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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第七章 ついに現る、平和の綻び
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【第7章6】騎士団事情。

 彼はそれなりに年を重ねていたし、髭も生えていた。

 彼は自分の執務室で座っていた。いつものように、ダラダラ(・・・・)と書類の処理をして、『騎士団長』の欄に走り書きでサインを連ねた。時折現れる、隣の欄の生真面目で角ばったサインは『副団長』のもの。

 コンコン。

 ふと礼儀正しいノックの音がする。いい革の椅子にゆったりと座るテオ・ミストは、持っていた書類とペンを机に置いた。目端の扉に目を向ければ、押し開いて入ってくる人影がある。

「……失礼します」

「おう、入れ入れ。サミュエル」

 入ってきたサミュエル・コゥパは、にやにやと笑みを浮かべ、背もたれに身を預けて椅子に座っているテオに向けて、苦笑いでそう呼んだ。

「団長」


 落ち着いた深緑でまとめられた、アーリアの騎士団団長の執務室に、二人の男。

 サミュエルは扉をしっかりと閉じて、テオの目の前まで歩み寄った。テオもそれにあわせて立ち上がった。

 そうすると、この二人は向かい合う格好になる。背丈は若干、テオの方が高かったが。

 規則正しい、国が定めた騎士の正装を着たサミュエル一方、鎧ではなく薄いシャツにベスト、全身赤で統一したテオ。唯一のまともらしさは、帯剣をしていることぐらいの、奇抜さである。


「ほんっとに、アーリアの騎士団長がこのような有様。いい年こいて、怠ける癖も相変わらず」

 悪態でもつくようにサミュエルは言ったが、テオは気にした様子も見せずにけろりと言った。

「おれだってちぃっとは、やったわい」

「訛ってどうするんですか……。ったく」

 もはや呆れた声で、困ったとでもいうつもりか、両手をあげてみせる。サミュエルがそうすれば、テオはがっはっはっは、と髭の下で大口を開けるのだ。


「それで!」テオの豪快な笑い声を遮って、サミュエルは言った。「騎士団長、私を呼んだご用件は?」

「ああ! そうそう、それだったな! えーっと」

 今、思い出したというように声をあげて、机の引き出しの中をテオはあさった。十数分に及ぶ乱雑な書類(もはや解読不可能なものも含む)たちとの争いの結果、テオは折り目がつきまくっている紙を引っ張りあげた。

「あったぞ! よしっ」

「なんですかその、クソガキによってぼろぼろにされたような紙切れは」

「何気にサミュエル。おれを侮辱してはいまいか?」


 うら若い顔を真剣にさせて、テオはにゅっと頭を突き出したが、サミュエルの冷めている目で元の位置に戻る。

「はぁ……、分かったよ」

 ふざけることを諦めたテオは、頭をかきながらその折り目のつきまくった紙を差し出した。受け取ったサミュエルは、その紙のふにゃふにゃ加減にイラッとしたが、冷静にその紙に書かれた内容を読み解くことにした。

「事件報告書、ですか」

「なんだっけな、オメガとの国境近くの所か。そこで宗教集団の暴動があった。その場所担当の騎士か兵士か知らんが、そいつらが書いた報告書だ」


 テオは、折り目がつきすぎている紙を読み込んでいるサミュエルを伺おうともせず、また無数の書類が雑に入った引き出しと格闘しだす。それでも内容は覚えているらしく、つらつらと並べ立てた。

