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2016 1/29
文章修正しました。
茶色く色付いた茂みの奥に立つ人影に信じられない思いで駆け寄ると、煌びやかな装飾を薄緑の上着に飾った少年が目を細めて笑う。
「嘘、なんでいるの!」
手紙じゃなく本人が来るなんて、相変わらずな奴だなぁ。
今まで何度も会っていたが、こんなに彼を見て嬉しい気持ちになったのは初めてだ。どうしてこんなにも胸が躍っているのだろう。
ジェノが名前を呼びながら笑顔で目の前に立つと、少し驚いた様子で少年は「ジェノ君、久しぶり!」と手を握った。
実際には全く久しくなかったが、ジェノも「うん、久々だな」と答える。
おそらく屋敷にいたなら「この間会ったばっかりだろ」と一刀両断していた事だろう。
だが『合宿』という未知の舞台は思っていたよりも少女を精神的に疲弊させていた。よく見知った人物に会ったことで、蓄積されていた不安が軽くなった様に感じる。
「勉強ばっかりで疲れてないかい? 少し痩せたね、ちゃんとご飯食べれてる?」
「別に体重も変わってないしご飯はうまいよ。それよりお前」
「ジェノ君にどうしても会いたくて抜けてきたんだ。ああ、ちゃんと王の許可を貰っているから心配いらないよ。手紙ではなく直接顔を見たくてね・・・でもこんなにすぐ会えるとは思わなかった。やはり運命だ」
運命かどうかは知らんが確かに驚いた。
普段なら部屋でくつろいでいる時間帯で、この場所で望んだ相手に会える確率はかなり低い。そう考えるとカルシェンツのよく解らない『運命論』も馬鹿に出来ないかもしれない。
しかし、それよりも気になるのは――
「カルシェンツの方はどうなんだ?」
「順調だよ。団体行動はどんな感じ? 私よりも仲良い子なんて出来たりしてないよね? ほら、ジェノ君は魅力的だから甘い汁に誘われるように蛾共が群がって来てしまうだろうけど、隙をつくってはいけないよ。全てを灰に帰すんだ!」
「何言ってんだアホ。お前みたいに憧れられる要素を僕は持ってないよ。てかそんな事より、具合悪いとかもないのか?」
「何も問題ないよ、私の事を心配してくれるなんて嬉しいな」
綺麗な笑顔を浮かべる少年。
自分の事はいいと塾の話をせがむカルシェンツを静かに見つめて、ジェノは眉を顰めた。
こいつ・・・
盛大に溜息をついたジェノは無言のままカルシェンツの手首を掴み、有無を言わさずに歩き出した。
急な行動に眼を瞬かせさせながらも抵抗せずに付いて来る美少年は、ニコニコと笑いながら「あぁ・・・ジェノ君の匂いはやっぱ落ち着く。一日一回は嗅がないとやる気出ないんだ。今度ジェノ君の匂いの詰まった香水を開発しようと思うんだが、どうだろうか」となんとも気持ちの悪い言葉を紡いだ。
うわぁ何でこういう事平然と言うのかなー、引くわ。こういった一面を知ったら皆ファン辞めるかな。それとも「気持ち悪くても素敵」ってなるものなのか? いや、これは末代まで隠した方がいいだろう。
国の英雄が実は『残念な変態気質』とか・・・バレない様にちゃんと彼を教育しよう、うん。
思ったより斜面になっている原っぱに腰かけ、ぐんと伸びをして一息つく。
裏庭にこんな広いエリアがあるなんて普通に良いよな此処。どうしてリゾート計画中断したんだろうか、もう一度再開発すればいいのに。
「あ、あのー」
「気持ちいいな。風強いけど月が綺麗」
右手を動かすと腿の上がビクンっと跳ね、くすぐったい衝動がジェノを襲う。「やめろよ」と声を掛けると、それに反論するようにモゾモゾと動く頭が此方を向いた。
金色の柔らかい髪を上から押さえつけ、抗議の声をシカトし続ける。
「あと30分で点呼来て消灯時間なんだ、お前も城戻るんだろ? それまで大人しく此処に居ろ」
「いるっ、いるけどちょっと待って! こ、これ何!? ・・・うわっ」
ずり落ちた肩を支えてやりながら「暴れるからだ」とオデコを撫でると、「ヒギュウッ」と聞いたことのない悲鳴が聞こえた。
