた綾奈は部屋の片隅にまとめて置かれた袋を漁って中からゼリー飲料を取り出して持っていく。


「カイトがそれ食えって!」


「ありがとーあーちゃん」


霧香は受け取ったゼリー飲料を気にせず蓋を外し、瞬く間に飲み干した。


「俺の分もやるよ」


綾奈は自分のバックに入っていたゼリーも霧香に差し出すと、霧香はそれも受け取ってすぐに飲み干した。


「うし!かいふくー!」


それで元気を取り戻した霧香は柔らかな声を張り上げ、自らテントの外へ飛び出しては片端から重症者を癒して行った。


「ところで、なんでカロリーバーとゼリー飲料なの?」


見ていた篠崎がカイトに問いかける。


「カロリーバーは冒険者体質を持つ者達の空腹に、大きな効果がある事がわかったんです」


「へーー?そうなの?」


この世界へやって来た時、親切な警察官からもらったカロリーバーが、マールの空腹を回復させた事を思い出したカイトは、絵里香と相談してカロリーバーとゼリー飲料を補給品として確保した。


「勿論、あんなもので満腹になるわけではないですが最低限動くのに必要なエネルギーを確保出来るかと」


カイトはそう言いながら彼女達が食べているものと同じカロリーバーを篠崎へ差し出すと、篠崎はなんの躊躇もなくそれを受け取り一口食べた。


「結構美味しい…」


空腹だったのか、篠崎はがっつく様に食べ始めた。


「……それ一本で自衛官の昼食並の摂取カロリーがあるそうですよ」


「ぶふ!!?」


それを聞いた篠崎は思わず咽せた。そこは気にしているんだな……カイトは自分のナップザックからカロリーバーを取り出すとそれを齧った。


「…私には少し甘過ぎますね…」


乾いた甘いチョコ風味の味わいは、カイトの口には合わなかった。


「でも不思議ね、後で陸兎に調べさせてみようかしら?」


諦めてチョコバーを齧りながら、最後の一本を取り出して自分のデスクに置いた。


「そういえば、兄はそちらでなにを?」


大凡予想はついているが敢えて問いかけると、篠崎は口の中のチョコバーをコーヒーで流し込む。


「兄…ああ、あなたは陸兎の弟だったわね…あまりにも似てないから忘れかけるわ」


生前の自分の兄だしな…とカイトは苦笑してみせる。


「はは…よく言われます」


「魔法少女の身体を調べてもらってるわ、あ…非人道的な実験はしてないわよ?それに茜と青葉がとても協力的なのよ、自ら志願してくれている」


陸兎は彼女達に何をしたのだろうか、変な事をしていなければ良いが…。カイトがそんな事を考えていると…。


『亜人の臭いがするっ!どっかにいる!!』


唐突、弾けるようにマールが叫び、その報告に全員が反応して表情が強張った。そんな静まり返る中でカイトだけは素早く動いていた。


「青葉!!」


嬉々として笑いながらインカムに叫ぶ。


『とらえています!!以前見たことがある…コボルトの群れがB点のマンホールより出現!!第二拠点を目掛けて北上中!!』


青葉の視線はバッチリと動くコボルトの集団を捉えていた。


「なんて数…あいつら…こんな時に」


篠崎は歯を食い縛り身を乗り出すとカイトを見る。


「やはり少ない」


「す、少な…少ない!?」


篠崎は目を疑った、ざっと見ても道路を埋め尽くすほどの犬の顔をした亜人の大群が次から次へとマンホールから出てくる。その手には大きなナタや槍を携えており100や200なんて数では決してない。


「コボルトが本気で繁殖していたら、山を埋め尽くすほどの数になります。彼らも被災したのでしょう」


「被災したのになんで人を襲うのよ!?」


「簡単な話です、彼らは今、棲家を失い補給がないのです…ならばまず、人の物資と住処を奪おうとするはずです…」


「……カイト、あなたまさか…」


カイトの思惑を察した篠崎は顔面蒼白となる、カイトは最初からここに現れる亜人がコボルトである事を分かっていた、そして…さっきまでずっと食い入るように第二拠点のマップを見つめていた理由もわかる。


