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5:戦争へ

 寛ぎの間に戻り隣同士に腕を組んだまま座っているが一言も話さずぐったりしていた。

 下手すれば殺しかねなかったと反省しているのだ。邪魔しているからと本気の混合魔法を放つべきでは無かったと。アリサが止めてくれなかったら今頃どうなっていたか。それを考えると恐ろしくあり言葉を出せないでいたのだ。


 どの位時間が経過したのか分からない。分からないがデルフィアは謝罪する為にと先頭で戻って来たのだ。感情を表に出さず、ただ、涙を流して座り込んでいるテリストを見て確信した。彼もまた、我と同じく後悔していたと。言葉は何もいらない、隣に座っているアリサには悪いが、テリストと抱擁を交わすのだった。


 その姿を見て皆どんよりとしていた。なぜあのような者を庇いだてしたのか。テリストにとって帝国は仇だ。その事を知り実体験した者が他に2名もいる。

 その仇からあのような屈辱を受け、テリストであれば即座に殺す選択をしても可笑しく無かったと。そしてそれを糧に、これまで危険視していた帝国へ鉄槌を下すべき時がきたと考えた。


 その様な詳しい事情を知らないヴァルサル、バーニング近衛騎士団長、そしてライニング・ハーンスの3名も、入室した当初から困惑していた。ただただ涙を流しながらも感情を表に出さずデルフィアに抱きしめられている事にだ。

 ただ、流石年の甲と言うべきか、ヴァルサルはその様な状態のテリストに声をかけたのだった。


「並々ならぬことがあった事は想像に難く無いが、テリスト殿。大丈夫であるか」

「…………お、俺は、取り返しのつかない過ちを犯す処だった。それだけだ……」

「左様か。誰しも失敗する事はあるのじゃ。この事を胸に刻み同じ事を繰り返さねば良い」

「……」

「相当に重症である様じゃな。時が癒してくれよう、してサルーン。何用じゃ?」


 ジアラハルトとの契約も含めて現在の状況を詳しく説明したのだ。


「国として泥をかぶれと言って来る辺り、相当に舐め切った態度じゃな。

 テリスト殿の弁では無いが、時が来たという事じゃろうて、帝国を解放する時がな。幸いと言えばよいのか、守護龍3名もこうしていなさる。テリスト殿は自ら決着をつけに帝国へ赴けばよかろう。浅く無く因縁のある者が他に2名もいる事じゃしな」


 ヴァルサルの言葉で一気に戦争へと傾いた。戦力だけで見てもテリスト一人が乗り込めば終る話だ。当然前段階を踏む必要はあるが、少しの手間にすぎず、そこを考慮来る者は居ない。


「本来であれば婚儀の際に他国と協議の場を設けて調整するつもりでしたがこの際良いタイミングとも言えましょう。幸いではありませんが、北から2カ国の連合が攻めよせています。

 ジアラハルトに張り付いていた部隊の動きが掴めていませんが、急遽取って返し、撃退する為に移動中だと思われます。

 彼方が引き付けている間に叩ける絶好のチャンスです。中枢の帝都は手薄のはず。攻めるに易い時期でしょう。

 テリストが采配なさい、全て任せます」

「……」

『ヴァルサル殿。先ほどの言い回しだと、私が赴くのは駄目なのですか? これほどテリストを追い込んだ者に鉄槌を下せないなどありえません』

「いや、エレクティア殿。理解しておられるのか? 守護であって攻める為の戦力ではございませんぞ」

『よく言いました。ならば私の意をくみ取り、ヴァルサル殿が代わりに赴くのでしょうね?』

 ちょっと怒気を込めて言い放つのだった。


「なんですと?」

『で・す・か・ら。反対なさるのならば。私の代わりに赴くのでしょうね!』

 姿勢を前のめりにして、睨みつけながら告げた。


「いやいや。この年よりでは足を引きましょう。それとこれとは別でございますぞ」

『ほう、それほど反対なさいますか。分かりました。反対する者がいなくなれば赴けますね、でしょうヴァルサル殿。何処に埋葬される事をお望みですか?』


 うっ、とたちろぎ、とうとう折れるのだった。


「し、仕方ありませんな。赴かれる際には私は寝込んでおり、行方知れずとしておきましょうかな」

「人員の選定もテリストに任せる事になりますが。一応の手順として、今日のうちに宣戦布告、明日早朝に今日捉えた者の公開処刑を行い、内外へ宣戦布告した事をアピール致します」


