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EP.2-1 任務のあとで

皆さん、こんにちは!Time Bombです!


本日からEP.2スタートです!


今回は、任務の翌朝と瑞葵の変化について書きました。

EP.2では、瑞葵の成長と変化を中心に物語が進んでいきます。


まだ番外編「瑞葵という少年」を読んでいない方がいらっしゃいましたら、ぜひそちらも読んでいただけると、より一層瑞葵のことを好きになっていただけると思います!


私自身、瑞葵を今後どう成長させていくか、そしてチームがこの先どうなっていくのかを考えるのが楽しみで仕方ありません。


引き続き、

Abyss Trigger ーーSecret Xーー の応援、

そして瑞葵たちの応援をどうぞよろしくお願いします!

 目覚ましが鳴るよりも早く、瑞葵は自然に目を覚ました。


瑞葵「……うーん……」


 いつもなら、起きた瞬間から体が重い。眠りが浅く、嫌な夢の余韻を引きずったまま朝を迎えることも少なくなかった。

 けれど今日は違う。


 頭が妙にすっきりしていて、体も軽い。まるで何時間も深く眠れたあとのような、久しぶりの感覚だった。


翼 「起きたか?」


瑞葵「ん……?」


 声のした方へ顔を向けると、隣で寝転がりながら本を読んでいた翼が、こちらに視線だけを向けていた。


翼 「おはよう」


瑞葵「翼……おはよう」


翼 「ぐっすり寝てたな」


瑞葵「うん……なんか、すごく寝た気がする」


翼 「まあ、昨日はほとんど寝れてなかったからな」


瑞葵「そうだね……。今、何時?」


翼 「十一時前」


瑞葵「そうか…………えっ?」


 一拍遅れて、瑞葵は跳ね起きた。


瑞葵「じ、十一時!? やば……どうしよう、学校!」


翼 「そうだよ」


瑞葵「え!? うそ、やばい、どうしよう……!」


 慌てて布団をはねのける瑞葵を見て、翼は楽しそうに口元を緩めた。読んでいた小説を閉じ、ゆっくりと体を起こす。


翼 「柚木さんから伝言。昨日は任務頑張ったから、今日は学校休んでいいってさ」


瑞葵「え……!」


 一瞬、言葉の意味が入ってこない。


瑞葵「……なんだ……びっくりした……」


 緊張が一気に抜け、瑞葵はその場にへたり込みそうになる。


翼 「驚きすぎだろ」


瑞葵「いや……だって……昨日はそんなこと全然言ってなかったし……」


翼 「まあ、任務があっても次の日は普通に学校行くのが基本だからな。だから今回は特別ってことだろ」


瑞葵「そうなんだ……」


翼 「それに、その顔じゃ学校行くのは厳しいだろ」


瑞葵「え?」


 翼は何も言わずにスマホを取り出し、瑞葵に向けた。


 カシャッ、と小さなシャッター音が鳴る。


翼 「ほら」


 見せられた画面には、自分の顔が映っていた。

 頬の内側から浮き上がるように赤く腫れた痕。よく見れば、薄く色の変わった箇所がいくつもある。


瑞葵「えっ……うそ……!」


翼 「そりゃあ結構ボコボコにやられてたからな」


瑞葵「ど、どうしよう……。これ、明日までに消えるかな……」


翼 「さすがに明日までには厳しいだろうな」


瑞葵「そんな……」


 不安が一気に押し寄せてくる。

 昨日の任務の最中は、痛みも恐怖も必死で誤魔化していた。けれどこうして客観的に見ると、自分がどれだけ殴られていたのかがはっきり分かってしまう。


 そんな瑞葵の顔を見て、翼はにやっと笑った。


翼 「安心しろ。そういう時のための対策もちゃんとあるから」


瑞葵「だ、大丈夫……?」


翼 「大丈夫だって。これくらいの痣ならどうにかなる」


瑞葵「よ、良かった……」


 ほっとした声が漏れる。


