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58:処理

 現在、魔物ハンターギルドへと向かうべくスーシーと腕を絡めて歩いて向かっている。獣王国王都は温暖な気候で雪とは無縁だったとの事だ。踏み固められた雪は、そうれはもうよく滑る。初心者には歩きずらい、普通に蹴り出して歩くと危険なのだ。

 そう言う俺もそれほど雪道に慣れている訳では無いが、スーシーよりはマシなので支えて歩いている。そして頭にはアウローラが抱きついている。昨夜、皇都に置いて行ったものだから寂しがっていたとの事で、今日は連れて来ている。


 寒いのは防具で粗方対策で来ているが、雪は白い。太陽光を反射するので相当に目に悪そうだ。目を細めて歩き、魔物ハンターギルドへと到着した。

 相も変わらず謎設計だな。入り口から右手には食堂、左手には通常業務の受付と仕事の斡旋用ボードが設置してある。埃とか気にしないのだろうな。

 朝食の時間としてはやや遅めだが混雑している。魔物のドロップ品を直接買い取る為に、食材が安く提供され、中間マージンを取られないが為に食事が安いのだ。テーブルはすべて埋まり、中には朝から酒を飲んでいる者も珍しくは無い。何とか開いていたカウンター席を確保して注文するのだった。

 この時期になれば根野菜が中心で葉物は無い。ビニールハウスなど無いのだ。そうなれば料理法は限られる。汁物中心としてパンだけだ。シチューとスープに若干黒いパンが朝食だった。

 食後直ぐに受付カウンターへと行く。名前を告げると直ぐにギルドマスターの部屋へと案内された。


「元気で居るかマスター殿」

「これはテリスト様。伝令を何度かお送りしたのですが、ようやく連絡が取れましたか」

「すまんな、皇国と帝国を往復してたんだ。刑の執行が必要とか?」

「正確ではありません。ご要望とあれば刑の執行はさせて頂きますが、罪状に応じて裁いて頂きたいのです」


 そもそも戦時下故全員処刑しろと通達してたんだがな、聞いてなかったか? 知っておきながら罪を背負う行為を行った。これは発見された場合は処刑されても構わんと判断した。そう思うがな。


「そもそもだ。全員処刑しろと通達してたがな。聞いてなかったか?」

「聞いてはおりますが……。余りに罪の軽い者まで処刑なさっては皇国の恥となります」

「そこに配慮して捕らえておきました。そう言う事か」

「左様です」


 面倒ではあるが、此方への配慮では言い返す訳には行かないな。処刑される覚悟ありだと断定して処刑しレくれれば、手間が省けたのになぁ。


「ふむ。確実に何をしたのか、切っ掛けまで明確になってる者だけを処理しようか。確認が取れてないのは後程って事で、裏を取る為に仕事として発注してくれ。罪が明確になった時点で改めて執行する。担当者を寄越してくれないか」

「お聞きしたな。担当の者へ引き継ぎ、ご案内して差し上げろ」


 地下は3つの区画で成り立っている。訓練場と倉庫は共有の階段を使うが、牢は別の階段を使う。地下へ落りた直後に受付があり、その直ぐ奥にダマスカス製格子で塞いである。そこを抜ければ一部屋6畳程度の小部屋が並んだ構造だ。

 環境が悪すぎる。これが感想だ。地下で大勢を詰め込んでいる事から換気が足りないのだろう。魔石に風属性の加工を施して専用設備にはめ込めば換気が出来るのだがケチっているのだろう。

 牢前まで案内され、紙の束を持ったものが俺の傍に1名、そして1人ずつ罪人を連れ出す者が2名、刑の執行者が5名で裁きを開始するのだった。


「この者は食い逃げです。ハンターだったのですが冬季に使う資金を溜めておらず、至る所の食堂、宿屋などで繰り返したそうです。本人も罪を認めております」

「なんじゃそりゃ。しょうも無い事で捕まるなよ。此処にはダンジョンがあっただろ。そこで稼ぐとかしなかったのか。アホだろ」


 俺は参加していないが、初級用のダンジョンに入ったと、同日連れ去られた3人から聞き及んでいる。単価は低くなるだろうが、数を倒せば問題無く稼げる。良い訳にもなっていない理由を聞かされても滑稽なだけである。


