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婚約破棄、結構ですわ。ただし私が裏で支えていた王室予算三万枚、今すぐ一括返済してくださるかしら?  作者: 朝比奈ミナ


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第60話:『準備はすべて整いましたわ。――全次元、黒字決算にて「完結」ですわ!』

宇宙の心臓部、かつては冷徹な監査官たちが数字を弄んでいた「宇宙運営総本部」の大議事堂。

 今、そこには全三千セクターから集まった代表者たち、そして自分たちの足で立つことを決めた民衆たちの、地鳴りのような歓声が響き渡っていました。


「――皆様。最終決算のご報告をさせていただきますわ」


 わたくし――エレノラ・フォン・ロスタールは、司令壇の上で、最高級のシルクで設えた純白のドレスを翻し、優雅に扇を広げました。

 

 神という名の独裁経営者は去りました。

 これからのこの宇宙は、誰か一人の所有物ではありません。ここにいる一人ひとりが「意志」という名の株を持ち、自らの手で幸福を稼ぎ出す、巨大な共同経営体プラットフォームとなったのです。


「ショウ様。……新OSの稼働状況は?」


「……オールグリーンだ、エレノラ。地球の物理法則をベースにした『科学技術』の配信は、全セクターで滞りなく行われてる。……もう誰も、神のマナの利息に怯える必要はない。……俺、ようやく自分の故郷の価値を、この宇宙に認めさせることができたよ」


 ショウ様が、技術最高責任者(CTO)としての誇りに満ちた顔で、親指を立てました。

 あの日、不法投棄物として捨てられていた彼。今や彼は、全宇宙の文明を支える「奇跡の源泉」として、各界から引っ張りだこの人気者ですわ。


「シエル。……不良在庫の処理状況は?」


「……はい、お嬢様。……元王子セドリック、および元聖女候補リリアナ。現在はセクター104の辺境にて、手動による『永久的な下水清掃』に従事。……過失利益の返済には、あと三百年ほどかかる試算ですわ。……なお、レガリア女帝も、セクター105の農地開拓にて、一日十八時間の鍬振りに精を出しております」


「ふふ、適材適所ですわね。……無能なプライドに振り回される暇がないほど、労働の喜びを噛みしめていただくのが一番ですわ」


 わたくしを陥れ、嘲笑った者たち。

 彼らへの復讐は、もうとっくに終わっています。

 今のわたくしの帳簿には、彼らのような「負債」を書き込む余白すら残っておりませんもの。


「――さて。……最後に、最も大切な『個人資産』の監査を行わなくてはなりませんわね」


 わたくしは壇上を降り、背後に控えていたアラリック様の元へ歩み寄りました。

 彼は、白銀の波に記憶を洗われたはずの瞳で、じっとわたくしを見つめていました。


「……陛下。わたくしのこと、思い出せましたかしら?」


 アラリック様は、しばらく沈黙した後、ゆっくりとわたくしの手を取りました。

 そして、その手の甲に、あの日以上に深く、熱い誓いの口づけを落としたのです。


「……ああ。思い出したとも、エレノラ。……いや、記憶が戻る前から、私の魂は知っていた。……私が全宇宙を敵に回してでも、守り抜かなければならない唯一の『宝』は、君なのだということを」


「あら。……随分と甘い配当ですこと。……記憶を失ってわたくしを不安にさせた罪。……これから始まる永遠の未来で、じっくりと『複利』をつけて返済していただきますわよ?」


「……望むところだ。私の全生命、全財産、そして全霊の愛……すべて君に委ねよう。……生涯、君の専属騎士パートナーとしてね」


 アラリック様がわたくしを強く抱き寄せました。

 沸き上がる歓声。降り注ぐ光。

 それは魔法という名の「虚飾」ではなく、人々が自ら掴み取った「実体」ある祝福でした。


 わたくしは、愛する方の胸の中で、そっと心の中の帳簿を閉じました。

 

 第1ページ:断罪、追放、資産ゼロ。

 最終ページ:全次元統合、オーナー就任、そして――計測不能なまでの純利益しあわせ


 不条理を買い叩き。

 絶望を資源に変え。

 神すらも監査の対象として、わたくしはここまで来ました。


「準備はすべて整いましたわ。……これからの宇宙あした。……一分一秒を惜しまず、最高の輝きを計上して差し上げますわよ!」


 わたくし――エレノラ・フォン・ロスタールの物語。

 ここに、一点の赤字もない、完璧な黒字決算にて「完結」を宣言いたしますわ!


 ――全次元・完全完結――

最後まで、本当に、本当にお付き合いいただきありがとうございました!

「悪役令嬢として追放された女が、宇宙そのものを敵対的買収する」。

そんなあまりに強欲で、あまりに不遜な物語を、ここまで見届けてくださった投資家(読者)の皆様に、心よりの感謝を申し上げます。


不条理を突きつけられても、立ち止まらないこと。

自分の価値を他人に決めさせず、自らの手で「黒字」を掴み取ること。

エレノラ様が貫いたその姿勢が、皆様の日常を少しでも輝かせる「配当」になれたなら、これ以上の喜びはございませんわ。


「エレノラ様の不敵な笑みが大好きだった!」

「ショウの地球知識無双、最高にスカッとした!」

そう思ってくださった皆様。……最後に、この物語の「最終決算報告書」への承認として、作品の【ブックマーク】や【評価】をいただけますと幸いです。

皆様の応援こそが、わたくし朝比奈ミナにとって、次の物語を書き上げるための「最強の資本」となりますのよ。


皆様の人生という名の帳簿に、これからも素晴らしい純利益が積み重なることを願って。


「準備はすべて整いましたわ。……皆様、また次の買収会場(物語)でお会いしましょう!」


――完――

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