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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第2章 ハンター・レイナ

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異世界ライフ、これにて終了?

 少女はうつ伏せの状態で、首を回して海斗の顔を涙目になりながら睨みつけてきた。


「いい加減にしなさいよ、この痴漢野郎!」


 海斗は右手が少女の胸を揉んでいることに気がついて、焦ってしまい思わず自分の体を少女の体の上からどかしてしまった。

 海斗は「いや違うんです。わざとではないんです。これはあくまで事故なんです。この目を見て下さい。こんな澄んだ目をした少年が痴漢をするとお思いですか? 思わないでしょう? 思わないですよね?」と弁解しようとした。

 が、少女はこの隙を突いて、弓を抱えたまま走り去った。

 海斗は呆然としてしまい、少女が走り去る姿を見つめることしかできなかった。


「絶対許さないんだから! 今度会ったら覚えておきなさいよ!」


とまるで悪党のような捨て台詞を言うと、少女は木々の間を縫うように走り抜け、やがてその姿は完全に見えなくなった

  参ったな……。痴漢と間違われたことについては、さすがに反省すべきなのかもしれない。宗教異端者の方は無罪だが、今回のことは有罪なのかもしれない。でも、あの状況で彼女を仰向けにするしかなかったのも事実だ。そういう意味では手を離した俺は甘かったのかもしれない。

 ……とにかく今となっては、彼女が刺客でないことを祈るしかない。


 この後、悲鳴を聞きつけた結衣とアリシアが海斗の下に集まってきた。海斗は痴漢と呼ばれたことを除いて、この不幸な出来事を二人に説明した。

 アリシアは

「そういうことなら、大体薬草も集め終わったしエルダー村に帰ろう。村の中では人目もあるし刺客も襲いにくいだろう。森の中より幾分かマシだ。私は近くの町のギルドで薬草を換金してくるから、ダーリンたちはエルダー村に先に帰っておいてくれ」

と宿屋に戻るよう促した。

 そうして海斗と結衣はエルダー村に、アリシアは近くの町に向かって森を後にした。


 海斗と結衣はエルダー村に帰ってきた。海斗は少しほっとすると同時にため息をついた。何でこんな目に遭うんだろうな。一体俺が何をしたって言うんだ。こちらも命がかかっているから、ああいう行動になったんだよ。……でも絶対勘違いされただろうな。ああ痴漢呼ばわりか。とんだ黒歴史になりそうだ。そもそもこんな異世界に転移してこなければ、こんな目には遭わなかったんだよ。一刻も早く元の世界に戻る方法を見つけて帰りたい!


「海斗、さっきからブツブツ言って、気持ち悪いわよ」

 どうやら海斗の心の声が知らないうちに口から漏れていたようだ。

「そうか、すまんすまん。何でもないんだ」

「あなた昔から考えていることが、口からも表情からもダダ漏れなんだから気をつけなさいよ」

「わかった。気をつけるよ」

 そうこうしているうちに、海斗たちはエルダー村に唯一ある食堂の前を通過した。 

 その時であった。

「レイナちゃんのジビエはいつも新鮮で、解体処理もきれいにしてあって、お客さんからの評判もとてもいいのよ」

「ありがとうございます。今後もよろしくお願いします」

 食堂のおばちゃんが、若い女性の声と話していた。海斗はどこぞで聞いた声だと思ったので振り向くと、弓を背負い腰に矢筒がついたベルトをしている小さな背中が見えた。……どこぞで見覚えがある背中だ。

「結衣、はやく宿屋に帰ろう」

「何を急に」

「どうせ、アリシアが帰ってくるまで金はないのだから、店を見て回っても無駄だろう?」

「私は村の様子が知りたいの!」

「わかった、俺は先に宿屋に帰る」

 海斗が足早に食堂から離れようとすると、後ろから


「さっきの痴漢!」


という声が聞こえてきた。先程と同じ服装だからばれたのであろうか。

「えっ痴漢!?」

 海斗はおそるおそる振り返ってみると、驚いた表情の食堂のおばちゃんとこちらを振り返る村人たちの姿があった。隣にいた結衣もびっくりしている様子だった。

「海斗、一体何をしたの?」

「いや、これは何と言うか、事故で……」

「事故で何をしたの!」

 結衣の仮面が少し透け始めた。

 海斗は小声で

「結衣、仮面が透け始めているぞ」

「それを言うならあなたもよ!」

 二人は言い争うのを止め

「深呼吸、深呼吸」

と言って深呼吸を何度か繰り返した。

 そんなことをしているうちに、後ろから


「レイナちゃん、この男に何かされたのかい!」


と言いながら、食堂のおばちゃんの足音が近づいてきた。海斗は心の中で叫んだ。

「終わった……俺の異世界ライフ、まさか痴漢疑惑で終了? 誰か、記憶消去魔法とか使える奴はいないのか……記憶を消して下さい、少女、食堂のおばちゃん、村の人々……ついでに俺も」

 お読みいただき、ありがとうございました。


 海斗の『痴漢呼ばわり』は森だけで終わらず、 まさか村中にまで広がるとは。「それでも僕はやっていない!」と言いきれない状況が悲しいですね。 これもまた彼の旅路いや人生の一部……なのかもしれません。……ひたすら不憫です。


 次回、海斗の名誉は回復するのか、

 それともさらに泥沼に沈んでいくのか。

 

 どうぞお楽しみに。


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