「……」

「去年の11月位からずっとそんな暮らししてたのか?」

「どうやらその様です」

「1日銀貨1枚換算で3ヶ月分として金貨9枚程度かそれ以上の踏み倒しか。ギルドで帝都の巡回業務に強制参加させろ。その代金から税収とは別に3割差し引け。罰金額は金貨20枚。次だ」

「あ、あの。テリスト様。その様な軽い罰で宜しいのですか?」

「今は騎士連中が居ないからな。休日無しで働く奴は貴重だ。完済するまで強制しろ。お金を踏み倒しした奴は同じ刑にしておけ。罰金額は被害額の倍に設定だ。被害者が特定できてるならそちらへ罰金から支払え。

 それと、返済途中に逃げたり不祥事を起こしたら城まで報告に来い。その際は問答無用で斬り捨てる」

「で、では。金銭的な犯罪の者は同じ刑として処理させて頂きます。おい、次は窃盗の常習女を連れて来い」


 連れて来られたのはなかなかの美人さんだな。窃盗なら金銭で片が付くと思う。何か違うのだろうか?


「この者は結婚を謳い、相手に信用させ高額な品を勝手に売りさばき私腹を肥やしていたのです。被害額は計り知れません」


 結婚詐欺? とは違うな。相手に貢がせるわけでは無く。婚約者として相手男性に近寄り、相手の所有品を勝手に売りさばいてたのか。


「婚約していたのだから私の資産よ! 後になって難癖付けて来ただけじゃ無いの!」

「この通り開き直っております」


 反省の欠片も無い訳ね。大方、ハンターから装備を盗もうとした所で捕まったんだろ。前衛でも、魔物を発見する斥候担当者は気配探知所有が絶対条件でもある。

 唐突に宿屋から逃げる素振りを見せれば不振に思うものだ。起きてみれば装備が無い、となる訳だ。


「それって婚約者に成ったりして相手の家庭に潜り込むって手法か?」

「左様です。もしくは、相手がハンターであった場合には。夜を共にし、装備品等を奪い去っていたようです」

「被害件数は?」

「確認出来たのは5件です」


 装備品はかなり値が張る。それが高ランクの者なら跳ね上がる。普通に仕事をしてたのでは一生かかっても返済は不可能だろう。ついでに、その付けを支払わせてやる。男心を弄んだ償いをしてもらおうか。


「ふーん。そうかそうか。帝都に娼館ってあるか? 性的なサービスを行う所だが」

「治安の悪い区画にでしたら御座いますが……」

「男の心を弄んだ上に資産奪うとか最悪だな。そこへ永久就職させろ。衣食住の代金が如何ほど掛るか分からんが、代金の9割程度を被害者救済に当てろ」

「ふざけないで! 私はそんな事はしない!」

「お前は黙ってろ。今この場で死にたいなら喋って良いぞ。罪が些細な事であろうと処刑すると宣言を出している現状下で行った事だ。平等にお前を処刑して、俺がポケットマネーから被害者救済にと少々お金を出せば済む事だからな」

「……」


 そうだろうな。お金に執着するなら、なお執着するのがあるだろう。それが自身の命だ。欲深ければ尚更だろうな。


「あまり賛同したくは御座いませんが、ハンターの中には通っている者が居るとか。後程接触し、話してみましょう」


 順番に連れて来られるが。同時に捕まえられた者は同じ裁きになる。複数人同時に裁くと言う事だ。と言うのも暴力沙汰に発展した件だ。酒をのみ、愚痴の言い合いから殴り合いに発展し、仲裁に入った者が殴られ、その者まで参加するなど数えたらきりが無かった。

 挑発した者は刑を重くし、挑発された者を軽くし、愚痴の言い合いでは同等とし、仲裁した者を無罪放免とした。

 重罪は既に処刑したとの事で、刑の軽そうな者との説明を受けた通りだった、1名は怪しいが……。

 以降は、政権樹立まで同等に裁く事を許可し、全て丸投げして帰還するのだった。

 スーシーは連れて来ない方が良かったかも……。後の祭りである。




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