変身するんだって!
初物なのでお手柔らかに……たのます……
20XX年のある日、世界は崩壊した。世界各地に突如として現れた未確認生命体によって国の半数以上が崩壊した。日本でも都道府県の半数以上が滅ぼされ、国を縮小するのを余儀なくされた。
未確認生命体はunknownと呼ばれるようになり、崩壊の日から10年たった今でも世界各地に現れては暴力の限りを尽くしていた。だが、世界もただ滅ぼされるのを待っているわけではなかった。
人気のない夜の街を1人の少女が走っていた。
「はぁっはぁっ……」
少女はスマホを片手に必死に走る。転けそうになりながらもその小さな足を懸命に動かす。
『unknownが出現しました。出現した地域にいる市民の皆さんは速やかに指定された避難所へ避難してください。ランクはE級です。繰り返しお知らせします。unknownが出現しました――』
unknownの出現を知らせるアナウンスが静かな街中に響き渡る。本来であればアナウンスの前にスマホなどの電子機器にunknownの出現する時に見られる空間の歪みが発生したことが知らされる。そのため、アナウンスがされる前にその地域にいる市民は避難所へ避難することが出来るはずだった。
「なんで……こんな日に限ってスマホの充電無くなってるんですか……!!」
運悪く少女のスマホが充電切れを起こしていたため、警報を知ることが出来なかった。充電してから寝たはずなのに……さらに運の悪いことに少女のいる地域の避難所は少女の家からおよそ5kmも離れていたため、アナウンスを聞いて直ぐに避難することが出来なかった。
「……え?」
いきなり少女の目の前が爆ぜた。
「あっ……」
爆ぜた時に発生した煙の中から2mほどの真っ黒な狼のようなものが現れた。ただ狼と違うところは目が4つある事や脚が6本あることだ。
「unknown……」
少女はいきなり現れたunknownの圧に耐えきれず、その場に座り込んでしまった。unknownは口からヨダレを垂らしながらゆっくりと近ずいてくる。
「グルルルルル……ニ……ン……コロ……」
「ひっ……」
少女は恐怖のあまり立ち上がることが出来ない。必死に這って逃げようとするが、unknownに上から脚で押さえつけられ動くことが出来なくなってしまった。
「だ……だれか!助けて……」
助けを求めるために声を出してみるが、だれもその声に答えることは無かった。
「だれか……だれかぁ!助けて!助けてください!」
死にたくない……!まだ死にたくないです……!!視界が涙でぼやけ、地面を濡らす。必死に抜け出そうともがくがunknownはびくともしない。
するとunknownが少女から足を退けた。助かった……と思った次の瞬間。
「ごふっ……!?」
少女は吹き飛び道路を転がる。unknownが脚で少女をはじき飛ばしたのだ。
「ガルッガルッガルルル」
unknownはまるで嘲笑うかのように鳴いた。
「ゴホッゴホッ……ゴフッ……」
うつ伏せに倒れたまま動けないでいる少女にunknownは近ずいていき、何度も何度も弄ぶかのように少女をはね飛ばした。
「か…ふ……あ……」
早く逃げないといけないのに意識が朦朧とし、体が動かない。このままunknownに殺されるんだ……とぼやけた頭でそう考えているとどこからか声が聞こえた……気がした。
「よかったら!ぎりぎりまにあったら!!」
幻聴が聞こえるなんて……これは本格的に私死にますね……
「幻聴じゃないら!!」
閉じていた目をうっすら開けてみるとそこには黒い猫のようなものが居た。目の前にいきなり現れた黒猫はちいさな魔法陣を空中に出したかと思うと、そこから紙を取り出した。ぼやける頭で今の紙どうやってだしたんでしょうと考えていたらその紙を私に渡してきた。
「さぁ、この紙にサインするら!そうすれば君は魔法少女になれるら!大丈夫ら!魔法少女になれば傷も治るしあの程度のunknownは余裕ら!」
魔法少女……私が……?