「囮にしたのね?第二拠点を」


カイトは心底楽しそうにほくそ笑みながらインカムに触れる。


「絵里香、茜の二人は直ちに迎撃へ出てください」


「ええ!?僕は!?」


マールは驚いたように声を張りカイトの指示を遮る。


「コボルトが相手ならば二人で充分です、そうでなくてもあなたを他に当てる事はありません」


そんなカイトの言葉に明らかに不満げな唸り声をあげるマールだがカイトは続ける。


「…お願いしますマール」


マールはカイトのお願いだけは決して断らない。


「しかたないな!…カイトがそこまで言うんなら、こんかいはみんなに譲ったげる!」


マールは腕を組みながら吐き捨てていた、本当は戦いにいきたいのだろう事はその声音からも分かった。


「うっし…んじゃ、行くか?」


「ええっ!」


二人は同時に、自らの武器を包んだ可愛らしい動物の包みを剥がして同時に黄金に輝く武器を表すと、マールとは反対方向へと走り出す。


『ふふ…偉いですよマール』


「なにそれ、バカにしてんの?」


マールは唇を尖らせながらも走り続ける。


『後で頭を撫でてあげます』


「…………絶対だよ?」


とても小さな声でつぶやいたマールにカイトは思わず笑ってしまう。


「ええ、約束です」


『カイトー!!亜人がでたんか!?ウチも行く?』


栞からの提案に、カイトはマップで栞の現在位置を確認する。第二拠点からは大分離れており援軍にかけて寝ても間に合わない。


「いえ、栞は引き続き補給線を確保を優先して下さい」


『ええー!?うちも戦いたい…』


マールみたいな事をいいだす…


「栞、あなたが道を作れば作るほど…多くの物資が中に入って行くことができます。これが何を意味するかわかりますか?」


そう問いかける。


「わからん!」


だろうな…期待してなかったよ!


「神奈川の被災者の命はあなたが作る道にかかっています、あなたが道を作れば作るほど、沢山の人の生命が助かるんです」


「うし!うちにまかせとき!!!」


栞は再び土砂により埋め尽くされた道路へと向かう。


「綾奈、第一拠点にもコボルトが押し寄せるかもしれません」


『…わかっている、霧香には指一本触れさせない』


綾奈の決意が漲ったセリフにカイトは苦笑しつつ篠崎にかおをむける。


「全自衛隊にコボルトの情報を共有、コボルトならば銃弾も通用します」


「災害救助の時くらい来ないでほしいわね…まったく…わかったわ」


篠崎はスマホを使い幕僚や米軍にまで、包み隠さずにコボルトのデータを送信し共有した。


『カイトまずいです!!!』


悲鳴混じりの青葉の通信に目を向けると、コボルトの集団の前衛の眼前には一人被災者がいたのだ。


「な…なんだ?」


被災者の男は逃げもせずに遠方からかけて来るコボルトの濁流をただ呑気に眺めるている。


「いけない!!このままでは…ヘリを降下させてくださいっ…」


青葉は自ら降りて時間を稼ぐべく、アサルトライフルと小太刀を身に付けると、ヘリのパイロットは頷き降下しようとする、しかしその前にヘリが躍り出る。


「あ、あぶな!誰だ!?」


カイトが強く机を叩いて怒りを露わにした。


「マスメディア……篠崎さん」


「報道の規制は既に出してあるわ…でもあいつらは報道の自由というつまらないものがある」


「撃墜しなさいもう…」


「出来るわけないじゃない」


二人は盛大なため息を漏らした。その隙にもコボルトの先頭集団が目視で人間を確認する。ただでさえ弱く、すぐに死ぬ人類が一人呑気に歩いている…コボルトは不気味に笑うと捨てられたガラクタの鉄を叩いて打ち出した大きなナタを振りかぶると勢い良く道端の被災者の男めがけて突撃を開始する。


「く!!!」


青葉は即座に判断、リトルバードの窓を開けるなり即座に飛びおりる。見事な受け身をとって被災者達の前に立つと、手にしたアサルトライフルを容赦なくぶっ放して先頭を走るコボルト達を次々と撃ち抜いて倒す。


『青葉が接敵!茜、絵里香!急ぎなさい』


青葉の信託、スカウトは唯一アサルトライフルに適性があった。触れた瞬間にアサルトライフルを習熟した青葉は次々と迫り来るコボルトを射殺し続けあっという間に勢いを殺すと押し返していく。


