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ゆっくりと下降を続けるスティグマ。その一方で、共に落ちる大小さまざまな足場であった残骸を次々と跳び移り、金色の何か―――つまりはリンがスティグマを大きく迂回しながら疾駆する。
それに対し、スティグマはリンに向けてその純白の翼を広げ、スティグマの身体を中心にして3つの光球を出現させる。
光球は回転しながら明滅し、一際鋭い輝きを放つと、そこから無数のレーザーのような物を放った。
本当のレーザーは光を増幅して放射したもの、つまりは光そのものなのだから、放たれるのと着弾が同タイミングであるため躱すのなんて無理に等しいのだが、それはそれ。恐らく光属性魔法による攻撃だから、取りあえずレーザーという呼称にしようと思う。かっこいいし。
「……うわぁ」
感嘆の声を上げる姫様の横で、上を向いたままユキムラが話しかけてくる。
「アサヒはあれ躱せるか?」
「多分無理」
光球1つから10近いレーザーが放たれ、ある程度放射線状に広がったところで、それらはジグザグに方向を修正しながらリンに向かって突き進む。
リンは自分に向かって放たれた厄介な攻撃を今までの進路では躱せないと判断したのか、踵を返してスティグマから距離を取る。
そして、レーザーは残骸へと衝突して小規模の爆発を次々に起こして数を減らしながらもリンを追う。逃げるリンと追うレーザーのチェイスは、まるでアニメか漫画の世界のような光景だ。
「追尾ありで貫通はなし、っと。でも結構速いな」
「しかもなんだあの滅茶苦茶な軌道。あいつよくあんなの躱せるな」
「リンちゃん凄いねぇ」
「リンの方はきっと、観戦してないで助けて! みたいなこと思ってるんだろうけどね」
そんな様子を下から眺めながら、俺、ユキムラ、姫様は思い思いのことを緊張感無く述べる。
今のうちにとスティグマを注視して現れた情報を読むと、スティグマのHPゲージは3本。ボスにしては割と少ないが、強さとタイムリミットのことを考えたら妥当、もしくは難しいくらいだろう。だが、そのうち1本はリンが頑張ったのか既に削れているようだ。
そんな観戦気味の様子が気に障ったのか、球体型の部屋(ただし崩壊間際)の中心まで下降し鎮座していたスティグマが、何を思ったのかこちらに剣を向ける。
「あらら、ターゲットされたか」
「じゃ、行きますか」
「距離を取っても一瞬で詰められそうだし、私も行こうかな」
立ち上がった俺たちと共に、姫様も腰の細剣を引き抜いて言う。
最近魔法での後衛ばっかで忘れていたが、姫様の武器はその軽快な身のこなしと、魔法と剣術の連携攻撃だ。その真価が見られるのかと思うと、少しわくわくする。
まあ、そんな余所見してたらスティグマに一瞬で墜とされそうだけど。
「じゃあ、健闘を祈るってことで!」
そう言って、各人バラバラに飛び出す。同時に今までいた場所に無数の斬撃が飛来し、足場に炸裂して砂塵を巻き上げた。
流石にノーモーションの一撃で破壊されるほど足場は軟ではないが、それでも斬撃に恐ろしい威力が込められているのは間違いない。
爆風を背後に受けて加速しながら、一直線にスティグマを目指す。斬撃が叩き込まれる可能性はあるが、俺とスティグマの間には数えきれないほどの大小様々な残骸が漂っている。油断していない限りそんなに簡単には斬られないだろう。
だが、そんな俺を嘲るように、スティグマは左腕を前に突出し、光の球を作り出す。
「げっ」
そして、光球はちかちかと明滅し、10近いレーザーを吐き出した。
