第56章 西国連合構想
この物語は生成AIの力を借りながら、細々と進めています。ご了承ください。
瀬戸内海の朝は静かだった。
厳島を離れる船団は、誰一人として勝者の顔をしていない。
戦もなく、領土も動かず、盟約すら結ばれていない。
それでも、この会談が西国の歴史を変えたことだけは、誰もが感じていた。
船縁に立つ龍重は、遠ざかる厳島を見つめ続けていた。
隣には空海が立つ。
「殿。」
「……なんじゃ。」
「元就殿を信じられますか。」
龍重は少し笑う。
「信じてはおらぬ。」
空海は頷く。
予想した答えだった。
「じゃが。」
龍重は海へ目を向けた。
「信用はできる。」
その言葉に空海は静かに目を細めた。
「人は裏切る。」
「じゃが、利益は裏切らぬ。」
「互いに利益がある限り、人は争わぬ。」
それが龍重の辿り着いた答えだった。
数日後。
日野館。
七老頭と七奉行が一堂に会する。
信安。
星奈。
瞳。
光輝。
明日香。
空海。
龍朋。
龍重は地図を広げた。
九州。
中国。
四国。
畿内。
瀬戸内海。
全員が黙る。
「戦の話ではない。」
そう前置きして龍重は続けた。
「西を一つにする。」
部屋の空気が変わる。
龍朋が最初に口を開く。
「ついに天下ですか。」
龍重は首を横に振る。
「違う。」
「天下ではない。」
「連合じゃ。」
誰も意味が分からない。
龍重は墨で丸を書き始める。
毛利。
日野。
河野。
島津。
秋月。
阿蘇。
蒲池。
それぞれを一つの円で表し、その円同士を一本の線で結ぶ。
「国を一つにする必要はない。」
「それぞれが、それぞれの国でよい。」
「ただし。」
港。
街道。
関所。
貨幣。
裁判。
これだけは共通にする。
信安が口を開いた。
「つまり……。」
「制度だけを共有する。」
「そういうことですな。」
龍重は笑う。
「その通りじゃ。」
しかし、すぐに反論が出る。
龍朋だった。
「島津が従うのか。」
「毛利は税を譲るか。」
「誰が命令するか。」
龍重は答える。
「誰も命令せぬ。」
部屋が静まり返る。
「話し合いで決める。」
明日香が苦笑する。
「寝言は寝ていってほしいですね、兄上。」
「寝言かね。」
龍重も笑う。
「わしゃ正気じゃわ。」
数日後。
各地へ使者が走る。
毛利。
河野。
秋月。
阿蘇。
蒲池。
内容は極めて短い。
西国の未来について語り合いたい。
同盟ではない。
降伏でもない。
会談への招待だった。
各地で反応は割れた。
島津。
「面白い。」
義久は静かに笑う。
「龍重は国を作るのではない。」
「仕組みを作るつもりだ。」
家久は腕を組む。
「だから厄介です。」
毛利では隆景が書状を読み終えた。
元就は笑う。
「来たか。」
「思ったより早かったの。」
隆景。
「参加されますか。」
元就。
「もちろんじゃ。」
「断れば西は二つに割れる。」
「参加すれば主導権を争える。」
老人の目はまだ死んでいなかった。
その頃、安土。
三職推任を断ったと言われる織田信長にも報告が届く。
「西国で新たな同盟の動き。」
信長は書状を読んで笑う。
「また龍重か。」
光秀が尋ねる。
「討ちますか。」
信長は酒を口にする。
「違う。」
「面白い。」
「奴は国を増やす気がない。」
「だから止める理由もない。」
信長は窓から東を眺める。
「わしは天下を一つにする。」
「奴は天下を繋げる。」
「さて。」
「勝つのはどちらかな。」
一方、日野館では夜更けまで議論が続く。
税率。
港湾法。
通貨。
街道。
海賊対策。
裁判権。
軍事協定。
次々に課題が並ぶ。
瞳がため息をつく。
「百年あっても終わりませんね。」
光輝も苦笑した。
「終わらせる必要はないでしょう。」
「制度とは育てるものです。」
龍重は静かに頷く。
「そうじゃ。」
「完成させようと思うから争いになる。」
「人が変われば制度も変わる。」
「百年後には百年後の者が直せばよい。」
信安がその言葉を書き留める。
完全な制度は存在しない。
存在するのは、直し続ける制度だけである。
部屋が静まり返る。
誰も反論できなかった。
夜。
一人になった龍重は縁側で空を見上げていた。
安西として生きた前世を思い出す。
教科書には「天下統一」が歴史の終着点として記されていた。
だが、本当にそうだったのだろうか。
天下を一つにした者はいた。
しかし、その後も戦は繰り返され、人は争い続けた。
ならば、自分が目指すべきものは何か。
その答えは、厳島の海で見つけていた。
国を奪うことではない。
国を繋ぐことだ。
龍重は静かに呟く。
「これが最後の戦じゃ。」
「相手は人ではない。」
「戦そのものじゃ。」
瀬戸内を渡る夜風が、静かに庭木を揺らした。
その風は、まだ誰も知らぬ新しい時代の気配を運んでいた。