右手で引き金を引き、弾がなくなれば素早く弾倉を取り出しながら押し込みノータイムで給弾して引き金を引き続ける。機械的な銃撃はどんどんコボルトたちを押し戻していく。


「弾が足りない…」


青葉は濁流の押し寄せるコボルトに対して次々と引き金を引き射殺しながらも前進しながら押し返す。


「な、なんだあこれは?…」


被災者の男性は、唐突に始まった少女と犬頭との戦闘に驚愕していた…彼は映画の撮影か何かだと考えたのだが…足元に転がった犬面の人型から紫色の血液が広がっていくのを見て、それが生物である事を認識する。


「ひい!」


景気良く撃ちまくりながら前進していた青葉だが、遂に弾が無くなる。いくら服を漁っても弾倉はない。


「ギョ!!」


それを好機とみたのか、ナタを手に飛びかかるコボルトを青葉は小太刀を抜きながらすれ違いざまに縦に切り裂き、背後にいた2匹の腹を同時に切り裂いて蹴飛ばし、背後からかけてくるコボルトの足を挫く見事に勢いを止められ困惑するコボルトに青葉は容赦なく手にしたアサルトライフルを投げつけ、7kgを超えるアサルトライフルが顔面に激突したコボルトは頭が砕けて命を散らす。その隙にも青葉は踏み込んで1匹、2匹と目につくコボルトを次々斬獲してゆく。しかし、近接戦闘に切り替われば青葉の隙を見て横から抜けて行こうとするコボルトもいた、しかし青葉の目はそんなコボルトを見逃さない。今し方倒したコボルトの亡骸を蹴り飛ばす。


「ぎゃっ!!」


蹴り飛ばされた仲間の死骸を喰らったコボルトは足を見事に倒れてしまうと、即座に詰めてきた青葉の足がその犬に似た頭部を踏み砕く。


「やりますね、いくらコボルトが相手とはいえ…集団戦に慣れている」


集団を寄せ付けず一心不乱に暴れている様に見えてその実隙は見せない。手近な瓦礫やコボルトの死体すらも使って場をただひたすらに集団を掻き乱して立ち回ってみせている。カイトは困惑した、その青葉の動きに見覚えがあったのだ。


「青葉(あの子)はこの間の京都での事件以降、ずっとマールの戦い方をずっと学んでいたのよ?」


篠崎は語りながらカイトに目を向ける。


「…やれやれ」


末恐ろしい…見ただけではここまでは出来ない、どれだけ血の滲む努力を重ね今に至るのは目に見えて明らか。


「…我がクランに連れ帰れないのが本当に惜しいです…」


カイトは、心の底から青葉を羨んでいた。もしもここがベルラートでカイトのクランが間近にあったのならば、まず間違いなくクランに勧誘していただろう…。クランの運営をおざなりにし、管理はクウとシイロに丸投げしているカイトであってもそう感じるほどに、この場が現代日本である事を後悔した。


「……ですが、これは一時凌ぎにすぎません」


そう言ってカイトは報道の映す映像を指差した、青葉の視線映像では一見押しているように見えていた青葉は、ジリジリとコボルトの圧倒的な数の中に取り込まれ孤立させられようとしている。


「!?」


青葉が異変に気がついた時には、既に青葉はコボルト達の中に孤立してしまっていた。


「くっ…!!?」


四方八方から襲いくるコボルトのナタ、槍、ありとあらゆる攻撃が青葉をしとめようと迫りくる。どれか一つでも当たれば即座に全てが身体中を蹂躙し尽くす事だろう。青葉はたまらず逃げ場を求め大群の中に造られた脆弱な部分に飛び込み周囲のコボルトを蹴散らして間隙を作り出し、素早くコボルトの濁流から逃れる。


「それこそが、コボルトの狙いです。青葉は無力化されたも同然です」


カイトの言葉通り、青葉を道から退かす事に成功したコボルト達が濁流のように傾れ込み、真っ先に青葉の背後にいた被災者へと襲いかかった。


「う…うわあああ!?」


「ちょちょちょ!?呑気な事を言ってる場合!?」


篠崎のツッコミに、カイトは苦笑しつつ指を刺す。


「上出来です、援軍が間に合いましたので」


その瞬間、被災者の背後から黄金の光線が走り、被災者の前にいたコボルト達の身体が細切れにされ、背後に迫っていたコボルト達も、上半身と下半身が分かれて飛んでゆく。


「…なんとか、間に合った」


茜が飛び込んで来て斬り払ったのだ、彼女はそうため息を漏らすと、刀にべったりとこびりついた紫色の血液を振り払い、立て続けに襲いくるコボルトの濁流に正面から突っ込んでは数十はいたコボルトの集団をあっという間に切り刻んで完全に勢いを止めるにとどまらず滅多切りにしながら押し返しはじめた。


