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33/202

33,想定外。

 


 私は、二個分隊の片方に入れてもらった。


 このさい、もう一つの分隊に組み込まれていたベロニカさんが、こっちの分隊に移りたいと言い出し、もめた。

 とくに、すでにこっちの分隊の一員だったミリカさんと、大いに揉めた。

 結局、二個分隊の指揮官であるゼモルさん(先ほどの大男さん)が、分隊を再構成して一件落着。私はベロニカさんとミリカさんと同じ分隊となり、わざわざ言うまでもないが、この二人は喧嘩する。いや喧嘩するほど仲がいいのかも──というのは、淡い希望でしょう。


「計画はあるんですよね? まさか無計画に、『とりあえず突撃だい』精神で来たわけではないですよね?」


「あるらしいよぉ」


 と、適当な返事のベロニカさん。そういえば、この人がいた冒険者パーティ、少年くんこと〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉に全滅させられていたっけ。


「災いを呼ぶ女ですねっっ!」


「いやぁん、アリアちゃん。言葉の暴力、ゾクゾクしちゃうっ!」


 ミリカさんが、あからさまに殺意の舌打ち。それから私に説明した。


「5日前、アバル荒原で王国騎士団と〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉の激しい戦闘があったんだ。そのとき、騎士団は壊滅的なダメージを受けてしまった。だがそのさい、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉の腹部にも、致命的な負傷を与えたそうなのだ。

 現在、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉が狼藉を働かず、大人しく眠っているのは、その傷を癒しているからと推測される。つまり、その腹部の傷こそが、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を討つための鍵」


 私は、市庁舎をベッドにして爆睡している〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を見やった。とぐろを巻くようにして眠っており、肝心の腹部の傷とやらは隠れている。


「このままでは狙えませんね?」


「そうだ、アリアさん。われわれの使命は、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を飛び立たせること。すなわち、傷のある腹部をあらわにさせること。そうしたら、ゼモルさんがトドメをさしてくれる」


「ゼモルさんが?」


「ゼモルさんの保有する攻撃スキル《八滅打》。なんでも城砦さえも粉微塵にする威力だという。この攻撃スキルを、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉の傷口に叩き込めれば──」


「〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を倒せるわけですね」


 いずれにせよ、私以外の誰かが〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を討伐してくれるに越したことはない。私は魔物と戦うのはワクワクするけれども、その背景に余計な重荷はいらないのだ。たとえば、ここで〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を討たねば、さらなる犠牲が出てしまう的な。


 かくして、私たちは進み。

 ついに〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉のもとへ。〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉のいびきで空気が振動している。


 ゼモルさんから一斉攻撃の指示が出る。

 一方、ゼモルさん自身はまだ動かず、その右拳が赤く輝き出す。あれが攻撃スキル《八滅打》か。破壊力をチャージした拳を叩き込むわけだね。


 とにかく、二個分隊の皆で〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉へと総攻撃。

 これは〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を怒らせ、飛び立たせることが狙い。市庁舎の高みにいる〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉へ、地上から攻撃するので、遠距離系の攻撃のみが効果をなす。私も《波動砲Lv.2》で参戦した。


 ついに〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉が腹立たしそうに鳴きながら、飛び立つ。

 同時に、ゼモルさんも飛ぶ。仲間の一人が、突風系スキルを発動することで。その即席の竜巻が、ゼモルさんを空中の〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉へと飛び立たせるのだ。


 一方、飛び立った〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉だが。

 あらわになる腹部の傷口──には、数多の〈蚤量魔フリーデッド〉が犇めいていた。それこそ何千という数だ。


 ミリカさん、右眼の眼帯をさすりながら、顔色が悪い。右眼球が蟲化したことを思い出しているのだろう。


 ベロニカさんは、こんなときも呑気だ。


「あらあら、傷口を蝕んでいるのかしらねぇ?」


「違います。あれは──守っているんですよ!」


蚤量魔フリーデッド〉としても、宿主である〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉が倒されるのは、困る。我が家がなくなるわけだし。

 そして動物的(ではなく魔物的)本能のもと、あの傷口こそが、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉のウィークポイントと理解している。


 この作戦は、失敗する。

 しかしもう止められない。私はベロニカさんを抱き上げ、ミリカさんに言う。


「退避しますよっっっっ!!」


 走りながらも見上げれば、ゼモルさんの《八滅打》の拳が、〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉の傷口へと叩き込まれる。

 だが実際は、傷口で犇めいていた数多の〈蚤量魔フリーデッド〉を吹き飛ばすだけで、終わってしまう。

 数多の〈蚤量魔フリーデッド〉たちが鎧の役目をなすことで、傷口自体までは、攻撃が通らなかったのだ。


 そして〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉は空を駆け、大技を放ったあとで無防備なゼモルさんを喰らう。

 巨大な牙で、ゼモルさんの身体を引きちぎる。

 同時に、地上に向かって、破壊のレーザー光線を放った。分隊の人たちは消滅、市庁舎を含めて複数の建物も、跡形もなく焼き飛んでいく。


 私たちは近くの民家に飛び込み、地下室へと転がり落ちた。扉を閉めた上、《強靭盾》と《守りの盾》を同時発動で、自分と二人をガード。


 ベロニカさんが後ろから抱きついてきた。


「アリアちゃんと死ねるのねぇっ!」


「まだ死にませんよっっ!!」


 そう死ななかった。しばらくして地上に出てみれば、建物も人も跡形もなくなり、荒れ地だけが残っている。

 私は〈スーパーコンボ〉片手に、その荒れ地を行く。


 ミリカさんが声をかけてきた。


「アリアさん、どうするつもりだ? わたしたちは、どうすれば?」


「こうなったら、私たちだけで〈橙鎧龍オレンジドラゴン〉を倒すしかないでしょう。そのためにいまやるべきことは──栽培です」



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