「お前膝枕やった事ないのか?」
「ひっ膝まきゅらっ・・・うぐぅ! だからなんで、うわっ斜面きつい!」
確かに緩やかとは言えないこの斜度は、横向きに寝転がるには向かない様だ。てか今こいつ噛んだな。
「いいから大人しく休め。何なら子守唄歌ってやろうか?」
「そんな事されたら心臓爆発して永遠の眠りについちゃうよ!? ちょっ、斜面キツイです。ヤバイヤバイ色々ヤバイ!」
何故急に敬語なんだ。
あまりの煩さに仕方なく開放し、体勢を立て直しながら肩で息をするカルシェンツに「もっと腹筋を鍛えろ」と告げた。強引に肩を組んで間近で顔を覗きこむと、「うひゃやあああぁあ!?」と奇妙な悲鳴を上げ飛び退かれる。
「ちょっ、変な声出すな! びっくりするだろうがっ」
「ジェノ君こそさっきなら何なの!? 近いよっ、近すぎる! オデコと鼻がぶつかったよ今!」
・・・はあ?
数M離れた場所で胸を押さえて息を荒げているカルシェンツをマジマジと眺め、ジェノは本気で首を傾げた。
近い? 何を言っているんだ? それにこの反応は一体なんだ。
「お前いつもこれくらいの距離だろう。急に抱き付いたりするじゃないか。どうした?」
「私は良いんだよっ、でもジェノ君にされたら死ぬ!」
――はあっ!?
何度もオデコを擦りながら寒空の下で大量の汗を搔いているカルシェンツは、「ひざ・・・ひ、膝枕っ」と呟きながら茹でダコの様な顔で悶絶しだした。納得がいかず立ち上がると、それを察知したカルシェンツに更に距離をとられる。
「おい死ぬってなんだ死ぬって、失礼だろ。普段ウザイ位近寄って来るのそっちじゃないか」
「いつもは覚悟決めて計画的に抱き付いてるんだ。不意打ちでジェノ君に近づかれたら無理に決まっている! 膝枕だなんて・・・膝枕だなんてっ、私を殺す気なのかい君は!?」
「はぁ? けいかくてき――・・・はあ!? おいふっざけんなっ、なんなんだお前!」
あまりのセリフに大声を張り上げると「ジェノ君こそどうしたんだい!?」と血走った目で聞き返され、ジェノは言葉に詰まり頬を搔いた。
カルシェンツの驚き方は異常だが、確かにジェノからこんな風に彼に触れようとしたことは一度もなく、その疑問は至極当然だ。
原っぱに着いて早々に無理矢理『膝枕』という暴挙に出たのは、単純にカルシェンツを寝かせようと思いついたからで、「ジェノ君といると癒される」と前に言っていたのを思い出し試しに触れてみた。
しかし何故か逆効果の様だ。計画的ってなんなんだよ。
「疲れているんだろ、いいからこっちに来い」
「疲れてなんかないよ? 心臓止まるからそっちには行かない」
「カルシェンツく―ん・・・僕が優しくしてる内に隣座ろうねぇ」
見せたことのない満面の笑みで手招きすると「何で怒ってるの!?」とカルシェンツは青白い顔で数歩さがる。
怒る? いや違う、怒ってなどいない。
僕は・・・
僕はただ――
ただ、悔しいだけだ。
喉の奥が重く、詰まった様に息苦しい。
「なにが順調だ、なにが問題ないだ。――なにが、疲れてないだっ」
小さく落とした言葉に戸惑う呼吸音が聞こえ、抑えようもない衝動がジェノの内側を駆け巡る。
会った瞬間から気付いていた。あんなあまりにも不自然なものを見逃すほど僕達は他人ではないし、一緒に過ごした時間は少なくないはずだ。
「何で無理して笑うんだよ、どうして何も話さない。僕じゃ力になれないからか? 政治の事がわからないからか? だったら何も言わなくてもいいよ、傍に居るだけでいいんだ」
「・・・ジェノ君」
「笑うなっ・・・辛いのに、疲れているのに、無理して笑うなよ!」
向けられた笑顔が気丈に作られたものだと即座に気付いた時は、単に心配だった。ジェノの想像よりも大変な環境に置かれているのだと思ったし、そこから僕に会いに来たということは少しでも僕と居ることが彼の気を休める事になるのだと。
しかし、笑ってごまかし続ける姿を見るにつれ、だんだん胸に重い物が蓄積されていく。
僕といる時が一番、疲れるのではないのか。
笑う気力ももう無いんだろう?