「青葉ァッ!いつまで遊んでんだ!!」


茜は一息にコボルトの集団を押し返しながら叫ぶと、それに気がついた青葉は眼前のコボルト達を瞬く間に切り伏せてコボルトの波の中を駆け抜ける。


「この場はお任せします!!」


一気に駆け抜けながら茜横を通り、側で呆然と傍観した被災者を抱き上げ、一目散に逃げていく。


「よーし…これで思う存分暴れられるぜっ!」


茜は深く息を吸い込みながらも迫り来るコボルトの大群を見て歯を剥き出しにして笑い、刀を中指と薬指のみで握り込み同時に強く踏み込みながら地面を蹴る。


瞬間、黄金に輝く光線が迫り来るコボルトの大群をあっという間に蹴散らしていく、その正体は茜が手にした刀の残光が彼女の動きに合わせて線になっているだけなのだが、それほどの速さで動き回る茜をコボルトも、テレビの高精度カメラですら追い切る事は出来ずLive映像には縦横無尽に動き回る光の光線にしか見えないのだ。


「こ、これは…撮影かなんかなのか…?」


これだけのものを目の当たりにしても尚、男はこれをフィクションだと思っていた。そもそも少女が自分を背負ったまま風の様な速さで駆けている時点で気づけそうなものではあるが。


「…現実です!!」


だが、鬼神の如く暴れ回る暴風のような茜を無視したコボルトの集団達がしつこく青葉の背を討とうと追いかけて来た。


「う、うわああ!?また来た!!…また来た!?」


肩の上で元気に喚き散らす男を気にする余裕はない、青葉は全力で走り続けた。


『青葉、そのまま真っ直ぐ…橋を越えなさい』


カイトの指示が聞こえみれば、彼の言った通りに目の前には川にかかった大きな橋があった。青葉は考える間も無く一気に駆け抜ける、その橋の先一人の少女が立っていた。放置された車を左右に寄せ集めて通り道を狭めている。


「絵里香さん!」


風が金髪ブロンド髪をはためかせ、右手に黄金に輝く大薙刀を携えた絵里香は笑う。


「第二拠点へ急ぎなさい!」


そう言って駆け抜ける青葉を見送ると、ゆっくりと向かって来るコボルト達へと向き直る。


「ここは!!何人たりとも通しません!!」


絵里香は手にした黄金の大薙刀を万力の握力で握りながら大きく振りかぶり、向かって来るコボルトたちめがけ大振りに振るう。


それはただの一振りで20匹ものコボルトの身体を真っ二つに吹き飛ばした。その一撃が放つ剣圧は凄まじく、後続のコボルトを怯ませ脚を止めさせてしまう。


「さあ!!どうした化け物共!!」


絵里香はその大きな薙刀の石突をコンクリートの地面に突き立てながら声高らかにコボルト達を嘲笑った。


「あぎゃ?!?!アギャアアアア!!!」


絵里香の嘲笑を聞いたかはわからないが、人間如きにバカにされていると考えたコボルトが怒り狂ったような雄叫びをあげ、周りのコボルト達も呼応して吠えるなり、手にした武器を振り上げ一目散に絵里香へと襲いかかる。


「所詮は獣なり!」


突き立てた薙刀を引き抜き、振りかぶりながら一歩前に出ると、一振り。


先頭のコボルト達が同時に両断されて吹き飛び、一歩下がりながら、二振り。


後続で駆けてきたコボルトの一塊がまとめて両断されコンクリートに血糊を撒き散らす。


再び一歩、一振り、二振りと足運びと共に振るわれた薙刀の一撃にコボルト達の身体がぶっ飛んでいく。


ここでようやく、コボルト達は気がついた…眼前に立ちはだかる絵里香という薙刀の少女には勝つことが出来ないと言う事実に。


「か…カイトくん…?」


篠崎は状況を確認出来ずにカイトへ問いかける。カイトはモニターの端に映されたマスメディアが垂れ流す映像を指を指す。


『ご覧ください!!被災地を襲う謎の生物と少女達が戦っています!凄まじい戦いです!』


呑気なもので、マスコミのヘリはどうでもいい情報を垂れ流す。集団を囲まれ、全身を紫色の血に塗れながらも縦横無尽に暴れ回る茜、そして橋の先で弁慶の様に立場だかり、だだの1匹たりとも通さない絵里香の姿が映されている。