「結界がきれるまで時間がないら!もしかしてうごけないら?こうなったら強制契約ら!」
黒猫の口から触手のようなものが出たかと思うと、右腕に絡まり自分の意思とは関係なしに右腕が動き始めた。猫って可愛いのに……口から細くは無い触手が出てるのを見ると可愛さよりも気持ち悪さが勝った。
「えっきも……」
「きもとは失礼ら!契約しないお前が悪いら!」
黒猫に操られた右腕は紙にサインしようと動く。そうさせまいと必死に抵抗を試みるが、腕に激痛が走るだけでなにもできなかった。
「抵抗はやめた方がいいら。ただでさえ全身ズタボロで腕なんか骨折してるら。助かりたいなら契約するしかないら!」
「無理です!魔法少女になるなんて無理です!!」
必死に抵抗するが、右腕は紙へと近ずいていく。
「なんで断るのら?みんなの憧れら!魔法少女になれるのは名誉なことら!」
私みたいなのが世界の救世主と言われる魔法少女になんてなれるはずがない。けど助かるにはなるしかないこともわかっている。自分の中で天秤にかけてる間に指が紙に触れた。すると指先から何かを吸われた気がした。
「ぐ……」
「よし、刻まれたら!」
触手が右腕から離れていく。紙にはしっかりと私の名前が書かれていた。
「ふむふむ、君の名前は……これなんて読むら?」
黒猫が二足歩行しながら前足で紙を掴み、頭を傾ける。可愛いけど……どうしてもさっきの口から触手の印象が強くて可愛く見えない……
「名前は……蘇芳 花……です」
「ふむふむ。契約も終わったし早く変身して戦うら!」
えぇ……この猫いきなり戦えって言いました……今更だけど魔法少女になるには妖精と契約する必要があるってどっかで聞いた気がします。てことはこの猫がその妖精……私の中の綺麗な妖精像が音を立てて崩れてく……
「無理です!戦えません!」
「じゃあunknownに殺されるら?」
「あと少し耐えれば魔法少女が来てくれるはずです。それまで何とか逃げれば助かります!」
そう、この世界には魔法少女がいる。と言っても魔法少女が現れ始めたのは8年ほど前からだけど。
「君が嬲り殺されるまで魔法少女は来ないら!なぜなら他の場所にもunknownが出現しててこいつよりもランクが上だからそっちを優先してるら!」
他の場所にもunknownが……?じゃあ私魔法少女にならないと助からない……?もしこれがホントの話なら変身しないと私は死ぬ……死ぬくらいなら……!
「さぁ、変身するら!」
「へ、変身ってどうやるの?」
こんなことで魔法少女になるなんて思ってなかったです……●●、許してくれますよね……?……??あれ……●●って誰でしたっけ……
「変身方法はその首にかけてるネックレスを握って変身っていうら!」
「首のネックレス……?」
左手で首元を探ってみると黒猫が言った通りネックレスがあった。私ネックレス付けてなかったはずなんだけど……そのネックレスは蒼い西洋剣のような宝石がついていた。
「そのネックレスが変身アイテムら!絶対に体から離れることは無いからなくすことはないら!」
なんですかその呪いのアイテム……
「もうそろそろ時空の結界が壊れるら!早く変身するら!」
「時空の結界……?」
「外と中の時間をずらす結界ら!これのおかげでまだ襲われずに僕と話せてるのら!」
なるほど。なんで襲われないんだろって思ってたけど結界が貼ってあったんですね。
「もう結界が壊れるら!早く変身するら!」
「わ、わかりました……変身!」
ネックレスを握りながらそう言うと体が蒼い光に包まれた。
「変身成功ら!話の魔法少女なんてついてるら!」
「わぁ……」
変身した私の姿は蒼と白を基本とした鎧ドレスのよう衣装を着ていて、髪は根元が白色なのは変わらないが、毛先に向けて黒色へと変化して背中位までの長さだったのが腰に届くまで伸びていた。目の色とか顔立ちは鏡がないから確認できないけど多分変化してる。美人だといいですね。
「さて、結界が壊れるら!じゃあ僕は帰るからあとは頑張れら!」
「……はい?」
え?この猫今帰るって言いました?
「え?戦い方の説明とかは……」
「そんなめんどくさい事僕はしないら!君を魔法少女にした事で僕のノルマは達成したら!僕は残業なんてしないら!それに戦い方なんて自然と頭にはいってくるら!」
こ、こいつ……!無責任にもほどがあります!!