他人に対しては嫌な顔や面倒そうな態度を隠さず表すカルシェンツは、ジェノの前では『笑顔』が大半を占めている。もちろんそれが本心で笑っている事は理解している。
が、どんなに辛い状況でも弱みを見せず笑うのならば、僕は・・・あまりにも無力だ。
癒すどころか追い打ちになっているのでは?
「わかってるよ。今だって一緒にいて嬉しいとか楽しいとかお前がちゃんと思ってることは・・・でも、それでも笑えない日ってあるだろ? 気持ちは動いても、表情が固まって動かない時が」
「――っ!」
カルシェンツの顔が強張ったのを見てとり、ジェノは遠い日の自分を想う。
惜しみなく与えられる優しさと愛情に対し、胸にある膨大な感謝の気持ちを返そうとした幼い少女。貴方のおかげで生きていられる、僕を見つけてくれてありがとう。
伝えたい言葉は音にならず、持ち上げたい頬は人形の様に動かない。
思いとは裏腹に行動に示せない事に、少女は焦った。
もうママはいない。この人に見捨てられたら終わりだ。早くお礼を言わなきゃ。嫌われたくない、捨てられたくない、拒絶されたくないっ。
ちゃんと笑顔で――
『笑わなくたっていいんだよ』
ゆっくりとほっぺたを突く感触に顔を上げると、そこには痛みを堪えた様な男の顔があり、何度もそう繰り返された。
『必ずしも心と身体は一体じゃないんだ。楽しくても笑えない日や、悲しくないのに涙が出る日もある。だから、無理をしなくていいんだよ。自然と一つになるまで、自分を休めてあげよう。心を勞ってあげよう』
でも・・・でもっ
『心配いらないさ。ちゃんと楽しそうに笑っているのがわかるよ。いっぱいいっぱい僕に気持ちを伝えようとしていることもね。不思議だろう? 人はね、本当にその人を大事に思っていると、感じるものなんだ。たとえ見えなくても・・・聞こえなくとも』
この時の熱い掌の感触は、今でも鮮明に思い出せる。
ああ、この人は僕のことを本気で想ってくれているんだ。そう初めて感じられた瞬間だったから。
『いつかジェノにも出来るといいね、気づいてあげられる大事な人が』
この日、母親の訃報を聞いても涙を流すことのなかった少女は、はじめて泣きじゃくった。
泣いた少女を見守りながら、男はほっとしたように笑っていた。
『これでもう大丈夫だ』って。
今なら、その意味がわかるよ。
親の死を理解しながらも泣けなかった少女は、周囲から見てあまりにも痛々しかっただろう。
昔の僕は多くの人に支えられ、歩き出すことが出来た。
でも、彼にはそういう人がちゃんといるのだろうか?