「第二拠点にいくにはあの広く長い橋を抜く必要があります。下は川…水を嫌うコボルトは近づく事すらできません。故にどう足掻こうが絵里香を突破する必要があります。一度戻り…迂回すると言う手もありますが…」


既に背後には茜が迫ってきているのが視認できている。


「もう遅い、最後の手段にバラバラになって四散すると言うこともできますが。コボルトはそんな事をしません…単体で逃げたところでたかが知れますからね…そうしたとして、既に青葉が基地から偵察ヘリで上がった以上、後はどうにでもなります」


ヘリに乗り込む青葉の視界を捉えているカイトは実に楽しげに語っている。


「はー……」


篠崎は隣で深いため息を吐きながら立ち上がる。


「おや、どちらへ?」


カイトの言葉に篠崎はマスメディアの垂れ流す番組Liveに目を向ける。謎の少女達VS謎の怪人集団とのなんとも馬鹿馬鹿しいテロップが踊っている。


「……あれの責任者はわたしなのよ」


そう言いながらも、スマホを手に歩いて外へと出ていく。


「陸兎、一緒に来なさい」


『あん?俺は…』


「テレビに大々的に出ちゃったの、説明できる人間が必要でしょ?」


『は?…はああああ!?何してんの!?まじで』


「テレビをつけなさい…」


陸兎はテレビをつけると、亜人と向き合い戦う茜と絵里香の姿が映し出されている。


「……茜と絵里香?あんのバカ…マールちゃんまで投入してんのかよ…」


陸兎の言うあのバカはカイトの事だろう、そう考えた篠崎は笑う。


『同行、頼めるかしら?』


「はあ…わかったよ」


陸兎は盛大なため息を吐き出しながら立ち上がった。


「絵里香!逃げたぜ!!」


「好機ですね、背を打ちますよ!!」


コボルトの集団を見事に挟撃した絵里香と茜によってコボルト達は逃げ場なく、橋から飛び降りることもない…破れかぶれの突撃を始めるコボルトも片端から撫で斬りにして最後の1匹になる。最後の1匹となったコボルトは武器を捨てて跪き、懇願する様に泣き喚く。


『コボルトは1匹たりとも残してはいけません、排除お願いします』


「…あいよ」


茜は命乞いをするコボルトの首を容赦なく跳ね上げ命を絶つと、べっとりと刀にこびり付いた紫色の血液を振り払い鞘へと収め、絵里香も薙刀の血を振り払った。


その頃、マールは夜の街を匂いを頼りに駆け回り次々と埋まっていた被災者達を掘り起こしては道路に放り出す。


「カイトー、うえのへり…なんだっけ…へり何とか何とかならない?」


マールは喧しくついて来るヘリにうんざりとした声を漏らす。


「ヘリでいいです、邪魔ですよね…わかります、ですがどうにもできないんですよ…残念ながら」


「うう…うるさいなあ…臭いも風で分散しちゃう…石投げて追い払えないかなっ!」


「気持ちはわかります、私も許されるならすぐにでもあなたに撃墜を命じています」


「そ、そーなんだ…カイトもたいへんなんだねー」


マールはそうカイトを憐れみながらも、眼前の瓦礫を蹴飛ばして弾きとばし、中から男性を掘り起こす。


「ん…この人ちょっとやばい?」


マールは掘り起こした男性をその場から動かさずにゆっくりとひっくり返す、鋭利な木片に腹を切り裂かれ、溢れた内臓にはウジがわき、既に腐りかけている。


「おっちゃん!よくがんばったね!!だいじょーぶ!たすかるからね!」


マールは溢れ出た内臓に直に触れ、回復術を直接打ち込んだ。


「が!!がああああ!?!?」


腑を焼き尽くされるような激しい痛みが男を襲い、目を見開いてマールの手を退かそうと暴れる。


「がまんー!がまん!」


マールは楽しそうに男の体を地面に押さえつけ、その間にもみるみるうちに身体は再生し、傷など始めからなかったかの様に回復した。


「ふう!いっちょあがり!!」


気絶した男性を道路へ放り出し、男が埋まっていた家に目を向ける。彼女の鼻にはわかっている。未だ瓦礫に埋まった死肉の臭いが四つある、助かった男性の穏やかな寝顔を見てから再び立ち上がると次へと駆け出した。マールは凡ゆる場所に閉じ込められた生存者達を瞬く間に助け出す。重機を使わなければ退けることのできない瓦礫も片足一本で薙ぎ払い中に閉じ込められていた多くの人々を外へと連れ出したり、倒壊間近のデパートのトイレから親子を抱えて出てきたり、倒壊した瓦礫に下半身が潰された男性を瓦礫の中から引き摺り出して潰れた下半身を再生させたりと、そんな彼女の活躍を上空のテレビ局のカメラが全国に報道し続けている。


