22:退場
夜も開けぬ早朝に動きがあった。例の団長が寝泊りする部屋だ。フル装備の騎士20名が突入し拘束する為に踏み込んだのだった。
殺気立つ気配から俺は飛び起き、両隣に寝るアリサとエレクティアを叩き起こして身なりを整えさせるのだった。
「まったくおちおち寝ていられないのね。それで、例の団長さんの様ね」
「だな、踏み込んだ数からして拘束するんだろ。けっこう動きが早かったな」
アリサも個体識別可能な力量を得た様だ。前なら何故起こすのよと咎められるところだが。これまでの経験が生かされているようで何よりである。
『この場合の対応はどちらだと思うの?』
「処刑だろうな。金銭的にかたをつけるなら本人の謝罪込みで具体的な金額を提示するはずだ。強硬策に出るって事は逃げられたら不味いって事だよ。処刑するとか聞かされたら逃げ出すだろうしな。その前に取り押さえて処刑だろ。罪人として国元へ送られるか。この場で処刑するかは微妙な所だがな」
「助けるとか言わないわよね? テリ」
「しないよ。そもそも内政干渉するつもりは無い。あちらの国にとっては死罪に値するから軍部も同調して動いてるんだ。それも合同で動いてる連合軍の中でだぞ。2国のトップが処刑すると判断を下してるんだ。俺の出る幕じゃない」
「それもそうね。それに絶対に逃げられない布陣ね。空中戦でも戦闘可能な様に配置してるし。個人で強いと言っても流石に1000人以上は相手に出来ないでしょうし」
地上はいうに及ばず、空中戦も可能な様にか、既に【フライ】を発動した者が領主館の周囲を取り囲んで居る。
「逃げ切れたとしても俺たちの時とは状況が違うからな。少々の負傷者が出ようと捕まえるまで永久に追うだろ」
そんな話もつかの間、例の副団長らしき男性が入室を求めて来たのだった。
((コンコンコン) テリスト殿方起きておいででしょうか?)
「起きている。入って来られて大丈夫だ」
(では、失礼いたします。(ガチャ))
「夜が明けぬ前から騒がしくして申し訳ありません。遠征の団長を務めるクロサスは貴殿に対し不用意な言動を繰り返した事で国家間へ亀裂をもたらしました。国家反逆罪で処刑と決まりましたことを報告いたします。
重ねて謝罪を申し上げます。本来であれば国王自ら謝罪申し上げるべきですが。この場に居ない為私が代弁させて頂きます。
合わせまして、販売して頂く物資を2割増しで販売して頂く事が決定いたしました。どうか謝罪を受け入れては頂けないでしょうか?」
そう来たか。処刑と割増料金での買取でリセットしたいと。だが、俺の判断は答えられません、だな。
「その返答が出来ない事はご存知ではないですか?」
「やはり、既に国家間の問題となっているとお考えなのですね」
「俺がただの一般人なら今の対応で十分穏便に済む問題だ。なにせ他国の国王陛下が謝罪すると言っておられるのだからな。
ただ、相手が悪かったな。このまま矛を収めてはサルーン陛下の醜聞に関わる。最低でもサルーン陛下にお伝えし、どう対処するのか判断を聞かなければ一切返答が出来ない。受けるにせよ蹴るにせよな」
「了解しました。国元へもその様にお答えになられたとお伝えいたします」
「それがよろしいでしょう」
「あの。物資に関しての返答は……」
この人も大変だな。突然出費が増えたら死活問題だろうに。ちょっと便宜を図るかね。恩を売るのも後の為だ。
「減らす気も無ければ割高で買い取ってもらわずとも大丈夫だぞ。最初の取り決めを反故にするほど狭量じゃないからな。そもそも命に関わる事だ、他の騎士には落ち度は無い。そちらにとばっちりを与える訳にはいかないだろ」
「いえいえ。両陛下がお決めになった事です2割増しで結構です」
「これから町をいくつも落とさなきゃならんのよ、そんな余裕あるのか?」
「そこを聞かれると正直答えにくいのですが……」
現地には割増で買うように指示はしているが。補完するための資金を贈るとは伝えてないのか、それだと不安に思うよな。
「ならば聞くが。買取予定量を伝えてるんだよな。それで大体の金額も伝えてる。どうだ?」
「確かにその通りですが。そこから計算され、軍事費も割り増しになるとは思います」
「思いますって、それじゃ死活問題だろ。なら料金を2割増しで受け取ろうか。その分量を1割増しで降ろす。適当に量を誤魔化して決済しとけ。俺もそれに捺印してやるから後は適当に誤魔化せよ」
「はっははっ。よ。宜しいのでしょうか」
「俺にとっても帝国とは因縁があるのでね。占領を失敗してもらったら困るんだよ、便宜を図ってやるから確実に落とせ」
「感謝いたします。テリスト殿」
「アリサ、エレクティア、此処から先は誰にも言うなサルーンにもだぞ。ま、ばれるだろうけどどうでも良い」
「何を企んでるのよテリ。内容次第よ、言ってごらんなさい」
「帝都から東西へ進みそこから南側は俺たちで制圧する。行軍速度から俺たちの方がかなり早く決着がつく。そこでだ。
俺たちは北側には一切手出しはしない。じっくり構えて確実に落とせ。そちらの国の事情は聞いてるからな。ある程度確保しなきゃ国民に顔向けできないだろ。
俺の地位は副団長だが、実働部隊の実権は俺が握ってる。例え貴族連中が出張って来て、北側も攻めろと言って来ても抑えるから安心しろ。慌てて全滅するのだけは避けろよ」
「ご配慮感謝いたします。テリスト様」
おいおい、とうとう様になっちゃったよ。
「この事は其方のトップに伝えてもらって結構だ。ただ、こっちの貴族には流すなよ、俺の立場が悪くなるんでな」
「テリ。それって元々決めてた事じゃないの、今更でしょ」
ぶっ! ばらしちゃったよ! 折角いい話で終わる寸前なのに台無しじゃんか!
「馬鹿! こう伝えるからありがたみが有るんだぞ。ばらしてどうするのよ!」
「こ、これは参りましたな。テリスト様も役者ですな」
「はいはい。もう良いから、ばれちゃったんでどうでも良いや。これから二度寝するには完全に起きちゃったし寝れそうにないよね。食事にしてさっさと搬入しようか」
良い話が台無しである。アリサの一言のせいで。
食事が済めば、捕らえられた団長のお見送りである。単に鉄格子付きの護送車に入れられているのを見送るだけだが。お兄さん助けてと叫んでいたが無視である。馬鹿やらかした責任は自分で負う他ないのだ。
誰も助けはしない。そんな事をしようものならそれこそ国家に反逆する行為なのだから。
見送りが済めばやっと物資の搬入、決済だ。
そしてグリフォンにエレクティアが乗り。普通は逆だろと言いたいが。のんびり飛ぶ事でほぼ日中の時間を使い果たし、夕刻にやっと帝都に帰還を果たすのだった。