普通の人が持っていないモノをすべて持ち、通常歩めない輝く道に立つ彼は・・・普通得るはずの『大事なモノ』を与えられなかったのではないか。
ベリオンさんのように心を許せる相手が他にいないとすると、あまりにも王族という地位と彼に向けられる膨大な羨望や欲望は重すぎるはずだ。
カルシェンツはまだ、11歳の子供なんだぞ。
どんなに優れていたとしても、潰れてしまう。
「王子とか関係なくお前自身を見るって言ったけど、そのせいで遠慮して踏み込めないのは嫌なんだ」
もう一度腰を下ろし、呆然と立ちすくむカルシェンツに隣に座るよう地面をポンポンと叩く。ふらっと静かに近付いてきたカルシェンツに囁き声で告げた。
「僕に隠したい事や見せたくない部分があるのかもしれないし、カルシェンツの『王子』や『天才』といった知らなかった部分を知って、僕の態度が変わるんじゃないかと不安に思うかもしれない・・・でも、目を逸らし続けていたそこもカルシェンツの一部に違いないから、教えてほしいんだ」
今じゃなくてもいいけど、とバツが悪くなりジェノは下を向いた。
今更こんな話ってないよな、普通に困惑するだろう。徐々に生まれていく心の変化にジェノ自身戸惑いながら、このまま臭い所に蓋をする関係は止めたいと、湧き上がる感情を制御出来ない。
めちゃくちゃなことを言っているとわかっているが、見て見ぬふりはしたくない。上手く言葉に出来ないことがもどかしく、ジェノは唇を噛み締めた。
どうしたら伝えられる?
ただ、君が心配だと・・・ひとりにしたくないと。
「友達のために、出来ることをしたいんだ!」
木の葉が風に舞い、青く輝く月に吸い込まれるように溶けた瞬間、閃光が瞬いた。
まるで流れ星が地上に落ちたかのように見えたのは幻だろうか?夜を照らす星々の様に淡く発光しているのは、目の前で俯く美しい少年。
手を伸ばせば届く距離に突如現れた光に、ジェノは目が眩んだ。
――カルシェンツがっ、銀色に光ってる!?
あまりの出来事に動揺しあたふたしていると、微かに人の形をした光から笑い声が聞こえてきた。
「ふふ・・・いやっ、ごめんごめん。心臓止まるようなこと言うから・・・くくっ、凄いなジェノ君は、私の想像を遥かに超える事を言ってくれるっ、本当に凄い! はははっ」
「え? あーとぉ・・・カルシェンツ?」
「あはははははははっ!」
ちょっ、何!? 何が起こったの? どうしたというんだ!
銀色の光に包まれながら爆笑し始めたカルシェンツに目を白黒させ、ジェノは驚愕する。
――笑ってる、本気で。
なんで!?
笑い過ぎて苦しそうに目に涙を浮かべ始めた少年は、寝転がってバシバシッと地面を叩きながら指を鳴らした。すると光が身体に吸い込まれ消えていく。
「知らなかった・・・お前、魔法使えたんだ」
「私も知らなかった! 嬉しさが最高潮に達すると爆笑するなんて! くっはははは、ダメだ・・・苦しいっ」
「何言ってるんだ? 今のって魔法だよな、めっちゃ光ってたぞ」
「ふはははっ、あぁー光属性で、くくっ興奮したからっ発動し・・・あははは!」
「いい加減笑い止め!」
なかなか笑いが収まらないないカルシェンツをジェノは不思議そうに眺め、つられ笑いが起こりそうになった。
こんな姿初めて見るな。常にテンションは高いが、馬鹿笑いをする光景など今迄見たことがなかった。
今のカルシェンツは年相応の子供のようだ。
「ふう・・・ごめんね。自分でも驚いた。知らなかった一面を知ることが出来たな。さすがジェノ君」
「ちゃんと説明しろ」
身を乗り出して促すと、カルシェンツは眩しいものを見るように目を細めて溜め息をついた。
その後、意を決したのかぽつりぽつりと話し出す。
城の生活がいつにも増してきつかったこと。
急遽入国した他国の王族の世話を全面的に押し付けられ、かなり大変だったこと。
限界が近づいた頃、ベリオンさんが外出の許可を色々なところに取り計らってもぎ取ってきてくれたこと。