『マール、そのあたりは後5軒です』


カイトの報告を聞きつつ駆け抜けるマールは、そのうちの一軒へと飛び込み、眼前の瓦礫を蹴飛ばして若い女性と年配の男女を引っ張り出して道路に放り出す。


「はー…はー…これであとよっつ?」


マールは深く息をしながら汗を拭い、再び走り出す。次に駆けつけたのは大型のショッピングモールだった、震度10の地震を受けても目立つ外傷や崩落などはなく、一見は無事なようだった。マールは揺れで割れてひしゃげた自動ドアを蹴破って中へと入る。


「カイト、ここすごいよ!いち、にー…さんにんもいる!ちょっと臭いけど血の臭いもしない!!」


ちょっと臭い?…マールの不穏な発言は気がかりだが、停電のショッピングモールともなれば冷蔵のものが腐敗したりもするだろう。食糧を求めた被災者が逃げ込んだのかもしれない、マールの視覚モニターは暗く視認性は最悪だった。


『その建物は倒壊の可能性があります、すみやかな避難誘導をお願いします』


「りょーかーい!」


マールは猫の様にひょいひょいと障害物を飛び越え臭いのする方を目指す。


「カイト…お腹へった…」


「その中の食品に手をつけたら窃盗ですからね?」


「うう…わかってるよ…」


マールは素早く階段を駆け上がり、三階の寝具コーナーへと辿り着く。


「おや?…随分とまあ可愛らしい子が来たねえ」


そこには被災者らしき中年の男性がいた。何故か一糸も纏わず裸であり、手にしたタバコを吹かしながらも余裕な面持ちである。


「えっと、このたてものはとうかい?のしんぱいがあるから、早くひなんして?」


辿々しく台本のようにひらがなで書いた字を読んだ。男は穏やかな笑みを浮かべる。


「そっか、わざわざ声がけに来てくれたのかい?わかったよ」


男はタバコを無遠慮に床へ捨てると立ち上がり踵を返す。


「おーい!避難だってよー?」


男はそう声を荒げながらも奥へと向かう。何か、カイトの脳裏に嫌な予感が電流の様に駆け巡り注意を仰ごうか迷った。マールは無警戒に男について行き、奥のベッドコーナーにいた同じように裸の男にあう、そしてその傍らのベッドの上に裸のまま横たわる女性を見た、凌辱の限りを尽くされた女性に意識はない。


刹那、中年の男がノータイムでマールに抱きつき、小さなマールの体を包み込むように押さえつけた。


「ちょ!…なにすんの!?」


「何って、いい事だよ?」


中年男の手が薄いシャツの下へ潜り込み素肌を撫で回す。


「へへへ、ママから悪い大人について来ちゃダメって教わらないのかい?」


もう一人の若い男も彼女に触れようと歩み寄る。


『マール、彼らは制圧してよし、治療も面倒なので軽く叩き潰してください』


「おっけー」


マールは自身のシャツの下に潜り込んだ男の手を引っ掴んで引っ張り出しスパークウェブを放つ。


「があああああっ!!?」


その瞬間、中年の男は絶叫しながら倒れ伏し激しく痙攣を始める。


「お、おいなにし…」


唐突に倒れた仲間を見て怯んだ若い男との間合いを瞬く間に詰めて来たマールの手が彼の顔面を掴むと同時にスパークウェブが流し込まれる。


「がああああ!?」


痙攣しながら脱力した男を、全力で側の寝具へ叩きつける。どれほどの力で叩きつけられればベッドの弾力で天井まで飛ぶのだろうか…。


「が…が…が…」


スパークウェブは身体が痺れるだけ、痛みもなければダメージもない、彼女の足元で痙攣を繰り返す中年の男も、意識は失ってはいない。


「とりあえず、痛い思いはさせとくかぁ」


そう言って、マールは男の顔面を蹴飛ばした。カイトの尻を叩く時よりもだいぶ手加減していたが、男の鼻は簡単に潰れてぶっ飛び、意識を失ったのか動かなくなる。


「せいばいっ!」


最近父と観ている時代劇の将軍の様な決め台詞をはきつつ、ベッドに力なく横たわる女性に歩み寄る。女性は目を見開いたまま気絶しており、その口からは男達の吐き出した汚濁が溢れでる。


