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第4部 現代編プロローグ

新章です

朝、カイトは日が上ると共にマールによって叩き起こされた。


「カイト!早く早く!!」


マールは居ても立っても居られない様子でカイトを小脇に抱えると、風の様な速度でクランハウスから飛び出すと、ゼノリコの待つベルラート城へと向かう。名目上は王直属の命令による海洋調査である為ガッツリとした装備に身を固めている。


「王様!!」


門番の兵士が守る閉ざされた門を勢いよく蹴破り、マールは謁見の間にやってきた。玉座には既にゼノリコがおり、側にはユズとディートリヒがいた。


「ディートリヒ?最前線にいたんじゃないの?」


マールの問いかけにディートリヒはキョトンとする。


「あん?ああ…エルフをぶっ殺すのは気が引けてな、制式にベルラートの司書官のガードを引き受けたのさ!」


「最前線にいて欲しいんですけどね…」


「そういうなよユズさん!」


「だああ!ベタベタするなあ!」


二人は毎日こういった痴話喧嘩をしているようだ、熊の様に大きな男とマールと変わらない背丈の少女が言い合う姿は不思議と絵になる。


「ちょっと二人?痴話喧嘩なら外でやってきてくれない?」


そこへ王宮魔術師の制服を身につけたフィオレがやってくるなり二人に水をひっかけて謁見の間から追い出した。


「あれ?フィオレちゃん!?」


驚くマールの頭をステッキで引っ叩く。


「ちゃん呼び禁止!あなたは他人にもっと敬意をもちなさい?」


最も他者に敬意を払わないフィオレが言ってもな…とカイトは心で思うが口を手で塞ぐ。


「さて、そいじゃ仕事の話をするかのう…二人ともこっちへ来い」


ゼノリコはゆっくりと立ち上がると、奥にある寝室へ二人を案内した、中には相変わらず何もなくベッドだけが置いてある。その上には白い布地のシャツとズボンが置かれておりローマ風のサンダルが置かれている。


「二人とも、それに着替えろ」


ゼノリコの指示でカイトとマールは用意された衣服を手に取る。


「え…こんなの着るの?」


マールは嫌そうに渋っている。


「当たり前じゃろ?お前のきている鎧なんぞ着て行ったら向こうでは即捕まってしまうぞ?あと武器や持ち物はこっちに置いていけ。衣服以外にこちらのものを向こうに持って行くことは許さんからな!」


「そっか…」


マールは渋々服を脱ぎ始めた、相変わらず彼女は恥じらいが無い。


「何見てんの?カイトもさっさときがえなよ」


「あ、はい…」


カイトも服を脱ぎ、白い上下とサンダルを履く。


「……」


さりげなくマールは剣の持ち手の様に造られた魔法のステッキをポケットに忍ばせるのを見たが、向こうで何があるか分からないので見てみぬふりをする事にした。


「二人とも準備はできたか?」


二人の着替えを見ていたゼノリコは二人に問いかける。


「うん、いいよー!」


「はい、大丈夫です」


二人が着替え終えると、ゼノリコはテーブルの上に置かれたランプを手慣れた手付きで擦る。すると、その中から紫色の煙が溢れ出てムキムキのオジさんの様な姿を形作る。


『誰だ…私を呼ぶものは』


魔神はマール、カイト、ゼノリコと順に見回す。


「わしじゃよ、寝坊助」


ゼノリコが魔神に声をかけると、魔神はゆっくりとゼノリコに目を向ける。


『ゼノリコ?!ゼノリコか!』


「おう…久しいのう、300年ぶりか?」


『そんな時がたったのか?お主は変わらんな…』


「王様、知り合いなの?」


マールの問いかけには魔神が応える。


「前回願いを叶えたのがゼノリコだからな」


「ああ、あの時はワシは一度の願いしか叶えられず…お前の約束を違えてしまったな。次があればお前の願いを叶える約束は果たさねばなるまい?」


「あの時の願いはたしかしょーもないものだったな…たしか不死でも老いるから身体をずっと13のころのままで…だったか?」


ゼノリコがずっと少女の様な外見なのはその為だったのか…カイトはジト目でゼノリコを見ているとゼノリコは目を逸らした。


「魔神よ、約束を守る前にそこの二人の願いを叶えては貰えぬか?」


ゼノリコの問いかけに、魔神は再びマールとカイトを見る。


「お?お前、勇者か?…再び出会えるとはな…しかしなんだ?髪を短くしたんだな!それになんだか縮んだか?」


以前、マンイーターからも同じ様な事を言われた気がする。


「人違いだよ、僕はマールっていうの」


マールの言葉に魔神は腕を組み首を傾げた。


「人違いなわけがない、勇者は世界に一人だ、それは変わらない真理だからな…まあいい」


魔神はカイトにも目を向け、腕を組みふんぞり帰る。


「願いを叶えよう、なんでもいいたまえ」


「僕!カイトがこっちにくる前の世界に旅行に行きたい!」


すると魔神はカイトに目を向ける。


「成る程、君の魂が光って見えるのはそのせいなんだね?転生者だったとはね…成る程!」


魔神はブツブツ独り言を言ってからカイトの頭上の何かを掴んで上を見上げた。


「うん、この世界なら行けそうだ…期間は?」


魔神の問いかけにゼノリコが応える。


「こっちの世界で一月だ」


「そんなにいくのか!?向こうだと三ヶ月と半分位の期間になるが…」


「二度と行けない場所じゃからのう、なら思い残すことが無いくらい遊ばせてやるのがよかろうよ?」


ゼノリコの言葉に魔神は成る程っと相槌を打つ。


「行きと帰りで願いは二つだな?最後の願いは?」


魔神の三つ目の問いかけには、ゼノリコが応える。


「約束は二度も違えぬ、二人が無事に帰って来てからじゃ」


その言葉に魔神は大きく頷く。


「あいわかった、それでは二人をカイトの故郷へ!」


カイトとマールの視界はその言葉と同時に暗転した。



次回から世界観が一気に変わりますが…ゆるして

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