大いなる情報体との邂逅
(´・ω・`)やっ 初めましてだね
シランガナクジラさんと謎に感動的な別れをすまし、進んだ先にはこもじがいた。
なんでやねん。
「偽こもじ。」
(´・ω・`)僕が好き好んでこの顔になったわけじゃないよ
「私の記憶を投影してる的な?」
(´・ω・`)そうそう。
私の中に潜むイマジナリーこもじが現実にまで逃げ出したかと思ったぜい。
本物こもじは、もっとのほほんとした顔で、舐めると豚汁の味がしそうな人だ。私が間違えるわけがない。
ここに来るにあたって、大いなる情報体、人類に試練と災厄をもたらす者、超常の存在。どんな輩がでてくるかとドキドキしていたのだが、(´・ω・`)であるなら平常心で話せそうだ。これ、間違っていつものノリでセクハラして世界が滅ぶとかないよね?
「突然お邪魔してごめんね。んー、おしゃべりしにきただけなんだけど。それが今、大事かなって思ってさ。」
(´・ω・`)いや、僕からしてもありがたいよ。君にはいつか、会いたいなと思っていたんだ。
「邂逅イベント、普段喋ってるシステムちゃん、称号、さっきのクジラさん。これって、どれも…えっと、そういえばなんて呼べばいい?」
(´・ω・`)なんでもいいけど、今決めちゃうね。大いなる情報体というのは、勝手にそう呼ばれてるだけだよ。思念と公理を司るアクシノムとよんでおくれ。
「よろしく。私は帆世静香よ。話を戻すけど、さっき挙げた彼らからアクシノムの影を感じてるんだけど、あくまで初対面なんだ?」
(´・ω・`)そうだね。君たちが利用しているシステムも、クジラくんも僕の一部機能を使用しているにすぎない。称号っていうのは、君の思っているように識別タグという扱いだね。
「このまま色々おしゃべりしたいけど、何か制限はある?」
(´・ω・`)好きなだけ居てくれていいさ。でも情報を開示できるかは保障しないよ。
思っていたより遥かに良好な状況だ。
少なくとも人類に対して悪意を持っているような、いわゆる悪の黒幕という存在ではないらしい。しかし、巫さんの世界をめちゃくちゃにしているのも事実だ。というか、それを聞きに来たのだ。
「まず一番聞きたいことだけど、アクシノムの目的はなに?」
(´・ω・`)人類には進化してほしいのさ。種族というよりも、戦える力をつけてほしいんだ。
「そのための試練やダンジョン?」
(´・ω・`)そうだよ。
「それじゃ世界滅んじゃうんだけど。」
(´・ω・`)その時は、滅ぶ前の世界線を使うから大丈夫だよ。
「.........戦える力をつけたい、というけれど敵がいるのね?」
(´・ω・`)■■■■■や■■■とか、敵は多いんだよね。
「なんて?」
(´・ω・`)君の魂だと、まだ認識できない情報もあるってことだね。
「ふーん。おいで、ベルフェリア。」
腰に刺さったままウズウズと震えていた銀爪ベルフェリアを引き抜く。
ベルフェリアなら理解できるはずだし、アクシノムからしても会いたい存在じゃないだろうか。
ぶっちゃけ敵ってコイツでしょ。
(´・ω・`)やあ、怠惰を司る原初の冠。微笑む福音のベルフェリア。
『はぁ、嫌ですわ。それにわたくしは、今は銀爪ベルフェリアですのよ。』
(´・ω・`)帆世静香、このクソ虫を捕まえてくれて本当に助かってるんだ。おかげで、今の源流世界線は、かつてないほど可能性を開くことができた。
矮小な人間からすると、遥かに高位な超常同士の邂逅。
そこに流れる空気は、一瞬即発とは言わないが決して良好なものではない。
お互いに敵意や不快感を隠そうともしていなかった。
「敵っていうのは、ベルフェリアみたいなのを言うんでしょ?」
(´・ω・`)そうだね。異界に棲んでいる悪魔は、こうして僕の領域に干渉しては世界を滅ぼす害虫さ。そのせいで何回世界線を変えてきたか分かったもんじゃないよ。
『アクシノムと呼ぶんでしたかしら。やることがセコくて、みみっちいのですよ。戦う気も無いくせに逃げ続けて隠れ続けて、それが妙に上手なんですの。』
「ベルフェリアの処遇、どうしたらいい?どうしてほしい?」
