(6) 魔法の特訓
コンコン
「こんにちはー」
「あらー! ルキアちゃん! もう体調大丈夫なの?」
「はい! なので皆に顔見せに行こうかなーって」
「そうなのね! うちのこはもうモンスター討伐に行っちゃったから帰ってきたら伝えるわ!」
討伐隊メンバーのお母さんが元気よく話してくれた。明るく話していることからメンバーに問題がなさそうなことがわかる。
他のメンバーの家もまわるため、軽く話だけしてその家を後にした。
そして何件か討伐メンバーの家をまわった。だいたいのメンバーは今日も討伐に出かけてるみたいだった。
討伐に出かけるほどの元気があるってことか。みんな、怪我がひどくなさそうで良かった。
そして最後にアクアの家にやってきた。
コンコン
「こんにちはー」
「はーい! あっ! ルキア!」
扉をノックすると、中から出てきたのはアクア本人だった。パッと見は元気そうだ。
ドラゴンと戦うときに、たぶん一番魔力を使ったであろうから心配していたのだ。
「アクア! 元気そうで良かった!」
「ルキアこそ! 全然目が覚めないから心配したんだよー!」
「ごめんごめん!」
「ちょっと話してかない?」
「いいの? じゃあお邪魔します!」
アクアの家のリビングへと案内してもらった。アクアの両親は仕事に出かけていて、家にはアクアしかいないらしい。
彼女のご両親は薬屋、つまりはポーションを販売している人でよく村の外まで販売に出かけているのだ。
部屋の中には仕事で使うであろうポーションらしきビンが至るところにおかれている。知っているものもあれば、見たことがないものもたくさんある。
あっ! 紅茶が出てきた。部屋の観察をしている間にアクアが紅茶を淹れてきてくれたようだ。茶葉の良い香りが部屋中に広がっていく。
「ルキアは魔力の使いすぎ? でもそれにしては寝てる時間長くなかった?」
「あー、なんかちょっと思い当たることがあって……」
「思い当たること?」
「夢の中でも魔法使ってるんだよね」
「ただの夢じゃないの?」
「私も最初はそう思ってたんだけど……」
夢の中であったことをアクアに話した。
アクアは最初、不思議そうな顔を浮かべていた。けれど私の表情から真剣に話していることがわかったのか、前のめりになって話を聞き始めた。
「そんな詳細に覚えてるんだ!」
「うん! しかもちゃんと続いてる話っぽいし。」
「じゃあ本当に異世界に行ってるのかもね。」
「まぁ私の頭の中だけじゃ想像できないことがたくさんあるしね」
「きっとそうだよ! なんか夢って自分が知ってることしか出てこないんだって! スマホ? なんて聞いたこともなかったでしょ」
アクアが力強く言うことで、本当に体験した出来事だったのでは……と私も強く感じるようになった。
「そっか! ……じゃあ本当に異世界で魔法少女してるのか……」
「でもなるほどね、それで違う魔法も特訓しようかなって?」
「そう!」
「じゃあさっそくやってみよー!」
アクアが元気よく拳を空へと向けた。
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外へと移動し、互いに魔力を込め合う。
ドガーン!
「炎はさすがの威力……」
「えへへ!」
バシャーン!
「アクアもさすがの威力……」
「これが一番得意だしね!」
まずはそれぞれの得意な魔法を放った。威力は申し分ない。真っ赤な炎と真っ青な水が踊るように生まれては消えていく。
……ただ一点気になるのが、夢の中で……いや異世界で使うときのほうが威力が出ている気がすることだ。
あの魔法少女の服には魔法の力を向上させる能力もついているのかもしれない。
「じゃあ別の属性の魔法使ってみる? ルキア、水魔法やってみせて!」
「おっけー! ウォーターフォール!」
水魔法を唱えるとアクアとは比べ物にならない威力の魔法が出現した。もちろん悪い意味で、だ。
アクアの水魔法がバケツをひっくり返した雨のようなものなら、私の水魔法は小雨のようなものである。
「くっ……」
「しょうがない! でもまだ出せるだけいい方よ! 私は炎魔法出せないもん」
この世界では生まれつき、体に合う魔法が決まっているのだ。たいていは1つの性質のみに特化している。
そのため他の性質の魔法はうまく使えないか、呪文を唱えても発動しないかのどちらかの場合が多い。
自分の体質に合う魔法を判別する道具は存在しない。だが物心つく頃にはなんとなく自分に向いている魔法がわかるのだ。
まぁたまにわからなくて、全部の魔法を唱える人もいるが。
私は炎魔法以外にも他の属性の魔法は使える。結構珍しい方だ。もちろん威力はだいぶ下がってしまうのだが。
「確かルキア、夢の中で氷魔法を使ったんでしょ?」
「うん! モンスターの腕を切断するぐらいの威力はあった!」
「じゃあ今ためしにやってみてよ!」
「了解! アイスニードル!」
細い氷の柱が空中に浮かんだ。やはりあのときの魔法より弱い。
「……あのときはもっと威力があったのに」
「異世界だと強くなるバフがかかるのかもね」
「そうかも……?」
「じゃあもっと活躍できるように一緒に特訓しようね!」
「というか今さらだけど信じてくれるの?」
「まぁルキアがそんな突拍子のない嘘つかないと思うし、例え夢でも特訓は悪いことじゃないからね」
「そっか。じゃあ一緒に特訓おねがい!」
「まかせてー!」
アクアは水魔法を中心に特訓してくれるようになった。他の属性の魔法はトントンなため、競うように放ち合った。
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しばらく特訓後、アクアと別れた。
家に帰るとランがすぐに近寄ってきて話しかけてきた。ランの目はキラキラと輝いていて、話を聞きたいという気持ちが強く伝わってくる。
思わず微笑んで、ランと話を始めた。
「お姉ちゃんどこ行ってたのー?」
「アクアのとこ!」
「えー! もしかして魔法の練習した?」
「ん? まぁしたよ」
「ずるーい! ランもー! ランもー!」
私の服をひっぱるようにして、ランがまとわりついてくる。その顔には不満がありありと浮かんでいる。
まだまだ子供だなー。
「ランはまだうまく制御できないでしょ? 私達のたちと一緒に練習してたら怪我しちゃうよ?」
「やーだー! 一緒にやるのー!」
「今日は時間がなかったからランのことを見る余裕はなかったの。また時間があるときに見てあげるよ」
「……約束だよ! 私は勇者になるんだから!」
「うん。こつこつ頑張ればきっとなれるよ」
「うん!」
このイリオス村には勇者の話が残っている。前にドラゴンを倒すお話も勇者の冒険記が元になっているらしい。
この勇者の冒険記は国中に残されており、王都でも子供たちの中で人気らしい。そして勇者はイリオス村の出身だと、村の老人たちは話している。出身がこの村かは信憑性が怪しいが、確かに勇者はいたようだ。
もちろんこの村の子供たちも勇者に憧れをもっていて、だいたいの将来の夢になっている。
……そういえば勇者は異世界に行く力があるとかなんとかオババが言っていたな。
オババというのは村のはずれに住んでいる老婦人で、勇者を見たことがあるとよく話している。
まぁ信じる人は少ないけれど。
(オババに話を聞きにいこうかな。異世界とか最近関わりが強いし……)
……その前にまた異世界に行くことになりそうだ。ベッドに潜ると体が引っ張られる感覚がした。