 そこへ慌てた文官が口を挟む。


「サルーン陛下。あの、本当にあの者を処刑なさるのですか? 魔物ハンターギルドとの関係が危ぶまれる事態となりますが」


 ライニング・ハーンスの指摘も尤もだが。此方の主張をアピールする手としては最適な手ともいえる。その様な重要な地位にいる者を処刑すれば国内的にも国外的にも此方は引かず敵対しますと宣戦布告になるからだ。

 戦争は外交手段の一つであり、我を通す為の手段である。その為に、相手国へと宣戦布告した後に攻め込む必要がある。布告せずに攻め入った場合は対外的に不作法となり、叩かれる口実を与えかねないのだ。その為、大々的に行う事は自らに正当性があるとの主張ともなる。

 得てして帝国がジアラハルトにも宣戦布告はしているのだが。その理由が自己中心的であり、荒唐無稽である事から、逆に自らの首を絞めている結果に終わってる事を彼らは自覚すべきなのだ。

 その様な経緯もあり、周囲一帯から警戒されて、今まさに、弱点を晒している絶好の機会だからと攻められているのだから身から出た錆といえよう。

 当然見ているだけでも帝国は落ちると確信している。だが、それとこれとは話が別だ。他者の手を借り借りを返すのと、自らの手で借りを返すのではその意味あいが違い過ぎる。場が整ったのならば自ら鉄槌を下すべきなのだ。


「直ぐに無くなる国の事など気にせずとも良いのです。しかし、宣戦布告を疎かにすべきではありません。その為に彼は丁度良い手ごろな駒なのですよ」

「それでは、貴族の皆様への通達はどの様になさいますか?」

「皇家の者で全て片を付けますと公布なさい。それと、現在攻め込んでいるカリース連邦とバーナル王国への情報提供を怠ってはなりませんよ」

「はい。間違いなく伝えます。して、テリスト様は戦争における作法をご存知なのでしょうか?」

「テリストどうなの? 戦争の経験は無いのよね?」

「……」

「テリスト。惚けていないでしゃきっとなさい」


 聞くとはなしにぼーっとしていたら怒られてしまった。


「あ、ああ。すまない。その前にデルフィア、エレクティア、取り返しのつかない事態になっていたかもしれない。本当にごめんなさい。そしてアリサ、止めてくれて本当にありがとう」

『良いのだ。事情を聴いていたにもかかわらずその事を念頭に入れていなかった。此方こそすまない事をした』

「家族なんだから止めて当然よ。それに、テリは手加減していたでしょ。本当に手加減無しならあれを混ぜてるよね?」

『であろうな。時空の属性が混ざっていたら避けていた』

「さて。どうかな、あの時は頭に血が上っていて考える暇が無かった。先ほどの質問だけど。未経験だから何も知らないよ」


 常識以前の問題だ。そもそも戦争に関してのルールがあるとか聞いた事が無い。殲滅が目的なのだから聞かずとも良いと思うのではあるが。


「それではご説明させて頂きます。

 まず対人面をご説明します。基本的に相手が敗北を認めた場合には。その者を拘束し、本人が家元と交渉して身代金を支払う事で解放する事が通例となっております。本人が支払えない場合は、軍を擁立した者、今回は相手国の皇帝となります。

 敗北宣言している者をなで斬りにしますと、悪評価となり名が落ちます。テリスト様のお怒りはごもっともですが、なにとぞ賢明な判断を下されますよう申し上げます」


 一方的な虐殺行為の禁止か。悲鳴を上げている最中にやっていまえで良いのか。降伏する時間を与えなければ良いと解釈すれば良いな。それで対策は済む。


「移動中の部隊を叩く時は敗北宣言などしれられない状態に追い込むから大丈夫だ。そもそも悲鳴以外を発せるとは思えんけどな」

「さ、さようですか。身代金要求も不要そうですね。帝国そのものが落ちる事ですから支払う者がおりません。

 次は資産関連です。戦争とは相手国を奪う行為ですので、基本的に貴族以上の者から資産を奪っても何ら問題はありません。各都市に赴任している行政府の置かれた邸宅は制圧して物資を奪う事は当然良いのですが、商人が多くの資産を持っているからと其方を襲うのはお止めください。一般の方を襲うなどもってのほかです」


