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87/202

87,『偽りの王』討伐クエスト。

 

〈王殺しパーティ〉の集合場所を、私はカブギルド本拠地の前にしていた。


 あのときは──地下迷宮〈死の楽園〉から出た直後で、半分頭が死んでいたとはいえ、なんと間抜けな待ち合わせ場所。

 ここでは、ミリカさんに見つかってしまうではないか。

 ミリカさんだけは巻き込みたくないのに──次期アーテル女王だからねっ♪(本人はまだ知りません)。


 ところが、ミリカさんはカブギルド不在という。ロクウさんが言うには、ハーバン伯爵の私設軍を指揮するため、領土に戻っているという。


「ロクウさん、聞いていいですか。なぜいまハーバン軍を動かす必要が? まだラザ帝国への派兵は行われないはずですよね」


「ですが国内では、すでに王がラザ帝国に宣戦布告するつもりだと知られているようで。それに反対する領主が自軍を集め始めれば、王側の貴族も対処せざるをえない状況。ハーバン伯爵は王側ですあり、いまやミリカさんが、実質的にはハーバン伯爵家の舵取りを行っているので」


「それで忙しいわけですね」 


「しかし王──ではなく、王に擬態した魔物も、意図的かどうかここまで大々的に動くとは。先生、ラザ帝国にもとっく気取られていることでしょう」


「まぁラザ帝国はスパイさんの百人や二百人、こっちの政府中枢やその付近に送り込んでいるでしょうからね。……ふむ」


 まさかとは思うけれど、ラザ帝国がアーテル国王の正体が魔物と知ることはあるのかな? その場合、ラザ帝国はどうするのだろう。


 そして私たちは〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉撃破後、その正体を最終的に明かすとしても、どこまでにするべきなのか。

 国内の一部有力者(ミリカさんへの王位引継ぎが恙なく進むのに必要な一部)に留めるべきか。

 それとも、いっそ国内全域へと公表してしまうのか。


 思うに最悪なシナリオとは、『隠しておきましょう!』からの『うわぁぁ、ラザ帝国側がリークしてきて、アーテル国内に情報拡散していくよぉぉ!』である。

 その場合、国民の王への心証が落ちるに落ちる。すなわち、そのときの王とはミリカさんなのだ(本人はまだ知りません)。

 これ、どうしたものか。〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉を討伐する前から悩むとは、『捕らぬ狸の皮算用』ぽいが、こういうのは事前にある程度の方向性は決めておかないと。


「とにかく、皆さん。それぞれさまざまな動機はあるでしょうが、よくぞここに集まってくれました。これより私たちが戦うのは、これまで人類が一度たりとも倒したことのない領域。敵は、神に片足を入れているといっても過言ではない、驚異的なる魔物。〈攻略不可能体〉が一体、その名は〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉。

 私たちは、この魔物を倒し、アーテル国に平和をもたらすのです──というか、本当に時間ないですよね。宣戦布告しちゃったら、『あのときの王は魔物だったので、ノーカンでお願いします!』も通らないでしょうし」


 まぁラザ帝国の女帝さんは、なぜかアーテル国が好きらしいので、すぐに和平へもっていけるかもだけど。あんまり、そこに多大な期待は持たないほうがいい。


 とにかく、私はパーティメンバーへと視線を向けた。ソロプレイを愛する私だけれども、今は仲間がいることが有難く、心強い。

 我が弟子ロクウさん。

 男爵の爵位はGETだぜ、精神のライオネルさん。

 私のわきを舐めたそうに見ているベロニカさん。


 そして、修道女のサンディさん(コスプレでは、ない)。

 …………あれ? サンディさん、いないよ??????


「……………サンディさんは?」


「そういえば今朝がた、このような手紙が届けられました。先生宛てです」


 ロクウさんより、サンディさんからの手紙を受け取った。内容『無理ですごめんなさい、逃げるから許してアリアちゃんっ!!』


「……まだ遠くには行ってないですね。緊急クエスト『逃亡サンディさんを捕縛せよ!』開始です」


 30分後、サンディさんは無事(?)に捕獲された。

 捕獲したのは、ライオネルさん。さすが探索スキルを開拓しただけのことはある。ところがライオネルさんはスキルも使わず見つけたそうだ。

 抱えていたサンディさんを放りすてて(うむ、可哀そう)、


「どこにいたかって? 王都の入り口付近で、頭を抱えて転がってやがった。どうやら一度は逃げようと思ったが、自分だけ逃げるのも悪い気もする、しかしやはり逃げたい──という懊悩で転がっていたらしい」


 私はサンデイさんの肩に手を置き、励ますようにうなずきかけた。


「サンディさん!」


 うるうるした涙目で見返してくるサンディさん。


「アリアちゃん?」


「大丈夫ですよ、サンディさん! 死ぬときは、みんなが一緒です!」


 サンディさん、またも頭を抱えて転がりだす。とんでもない転がり速度で。


「いやだぁぁぁあ死にたくなぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ!!! 全滅やだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「冗談ですよ、サンディさん。〈王殺しパーティ〉の、半分くらいは生き残りますよ」


「いやだぁぁぁぁぁ! 絶対に死ぬほうに、わたし入ってる!ぅぅぅ! いやだぁぁぁぁ行きたくなぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 元気なサンディさんを引きずっていき──

 

 いざ、王城へ!


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