現在スティグマは俺の斜め前方を泰然と浮遊している。そこから放たれたレーザーはリンの時と同じように放射状に広がり、やがてジグザグに方向転換しながら障害物を躱し、物凄い速度で俺へと迫る。
だが、方向転換にも限度があるようで、いくつか残骸に衝突して消滅しているものもあった。これはこれでやけに大きな爆発のエフェクトのせいで視界がふさがれて面倒くさいのだが。
「なろっ!」
そして、レーザーが降ってくる。
旋回に多少難があってもレーザーの追尾性は高い。上や後方へと逃げる手もあるが、ここで対処しなくては後々逃げ場が無くなって面倒だろう。そう考えて俺は走り続けたままタイミングを計り、レーザーが俺へと到達する寸前に力強く足場を踏みしめ、技能を発動する。
何てことはない、ただの『ダッシュ』である。
だが、それによって急加速した俺はレーザーを潜り抜けるようにして走り去り、レーザーは反応が遅れて急転換は間に合わず、俺が走り抜けた後に次々と地面へと突き刺さる。
そして、スティグマのいる斜め前方へと跳ぶ。
「ユキムラ!」
残骸を足場にしてさらに跳びながらスティグマの方を見やると、スティグマは突き出した掌に光を集め、その莫大な光を見る見るうちに収束させていく。
その視線を辿ると、俺の真上の辺りにユキムラがレーザーを躱して跳び回っている。
ユキムラは運悪く背を向けていたのか、俺の声でスティグマの行動にやっと気付き、その顔をあからさまに顰めた。
「悪い、頼む!」
「わかってらぁ!」
角度を調節し、即座に飛ぶ方向を変更。スティグマの足元を目指して跳び、即座に『二段ジャンプ』で加速する。
ユキムラは大きめの残骸にまさに着地しようとしている状態で、今のままではレーザーを躱せない。
「喰らえ!」
跳んでいる最中に身体を捻り、ライトエフェクトを纏った右足を下から上へと刈り上げるように放つ。
蹴り技スキル単発遠距離技『旋翔蹴撃』。振り抜いた右足から黄色い閃光が放たれ、閃光は螺旋を描きながらスティグマへと迫る。
だが、明らかに死角からの攻撃なのにスティグマは一目もすることなく翼を羽ばたかせて回避し、逆にこちらに光を収束させた左腕を向ける。
いやまあ、ユキムラを守ったことにはなるんだけど。
「冗談きついぜ、まったく!」
体操選手もかくやというような無理な動作で身体を回転させて体勢を整え、浮遊する残骸に着地した瞬間に即座に再跳躍。その空域から出来るだけ距離を取ってレーザーの範囲外へと離脱を試みる。
そして次の瞬間、僅かに背を掠って、背後を莫大なエネルギーが奔り抜けた。
それは今までの無数のレーザーもどきとは違う、まさに光の柱といった極太の砲撃だ。姫様の巨大な光の十字架を叩き落とす魔法『クロスレイド』と同じような規模だが、秘められた威力は圧倒的な差がある。
その恐るべき威力に、俺は塵屑のように吹き飛ばされ、大きめな残骸に叩き付けられる。
がはっ、と肺から空気が強制的に排出させられ、漫画のような声を漏らす。本当に、現実の再現度が高いというのも問題だ。
そして、今の一連の攻撃のみで俺の身体はボロボロなのだが、スティグマは俺を休ませるつもりはないらしい。
「気をつけろアサヒ、そっち行くぞ!」
光の砲撃によって発生した白煙のせいで視界がうっすらと悪い中、ユキムラの声が頭上から聞こえる。その声に気力を振り絞って何とか身体を立ち上がらせたところで、白煙を突き破って翼を羽ばたかせたスティグマが現れた。
思わず顔が引きつったのは仕方がないだろう。
流れるような動きで放たれた横薙ぎの一撃は、自分でも褒めたくなるような反射神経で上体を反らして躱し、そのまま落ちるようにして下の残骸へと足場を変える。