「宗教といったら、もうアレ。ぺディア・アゴーリブ神しか思いつかないんだが、確か、このアーリアだけに何か違う昔話が残っていなかったか?」

 サミュエルのほうも、紙に書き込まれた小さい文字を読みながら、テオの言葉にも耳を傾けていた。

 テオの問いかけに、生まれも育ちもアーリアである生粋のアーリア人のサミュエルは答える。テオはもともと、アーリアで生まれ育ったわけではないのだ。


「そう、ですね。この世界は『大いなる父』によって作られたもので、『大いなる父』はリーディア唯一の守護神であると、いうものがあったと思いますが」

「多分、それだろうな。その話から発展した宗教らしく、ぺディア・アゴーリブ神はただのニセモノなんだとか」

 テオはいいつつも、二枚の紙をまた引き出しからすくい上げた。それぞれ人相書きが付属としてついている。

「しかし、その事件はすでに主導者は拘束して、都(みやこ)へ移送済み。ほとんど終わったようなものでしょう?」

 今さっき、引き出しから取り出した二枚の紙をピッと、サミュエルの目の前に突き出す。


「これが、その主導者だ。移送を始めた直後に逃げられたらしい。鎮静化させた信者共も、逃亡を知ってかこの二人について北上している」

 テオの言葉に、サミュエルの眉がくいっとあがった。今度は、そんなに折り目がついていない二枚の紙を掴んだ。個人情報が書かれる紙だ。

 本来、すべての行が埋まるはずの人物の情報。氏名、生年月日、住所、職業、それに伴う身分、家族構成など、ほとんど書かれていない。一人はファーストネームのみで姓は名乗らず、もう一人にいたっては自らを仰々(ぎょうぎょう)しい称号で呼ぶのだ。


 ただ、参考として書き添えられた信仰理由にはもっともらしいことが書いてあった。一人は、『大いなる父によって救われ、新たな使命を授かったから』、もう一人は『ひたむきな教祖様をお手伝いしたく』と書かれていた。

「この二人を、私に追えというんですか」

「いや、違う。裏情報によれば、この二人はただ布教するために活動してるわけじゃないらしいぞ。誰かを探しているようだ」

 これに納得したのか、一人頷いたサミュエルは「紙とペンをお借りできますか」と、テオに言い放つ。騎士団長に筆記用具の貸し出しを求めるなんて、よくあることなのか、テオは意味不明な鼻歌を歌いながら、紙とペンを机の上に置いた。


 もともと執務机の上にあった黒いインクの小さなつぼ。預かった書類はひとまず脇に置き、つぼのふたを開けてサミュエルは、ペン先を黒い液体の中に沈み込ませた。余分なインクを落としてから、紙にサラサラとペンを走らせていく。

「つまり騎士団をいくつかに分けねばならないわけですか。では、三つ……いえ四つに分けさせていただきましょう」

 サミュエルは四つの長細い丸をかいて、丸の中にそれぞれ違う名前を書き入れた。そのうちに、テオとサミュエルの名前は入っている。それを見て上機嫌にテオは言った。

「おれは行かないぞ?」

「ちっ、最近は公務が多かったか。夢見る馬鹿騎士共に、怠ける団長を見せてやりたいのですが」


 サミュエルはさぞ悔しそうに顔を歪めて、テオの名前の下に怠ける団長の姿を知る、騎士の名前を適当に連ねていった。といっても、四つの頂点に書かれた残り三人も、いい年でだらけまくるテオを知るに知りすぎているが。

 テオのところと隣の名前のところを線でつないで、その上に『任務外』と書く。

 テオは『任務外』に心からの喜びを表した。憎らしいようすに、サミュエルがこほんと咳払い。

 おっと、とわざとらしい声をあげて、にやつく顔を無理やり仕事用の顔に戻す。ある意味それは歪(いびつ)だ。


「団長の隊はこの主城務め、団長とその補佐以外は警備。もう一隊は都の警備兼巡回」

「ああ、そろそろ年が明けるからな。祝祭目当てで旅人も多くなるし、特にいさかいは増えるだろうし」

 さっきまで、サミュエルが書いていく紙を覗き込んでいたテオは、ふとそこを離れ執務室の隅の書類棚から地図を出してきた。丸められていた地図を広げて、机のうえに置く。

「情報によると主導者率いる集団は、ここに向かっているらしい」

 そういって、テオが指差したのはアーリアの右上のはじの方。ヒーディオンとオメガとの国境近く、それらの国と結ぶ整備された公道が集まる町。さりげなく添えられた、その町を治める領主の名前は、リロル。


「確か伯爵位をもつ貴族でしたか?」

「知らん」

 一刀両断。バッサリ切り捨てられては、サミュエルも反応のしようがない。

 苦笑したまま、サミュエルは再びペン先をインクつぼに突っ込んだ。はぁ、と息をつきながら紙に書き足した。『任務有』の二隊のうち、サミュエルの隊はリロル伯爵領へ、もう一隊は宗教集団の周辺調査、と。あとは、それぞれの隊の下に隊員名を並べるだけで完成だ。