『ひとまずウォーターシュートで洗ってあげましょう、不潔が極まってます』


「うん、わかった!」


マールは女性にウォーターシュートを浴びせかけて身体についた汚れを綺麗に洗い流して清めると、軽く皮膚に触れて回復術を打ち込む。


「う…うっ…」


マールの回復術の痛みに小さく呻く女性は静かに瞼を閉じ、穏やかな寝息を立て始めた。


「えーと、服…」


「時間が惜しい、毛布を巻いておけば良いでしょう」


「そだね!」


マールは寝具置き場に走り、毛布を引っ張り出すとそれで女性を簀巻きにすると担ぎ上げる。


「こいつらどーする?」


気絶した男達を見て、カイトに指示を仰ぐ。


「通報はしてありますのでそのままでいいでしょう…」


「そっかー!わかった!」


マールはにこやかに男達をその場に残してショッピングモールから出た。


『で!出て来ました!!毛布を身体に巻いた女性を担いでいます!』


外に出て来たマールをマスコミのアナウンサーやカメラマンが迎えた。


「か、かいと?…何この人たち」


「丁度いいですマール、彼女は彼らに任せましょう」


カイトの指示を受け、マールは頷くと、女子アナウンサーへ歩み寄る。


「ああ!少女がこちらへやって来ました!取材を試みます、あ、あのー!」


マールはアナウンサーの前まで来ると、毛布に包まれた女性を渡す。


「んっ!」


「え??」


「んっっ!!」


マールはそれだけいうと、女子アナウンサーに女性を差し出すがアナウンサーは下がってしまう。


「この女の人、けっこう危ないから早くそれで連れてってあげて!第一拠点にキリカって雲みたいなあたまのやつがいるからそいつに回復をお願いすれば助かるから!」


「え…ええ?」


「なに?持てないの?…いいよもう!」


マールは苛立ちを滲ませ、スタスタとマスコミのヘリに行くとズカズカと中に入って座席に女性を寝かせると外に出た。


「キリカはあっちにいるから!」


「え?あの…」


「早く動くっ!!」


「は、はい!!!」


マールに怒鳴られアナウンサーの女性は素早くヘリへと乗り込んでマールの指差した第一拠点の方角へ飛んでゆく。


『上出来です、第一拠点には既に要救護者を乗せたマスコミのヘリが来ることは通達ずみです』


「うん…」


マールは何やら静かに五感に集中していた。


「…どうかしました?」


『すっごく小さな…臭いがする…』


マールは静かな闇の中で耳に手を当て、そして周囲の環境に耳を澄ませる。


「マールちゃん…なにをしているんです?」


オペレーターの女性が振り返り、カイトに問いかける。カイトもこんなマールを見たことが無く、困惑している。


「もの凄く沢山の死の臭いの中に、小さな生の臭いを感じるの…とっても小さい…」


赤子か…察したカイトは目を見開きながら息を呑み、マールのいる位置のマップに目を向けた。


「マール!近くに大きなマンションがあります、あなたの視線からみて前方、右側!」


マールは即座にそちらに視線を向ける。そこには高層マンションがある。耐震設備がおざなりだったのか、下層が潰れており、中層は真っ二つに割れ、高層が地面に叩きつけられて道路一体全てが潰れた被災者の血肉の海となっていた。


「みっけた!!さっすがカイト!!」


マールは笑い、いつ崩落してもおかしくないマンションに突入、派手に壁をぶち抜いて中へ入り…道ゆく壁を破壊しながら前へ前へと突き進みマンションの一室、鍵のかかった鋼鉄の扉を粘土でもこねるかの如くドアチェーンごと丸めて捨て一室へと突入する。


「…………」


マールはその光景に目を見開いた、目の前には小さなベビーベッドがあり、赤ちゃんが寝かされて泣いていた。そのベッドを瓦礫から守る様に、二人の男女が折り重なる様にスクラムを組んで屋根を作っていた。降り注いだ瓦礫が男女の命を奪って尚、我が子だけは護ろうと立ったまま死んでいた。


