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不倫されて捨てられたサレ妻、コーラで酔った勢いでVTuberデビューしたら、有能な編集者に一生甘やかされることになりました  作者: 寝不足魔王


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第1話:不倫されて捨てられた夜、コーラで酔った勢いで運命を変えてみた

「お前みたいな、脱ぎっぱなしの靴下も片付けられないだらしない女、もう妻だなんて思えないんだよ」


 深夜のファミレス。テーブル越しに突きつけられたのは、一枚の離婚届だった。

 私の夫だったはずの男――健二は、心底汚いものを見るような目で私を見据えている。その隣には、彼が『運命の人』と呼ぶ女性が寄り添っていた。

 彼女は、指の先まで完璧に手入れされたネイルを光らせ、私を見て哀れむように微笑んでいる。


「掃除も洗濯もまともにできない。お前は俺がいないと生きていけない無能なんだ。……これからは、彼女が俺の人生を支えてくれる。お前はさっさとそのボロアパートへ消えろよ」


 私は何も言い返せなかった。

 確かに私はだらしない。脱いだ靴下は丸まったまま放置するし、洗い物は溜めるし、部屋の隅には綿埃のペットが飼えるほどだ。

 だけど、それを「ちあきらしくていいよ」と笑って許してくれていたのは、健二じゃなかったのか。

 不倫を正当化するために、私の欠点をこれでもかと罵る彼の姿に、心の中の何かが音を立てて崩れ落ちた。


 気づけば、私は築四十年の格安ワンルームアパートにいた。

 持ち出せたのは、数箱の段ボールと、使い古したパソコン一台だけ。

 カーテンすらない窓の外では、街灯が寒々しく光っている。


「……あはは、本当に一人になっちゃった」


 お腹が空いたけれど、作る気力なんてない。

 何か、何か強いものを飲んで、この惨めな気持ちを麻痺させたかった。

 だけど私は、ビールの一杯すら飲み干せないほどの壊滅的な下戸だ。

 冷蔵庫を開けると、引っ越しの途中で買った一・五リットルのコーラが一本だけ入っていた。


「これでいいや。……もう、どうにでもなれ!」


 コップも出さず、大きなペットボトルを両手で掴んで、ラッパ飲みする。

 喉を焼くような強烈な炭酸。口の中に広がる甘ったるい香り。

 数口飲み干し、喉の奥から「ケフっ」と小さな、震えるような音が漏れた。


 その瞬間、世界がぐらりと揺れた。

 私は昔から、炭酸飲料を飲むと妙に気分が高揚し、お酒に酔ったような状態になる特異体質だった。

 脳がふわふわと綿菓子のように軽くなり、視界がピンク色に輝き出す。


「う、うわあああああん! あいつ、バカにしてぇぇ! だらしなくても、私は私なりに頑張ってたんだよぉぉぉ!!」


 コーラを片手に、私はボロボロと涙をこぼした。

 炭酸酔いのせいで、感情のストッパーが完全に吹き飛んでいる。

 孤独、悔しさ、惨めさ。それらが大きな渦となって、私を突き動かした。


「見返してやる……! 私が無能だって? 一人じゃ生きていけないって!? だったら、世界中で一番有名な女になって、あいつを後悔させてやるんだからぁ!!」


 私は千鳥足でパソコンの前に座り、電源を入れた。

 以前から趣味で登録だけしていた、クリエイターと依頼人を繋ぐマッチングサイト。

 そこにある『動画編集者募集』の欄に、震える指先で書き込みを始める。


『募集内容:私を世界一のVチューバーにしてください!』

『自己紹介:不倫されて捨てられました! 家事もできないしだらしないけど、声だけは褒められます! もう失うものはありません! 私の人生、丸ごと面白くしてくれる編集者さん、助けてください!!』


 文章は支離滅裂。誤字脱字だらけ。

 だけど、炭酸で真っ赤になった顔のまま、私は「送信」のボタンを渾身の力でクリックした。


「ケフっ……あーあ、送っちゃった。……もう、寝る。おやすみ、クソ夫……」


 私はそのまま、冷たい床の上で丸まって意識を手放した。


 翌朝。

 カーテンのない窓から差し込む日光が、容赦なく私の顔を照らした。

 喉はカラカラで、頭は少し重い。これが噂に聞く二日酔いならぬ『炭酸二日酔い』だろうか。


「……うわ、最悪。私、昨日何したっけ」


 昨夜の記憶が、濁流のように脳内に蘇る。

 ラッパ飲みしたコーラ、深夜の号泣、そして――あの無茶苦茶な募集文。


「ひいいいっ! 消さなきゃ、今すぐ消さないと変質者だと思われちゃうっ!」


 慌ててパソコンを立ち上げ、サイトを開く。

 しかし、削除ボタンを押そうとした私の指が、ピタリと止まった。


 一件の通知が届いていたのだ。

 時刻は深夜三時。私が投稿してから、わずか一時間後のことだった。


『初めまして。昨夜の投稿、拝見いたしました。非常に興味深い熱意ですね。……山咲さんのその声と経歴、私の編集で「武器」に変えられるかもしれません。一度、ビデオ通話でお話ししませんか?』


 送り主の名前は、瀬戸。

 アイコンは、どこか静謐な海の風景写真。

 その丁寧で理知的な文面から、私は直感した。


「……これ、本物のプロの人じゃない?」


 不倫されて、家を追い出され、コーラで酔っ払った最悪の夜。

 だけど、暗闇の底で、私の運命の歯車が静かに、そして力強く回り始めた。


第1話をお読みいただきありがとうございます!

どん底のサレ妻、ちあきが運命の編集者・瀬戸さんと出会うまでのプロローグでした。

これから彼女がどう成り上がっていくのか、そして瀬戸さんとの甘い(?)関係がどうなっていくのか……。


もし「続きが気になる!」「ちあき頑張れ!」と思っていただけましたら、

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よろしくお願いいたします!


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