 貴族も基本的に殺し尽くす予定だからそれは良いが、一般を巻き込む気は毛頭ない。あの屑帝国の上層部を真っ新にして解放したいと考えていたからな。


「わかった。それと、俺は都市に在中する衛兵や騎士を殺す気は無いぞ。ただ、腕は確実に骨折させるけどな。そのまま放置する。

 皇族に関してはとっ捕まえた上で見せしめに全員を公開処刑する」


 俺が手を下して処刑せずとも市民が殺してくれるだろう。今までの憂さ晴らしの機会を与えたいものだな。


「移動中の部隊との差が凄いわね。テリ、何を考えているの?」

「善政を敷いているのなら市民が手厚い看護をして助けるだろう。だが、逆ならこれまでの恨みを叩きつけるだろうな。裁く権利を市民にも与えたいと思っただけだ。それ以上の事は無い」


 軍部の腐敗具合から貴族もどっこいどっこいだろうと予想できる事から生き延びる奴はいないだろ。よしんば生き残っても、全身至る所を骨折して廃人だろうからな、脅威は0になるはずだ。


「両腕を折り、武器を取り上げて放置するのね。分かったわ。それで、全員を連れて行くの?」

「うーん。戦闘組は参加としてもデルフィアとクラレスは残る方向で。非戦闘組からヤヨイに来てもらう。帝都までの案内を頼めるか?」

「そう、なりますよね……。ご案内致します」



 戦闘組:テリスト・ファーラル・アーレアル。アレサリア・ファーラル。カーラ・ファーラル。サーシャ・アーレアル。デルフィア・ヴァルグ。エレクティア・ヴァルグ。クイン。

 非戦闘組:ココリアーナ・ファーラル。スーシーファーラル。ヤヨイ。リカ・カンザキ。

 含まず:アウローラ



「あの、テリスト。私は良いの?」

「人死には見たくないだろ。俺も最初はそうだった。あまりの惨状に吐いたりしたからな。きちんと仇は取って来るさ」

 リカは来ない方が良いだろ、唯でさえ死にかけたんだ。その上で大量殺人の現場にいては錯乱する恐れがある。来たくなければ来ない方が良い。


「参加予定者の人に聞きたい。参加するか? 最悪でも俺一人行けば解決するから無理に来なくて良い」

「参加予定ではありませんが行かせてもらいますわよ。良いですわよね?」

「来るのは良いが、人死にが凄いぞ。本当に来るのか?」

「分かってますわよ」


 ココアなら獣王国脱出の際に経験があるから大丈夫か。彼方に着いたらする事が多い。手は多いに越した事は無いからそこは歓迎だ。


「それなら良いが……。デルフィアにお願いがあるんだよね。俺が行ってる間、アウローラを任せて良いかな? 流石に連れて行くのは不味すぎる」


 今から性格の構築にかなり影響を与える。そんな中で戦争と割り切ったとしても虐殺行為の真っただ中に連れて行きたくはない。帝都の城を確保すれば誰かを残しても構わないが、デルフィアを連れ出す訳には行かないからな。


『無論だ。その方が良いと判断する』

「メンバーはの選定は以上だな。一応彼方にも猶予をやるぞ。俺たちも戦い詰めで流石にきつい。明日は休む。と言っても六十二階層で何乳だっけ? 取って来てスイーツでも作ってのんびりするさ。他は全員休んでていいぞ。俺一人で十分だ」

「テリ、処刑には立ち会わないの?」

「奴が死ぬところを見ても胸くそ悪くなるだけだ。と言いたい所だが立ち会わないとの選択は取れないだろ。一応は参加するさ」

「以外ね。盛大にぶちかますと思ったわ」

「もう、そんな元気は無い」

「重症ですわね」


 それでも処刑しろとのお達しがあれば力を振るう事も吝かではない。ま、帝国へ行けば相手を切り刻めることだし、ここで一人程度殺さずとも憂さ晴らし相手に困る事はない。


「それではサルーン陛下。今日の時点で宣戦布告する事を魔物ハンターギルドへ通達なさいますか?」

「そうですね。捕らえた事は伝えましたが、突然の処刑より伝えておく方が望ましいでしょう」

「はい、では伝えておきます」

「決まったのなら儂は戻るからの。テリスト殿、元気を出すのじゃぞ」

「明日になったら切り替えますよ」

『テリスト。明日など悠長な事を言わずに今切り替えれば良いのよ。それに時間はまだあるでしょ。明日と言わずに今から行きますよ』

「え?」


 デルフィアも娘の一言でテリストから離れ。俺はお姫様抱っこされて連れて行かれたのだった。オウカ宅へ。



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