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ep.02




===============================


 今日はお庭で大怪我をした方がいらしたの。

このお屋敷の結界を潜り抜けて入ってきたんだもの。きっとすごい人だわ。怪我の具合はひどいものよ。すごく痛そうなのに笑っているから私が泣きそうになってしまったわ。

はやくあの方が良くなりますように。


===============================



 




✴︎





目を開けたら知らない豪華な天井だった。

状況を把握するのに、数秒。呼吸、心拍ともに問題なし。腹も塞がってるし、骨も...元通り。

やった!生きてる!!

がばりと起き上がれば介抱をしてくれていたらしい医者と目が合った。驚いた表情でこちらを見た医者は若いが腕はとてもいいらしい。


「ありがとうございます!どこも痛くない!」

「へ?...あ、あぁ、それはよかった...」


手をぐーぱーしても違和感も痺れもないし、魔力は8割回復してるし、ここまで優秀な医師をお抱えにしてるんだからサウンズハイドはほんとにすごい。


ぐ〜〜〜


なんて、感心していると腹の虫が鳴いた。そういえば、朝から何も食べてなかった。

でもなぁ、治療してもらってるのにご飯までねだるのもなぁ...それに僕、不法侵入だし。

そんなことを考えつつも腹はぐーぐー唸り声をあげている。どうしたもんかと腕を組んで考えてもお腹が空いたとしか考えられない。


「食欲があるなら食事を摂るかい?」


医者の男が声をかけてきた。

今一番聞きたかった言葉だ。


「いいんですか!?」


前のめりな僕に医者は引き気味にいいよと返事をしてくれた。優しい!


「消化に良さそうなものを頼もうか?りんごのすりおろしとかなら食べれそう?」

「りんごのすりおろしからステーキまでなんでも食べれそうです!!」

「.....つまりしっかり食べたいってことでいいの?」

「はいっ!」


 その後笑って出ていった医者は少しして美味しそうな食事を持って戻ってきた。

スープにサラダにパンにメインのお肉、デザートまで。最高。

さっそくいただきますと同時に食べ進めていくが、腹が満たされていくと同時にいくつか疑問が浮かんでくる。


「ところで、何で僕こんなに良くしてもらってるんですか?不法侵入なのに」


てっきり殺されたのかと思った。勝手に貴族の敷地に入ったし、死んでって言われてたし。


「あぁ。ロネリア様が助けて欲しいとここに君を連れてきたからだよ」


ロネリアって...たしかあの時の綺麗な女の子だよな?僕にすごく殺意を抱いてたあの子。


「この別邸に仕える者達だけは、あの方が望めばなんでも叶えて差し上げるんだ。あの方が与えてくださったように。君を助けたのも、ロネリア様がそう望んだからだよ」


 なんとも気になる言いように首を傾げたと同時に扉がノックされた。それに医者が返事をすると、男と少女が入ってきた。

あの時の二人だ。

一人はお仕着せを綺麗に着こなした男性。もう一人はドールのように完璧な美しさを顔に貼りつけた少女だった。


「元気そうで何よりだ」


食事にがっついていた僕に初老の男性が声をかけてきた。


「お陰様で、とても元気になりました。ほんとうにありがとうございます」

「そうか、それは良かった」

「ところで、僕この後牢屋行きですか?」


 腹が満たされてきたのなら頭も動き始める。そしてちゃんと考えれるようになるのだ。医者のさっきの言葉だとこの子が僕を助けるよう指示したように聞こえたけれど、やっぱり不法侵入だし、元気になったところで一旦は捕まってしまうんだろうなと覚悟はしてる。

さすがに相手にとったら僕は怪しさ満点だろ。


「さてさて、どうしましょうかロネリア様」


と笑いつつ彼は少女へと視線を向けた。

彼女は扇で口元を隠し僕を見下ろす。


「貴方に自由なんてないわ」


やっぱりなぁ

そうだよなぁ。

はぁ...つらい


それにしても...こんなに可愛いお嬢様がなかなか厳しいなぁ。まぁ、元はと言えば僕が全部悪いんだけど。

隠しもせずに首を垂れてため息を吐いた。

そんな僕とは裏腹にお仕着せを着た男性はなんともおかしそうな声で彼女に返事をしている。辛い。


「さて、お優しいお嬢様は君を自由にと仰った。サウンズハイドの敷地に踏み入ったことも今回は見逃すそうだ。元気になったら君は帰りなさい。しかし、もう二度と立ち入らぬよう気をつけてるように」

「.....え?」



彼は何を言ってるんだ。

お嬢様と言ってることが真逆もいいところだ。彼女は僕に自由はないと言ったのにそれを一緒に聞いていた彼は自由にと言う。同じ空間にいるのに一つの言葉を互いに正反対の意味として捉えているこの状況が頭を混乱させた。

あからさまに顔に困惑が出ていたのだろう。お仕着せの男性も、医者も僕を見て可笑そうにくすくすと笑っている。そして彼女も、少し困ったような表情で笑った気がする。ほんとに微かではあるけれど。


「あの...えっと...ロジャー?」


彼女は困ったように隣にいるお仕着せの男性を見上げた。その声はぎりぎり聞き取れるくらいの声量だったけれど、とても綺麗な声色で、もっと聴きたいと思った。


「あぁ。そうですね。少しだけ説明をいたしましょう」


そう言うとロジャーと呼ばれたお仕着せの男性は表情を改めた。


「ロネリア様の言葉は真意ではない。詳しい事情は省くがね」


 謎は深まるばかりで混乱しているが、つまり、「自由なんてない」は真意ではなく"捕えずに自由にしてあげる"という意味だったらしい。


なんで、そんなややこしい事を...


「詮索は不要です。ここで見たものは他言無用。いいかね?」


まだ、理解しきれずぼんやりしている僕の元に近づいてきた彼女は僕の手に手を重ねて小さく呟いた。


「ずっと苦しめばいいわ。」


そう言った彼女は僕と目を合わせずにすぐに離れてしまった。



なんだこれ.....




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