(´・ω・`)僕が引き取ってあげてもいいよ。一生出てこれない世界線に飛ばしちゃおうか。
『主…? ベルフェリアを捨てないですよね? ね?』
「ぽよ~。」
(´・ω・`)今のところ、従属は本当にできているみたい。このまま武器として使ってもらえば、破格の性能なんじゃないかな。
「意外と温情措置なのね。そもそも私達の世界ってどういう風に成り立ってるの?」
そもそも地球上ですらほとんど行ったことのない未知の場所だらけなのだ。世界線とか異世界とか、どうやら宇宙規模を超えた話が展開されている。
私が分かっている範囲では、まず地球には無数の世界線が存在する。私が右足から歩いた世界線、左足から歩いた世界線。そういう些細な違いで無数の世界線が生まれるということだ。何となくわかる。
そして、その世界線はあるきっかけで6つの世界に収束していくらしい。それが、邂逅イベントで出会った巫さんやフニちゃんの世界線だ。
(´・ω・`)ほとんど君が知っている限りであっているよ。ただ、今まで存在していた世界線は5つなんだ。今回、新たに6つ目の存在:源流世界が誕生した。そして、ベルフェリアを捕まえたりと順調すぎるほど順調に育ってくれているんだ。
「聴かせてもらうわ。」
(´・ω・`)じゃあ、ちょっと長いけど、お話を聞いてもらおうかな。
僕と同格、それよりも格上の存在は何種類もいて、それぞれが自分の管理している世界を持っている。お互いに持っていない物を奪い合って、管理者同士がぶつかる様な世界なんだ。
そして、僕の管理している世界は自らエネルギーを生み出せる特別な構造をしている。そのエネルギー欲しさに、多くの敵に囲まれている状況なんだ。僕自身は闘う力がほとんどないから、こうして世界を隠したり、攻め込まれた時の世界線を切り捨てて逃げてきた。
人類に期待しているのは、僕が戦えない相手とも戦えるようになってほしいってこと。そのために、有望な世界線に干渉して、戦うための力をつけてほしくて試練を起こしているんだ。これは、さっき言ったような入り込んでくる異界の侵略者の討伐も含まれている。今回でいうと腐敗と病のモルビグラントを討伐してほしくて送ったんだ。
そうしたら、そこの微笑む福音のベルフェリアが干渉してきてしまった。「終わったー。この世界も捨てなきゃいけない。」って思ったよ。せっかく今までに無い世界が誕生したのに、ベルフェリアが召喚されたらほとんど滅亡したようなものだからね。でも、帆世静香を筆頭にみんなが立ち向かったことで悪魔を討伐して、世界は救われたんだ。干渉してくる悪魔は、ベルフェリアが一番多かったからね、僕はすごく気分がいいんだ。
この世界の成り立ちだったね。人類には、時々強烈な因果を生み出す個体が現れるんだ。
死と霊魂を操るハラフニルド
深淵に辿り着いたリアーナ
唯一神を創造したエゼキエル
神と語らう真人
種族を変えた冥月
この5人が生まれた世界は、その因果によって収束する方向を決定するんだ。
彼らはみな強く成長する可能性を秘めていて、実際に僕に迫るほど強くなった世界線は何度もあった。それでも人類は滅亡し、新しい世界線へ戻っていくことになるんだ。
「ちょっとまって。私の知ってる組み合わせと少し違うわ。真人の位置、巫さんじゃないの?」
(´・ω・`)そうだね。君たちが出会った巫唯依は、真人鷹平のパートナーだった人だよ。
真人の世界は順調に強くなっていった。エネルギーを生み出す星で、そのエネルギーを万物の神という形で発現させた世界だよ。神の力を引き出して戦う真人と巫唯依たちは、僕の試練を助け合ってクリアしていった。それでも、■■■■■の干渉をゆるしてしまった。勝ちきれないと判断した真人は世界を切り離し、たった一人で戦うことを選択するんだ。
真人の選択はある種正しく、脅威と切り離された世界はその瞬間は滅亡を免れた。真人の権限の一部を引き継いだ巫唯依が今でも頑張っているね。だが、世界から切り離された真人は、死んでしまった後も魂が還ることはできなかった。死ぬ間際、僕は彼と会ったんだ。真人の願いを聞き、彼は記憶を保って転生を果たすことになる。それが、今の源流世界だ。