翼 「瑞葵もこれから色んな任務をやることになると思うけど、柚木さんたちのサポートもあるからさ。学校がどうとか、余計なことはあんまり気にしなくていい」


瑞葵「わ、分かった」


 ――これから。


 その言葉を、今の瑞葵は思ったよりも自然に受け止めていた。


 少し前までの自分なら、任務の前後でさえ、どこか心の片隅で期待していたはずだ。

 母親が迎えに来てくれるかもしれない。

 ここではないどこかに、連れ戻してくれるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱いては、毎回裏切られて、自分で自分を傷つけていた。


 けれど今日は違う。


 昨日の任務を通して、瑞葵の中にはほんの少しだけ、このSECRET Xで歩き続けたいという気持ちが芽生えていた。


 まだはっきりとは言えない。

 ここが自分の居場所だと、胸を張って言えるほどでもない。

 それでも、昨日とは何かが違う。


翼 「もう少し寝るか?」


瑞葵「大丈夫。それに……思えば昨日、任務の途中でホテルでちょっと寝てたし」


翼 「でも、ぐっすりではなかっただろ」


瑞葵「まあね……。でも、シャワー浴びてこようかな……」


翼 「分かった。腹は?」


瑞葵「空いてる」


翼 「じゃあ、シャワー浴びたら少し早いけど昼にするか」


瑞葵「あ……うん。ありがとう」


 その「ありがとう」が、前よりもずっと自然に出たことに、瑞葵自身はまだ気づいていなかった。


   *


瑞葵「はあ……」


 シャワーの熱が肩に落ちる。


 昨日のことを思い出すたび、体のあちこちに鈍い痛みがよみがえる。湯が傷に触れるたびに、ぴりっとした感覚が走った。


 そして瑞葵の頭に浮かんでいたのは、河村亜美のことだった。


 結局、彼女は家に戻った。


 あれで良かったのか。

 何度考えても、答えははっきりしない。


 瑞葵にできたことは、家に帰すか、西横に残すか、その二つの間で揺れることだけだった。

 あの場では、きっとあれが最善だった。そう思いたい。いや、そう思わないと苦しくなる。


 けれど、あれで全部解決したわけじゃない。

 家に戻ったからといって、彼女の苦しみがなくなるわけではない。


 送っていく時は、彼女ならきっと大丈夫だと思えた。

 自分の言葉をちゃんと受け止めて、自分の足で進んでいけると信じたかった。

 でも、こうして落ち着いて考えると、胸の奥に小さな不安が残る。


瑞葵(僕に気を使って、ああ言ってくれただけじゃなければいいけど……)


 思わずため息が漏れる。


翼 「みーずき!」


瑞葵「うわっ、はい!」


 突然、扉の向こうから翼の声が飛んできた。


翼 「瑞葵、着替え持ってきてなかっただろ?」


瑞葵「あっ! ごめん……」


翼 「適当に持ってきたから、扉のとこに置いとくな」


瑞葵「あ、ありがとう!」


翼 「それと、スマホ鳴ってたからそれも置いとく」


瑞葵「え? わ、分かった」


 スマホ?


 もしかして――。


 胸がざわつく。


 瑞葵は急いで泡を洗い流した。昨日殴られた箇所がまだずきりと痛む。

 脱衣所に翼がいないことを確認してから、急いでスマホを手に取る。


 画面には、河村亜美の名前。


 瑞葵は息を呑み、メッセージアプリを開いた。


『みずきくん、昨日はありがとう

 とりあえず報告でお父さん、お母さんからはもう無理に進学校の受験をしなくていいと言われた。正直に言うと、もうお前には期待しないって意味なんだけどね。

 でも、これで良かったんだと思う。今だから言えるけどあの時の私は洗脳されてたんだと思う。そこしか居場所がなかったから。だけどさ今なら大丈夫な気がしてる。

 何かあればみずきくんに頼ればいいんだしw

 とりあえずは頑張るね。だから時々話し相手にはなってよね?