続けて今いた残骸ごと断ち切るように飛ぶ斬撃が放たれるが、これは予想していたので横に跳んで避ける。
そして、薄れてきた白煙を突き破って上から跳んできたユキムラが長槍を振り下ろした。
「どっせい!」
ガンッ! と硬質な音を立てて、振り下ろされたユキムラの槍と振り上げられたスティグマの大剣がぶつかり合う。
位置関係もあり大きくスティグマが吹き飛ばされるが、すぐに翼を使って減速し、逆にユキムラに向かって突っ込んでいく。
二度、三度と大剣と長槍が交差するが、ここでは足場が悪いユキムラよりも空中を自在に飛び回れるスティグマに軍配が上がるようで、ユキムラは足場を変えつつ距離を取ろうと苦戦しているのが分かる。
俺が介入すれば多少は戦況は変わるだろうが、ここはこの先のことを考えて地面へと降りる。
別に見捨てたという訳ではなく、ユキムラだったら俺が行かなくても問題ない。
何せ、俺たちは2人で戦っているのではないのだ。
「ヒメ、今だ!」
ユキムラを追ったスティグマが宙に浮く残骸が少ない空域―――先ほどの砲撃範囲に踏み込んだところで、ユキムラは大きく声を上げた。
すると、スティグマの大剣がユキムラに届く寸前、狙ったようなタイミングで上空から光の槍が降り注ぎ、その動きを阻害する。
そして、急停止して身を翻したスティグマを掠る様にして細剣を構えた姫様が遥か上空から舞い降りた。
「ホーリーブレード!」
奇襲に失敗した姫様は悔しそうにすることもなく、既に詠唱を済ませていたらしい魔法を発動した。
魔法が発動した瞬間、姫様の周囲に3本の剣の形をした輝きが出現し、それぞれが意志を持つかのようにしてスティグマを囲い込むように襲い掛かる。
流石のスティグマもこれには撤退を余儀なくされたのか、翼を羽ばたかせて後方へと下がった。
だが、これすらも予定調和。光の剣を避けて後ろに下がったスティグマの元に、吸い込まれるようにして背後から「金色」が飛び込んでいく。
「行きます、フォールドライブ!」
斬ッ! と片方の剣がスティグマの胴へ深々と突き刺さり、今までじわじわとしか減っていなかったそのHPがここに来て初めて大きく減少する。
剣を突き刺したリンは振り落すようにしてスティグマを地面へと叩き落とし、続けて空中からスティグマへと双剣を振るう。剣から放たれた無数の斬撃は地面へと落ちたスティグマへと次々に命中していき、大きく砂塵を上げた。
そして、二桁近くの斬撃を喰らって硬直した目の前のスティグマに対し、俺は技能を発動させる。
「せい」
ダンッ! と右足を足場に叩き付けると、狭い範囲を揺れが襲い、周りを覆っていた砂塵が晴れる。そして、同時に倒れていたスティグマが宙へと跳ね上げられた。
蹴り技スキル範囲単発技『震脚』。地面に足を叩き付けることで、狭い範囲の敵に弱打ち上げ効果と低確率で硬直を与える技である。
本来打ち上げ効果はあまり高い成功率ではないのだが、今回は硬直中であったこともあって自動成功する。
そして、宙に浮いたスティグマに対し、俺は更なる追撃を仕掛ける。
棍を持つ右手を後ろに回し、左肩で棍を支える。特定の予備動作を取ったことで俺の身体はシステムアシストに従って動き出した。
両手棍スキル七連撃技『金剛演武』。身体全身を使い、あらゆる方向から舞う様に打撃を叩き込む現時点で俺の最強の技だ。
しかし。
「―――んなっ!?」
キンッ、と音を放ち、肩を起点として遠心力を利用した初めの一撃が大剣によって阻まれる。
絶対に命中すると思っていた俺の渾身の連撃は、技を発動するまでの僅かな隙で体勢を立て直され、完全に防がれていた。
ってそんな馬鹿な。たった今こいつは硬直状態になったばかりなのに!