真人は巫唯依を救いたかった。世界を救いたかったんだよ。そして、これまでのどの派生世界でも結局は滅亡すると考えるようになったんだ。だから、彼は、5種類の全ての世界線に派生しないように因果の楔と戦うことにした。彼の願いは、そのために何度も転生できる世界を作って欲しいというものだった。
まず最初、人類が誕生したばかりの時代に彼は生まれる。ホモサピエンスとネアンデルタールが覇権を競う中で、三つめの人類が誕生していたんだ。それが鬼であり、冥月が生まれると鬼が全ての生物を飲み込む鬼世界が誕生する。だから真人はホモサピエンスをまとめて、鬼族とネアンデルタールを悉く絶滅させた。
それから何度も転生を繰り返すことで先の時代に進み、西暦を使うと1200年頃。キリスト教の力が絶頂に達し、エゼキエルが生まれるんだ。彼は強い扇動力を持っていて、それにエネルギーを神気として知覚することができたんだ。エゼキエルが奇跡を起こし、民衆をまとめることでキリスト教をもって全人類を統一し、その信仰によって唯一神を創造しちゃうんだ。良い時は僕の半分くらいの権限を得るまでになるよ。真人はサンティス家に入り込み、エゼキエルが生まれると同時に暗殺している。
それからまもなくだね、1400年ころリアーナが生まれるよ。キリスト教が弱ったこともあって、彼女は魔女狩りを免れて魔導探求の道に入る。ありとあらゆる物を知りたい、純粋な欲望を糧に世界中の知識を収集するんだ。そしてリアーナは異界に旅立ち、その知識の受け皿として二人目のリアーナが残される。彼女もまた、世界探求を極め、ついに私にまで自力で到達するほどだ。だから、真人は世界中を探し回ってリアーナを殺すよ。
そしてその頃、同じく知識を探求していた一族があるんだ。それがハラフニルドだよ。ハラフニルドとは個人名を指す名前ではなく、一族全員がその名前を名乗っているよ。
リアーナが広く知識を求めたのに対して、ハラフニルドが求めたのは死・霊・蘇り・魔術・宗教弾圧がすべて混ざり合った、ネクロマンシーや蘇生術的発想だった。そして霊魂の存在に気が付き、生まれたばかりの赤子に儀式を施し、成功させてしまうんだ。不死のハラフニルドが誕生することになる。もっとも、そうなる前に真人が一族諸共滅ぼしているよ。死者蘇生を行うと、魂の循環が途切れてしまうから僕としても都合が悪いんだ。ハラフニルドの世界では死者蘇生の理を封印する代わり、霊魂を一時的に従属させる能力を与えたんだよ。
そうして、真人の長い転生の旅が終わる。この世界はどこにも派生する先を失い、新たな運命を探して漂い始めたんだ。真人は膨大な年月を転生して過ごしてきたんだけど、遂にその全ての記憶を消すことになるんだ。今までの自分がいたら、世界を新しい道に導けないからってね。そして今の自我が芽生えた。僕は真人の約束を果たすため、彼にもう一度代表の権限を与えて世界を任せることにした。
で、顔合わせの邂逅イベントで巫唯依と出会い、巫唯依の世界を救う因果を作るはずだった。でも、真人の世界はあまりに早く最初の試練をクリアしてしまった。他の世界線の代表よりも遥かに早かったせいで、真人だけ100RP先に貰っちゃったんだよね。それをうけてシステムちゃんは急遽人類の代表を別の人間に任せることにした。それが、君なんだよ。帆世静香。
今後起こる変革に、なぜか君は中心にいるんだ。一つ関わることで、また次の道が開かれ、そうするとまた次に……こうして世界を導く運命を切り開くかもしれない存在なわけ。これは君の意思もあるし、その時の運もある。そういう可能性を持っているから選ばれたんだ。そして、君は一人ではなく周囲の人間を巻き込んで進む性質があるんだね。この顔のこもじも、君に巻き込まれる形で邂逅イベントに参加することになる。
世界の成り立ちは、こんな感じだよ。
真人が命を懸けて救いたかった巫唯依を、今は君が助けようとしている。僕としては、そのくらい強くなってくれるとすごくうれしいし、応援しているよ。
「…なるほど。真人と巫さんは、そういう関係があったのね。」
(´・ω・`)他にも聞きたいことはあるかい?