 それと昨日いた女性にもお礼言っといてもらえる?お父さん、お母さんを説得してくれてありがとうって』


 最後まで読み終えた瞬間、瑞葵の肩から力が抜けた。


瑞葵「……よかった……」


 自分が正しいことをした、とはまだ思えない。

 だけど、少なくとも彼女の中で何かが前に進んだことは伝わってきた。


 それだけで、十分だった。


 自分にできることなんて、本当に微々たるものだ。

 それでも、その微々たるものが誰かの背中を少しでも押せるなら――。


瑞葵(僕にできることを、ちゃんとやりたい)


 そう思えた。


   *


翼 「瑞葵、お昼の用意できたぞ」


瑞葵「ありがとう」


 リビングへ行くと、テーブルの上にはオムライスとサラダが並んでいた。


翼 「ふぅ、疲れた」


瑞葵「え? こ、これって……翼が作ったの?」


 翼はわざとらしく胸を張った。


翼 「うん。愛情込めてチンしたよ」


瑞葵「え? チンしたって……」


翼 「柚木さんが作ったのを、俺が愛情込めて温めたってこと」


瑞葵「なんだ……」


翼 「ハハハ。ほら、食べよう」


瑞葵「うん」


 こういう冗談も言うんだな、と瑞葵は少しだけ意外に思った。

 任務中や訓練中の翼は、もっと落ち着いていて、どこか大人びて見える。

 けれど今の翼は年相応で、少し無邪気で、親しみやすかった。


 そんな一面を知れたことが、なぜか少し嬉しい。


翼 「瑞葵」


瑞葵「ん?」


翼 「任務、お疲れ」


 そう言って翼はコップを差し出した。

 瑞葵も少し戸惑いながらコップを持ち上げる。


 カンッ、と軽い音が鳴る。


 昨日は動き回って、今朝は朝食も食べていない。

 気づけば、オムライスを口に運ぶ手がどんどん速くなっていた。


翼 「それにしても……」


瑞葵「ん?」


翼 「昨日の任務、ほんと頑張ったな」


 不意にそう言われて、瑞葵の手が止まる。


瑞葵「え? いや……僕は……何も……」


翼 「そんなことないだろ。瑞葵の言葉だったから、河村亜美もちゃんと向き合えたんだと思うよ」


瑞葵「そんなことないよ……。それに、翼が助けてくれたからだし……」


 翼はまた、あの優しい表情で笑った。


翼 「瑞葵は謙虚だな」


瑞葵「まだまだだよ。僕は……もっと強くならないと……」


翼 「まあな。さすがに大人数はまだ無理でも、一対一なら余裕で勝てるくらいにはなりたいな」


瑞葵「うん……」


翼 「そこは引き続きトレーニングだな。経験積まないと、どうしようもない部分もあるし」


瑞葵「早く……みんなに認めてもらいたい……」


 ぽつりと漏れた本音に、翼は少しだけ目を見開いた。

 けれどすぐに、いつもの落ち着いた顔に戻る。


翼 「瑞葵なら大丈夫だよ」


 その言葉は不思議なくらい自然に、瑞葵の胸の中へ落ちていった。


 目の前でオムライスをがっつく瑞葵を見ながら、翼は小さく笑う。


翼 (少しは、ここで生きていく覚悟が芽生えたのかな)


 その視線に気づくことなく、瑞葵はただ黙々と昼食を口へ運んでいた。

次回予告

初任務を終えた瑞葵たち。

だが、その裏では黒崎への任務報告が行われていた。

晴翔が下した瑞葵への評価は70点。

一方で、柚木は95点をつける。

同じ任務を見ていながら、なぜここまで評価が分かれたのか。

そして晴翔は、柚木が瑞葵に任務を任せた本当の理由を知っていく――。

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