ラムダと相対した時も思ったが、どうも『アーマードギア』の連中は硬直から復帰するのが早すぎる。
だが、あまりにも強すぎるせいで完璧にガードされたように見えたが、技能を中断するには至らなかったようで、その後も技は続く。
一発、二発、三発と棍を次々に繰り出し、スティグマはそれをギリギリのタイミングで防いでいく。先ほどのダメージが効いているのか今はこちらが優勢だが、この調子だと技後硬直まで持ち込まれてこちらがやられる。
となると、取れる手はひとつだ。
「頼む!」
後方に叫び、発動中の技の下から上への攻撃を自らの意思で以て加速させる。
これは一種の裏技のような物なのだが、スキルの技能は全く同じモーションを繰り出した場合、技の速度にブーストを掛けることが出来るのだ。だが、もし少しでも規定の軌道からずれると技能は失敗と見なされ中断し、絶望的な隙をさらすことになる。
よく考えなくても、技能を生身で、しかも十分に達人レベルに設定されている物を上回る速度で寸分の狂いもなく再現するなんて、難しいを遥かに通り越した所業だということが分かるだろう。
よって、普通はワンモーションの簡単な技などで使われ、今の俺のように不規則な軌道の多連撃技で使うのはよっぽどの馬鹿か廃人かに限られる。
そして、俺はこの技能を出してから日が浅い……というか、数時間も経っていないため、当然途中で失敗するだろう。
とは言え、そんなことは百も承知だ。
加速した一撃はスティグマの虚をついたのか、狙い通りに大剣の柄に命中し、一瞬だが上へと跳ね上げる。
その瞬間に失敗判定が出されたのか技が中断して身体が硬直するが、俺の役目はここまで。後は他のやつらに任せるだけだ。
その一瞬の隙を見逃さず、俺の脇を通り抜けて姫様が細剣を振るう。
「ルーンエッジ!」
青白いライトエフェクトを纏った細剣による連続突きはスティグマを吹き飛ばす。さらに、続けて姫様が左手を突き出すと、宙を舞ったスティグマが空中から出現した大きな光球によって地面へと叩きつけられた。
そして、遥か上空から金色の輝きをまとったユキムラが測ったようなタイミングで槍を構えて落下してくる。
「はぁぁぁああああッ!!!」
目にも留まらぬ速さで突き進むユキムラはまるで一本の矢のように、勢いを止めずにスティグマへと手に持つ長槍を突き立てた。
長槍スキル重単発突進技『ドラゴンダイブ』。空中専用技能で、技は簡単。発動場所から槍を構えて落下するだけである。
だが、その威力が凄まじい。この技は「発動時から加速度的に速度が上昇し、速度によって威力が変化する」という特徴を持っているのだが、高所から技を放った場合、地面に到達するまで加速し続け、その分威力も上昇し続ける。
つまり、場合によっては連撃技に匹敵する威力を持つらしいのだ。
だが、今回はそんな物では済まない。ユキムラはやると言ったらとことんやる奴だ。とんでもない高さから落ちてきたはず。
その証拠に、地に伏したスティグマの胴体へと直撃した長槍はその威力を如何なく発揮し、足場ごとその身体を粉砕する。
『ドラゴンダイブ』は高ければ高いほど当てるのが難しいと聞いた気がするのだが、それでもピンポイントで当てるのはさすがはユキムラと言ったところだろうか。
そして、轟音と衝撃を撒き散らした一撃によって硬直していたスティグマは足場へとめり込み、技が終了するや否やユキムラは技後硬直をキャンセルして即座にその場を離れる。
「まだまだ! エスティアードセイバー!!」
身動きの取れないスティグマを見逃すはずもなく、空へと飛んでいた最後の1人がさらなる追い打ちをかける。
衝撃波を放った後にリンは空中で一回転し、双剣を交差して構えた。
「秘技! トライエッジ!」
リンは大きく上に引き絞った剣を目にも留まらぬ速さで振り下ろし、空中で閃いた双剣はスティグマごと地面へと3つの赤い傷痕と刻み込む。
そして、キィィィィン、という破砕音にしてはやけに耳に残る高音が木霊した後、刻まれた痕は赤く輝きだし、大きな爆発を引き起こした。
俺は近くにいた姫様を庇いながら爆風から顔を背けるが、その直前にスティグマの2本目のHPゲージが消滅するのを見た。
よって、残りのHPゲージはあとひとつ。時間はそこそこ掛かったが、攻撃を当てて硬直させてから、反撃の隙を与えない集団攻撃に雪崩込めば勝機はある。