「団長、できましたよ」


 書きあがった紙をテオに手渡し、サミュエルは筆記用具を片付け始めた。テオが紙の内容を一読する間に、サミュエルはインクつぼのふたを元に戻し、ペン先に残った黒インクを布切れでふき取った。二つをそろえて机の上に返すと、もう読み終わっている。

「おし、これでいい。すぐに騎士共集めてくれ」

「了解しました。出発はすぐにでも、ですか?」

 テオは返されたペンを元の場所に戻し、インクの入ったつぼは執務机の隅に置きなおした。サミュエルは脇に置いていた三枚の紙をすっと抱える。


「出来る限り早く出発してくれ。特に、情報担当の隊は」

 サミュエルの質問に答えながらテオは、執務室内にある、自身の衣装だんすに駆け込む。勢いでたんすの扉を開き、見栄のよく丈の長いコートを羽織りだしている。返答を聞いたサミュエルは外で待っている伝令に、騎士が全員集まるようにとの旨(むね)を伝える。

「あっ! そうそう、大公様に言われていたんだっけか」

 衣装だんすに向けていた体をくいっと回転させ、テオはその目を執務机の方へ向けた。いや、正確には、執務机のさらに奥、執務机の壁の方に貼られた旗へ。


 伝令に令を伝え終わったサミュエルは室内を見回して、赤いシャツの上に品のいいコートを着ているテオの、見栄っ張りに頬を緩めそうになった。しかし、テオが部屋の奥の壁に飾られた旗に見入っているのを見て、ゆるやかに目がそちらへなぞられていく。

「どうしました?」

 出入り口の扉のすぐ傍で声をかけるが、その自分が、美しい刺繍に織られた白馬に見とれていた。

 暗闇のなか、一筋の温かな光を求めるように空(くう)を駆ける翼が生えし、純白の馬。他を圧倒させるような威圧感をもたらす、馬は神々しく波打つ海のように躍動していた。


 サミュエルの声に気づいたのか、こちらを振り返るテオ。コートの下から嫌でも赤がのぞく。

 テオの視線を感じたのか、まっすぐにテオを見つめるサミュエル。

 サミュエルはテオが、『外向きの顔』をしていることに気づいた。ひとくくりに外向きといえど、一部は彼自身なのだが、サミュエルはひどくびっくりした。

「サミュエル・コゥパ副団長、きみはこの団旗を持っていきたまえ」

 この、とはひとつしかない。そして、騎士団の旗を持っていくということは、アーリアの騎士団権限がそこにあるということ。

「はっ、テオ・ミスト騎士団長。早々にお返しいたしますので、お待ちください」


 正式な礼をしサミュエルは扉を開け、『外向き』の騎士団長を先に通した。

「ご案内いたしましょう、騎士団長」

「頼む」

 なっなんとか、今日中にあげられました。もう寝ないと明日がやばい時間ですが。もともと自分は睡眠でできた人間でしたからね。

 はぁ、何というか。最近ハードです。

 本当に、今月忙しい。今週は特に。

 絶対去年より、忙しいとは思いますが、筆がそれなりに進んでいた頃が多かったのは去年だし。


 文章力の上達とペースのアップがちゃんとできるようになりたいですね。


 さて、愚痴はこれまでに。

 今回、前触れもなしに新キャラを登場させてますが、混乱…していませんよね?

 似たようなキャラじゃねぇか! という声が聞こえてきそう……。

 もっと語彙増やしたいですね。テオ…はなんとかいけそうですが、サミュエルはなんとも。

 サミュエルに毒入ってますか? 仕事上は入れませんけど、ふざけるときに入ってますでしょうか。

 毒含んでいる友人としゃべって、勉強してみることにします。


 あれ、やっぱり愚痴っぽくなってい(ry

 すみません、最後に少しだけ。

 このペースだと、改稿が一話更新できるかなぁ……くらいで年終わっちゃいそうです。まだリーディアでは、終わりませんけど。←あれ、この文書き覚えが・・・?

 ひとまずここで、挨拶をさせていただきます。


 一周年たち、二回目の年末であります。一話からここまで読んでくださり、更には感想・評価を下さった方々、のろまなペースでも見捨てずにいてくださった方々、本当にありがとうございます。どうぞ来年も、リオンを読みに来てくださいますように。

 では、もし年中に改稿できたらそのときに、できなければこの場をお借りして、挨拶とさせていただきます。


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