「もちろん強くなりたいと思って頑張っているわ。気になるのは、魂の器…これが成長の天井になるんじゃないかしら。」
(´・ω・`)RPで拡張していってほしいんだけど、代表にRP上げるようにしてたから…そうだね、その時が来たら魂を拡張する試練を与えるよ。
「試練はアクシノムの意思で決めてるの?」
(´・ω・`)違うよ。それぞれの世界線に配置しているシステムによって生成されているんだ。
「世界を渡る方法はある?」
(´・ω・`)平行世界なら、人間でも渡れるよ。召喚の儀式ができる子を探すんだね、ただし相手の意思や座標が分からないと迷子になるよ。
「巫さんの世界の人を、私たちの世界に連れてくることは可能?」
(´・ω・`)別にいいよ。同じ人間は同時に存在していないから、困ることはないんじゃないかな。
「私に前世があるのは、何か関係ある?」
(´・ω・`)君は君だよ。そもそも源流世界なら全員前世持ち出しね、覚えてるかどうかの違いはあるけど。
「進化の箱庭に人がいるんだけど、どういう存在?」
(´・ω・`)ミーシャのことだね。彼女たちは滅亡する世界線から切り離して連れてきた存在だよ。試練にちょうど良かったからね。
「彼女達が敵対存在になってるのが納得いかないわ。外に出れるようにしてくれない?」
(´・ω・`)そっか、いいよ。でも相応の試練は用意させてもらうね。
「内容は?」
(´・ω・`)6層に到達した人間1人とPTを組んでもらう。そのまま10層に進めば一緒に帰還していいよ。何人PTでもいいけど、1人につき1人までの契約だよ。
「ん、ありがと。」
(´・ω・`)君自身の強化はいいのかい?
「貰える物は全部貰うわよ。」
(´・ω・`)一つ問うてもいいかな。君にとって仲間はどうやって決めるの?
「…ダンジョンや試練に挑む仲間ってことよね。」
(´・ω・`)そうだよ。
「心から信頼できて、そして死なない人。かな。」
(´・ω・`)そうだね。そのためにアレコレしてるのは知ってるよ。じゃあ僕からささやかなプレゼントだ。
(´・ω・`)君と共に試練を乗り越える者に、【瞬歩】を与えよう。もちろん、与えるかどうかは君が決めていいよ。
「!」
(´・ω・`)じゃあ、そろそろお帰り。
「ありがと。またね。」
(´・ω・`)じゃあね。
そうして私のいる空間がしゅわしゅわと消え始めた。
このまま目を瞑ればソロモン諸島に浮かぶ島に出て、レオンとダンジョンクリアの祝杯をあげることになるだろう。そのあと進化の箱庭にもどって、ミーシャやこもじと会って
あっ 何をしているんだッ 今帰ってはいけない!まだお願いしたいことがあった!!!
「アクシノムッ!!お願いがあるの!」
(´・ω・`)どうしたんだい?
「急いで服脱いで!」
(´・ω・`)??
「は・や・く!」
(´・ω・`)これでいいかい?
「ポーズもとって!!!」
(´・ω・`)ほい
うひょー!ぱしゃぱしゃぱしゃ
こもじにお土産ができた。すごく不思議な顔をしたこもじが、裸でマッスルポーズをとっている写真を数枚撮ったところで、ついに私の足元の空間に穴が開き、飲み込まれた。
ちなみに、写真にアレは映りこんでいない。ベストアングルだ。
:(´・ω・`):
ルカ「こもじさん、どうしたんですか?」
(´・ω・`)一瞬、とてつもない邪念を感じたこも。
ルカ「俺は感じませんでしたけど」
(´・ω・`)ねちょねちょした邪念、あいつしかいないこも…




