86,武装Lv.4123。
私は久しぶりに、本当の自宅に戻った。
カブ畑は休耕中。少し行った墓地には、流行り病で死んだママとパパのお墓もある。そういえば、墓参りも久しぶりだ。
一日の休暇後。
朝陽の中、ママとパパのお墓の前で、私は言った。
「今日は、偽り王である〈擬態幻魔〉さんを討伐するため、動く日です。前回は、私の体内で爆睡する〈倦怠艶女〉さんのおかげで見逃してもらえましたが、二度目はないでしょう。向こうも本気で殺しに来る。
そして──相手は〈攻略不可能体〉が一体。これまでの魔物とは、桁が違う。私が死ぬ確率は、かなーり高そうです。ママ、パパ。早々とそっちに行くことになるかもなので、よろしくですっ」
いったん自宅に戻り、朝ごはんをしっかりととる。
今回、地下迷宮〈死の楽園〉にいたのは42日間。
うーん、体感的にはせいぜい7日だったのだけど。
仮説1,〈死の楽園〉内と外の世界では、時間の流れが違う。
仮説2,時間の流れは同じで、単に私たちが脳内麻薬ドバドバで、時間感覚が麻痺していた。
なんか後者っぽいなぁ。
とにかく〈死の楽園〉へ降りる前は、私の魔改造鍬〈スーパーコンボ〉の武装Lv.は1102だった。これが今や、武装Lv.4123となっている。
だけど、目標の武装Lv.5000には届かなかった。正直、武装Lv.5000は最低ラインだったのに。
やはりLv.4000台ともなると、魔物強敵ランク『ヤバ強』からの強化素材では、ほとんど上がらなくなってしまった。つまり、そこからは『鬼強』から強化素材を得ろ、という次元に突入。
だが『鬼強』は、本当に撃破が難しい。
私は42日間のうち、5体の『鬼強』ランクと戦っている。そのうち撃破できのたは、3体のみ。残りの2体には危うく殺されかけ、死に物狂いで逃げた。
また勝利できた3体も、どれも命ギリギリのやり取りで、まぁ愉しくはあったけど、『危なかったぁ』という感じ。
はじめに撃破したときは、武装Lv.3552だったかな。その後、武装Lv.が上がっても戦いは楽にならなかったし、二度目の敗走のときは武装Lv.4000を超えていた。
つまり『鬼強』との戦いにおいては、こちらの武装Lv.が3500~5000?あたりは、さほど差はないということだ。
もちろん実際に戦った魔物の個体レベルも、差はあるだろうけども。
とにかく、一戦一戦が命がけの『鬼強』ランクとは、気軽に連戦はできない。それもあって、この武装Lv.4123で落ち着いた。
なるほど、武装Lv.4123というのは、おそらく人類史においてはトップクラス。客観的に見て言うけれど、もしかするとすでに頂点を極めたかも?
実際【覇王魔窟】でも、今なら800階くらいまで一気に攻略できそう。だけど、それがなんだというのだろう?
結局のところ、すべては〈攻略不可能体〉のための前座なのでは?
という気さえしてくる。とにかく武装Lv.4123で、どこまで〈擬態幻魔〉と戦えるのか、試してみようではありませんか(それはそれで、愉しみではある)。
ただその前に、もう一度、一考してみる。そこまでして、〈擬態幻魔〉を討たんとする必要はあるのか、と。
答えは、もちろん『ある』だ。
ラザ帝国との戦争状態ともなれば、当然ながらアーテル国は平和を保てない。平和でなければ──平和でなれば、同性婚ができないじゃないかっっ!!
だってまず『同性婚OK』にする法案可決には、平和状態という前提が必要なのかな、と思うわけ。
ゆえに私は戦うのだ。ひとえにセシリアちゃんとの同性婚のため。
ただ、それだけではないのかも。
カブギルドのギルマスとして、ギルドメンバー(多数は知らない人たちだけども)への責任がある。
戦争ともなれば、彼らの大半が徴兵されることだろう。そして多くが死ぬのだろう。
うーむ。やはり、それは阻止しないとだよね。それがギルマスとしての責任である。あぁ、私も責任について語るようになってしまったか。
さてと。
食器を洗いながら、〈スーパーコンボ〉のスキルツリーを眺める。
〈死の楽園〉では、定期的にスキルツリーを開拓していた。また昨日一日の休暇中に、残っていたスキルポイントも使えるだけ使い、可能な限りパネルを解放済み。
王殺しに行く前に、42日前のスキルツリーと比較しつつ、確認しておくとしよう。
まず【打撃領域】から。
基本となる打撃Lv.パネルは(打撃Lv.20)だったのを、(打撃Lv.43)まで上げておいた。
破壊力型ルートでは、《地破嵐打》の上位互換スキル《地滅嵐打》パネルを解放。
バランス型ルートでも、《桜吹雪打》の上位互換スキル《桜氷雪打》パネルを解放。
特殊効果型ルートでは、まず《毒ノ打》の上位互換スキル《毒ノ国》パネルを解放済み。ただしこれは【毒化領域】のほうで解放されたものだ。《毒ノ打》を解放したときは、【毒化領域】はまだ現れていなかったからかな。
ほかに特殊効果型ルートでは、《夢ノ打》と《遅ノ打》という、二つのデバフ系スキルパネルを解放済み。
【防御領域】では、基本となる防御Lv.パネルは(防御Lv.20)から、(防御Lv.55)まで上げておいた。
打撃Lv.より力を入れたのは、打撃の場合スキルを使えば済むが、防御の場合、不意打ちだと防御スキルを発動する前に、攻撃を受けてしまうから。
『己を守護する』型ルートより、《鎧装甲:地獄》の別パータン、《鎧装甲:状態異常》を解放。この二つの防御スキルを同時発動できないのが、地味に辛い。
『パーティ仲間を守護する』型は、これまで通り《結界α》と《結界β》。さらに《結界θ》という、新しい防御スキルも解放した。
【射程領域】では、《波動砲Lv.3》、《阿吽竜巻》、《氷雪豪雨》、《黒体波動》はそのままに、新たに射程スキル《大地愛暴》を解放してある。
残念なこともある。
【栽培領域】の《耕作》スキルは、いまだ《:熟練者》のままだ。次なるレベルの《耕作》パネルを解放したかったが、いつまで解放していっても出てくるのは《無題》パネルのみで、仕方なく断念した。
おそらく、まだ次なるレベルの《栽培》スキルがあるはずなのだが。それはまた次回。
【怠惰領域】でも、同じことが起きた。《怠惰心地》は、時間操作系のスキル。これのさらなる高みのスキルを解放できれば、鬼に金棒と思ったけど。
こちらも出てくるのは《無題》パネルばかり。【怠惰領域】は《怠惰心地》で終わりなのかは、それとももっと解放を頑張れということなのか。
【隠密領域】では、《視界不良》の上位互換《視界滅界》パネルを解放。
ただし時間制限のない《視界不良》と違い、《視界滅界》は時間制限がうるさいので、これは状況に応じてどっちも使えるのだ。
【呪術領域】より、《人形殺し》パネルを解放。私は、この新顔の《人形殺し》スキルが、〈擬態幻魔〉を討つための切り札として、けっこう期待している。
さ、戸締り確認して──出発っっ!
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