「倒した!?」
「リンそれフラグ」
着地したと思ったら思いっきり古典的なフラグをわざとしか思えないような鮮やかさで踏み抜いたリンの頭を軽く叩く。まさか本気で行っている訳ではないだろうが、いつ復活して斬り掛かって来ても可笑しくはないのでスティグマの方向を油断なく観察する。
すると、そこが先程から度重なる攻撃を受けていたことが災いしたのか、耐え切れなくなったとでも言うかのように横たわるスティグマを中心に足場に亀裂が走り、緩やかに崩壊を始めた。
近づく訳にもいかずそのまま眺めていると、亀裂は広がっていって足場はどんどん崩落していき、それに巻き込まれてスティグマは徐々に下へと落ちて行った。
「そっちのフラグだったか……」
「いや、どうするよ。まだ倒してないのに落ちて行ったけど」
「そのうち戻って来るんじゃないですか? 羽あるし」
「んな適当な……」
どうでも良さそうに述べるリンに目をやりながら、そういえばと前から気になっていたことを聞くことにした。
「そういやさ、スティグマのあの翼はいつ出てきたんだ?」
「ああ、あれですか。スティグマのHPゲージは3本あるじゃないですか。それの1本目を削りきったら出てきましたよ」
1人でHPゲージを1本削りきったことにふふん、とリンはドヤ顔をした。まあ大したものなのは確かだし、若干イラッと来たが気にしないでおく。
それより気になったのはHPの方だ。間違っていなければ、スティグマのHPは最後の連携で削りきったと思うのだが……。
隣に顔を向けると、ユキムラも同じようなことを考えていたのか、深刻そうな顔をして落ちて行くスティグマを注視している。
やがて、豆粒程度の大きさになったところでスティグマは足場の残骸から起き上がり、光の煌めきを残しつつもこちらに向かって一直線に飛翔する。
「ッ! 離れろ!!」
ユキムラの合図とともに大きく後ろへと跳ぶと、その直後に物凄い勢いでスティグマが穴から飛び込み、そのままの勢いで球体型の部屋(ラムダやスティグマのせいで崩壊気味だが)の中心まで進む。
そして、機械の翼を羽ばたかせて止まると、手に持った大剣を上へと掲げた。
「……何をするつもりだ?」
思わず漏れた問いに応えられる者はおらず、そのまま一挙一動を見逃さぬようにスティグマを注視する。
スティグマが祈るように大剣を掲げると、大剣からは緋色のレーザーポイントのような物が周囲一帯に放たれ、漂う『アーマードコア・ランペイジ』の残骸を照らす。
すると、照らされた残骸は引き寄せられるように大剣の方へと流れていき、ガシャン、ガシャン、と音を発して組み合わさっていく。
「何あれ……?」
息を潜めるようにして姫様が呟くが、誰も答えられない。それほどまでに目の前の光景は「ありえない」ものだった。
出来上がったのは歪な漆黒の大剣。元々が大きさがバラバラの残骸を無理やり組み合わせたために最早大剣ではなく鈍器のような印象すら受けるが、そんなことは問題ない。
問題なのはその長さだ。
残骸と残骸を無理やりくっ付けたような大剣の長さはどう見ても10メートルは超えており、接近戦や近距離といった言葉に喧嘩を売っているような光景だ。
「……さて、どう思う?」
「あれが飛び回って自由に振るわれるとしたら、軽く絶望するわ」
「しかも本体は遠距離攻撃持ちなんですよねー」
「うーん、あれで攻撃されたら一撃でやられそうなんだけど……」
「ちなみに時間は?」
「あと5分ちょっと」
全員が全員顔を引き攣らせての会話である。今日一日で色々と見てきたが、これは一番酷い。まさにラスボスだ。
「でもま、ここまで来て帰る訳にはいかないでしょ!」
「そりゃそうだ」
「ですね」
「うん!」
暗い空気を吹き飛ばして、上空を見据える。
敵は『アーマードギア・スティグマ』。その最終形態。
武器は追尾機能付きのレーザーと、10メートル級の超大型の大剣。というかむしろ大きさ的には対艦刀と言った方が良いかもしれない。
そして、敵はそんな意味不明な凶器を軽々と振り回してくると予想される。
敵の戦力は理不尽極まりないものだが、俺たちの顔に絶望は無い。むしろ、皆この状況を楽しもうとさえしている。
「よし、行くか!」
ユキムラの声に応え、全員同時に一歩を踏み出す。
今、最後の戦いが始まろうとしていた。




