武十館入門
地方大会が終わり、少し落ち着いた頃。疾風は十蔵の屋敷へ来ていた。
「ようきたのぉ。そこに座りなさい」
「はい!」
十蔵と十色の前に座る。
「この度は、観戦に来て頂き、ありがとうございました!」
頭をさげながら、お礼を言う疾風。
「ふぉっ。ふぉっ。ふぉっ。いいのじゃよ。疾風の戦うところを見れたんじゃ。成長を感じる良い機会じゃったわい」
「しかしな、最後の決勝はなんだ!? 間合いを見切れずに当てすぎて忠告を貰っていたでは無いか! まだまだ、甘いぞ?」
「はい! まだまだ、精進したいと思います!」
「ふぉっ。ふぉっ。ふぉっ。まぁ、無理はせんようにのう。今怪我をされては困るからのぉ」
十色にダメ出しをされる疾風に気づかいの言葉をかける十蔵。
「ではの、武十館に入ってもらうために、この書類に住所と名前を書いてくれんかのぉ」
「はい!」
返事をして書類を書く疾風。書き終わると
「これで、武十館に入れるのでしょうか?」
「それなんじゃがな、地方大会に優勝した実績もあるし試験はパスでいいんじゃないかと思ったんじゃが……」
疾風の問いに答えようとする十蔵であったが、十色が話しを引き継ぐ。
「武十館の面々は皆、試験を通過しているんだ!だから、疾風だけパスというと門下生が納得しないのではないかと、そう思ってな!」
「はい! それは、構いません! 何をすればいいんでしょうか!?」
「それはな、私が指名した門下生5人と戦うことだ! 負けてもいい! 過半数に認められれば武十館に入れる」
「分かりました。今からやりますか?」
「あぁ! その為に今日に来てもらったんだ! まずは、道場へ向かおう」
十色を先頭に道場へ歩いていく疾風と十蔵。
道場が近づいてくると声が聞こえてくる
『始め!』
『うるぁ!』 『せいっ!』 『やぁ!』
気合いの声が聞こえる。
「では、いつもの様に着替えてきてくれ!」
「はい」
――――――
――――
――
着替えが終わると道場へやってきた。
門下生にジロジロ見られながら十色の元へ行く。
「着替え終わりました。よろしくお願いします」
「うむ」
十色が門下生をみて話し出す
「皆の衆、私と爺さんが最近面倒見ていた疾風だ! 修練をかなり積んでいるが、実績がなかった為にこの武十館に入れることが出来ていなかった! だが、この度、入門の資格を得た為、本日試験をする!」
……ザワザワッ
『師範と師範代が面倒見ていたのか?』
『マジかよ』
『羨ましいぜ』
パンッ!パンッ!
「静かに!」
「まず、名前が呼ばれたものは横に並ぶように!」
「「「「押忍!」」」」
「1人目、一葉!」
「押忍!」
少し高い声だった。女性のようだ。
「2人目、猛!」
「おぉす!」
大きくガタイがいい。野太い声だった。
「3人目、拳吾!」
「おっす!」
すらっとした細マッチョである。
「4人目、十月!」
「おす!」
可愛らしい声だが、嬉々としていて、戦闘狂か?
「5人目、正樹!」
「おっ! はいよ!」
ん?なんか見たことある気がするんだが?
『おい! 試験でむらまささん呼ばれることあったか!?』
ん?むらまさ?
『むらまささんが、呼ばれることなんてねぇよなぁ』
『あの人が出たら師範代しか相手できないだろ!?』
なにやら騒がしくなっている。
「以上の5名と1本勝負をしてもらう! 先取した方が勝ちだ!」




