おばさんの尋問
おばさんは、ずっとうつむいて座っている僕の前に、飯台をはさんで座った。そうして、静かに、こう問いかけてきた。
「ゆうべ、ウチの庭に来とった?」
僕は、どう答えるべきか迷い、黙ったままでいた。
おばさんは、そんな僕を見て優しく「怒らへんから、正直に答えて」と言った。
僕は、それでも答えに迷い、黙ってうつむいていた。怖くて、悲しくて少し涙が出てきた。
「おばさん、夕べお風呂場の窓から、ケンちゃんが庭におるのを見たんよ」おばさんの先制攻撃だった。その言葉に僕は思わず「来てました」と答えた。
その答えを聞いて、おばさんは「やっぱり来とったん」とため息をついた。
「ええ、ケンちゃん。人のおウチに勝手に入ってきたら、いけんのよ」「学校でも教えてもろうたやろ?」と僕を説き伏せるように言ってきた。
僕は、「はい」と答えるとすごくつらくなって、こらえていた涙があふれ出た。
僕は体育座りで膝を抱えたままの手でその涙をぬぐった。
僕が泣いていることに気付いたおばさんは「泣かんでもええよ。おばさん、怒っとるわけじゃないけん。ただ、本当のこと教えて欲しいだけなんよ」と、優しく言った。
僕は泣いたことを知られたことが恥ずかしくて「泣いてません」と言って、再び今度は体育座りの膝で涙をぬぐった。
おばさんは「それで、何見たん?」と聞いてきた。
僕は、「ヒック、ヒック」言いながら、もう、ここまで来たら隠し立てできないと覚悟を決め、見たこと全部を言う事にした。
「白石のおっちゃんとおばさんが裸で抱きおうとった」
おばさんの顔が「ギョッ」となり、見る見る紅くなるのが分かった。
おばさんは、動揺を隠しながら、さらに質問を続けた。
「ほかにも何か見た?」
僕はうつむいたまま「白石のおっちゃんがおばさんのお尻におちんちん入れとった」と言った。
おばさんの顔はますます紅くなり耳はもっと紅くなっていた。
それから、おばさんの質問は止まり、しばらく重い沈黙が続いた。
「そう・・・それで、ケンちゃん、そのこと誰かに言うた?」
僕は、頭を横に振った。
「誰にも言うてない?お母さんにも?」とおばさんが言ったので、「お母ちゃんは今旅行行っとる」と答えた。
「ああ、そうやったね。それやったら、お姉さんにも言うってない?」
「姉ちゃんは、夕べ友達とこ泊り行っとったから言うてない」
僕は、少し落ち着いてきて、伏せていた目をちらちらおばさんの方に向けながら答えた。
「そう、誰にも言うてないんやね?」
「誰にも言うてない・・・・・・」
「ケンちゃんはやっぱ賢いわ。エライエライ。泣かんでもええよ」と言いながら、おばさんは僕の頭をなでた。
「ええ、ケンちゃん、昨日見たこと、誰にも言わんておばさんと約束してくれへん?」
「誰にも言わんいうて約束してくれたら、おばさん、ケンちゃんの言うこと何でも聞いてあげるけん」と言ってきた。
僕は、うつむいてまだ半ベソ状態だったが、そのおばさんの言葉に、さっきまでの状況が逆転したのを感じた。
「何でも?」僕はおばさんに問い直した。
「そう、何でも・・・ケンちゃんの欲しいもん、何でも買うてあげる」
「そうや、ケンちゃん、前に、松下のおもちゃ屋さんにある戦車のプラモデル欲がっとったやろ?あれ買うてあげようか?」
それは、近所のおもちゃ屋さんに飾ってあったプラモデルで、小学生では買えないくらい大きく高価なプラモデルだった。
それを、「欲しいけどお母さんが買ってくれない」とおばさんに愚痴ったのを覚えていたのだ。
でも、今はそんなプラモデルよりも、もっと興味をそそるものが僕の中にはできていた。
それは、この前と夕べ見た裸のおばさんと白石のおっちゃんとの交尾だった。