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異世界転移してみたら、いきなり賞金首になっていた件  作者: 阿部 祐士
第1章 異世界転移してみたら、賞金首になっていた
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異世界転移

「ラーメン一人前、焼きそば二人前、お待ち!」

 店長の声が、潮風に乗って九十九里浜のビーチに響き渡る。海の家「九十九亭(つくもてい)」は昼下がりの太陽に照らされて、鉄板の熱気と人の活気で満ちていた。

「ハ、ハイ店長、今取りに行きます」

 海斗は汗をぬぐいながら、よろよろと料理場へ向かった。結衣とすれ違った際に思わず本音が漏れた。

「……夏休みって、もっとのんびりするもんじゃない?」

「ハイ、文句言わない! 海斗を店長に紹介した私の顔に泥を塗らない!」

 二人は高校二年生。幼なじみで、今はこの海の家で汗を流している。結衣は(とどこお)りなく客の注文を復唱する。

「ご注文を繰り返します。カレーライス二人前、おでん一人前、かき氷が一つでよろしいでしょうか?」

 海斗は配膳をしながら、伝票をもってレジに向かって歩く男女二人組に

「少々お待ちください。た、ただいま会計に伺います」

と足元がふらつきながらも、レジへと急ぐ。

 九十九亭の店先に吊されている「氷」ののぼり旗が、潮の香りを運んでくる海風によって揺れていた。


「お客さんも減ってきたから、二人とも休憩に入っていいよ」

 店長からそう言われて、海斗はやれやれ、ようやく休めると思った。

「結衣に誘われて働きに来たけど、普段から海の家ってこんなに忙しいの?」

「まあ今日はさすがに忙しい方だと思うけど、これぐらい普通よ」

 立ちっぱなし、歩きっぱなしでくたくたの海斗には、結衣の返しは少々手厳しい言葉だった。

「ちょっと、砂浜でも歩こうよ」

 疲れていて、俺はいいと言いたいところだが、せっかくの結衣からのお誘いを断ると後が面倒そうな気がして、海斗は一緒に歩くことにした。

「今日は波が高いね」

「そうね」と答えた後、海を見ていた結衣の表情が変わった。

「あれ、もしかしたら溺れているんじゃない?」

 確かに少し沖の方で明らかに泳いでいるのではなく、水面から顔を出そうとして両手で水を叩く動作をしている子供らしき姿が見えた。

「今すぐ、ライフセーバーの人を呼びに行こう!!」

 海斗は焦って、唾をとばしながら叫んだ。が、結衣は冷静に

「それじゃあ、間に合わないよ。私は浮き輪を持って、あの子のところまで泳いでいく。海斗はライフセーバーを呼んできて」と言った。

 泳げない海斗は、沖まで泳いでいくと言う結衣に不安を覚えて、ライフセーバーに任せた方がいい、と喉のところまで出かかったが、結衣の強い語気に気圧(けお)されてそれ以上何も言えなくなった。確かに一分一秒を争う事態だ。

「わかった。くれぐれも無理はしないで」

「わかってる。お互い早く行きましょう!」

 結衣はそう言い残すと、浮き輪のある九十九亭の方へ駆けていった。海斗は周りを見渡した。が、ライフセーバーは視界に入ってこなかった。そのため、一人歩きながら、ビーチにいる人にライフセーバーを見かけなかったかを聞いて探し始めた。


「すみません、溺れている子がいるんです!」

 海斗はようやく監視タワーで海を見渡しているライフセーバーを見つけて、大声で助けを求めた。

「場所はどこです?」

「こっちです」

 海斗は今来た方向を指さして、ライフセーバーを連れて走り始めた。


 溺れていた子を見かけた場所まで戻ってくると、母親らしき人に抱きついて小学校低学年ぐらいの男の子が泣いていた。そして次の瞬間、視界に入ってきたものを見て、海斗の顔は真っ青になった。砂浜に仰向けに倒れている結衣に対して、海パンに黄色いユニフォームを着た他のライフセーバーらしき人が、両手で胸骨圧迫を繰り返し、心肺蘇生を行っていた。そして、

「誰かAEDを持ってきて! それと119番通報をして!」と怒鳴っている。

「わかった、僕はAEDを持ってくる」

 連れてきたライフセーバーは、海斗に向き直って言った。

「君は119番通報を頼む!」

 連れてきたライフセーバーの人にそう言われると、海斗は携帯電話を取りに九十九亭に走り出した、その時である。走っている海斗の足元に魔法陣らしきものが現われるとそれまで見えていた砂浜の景色は一転して、海斗の目の前は真っ暗になった。


 ここまで読んでくださりありがとうございました。


 海斗と結衣は突然の事故に巻き込まれましたが、これが二人の運命が『大きく変わる』きっかけとなります。 特に結衣の行動は、後半の展開に深く関わってきます。

 二人がこの先どうなっていくのか──次回から始まる異世界編も読んでいただければ嬉しいです。


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