囚人の気分
そのまま、トモ君に引っ張られながら、重い足取りでリョウ君の家に向かった。
何回もトモ君の手を振りほどいて逃げ帰ろうかとも思ったが、結局、リョウちゃんの家までトモ君に連行されてしまった。
「おばちゃん、ケンちゃん連れてきたよ」トモ君がリョウちゃんの家の玄関で誇らしげに叫んだ。
中からリョウちゃんのお母さんが出てきて、「トモ君、ありがとう」と言った。
そして僕に向かって「ケンちゃん、ちょっと聞きたいことがあるけん、悪いけど中に入ってくれる?」と言ってきた。
僕は、夕べのことを聞かれるんだと思い返事もせず下を向いたままだったが、「そんな、大したこと聞かへんから・・・ちょっとだけ教えて欲しいことがあるんよ。怖わがらんと上がって」と言った。
僕がしぶしぶ靴を脱いで中に上がろうとした時、僕をここに連行してきたトモ君も一緒に上がろうとしたので、おばさんは「あっ、トモ君はいいの。ありがとう・・・そうや、ちょっと待っとって」と言うと、奥に行ってアイスキャンディーを持ってきた。
「トモ君、ありがとね」そう言ってトモ君に、そのアイスキャンディーを渡すと、これから僕に聞こうとしていることの邪魔者のトモ君をさっさと追い返した。
家に入ろうと靴を脱ぎかけていたトモ君は、大好きなアイスキャンディーをもらうと「おばちゃん、ありがとう」と言って、嬉しそうにそのアイスを持って出て行った。
いよいよもって、そこには、おばさんと僕の二人きりとなった。
昨夜のことがなければ、大好きなリョウちゃんのお母さんと二人っきりになれて最高の気分だったろうに、その時は、囚われの囚人のように最悪の気分だった。
「さあ、ケンちゃん、中に入って」どことなく、おばさんの言葉もぎこちなかった。
僕はおばさんに言われるまま奥の部屋に、まさに、数日前、白石のおっちゃんとおばさんが裸で絡み合っていたその部屋に入った。
おばさんは、僕に「そこに座って・・・ケンちゃんもアイス食べる?」と聞いてきた。
僕は、とてもそんな気分でなかったので「いりません」と答えた。
おばさんは「遠慮せんでもええんよ」とほほ笑んでくれたが、僕の気分は沈んだままだった。