「世界的な大御所でね。その割に知名度は恐ろしく低いけど、絶対に敵に回してはいけない相手なんだ。友好関係を築ければもの凄い功績さ。遥か格上の国家に太刀打ち出来る力を得れるよ」
「そんな人物の世話をしているのか?」
「我々の知らない技術や文化を独占しているからね、近隣諸国は取入ろうと必死さ。しかし当たり前だがそう簡単にはいかない。その王様の考えていることがさっぱりでね・・・なす術が無いんだ、全部空回っているように思う」
仰向けに寝転がり天を仰ぎ見る弱々しい姿に何とか励ましてやりたいが、ありきたりな言葉しか浮かばない。
勉強が出来てもこういう時にいかせなきゃ駄目だよなぁ、言葉って奥が深い。
「こんな情けない姿とか絶対に見せたくなかったんだ。でも、もし逆の立場だったら知らされないことは胸が裂けるように痛いよね。ジェノ君が辛い時は私が支えて、どんな事でも力になりたい!そう思うから」
寝転んだ頭を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じる。
薄らと浮かんだクマが痛々しい。何か僕に出来ることは無いのだろうか。
「だから・・・凄く、嬉しかった。それにあの言葉は嬉しすぎて思わず魔法が発動しちゃったし、興奮でおかしくなったのか笑い止まらないし、あんな経験は生まれて初めてだ!」
あの言葉ってどの言葉だ?
そんなに彼の心を打つようなこと言っただろうか。
無自覚だが、彼を元気にさせることが出来たのならなによりだ。
もっと話していたいが刻一刻と点呼の時は迫り、離れがたく思っていると反動をつけてカルシェンツが立ち上がった。晴れ晴れとした表情で手を貸して起こしてくれる。
「魔法の事は誰にも内緒ね、王族が持っていると色々厄介な代物なんだ。世間的には使えない事になってるからさ」
「へぇそうなのか、わかった黙っとく。・・・もう、平気なのか?」
「うん! もう大丈夫だよ。あともう一回、難攻不落な王様に当たって砕けてみるよ。言葉通じなくてもジェスチャーがあるしね、ジェノ君のおかげで心も頭もスッキリできた。本当にありがとう」
「カルシェンツが解らない言語を話すのか?」
ほぼ全ての国の言葉を話せると聞いていたのにそんなことがあるのか。まぁ世界は広いしね。
「超音波を発するんだ、さすがにわからない」
ん?超音波?
「今一緒に王子も訪れているそうなんだ。どこにいるか知らないが、優雅に観光でもしているんだろう。いつか挨拶だけでもしたいけど」
ほうほう王子様か。
そんな大国の王子とは僕仲良くなれない気がするな。あ、そもそも言葉通じないんだっけ? うーん面倒だなぁ。
「もし駄目でも慰めてやるから安心して行ってきな。僕も頑張るからさ」
手紙を書くと約束してカルシェンツと別れ、一階ロビーを通り部屋を目指した。
すると唐突に「ジェーのん!」と声が掛かる。
頭にタオルを乗せ手に桶を持ったスフレが、ソファの上に立ってこちらを見下ろしていた。
「お風呂一緒、入る」
「もうすぐ点呼だから一旦部屋戻りなさい、そして一緒には入りません」
「じゃ露天風呂一緒、入る」
同じだっつーの!
言い合いながら階段を上って行き、ジェノはふと次カルシェンツに会ったらスフレの話をしてみようと考える。
『地底人』と仲良くなったと知ったら驚くよな、いつもみたいに嫉妬するだけだったりして。
楽しみだ。
「そういや超音波ってなんだったんだろう」
「何?」
気になった単語を口にすると、ますますよくわからなくなった。何故彼の口からそんな言葉が出たのだろうか?
「超音波って知ってるか? 人間の耳には聞こえないんだ、スフレ使えたりする?」
「使える」
・・・ん?
会話は点呼に来た講師に遮られ、扉をパタンと閉められてしまった。
・・・・・・んん?
18話にしてようやく『友人関係』が正式に成立しました・・・
長かったですね。
恋愛に発展する日はいつ来るんでしょうか、精進してまいります。
お読みくださり、ありがとうございました。