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魔法少女ルキア ~魔法使いは時空を越えて世界を救う~  作者: Kira
第3章 夜明け(アトランティス編)
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(23) 訪れる試練


 目に入ってきたのは大きな怪物と、その前で立ち尽くしているレイラの後ろ姿だった。恐怖で動けないのか逃げようとしている素振りは後ろからは見えない。

 ゆっくりと腕を怪物は振り上げた。大きな体を動かして、目の前をレイラに危害を加えようとしているようだ。


「シャドーか」


 すべてがスローモーションに見える世界でノックスの声が静かに耳に入る。その言葉が頭で理解できる頃には走り出していた。

 大きく振り上げられた腕に向かって跳ぶ。……魔法少女の格好ではないからかそこまで高さが出ない。目の前には……シャドーの顔面。シャドーの頭上に跳んだつもりだったけどそういえば変身してなかった!

 自分の服を軽く見下ろして少し苦々しい感情を覚える。


「でもしょうがないよね! フレイム!」


 威力は少し足りないかもしれないが、シャドーへと炎を放つ。火傷とかをしてくれるといいがと思いつつ視線を向けると、いつもの魔法少女へと変身後ぐらいの火力が出ている。

 不思議に思って観察していると気がついた。私の炎を増長させるように風が吹いている。どこから…………? 隣から?


 ちらりと視線を横へとずらすと、私と同じくらいの高さにソールが飛び上がっているのが見えた。その手から風が放たれている。

 私の視線に気がついたソールはニッと笑ってピースサインをした。思わず私も笑みを浮かべてピースサインを返す。

 この間はたった一瞬のこと。


 シャドーが炎と風で吹き飛ばされた音を聞きながら地面へと帰還する。石の地面と靴が軽やかに音を響かせた。他に音は聞こえない。シャドーは消滅したのだろうか。

 シャドーが吹き飛ばされたであろう場所へと向かおうとしたが、なんだか視線を感じる。視線を感じるほうへと目をやると……みんながこちらを見ていた。


 ルーナはレイラを抱えて立ちながらこちらを見ている。レイラは何が起こっているのかわかっていないような混乱した表情を浮かべている。ノックスは苦笑いをしていて、ラインはなぜか頭を抱えている。

 そして1番気になるのは聖女様だ。先ほどまでは浮かべていたはずの笑みが消え去り、真顔でこちらを見ている。

 ……美人の真顔は怖い。


「あの……どうしました? えっと……聖女様?」


 恐る恐るへと近づき声をかける。手で触れられる範囲に入ってもうんともすんとも言わない。……聖女様ってもしかしてシャドーを見たことがなかったのかもしれない。だから恐怖で?


「試練の邪魔をしてしまいましたね」

「試練……? というか邪魔って!」

「えぇこれは彼女が向き合うべき試練だったのに」

「いやいや明らかにあのままだと怪我してたじゃん!」

「それならばそれが女神様が決めた彼女の運命なのでしょう」


 まるで決まったセリフがあるかのように無表情のまま訳のわからないことを話している。思わず不審な目を向けてしまうが、聖女様はそんな私のことを気にも止めず語り続ける。


「また試練者が増えた……ということは……お知らせしなければ……いやちょうどいいのかもしれないですね」

「ぶつぶつとなにを……」

「あぁ! そうだ! これで導きなんですね!」


 私の声は聞こえていないようだ。1人で何事かを話し続けている。

 そっと距離をとり、みんなと合流する。


「やばい。なんか聖女様おかしくなっちゃった」

「このまま置いてく?」

「いやいや! ラインなんでそんなひどいこと言えるわけ!?」

「だって聖女様連れ帰ったところで教会に告げ口されるだけだぜ?」

「それもそうか……まぁレイラも見つかったし帰るか」

「ノックス!?」


 なんだかみんな帰る雰囲気を醸し出している。いやソールは違うか。ラインに口を押さえられているが聖女様のところへ行こうとしているようにも見える。

 私は聖女様を連れ帰ったほうがいいと思ったが(あのシャドーは倒したとは言え他にシャドーがいないとは限らないため)、ノックスやルーナに諭され帰ることにした。


 いまだにぶつぶつと呟いている聖女様を尻目にラインとラインに引きずられているソールについていく。

 ……だができなかった。いつの間にか部屋の出口辺りにローブを着た人物たちが塞ぐようにして立っていた。


「逃がさないつもりか」

 

 ノックスが苦々しい顔をして言った。

 私はそっと腰につけたキーホルダーになっているソレイユへと手を伸ばした……が、誰かに背後から手を掴まれた。

 その誰かは私の背中にぴったりとくっつきながら囁く。


「あら変身してはダメよ魔法少女ルキア」


 その言葉に思わず肩が跳ねる。それにこの声は……先ほどまで1人の世界に入っていたはずの聖女?

 彼女は言葉を続ける。


「レウィスがお世話になったわね」


 レウィス! 地球で会ったリリィを洗脳してた敵の男! なぜその名をここで……どうやら知り合いのようだ。

 彼女はそれだけ言うとスッと私から離れていった。そして前にいるローブを被った集団に声をかけた。


「この彼女と彼は神殿で試練を受けることになったわ」

「「「おぉー!」」」


 聖女が私とソールを指差し、宣言するとローブの者たちが雄叫びのような歓声をあげた。……不気味だ。


「いや私達は試練なんか受けないよ!?」

「いえこれは決定事項です」


 試練を拒否して抜け出そうとするが、それはできなさそうだ。

 ジリジリとこちらにローブの人間と聖女が迫ってくる。……魔法を放つか?

 仲間のみんなが魔力を練り始めたのがわかる。レイラが前に言ってたことでは魔法を使うことさえも教会は禁止していると言っていたが、もうこいつらの目の前で使うしかないだろう。

 ここから脱出したら隠れて活動すれば大丈夫なはず。とりあえず逃げなければ。


 魔法を放とうと構えたとき、教会の人々は一斉にローブから何かを取り出した。

 ……あれは……確か前にエルザさんの店で買ったムーンダスト? 似てるだけか? でもそれでいったいなにを……


 栓を抜いたかと思えばこちらに振りまいてきた。細かな粒子が空気中を舞い、この空間を埋め尽くした。


「吸うな!」


 ラインの鋭い声が聞こえるが、吸わないことは難しそうだ。腕で口元を押さえてはいるが、吸い込んでいる感覚がする。


 ぐらりと目の前の視界が揺れた。

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