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36,ソロプレイ精神。

 

 次に気づいたら、エルフの里の病院だった。


 ベッドから起き上がると、椅子に腰かけたジェシカさんが林檎を食べていた。どうもあの林檎は、私のお見舞いの林檎な気がする。


「ジェシカさん、私の寝顔を見た記録更新ですね」


「やぁ、アリア。目覚めたね。なんとか今回も生きのびたようだねぇ。しかしミリカから話を聞いた限り、かなりギリギリの戦いだったようだ。死んでいてもおかしくなかったとか」


「ですが自業自得でしたよ。〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉が召喚したとき、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉はまだ小さかった。いま思うと、あれは幼体だったんですね。あのときに仕留めておくべでした。成体となった〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉は、ふむ、あれは【覇王魔窟】中層階クラスの敵でしたね。500階あたりの折り返し地点にいても、まったく意外ではない魔物でした」


「それに勝ったんだから、たいしたものだ」


「はぁ。必ずしも、そうでもありませんよ。今回は戦場が外だったので、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉も他に意識がいったりしていましたからね」


橙鎧龍オレンジドラゴン〉を倒せたのは、《耕作:見習い人》のおかげだ。あれほどの魔物も一撃で撃破できるスキル(危うく私も死にかけたけど)を創り出せるとは、かなりチートと自慢できる。

 だたし最大の弱点は、やはり『スキル実が栽培されるまでの時間』だろう。

 ちなみに今回は人参だったが、たぶん発動のたびに『スキル実』の形態も変わるのだろうね。


 とにかく、栽培時間に『かゆいところに手が届かない』感がある。〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉クラスの敵と戦うときにこそ、《耕作:見習い人》は必要となってくる。ところが、あれほどの強敵を相手にしているときに、のんびり栽培なんかしていられるだろうか?

 いや、この弱点を解決できる、唯一の方法はあるにはある。あるのだが、その選択肢は取りたくないのだ。


 林檎を完食してから、ジェシカさんが「しまった」という顔をした。さては、やはり私の林檎だったな。しかし気を取り直した様子で、ジェシカさんは言う。


「アリアも、組めば?」


 ちょうど、私が考えていたのと同じことを、ジェシカさんが提案してきたか。偶然だろうが、こういう偶然は嫌いだなぁ。

 私は念のため、警戒しながら聞いた。


「何を、ですか?」


「パーティを。やっぱりソロじゃさ。限界があるでしょ。これから魔物たちも、より手ごわくなっていく。だいたい魔物側も複数で出現することもあるのに、キミはいつまでもソロじゃぁね」


 確かに、ジェシカさんの指摘ももっともではある。たとえば、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉。単体とカウントすることもできるが、では表皮に群がっていた〈蚤量魔フリーデッド〉はどうか。おそらく【覇王魔窟】に出現したならば、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉だけでなく、大量の〈蚤量魔フリーデッド〉の対処もせねばならないのだろう。


 ふーむ。通常ならば、そろそろソロプレイを終わらせるべきなのだろうけど。

 私が悩んでいる内容を誤解したようで、ジェシカさんが言う。


「心配しなくていいよ。【覇王魔窟】最上階までたどり着いた者は、もれなく全員の夢が叶うはずだから。もちろん夢同士がぶつかった場合は、話し合いの必要がでるかもだけど。たとえば、ベロニカとミリカが、互いにアリアの永遠の愛を欲しがった場合、願いがぶつかりあうからねぇ」


「そんなの、世界線を二つ作れば済む話じゃないですか。私がベロニカさんとくっ付く世界線と、私がミリカさんとくっ付く世界線を」


 ジェシカさんが、あんぐりと口を開ける。


「キミの思考って、スケールがでかいのか、小さいのか。謎だ」


「あのですね。私がパーティを組むのが嫌なのは、もっと単純な理由なんですよ。いうまでもないことですが、【覇王魔窟】を攻略するということは、何日間もかかるんです。つまり、そのあいだずっと他人と一緒にいなきゃならないんですよ。気まずいじゃないですか」


「パーティとしての絆が深まる、と前向きに考えたら?」


 もうひとつ、パーティを組みたくない理由がある。私は、自分でも意外なことに、けっこうなコントロール魔なのだ。バトルひとつとっても、自分のやりたいように戦略をねり、やりたいように運びたい。

 ところがパーティで挑むとなったら、ともに戦う仲間という不確定要素が組み込まれ、やりたいようにやることは不可能になる。

 いや、別にソロプレイしているからといって、やりたいようにやれているかといえば、やはり不確定な敵がいることなので、そうできることでもないのだが。


「パーティを組むとして、私は誰と一緒になればいいんですか?」


 ジェシカさんは肩をゆすった。


「ミリカと、ベロニカじゃないの?」


「……私は、ミリカさんもベロニカさんも好きなんですよ」


「なら、いいじゃないか」


「だからこそ、死なれちゃ困るんですよ。やはり、私はソロがいいです。死ぬなら、私がひとりがいいのです。子供のころ、森を散歩していたら、首を吊ろうとしているおじさんがいましてね。そのおじさんは、言ったものです。『死ぬときは結局、一人だ』と。これこそが、ソロプレイ精神です」


「う~ん。なんか、大いに違う気がする。あ、それで話は変わるけど。キミ、国から勲章をもらえるそうだよ。〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を撃破した功績をたたえられて。キミが退院したら、叙勲式が行われるって」


 すごーく、嫌だ。


 そこで私は、退院したらすぐに、【覇王魔窟】に向かった。【覇王魔窟】に入ったところで、攻略記録ポイントで、100階へと空間転移する。


 脳内にアリエルさんの声がした。


〔お帰り、アリア〕


「ただいまですっ!」


 すぐに脳内から、アリエルさんの気配も消える。こうして、また私一人だ。いや、私と【覇王魔窟】だけだ。これが落ち着くんだから。


「さぁ、101階に行ってみましょうっっっ!!」


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