(7) 魔法少女リリィ
予想した通り、またあの世界に来たみたいだ。
目を開けると目の前にはソレイユ、それに百合とシエルがいた。
「やぁ、ルキア!」
「やっほーみんな。今日は百合とシエルもいるんだね!」
「うん。実はちょうどシャドーが現れたっぽくて、私だけで大丈夫かなって話してたの」
「そうなんだ! あれ? でも百合って攻撃系の魔法使えるの?」
「うん。実はね……」
先日、百合が魔法が使えるとわかった日に他の魔法も試してみたらしい。ソレイユたちに教わりながら私の世界の魔法を教わったようだ。
そしてヒール以外に光魔法の攻撃ができたらしい。
……光魔法?
「光魔法って……?」
「たぶんこの世界の人が使える魔法なんじゃないかな? 逆に私はルキアちゃんたちの使ってるらしい魔法は1つも使えなかったよ」
「へぇー! でも光魔法ってなんだか強そう!」
私の世界で見たこともないことも相まって、とても強力な魔法に感じる。ヒールも薬を使わずに治療できるなんて、とてもすごいと思ったし……。
それに……イリオス村に伝わる話でも光がドラゴンを倒す的な話があったし、なにか特別な力がありそう。
「どうなんだろ? でもやっぱりメインはヒールとかのサポートみたい。攻撃系はルキアちゃんほど威力でなかった」
「そっかそっか! でもそんな楽しそうなことしてたんだね」
「うん。ルキアちゃんが消えたあとに魔法少女の説明受けてたから」
「消えた……?」
「えっと……2人とも! 話すことがたくさんあるところ悪いんだけど、シャドーが現れてて……」
「「あ!」」
私達は急いで変身した。そういえば私はいつもの魔法少女の服だけど、百合のは初めて見るな。
光に包まれたあと、目を開けると百合も魔法少女の服になっていた。私のものと似たようなデザインで、色違いだ。
百合の銀髪と水色を基調とした服がとても合っている。これで魔法少女ルキアと魔法少女リリィの変身完了だ!
「「さぁ! 手をとって!」」
ソレイユとシエルの手をそれぞれ握る。あっという間に景色が変わった。
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「ここは……海?」
「そうみたいだね!」
目を開けると一面に広がる海。海風の潮っぽい匂いが鼻へ届く。海岸に来たようだ。幸い、季節のおかげか私達の他に人はいないようだった。……だが不思議なことにシャドーの姿が見えない。ソレイユが勘違いしたのか?
「シャドーいなくない?」
「うん。ソレイユさん本当に?」
「本当に感知したよ! シエルも感知したよね!?」
「えぇ、私も感知してますー。今もしますよー」
「じゃあ本当にいるのか……」
「ちょっとルキア! なんでシエルのことはすぐ信じるのさ! リリィも!」
「「あはは……なんとなく」」
しばらく話しているとリリィがじっと海を見つめ始めた。
「リリィ? どうしたの?」
「なんかあそこの波、動き変じゃない?」
「波?」
海の動きを注視していると、1ヵ所だけ盛り上がったり沈んだりしている場所がある。まさかあれがシャドー?
「コッチニオイデー」
シャドーだったようだ。海から顔を出しながら私達に向かって手招きをしてくる。
「こっちにおいでって言われても……」
「うーん、さすがに海の中へ行くのは無理だからこっちに呼び寄せる?」
「できるのかなー」
「1つ考えがあるんだけど……」
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「見てー! お城!」
「おー! じゃあ周りに川通らせる!」
「いいね! じゃあ橋かけちゃおうかなー」
私達は今、砂遊びをしている。……リリィのアイデアだ。実は私はちょっとズルをしていて土魔法で、崩れないように固めている。
今のところバレてない。
あのシャドーたちは人間の言葉を理解しているようだし、人を襲う。そのことからシャドーの近場で騒いでいる人間がいれば寄ってくるのではと考えたのだ。
なかなか良い作戦なんじゃない? シャドーは何事かを呟きながらこちらをじっと見つめている。
コソコソ……
「どう? なんか視線は感じるけど……」
「まぜてって言ってます」
「え? シエル聞こえるの?」
「はい。私、耳良いんですー」
「あっ! シャドーが海から上がった。」
ソレイユのその一言で一斉にシャドーへと視線を向ける。気がついたらすぐそばまで来ていたみたいだ。
「マ、マゼテ」
「ルキアちゃん……この子ただ遊びたいだけなのかも」
「え? そうなのかな……? 一緒に遊びたいの?」
「ウンウン、アソビタイ」
確かにこちらに敵意を見せる様子がない。みんなで顔を見合せ、シャドーへとそっと近づく。もう少しでシャドーに触れるというとき、遠くから紫色の光が飛んできて、シャドーを包んだ。
「えっ? なにこの光?」
光が飛んできた方を見ると黒っぽい人影が立ち去るのが見えた。……いったい何者?
「ルキアちゃん!」
「ん? って危な!」
「ミンナ……テキ! ミンナタベル!」
リリィの声で人影からシャドーへと視線を移すと、シャドーが腕を振り上げたところだった。先ほどまでは穏やかな様子だったのに、一気にこちらに敵意を向けてくるようになった。
「これは倒すしかないんだね……」
「そうだね……。よしっ!フレイム!」
「あっ! シャドーが燃えた! ……消えた?」
シャドーの体に火がついたかと思えば、すぐに火が消えてしまう。
「なんで消えたの? もう一回! フレイム! ……消える」
「……やっぱり消えるね。もしかして海にいるシャドーだから水魔法が使えるか、水の性質を持ってるのかも」
「私の魔法を打ち消してるってこと?」
「たぶん……?」
「じゃあリリィの魔法はどう?」
「できるかな……」
「とりあえずやってみてよ!」
「ルミナス」
リリィが呪文を唱えると、光の矢が出現しシャドーへと放たれた。
「ギャー!」
光の矢はシャドーを貫通し、体に穴を開けた。シャドーは大きな悲鳴をあげた。
そしてシャドーの崩壊が始まった。
「リリィ! 強いじゃない!」
「この間、試したときはこんなに威力なかったのに……」
「それはこの魔法少女コスチュームのおかげだよ!」
「ソレイユ! やっぱりそうなんだ。」
「……ア……」
「「?」」
魔法の威力が上がる仕組みについて聞いていたとき、崩壊するシャドーから声が聞こえた。
「何か話そうとしてる?」
「アリガト……」
「今、ありがとうって……あっ!消えた」
「やっぱり悪いシャドーじゃなかったんだ」
思わず暗い表情になる。もともとはあのシャドーは遊びたいだけだったのに……
「シャドーも気になるけど、あの紫の光も……」
「あの光は魔法だと思うんだよね。発した方を見たら人影があったから……みんな見た?」
「ううん。シャドーしか見てなかった」
謎が深まった。だがきっとあの人影は敵なんじゃないだろうか。




