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17:実行

 既にこの時間は完全に日が落ちて、月と星の淡く光る光源だけが頼りでは無い。【ライトボール】を光源としてあっちへフラフラこっちへフラフラと、酒場から漏れる光を目指して移動しているからだ。

 そして6軒目の、帝都中央部から結構奥まった位置にある酒場へとたどり着き、そこへお邪魔する事にしたのだった。

 開いていたカウンター席2脚に陣取り、受付カウンターで切り盛りするおっさんに注文するのだ。


「一番高い酒と軽く摘まめるのを二人分頼むわ」

「銀貨3枚と銅貨6枚だ」


 俺が懐に手を突っ込み、収納から巾着を取り出そうとすると。後ろのテーブルに座る客が出張って来るのだった。


「いや、そいつらにも奢ってやれ。ただしお前の負担でな。帝都を占領した皇国軍に属する俺の頼みなんだから聞くよな?」

「わ、わかった」


 周囲の客へ迷惑を顧みずに好き放題に振舞っているようだと感じたからこそ入店したのだ。ある意味トラブルの真っただ中へ入り込む行為だが、これが確認できればいい。調子こいて粋がった挙句に俺から処刑される事だろう。

 その為にも、今発言した奴のお仲間を特定しなきゃな。


「それでだあんちゃん。連れの彼女を貸してくれよ。良いよな? 断れば命は無いぞ」

「ちょっと待ってくれ、本人に確認を取るわ。なぁアリサ、皇国は騎士を連れて来てたかね?」

「そんな訳ないでしょ。そもそも来てる中で男は1人よ。後は女性と子猫だけじゃないの」

 流石アリサ。うまい具合に濁してくれたか。嫁だのクインだの直接言ったら怪しまれるからな。

「だよな。で、おたくは誰よ?」

「何言ってやがる。皇帝を取り押さえたギャロン様とは俺の事だ。つまらん事言ってると命は無いぞ!」


 俺に怒鳴り散らすとか命が惜しくない奴は度胸があって良いねぇ。ぜひそのまま突っ走ってもらう為にもすこーし持ち上げてみるか。


「ふむ。それではギャロン様。皇国に属する守護龍が警告なさってましたよね。犯罪は全て処刑で対応すると。もしかして。逆らったりした日には、俺って処刑ですか?」

「良く分かってるじゃねえか。俺様が法律よ。逆らうんじゃねえ」


 犯罪行為をすれば処刑するとは伝えたが。皇国の兵士の言葉が法律とは一言も添えてないのだがね。馬鹿を極めてるなぁ。


「えーと、もう一つ。ギャロン様お一人って訳では無いですよね? 同じ騎士様は何方でしょ?」

「俺たちがそうだぞ坊主」


 と、あちこちから手が上がり総勢12名のようだ。これでお仲間の特定が出来たから遠慮は不要だな。ちと狭いが国旗を取り出して尋ねるのだった。


「俺の名前って、テリスト・ファーラル・アーレアルって言うんだけどさ。皇国の女帝と婚約中なんだよね。ついでに言うとさ、今回帝都を占領した副団長なんだけど。おたくの顔は見た事無いんだよ。どこに所属してるって?」

「けっ。どうせおおかた偽物の国旗だろうよ。こいつを表に連れて行き殺せ!」


 馬鹿だ……。不用意に捕まえる為近寄って来る。俺は旗をしまい込み寄って来る、内2名の首を正面から鷲掴みにして生活魔法の火種を発動する。


「「ぎゃぁあああ!」」


 ジューと焼けこげる匂いと音が木霊する。それも僅かな時間だけだ。首の動脈をも焼けば血が通わなくなりあっけなく死ぬ。少々痙攣するが、それ以降は言葉は発せない。


「身分詐称と脅迫による営業妨害、並びに殺害未遂。ついでに器物破損で処刑決定だな【ディメンションカッター】」


 無詠唱と同時詠唱による斬り刻みだ。側に寄ってくれていたので飛距離の調整も容易だった。遺体はさっさと回収して【クリーン】による清掃を行い。馬鹿やらかしていた連中を奇麗にすることが出来た。

 客は一瞬だろうが遺体を見た。これ以降飲み食いできるかは心持ち次第だろうか。流石にインパクトがあるものな。


「すまないな御主人。今いる人には俺が奢るわ、金貨20枚も有れば足りるかね?」


 と10枚の山を2つ積み上げて渡すのだった。


「え、ええ。助かりました。お金も十分です」

「またこんな事があったら城まで人を寄越してくれ。殺しに来るから」

「わ、わかりました。エールと塩ゆでした品になります」


 ゆでられた豆を食べてみるが。塩ゆでしたソラマメに似てるな。癖が無い分此方の方が美味しいと感じる。エールを飲んでみると温い、温すぎる。生ぬるいビールだろうなこれだと。

 外は寒いのだから外に置いておけば冷たくなるだろうに、地下にでも置いてたのか?

 鞘付きのミスリル短剣を取り出して【エターナルエンチャント/氷抵抗Lv2】を鞘に。【エターナルエンチャント/アイスブレードLv1】を刃に付与する。

 短剣をエールに突っ込み冷やして飲むとそれらしくなるのだった。


「うむ。冷えてた方が飲みやすいな。飲んでみるか?」


 試し飲みすると俺から短剣を受け取り。同じく冷やして飲むのだった。


「アリサとも出会って早2年目か。けっこうやらかして来たが何とか生きてるし。実に濃密な日々だったな」

「そうね。常識知らずでとっぴょうしも無い事を色々して来たけど、何度も命を落としそうになりながらもこうして生きているのはテリのおかげね」

「俺だけの功績って訳でも無いだろ。いやぁ、あの時の俺を褒めてやりたいね。最高の女性を捕まえたな、ってね」

「褒めても何も出ないわよ」

「出なくて良いさ。側に居てくれるだけで十分だ」

「さっさと食べて次に行くわよ」

 照れ隠しなのか、顔を背けてつっけんどうに答えるも、その横顔は赤らんでいた。


 数件見て回るも、オーダーストップだと言われて入る事叶わず。あれほどの馬鹿連中とも会わぬまま城へと戻り。アリサと抱き合って寝るのだった。

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