「むぎゅっ!?」
イラッとしてつい殴ってしまいました。
「思ったよりも飛びましたね……」
黒猫が遥か彼方に飛んでいくのとほぼ同時に決壊が消えた。
「グルルル!?」
さっきまで警戒などしてなかったunknownが私の魔法少女の姿を見た途端警戒し始めた。やっぱりそうなりますよね。さっきまで私ボロボロだったのにいきなり無傷になったら警戒しますよね。
「さっきのお返しです!」
unknown目掛けて一気に踏み込み、思いっきり殴る。
パァン
爆ぜた。え?なにがって?unknownが。
「……あれ」
思ったよりも呆気なくunknownを倒せてしまった。これ私の力が強いのかさっきのunknownが脆いのか……どっちなんでしょう。ちなみにunknownには血などはなく、死んだあとは魔石と呼ばれるunknownの核だけ残して跡形もなく消える。
「あ、ありました」
unknownが爆ぜた当たりを探してみると赤黒い宝石のような小さい石が落ちていた。多分これが魔石。魔石はエネルギーの塊みたいなもので高値で売れるんですけど……売るためには魔法省に行かないといけないんですよね……出来れば魔法省には行きたくないです。
「これどうしましょうか……」
魔石を手の中で転がして遊んでいると何かがすごいスピードで近ずいて来るのを感じた。
「なにかきますね……」
魔石をポケットにしまい、警戒していると上空に少女が現れた。
「あなた……魔法少女よね?」
その少女はさも当然かのように宙に浮き、こちらを見下ろしながら聞いてきた。その姿はまるで炎の様で、真っ赤な髪を後ろでポニーテールにし、顔は自信に満ちたかっこいい顔立ちをしていた。身構えていると赤いドレスを身にまとった少女はゆっくりと地面におりてきた。
「あなた、どこの支部所属の魔法少女なのかしら?東京の子じゃないよね」
どうしよう……いきなり魔法少女にあうとおもっていませんでした。しかもこの子この街専属のフレイムガーネットっていう魔法少女です。下手に言い訳して敵対されても困るし、これはもう正直に言うしかないですね。
「えっと……さっきunknownに襲われたんですけど、その時に妖精?に魔法少女にさせられました。」
「その妖精は?」
「どっか行きました」
「え?」
「かえりました」
フレイムガーネットはため息をついてこめかみを手で押えた。ブツブツと小言を言ってるみたいだけどそこそこ距離が離れてるから聞き取れなかった。たしか私より2歳年上の15歳だったはずだけど、意外と苦労人なのでしょうか。
「あ……自己紹介してなかったわね。私は魔法少女フレイムガーネットよ。気軽にガーネットって呼んで。この街の支部所属の魔法少女よ。」
「えっと、ついさっき魔法少女になったものです。名前はまだ考えてません。」
「魔法少女名は魔法少女になった時に頭に浮かんでくるはずよ?」
え?そうなんだ……そう言われてみればなった時になんか頭に浮かんできてた……気がします。たしか……
「魔法少女ランスロット……」
「へぇ…かの有名な騎士の名を襲名するなんて。あなた話の魔法少女なのね。」
妖精も言ってたけど話の魔法少女ってなんだろ……
「あの、話の魔法少女ってなんですか?」
ガーネットは一瞬驚いた顔をした。え?もしかして常識だったりします?
「えっとね、魔法少女には4種類あるの。それが花の魔法少女、宝石の魔法少女、話の魔法少女、星の魔法少女。ちなみに私は宝石の魔法少女よ。」
へぇ…魔法少女って種類あったんだ。知らなかった……
「この4つの中でも話の魔法少女は数が少ないのよ。」
つまりレアってことですね。やったー。
「ところで貴方、これから時間あるかしら?」
今の時間は21時半だから……
「23時までなら大丈夫ですけど……なぜですか?」
「もちろん魔法省にいくためよ?」
え?今この人魔法省って言いました?私あそこ大っっっ嫌いなんですけど……よし、何とかして逃げましょう。
「え?いやです」
「え?ちょっま……」
ガーネットが何か言う前にくるっと反転して全力で逃走する。後ろを見るとガーネットがこちらに手を伸ばしたままポカーンと固まっていた。
よし、これくらい離れてれば大丈夫でしょ。かれこれ5分くらい全力疾走しました。ガーネットに出会ったらまた魔法省に連れていかれそうですね……もしかしたら次は強制連行されるかもしれませんし癪だけど魔法少女の力を使う練習しないといけませんね。
「ふぅ……よし、もうunknownもいないし家帰ってねましょう」
……ところでこれどうやって変身解除するんですか?
しばらくは書きためます!がんばるぞー!おーーー!!