「………」


頭が潰れ体を鉄骨が貫いても、我が子を心配させまいとした彼らの死に顔は笑顔だったのだ。


「ごめんなさい、あなた達の子は…僕があずかりますね?」


マールはゆっくりと隙間からベビーベッドに歩み寄り、ベッドに寝かされたまま泣いている赤子をとって胸に抱く。その瞬間…グシャリと、我が子の安全を見届けたとでもいうのか、彼の両親はマールの目の前で瓦礫に押し潰された。


『マール、崩落します…早く』


「うん、わかってる…わかってる!」


マールはすぐさま眼前の瓦礫を蹴飛ばして破壊し、10mはあろう高さから飛んで道路へと落ちる。高層マンションだけあってさまざまな人々が住んでいたのだろう…その人々の悉くがバラバラなパーツとなって道路に散乱している。


『マール、そのエリアはそのマンションで最後です』


「そっか…うん、すぐに…」


マールはそこで気がついた、胸に抱いたさっきまで煩く泣いていた赤子の声が聞こえない。


「…え?」


見れば赤子は弱々しく息をしていた。


「な、なんで!?…どうして??」


マールはその場にしゃがみ込み明らかに弱っていく赤子の顔を見つめる。


「カイト!?どうしよう!?…なん…なんで?」


『…っ』


わからない、なぜ急に赤子が弱り出したのかが…


『くそっ…』


マールはすぐに自分の指を斬ろうとした


「待ちなさい!!ダメですマール!!」


『なんで??考えてる暇なんてないよ!!!』


なんとしてでも赤子を助けたいマールは間違いなく血を使うつもりだろう。マスコミは程よく追い払ったとはいえ…魔法少女保護対策課の大勢が観ている前で。


『マール、顔をよく見せろ』


不意に、聞き覚えのある男性の声がインカムに響く。


「え…う、うん」


マールはその声に従って視線をぐったりとした赤子の顔に向ける。


『口を開け、下に触れ噛みちぎられないように注意しろよ』


「う…うん」


マールは素直に人差し指を赤子の口に入れる。


『湿ってる?乾燥してる?』


「よくわかんない…」


『なら、口は吸う様な動きをしているか??』


「し、してる…」


『そっか…ただの脱水だ、水をやればひとまず大丈夫だ』


「ど、どうやればいいの?」


『布を水に浸して口に咥えさせろ』


マールは容赦なく服の袖を千切り、水魔術の球体を生み出して袖に浸し赤子の口に持っていく。赤子はマールの袖に噛み付くと染み込んだ水分を力強く吸い始めた。


「わあ…わああ!」


マールは安堵と喜びで満たされ、懸命に水を吸う赤子の頭を撫でた。


『マール、あんまり時間はないぞ…水を欲しがるってことは腹も減るし排泄もするってことだ、さっさと第一拠点に戻って係の自衛官に渡しにいけ』


「う!!うん!!!」


マールは赤子を大事そうに抱えると、風の様な速度で瓦礫の上を飛び越え第一拠点へとむかう。


「…助かりました、兄さん」


カイトは安堵のため息と共に隣に立った男を見る、柔和なハンサム顔をした2枚目が不適な笑みを浮かべて立っており、ずれたメガネを人差し指を押し上げた。


「たく、赤ん坊の顔色くらい観られるようにしておけよ…お前もいずれやるんだろ?」


彼は陸兎、生前のカイトの兄であり世界一と呼ばれる名医にして生態学のエキスパートである。


「肝に銘じます…」


カイトは反省を口にすると、陸兎はまあ良いやと気怠げに篠崎の椅子に腰掛けて首を閉めていたネクタイを外してゴミ箱へなげると、タバコを取り出した。


「兄さん、篠崎司令と一緒にいたのでは?」


「俺の役目は終わったから帰って来た…そんだけだよ…」


そう言って陸兎は背もたれに体重を預け、まるで自宅のテレビでも見るかのようにチャンネルを切り替えた。そこにはぴっちりとしたスタイルに着飾った篠崎の姿が映し出される。


『本日、この様な時間に皆様を集めさせていただいた理由をお話しします…』


篠崎はスマートタブレットを操り、背後のスクリーンにテレビに映された亜人と戦う茜と絵里香、そして青葉の姿、被災者を次々と瓦礫から助けていくマールの姿が、土砂に埋もれた道路から巨岩を次々と持ち上げては捨てる栞の姿と次々映し出され、集まった記者達のどよめきが聞こえる。


『私達は、警視庁所属【魔法少女保護対策課】責任者の篠崎香織と申します…』


篠崎はにこやかに語り出した。

次回はもう少し長くなります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