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EP.1-12 生き延びた夜

皆さん、こんにちは!Time Bombです。


活動報告でもお伝えしましたが、今回が EP.1ラスト となります。


2026年1月に連載をスタートしてから、早くも3ヶ月。

僕の妄想の中でしか生きていなかった瑞葵たち――

そして 『Abyss Trigger ーーSecret Xーー』 という作品を、こうして皆様に読んでいただけていることが、本当に嬉しいです。


これがどれほど幸せなことか、改めて噛みしめています。


そして、これからも瑞葵たちは生き続けます。

……いえ、まだ瑞葵たちの物語は始まったばかりです!


まずは、ここまで西横キッズとして奮闘してきた瑞葵の姿を、どうか見守っていただければと思います。


皆さま、これからも引き続き瑞葵たちの応援をどうぞよろしくお願いします。

 カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。

 夜の街灯とは違う、やわらかくて優しい光だ。


 亜美は目を開け、ぼんやりと天井を見つめた。


 久々に、ちゃんと眠れた気がする。

 それは高くてふかふかのベッドで眠れたからじゃない。


 これはきっと――。


 亜美はゆっくりと身体を起こし、隣にいる瑞葵へ目を向けた。

 瑞葵はまだ眠っている。


 顔色は悪く、頬に残る赤いあざが痛々しかった。


 昨日のことを思い出す。


 捨てられたと悟ったあとの、あの不良の男のしつこい誘い。

 お金を稼ぐために、無理やり飲まざるを得なかった条件。

 そんな中で、助けに来てくれた瑞葵……。


 殴られても立ち上がって、自分を守ってくれた背中。

 震えながらも「逃げろ」と叫んだ瞬間。


亜美「……なんで……あそこまで……」


 亜美は身体を丸め、小さくため息をついた。

 だけど――心の奥は、不思議なくらい温かかった。


亜美(……守られる側なんて、久しぶりだ)


 西横に来てから、誰かに頼ることも、信じることも、全部やめてきた。


 枕元にはスマホが置かれている。

 画面をつけると、未発信の履歴が残っていた。


 ――110。


 そこまで入力して、止めた跡。


 亜美は静かにスマホを伏せた。


亜美(……昨日の客)


亜美(来なかったんじゃない)


亜美(来れなかったんだ)


 理由は、もう分かっている。

 それを受け入れるかどうかは、また別の話だけれど。


 亜美はもう一度、瑞葵を見た。


 こんな場所で、こんな状態で、それでも誰かの前に立った少年。


亜美「……あんたさ」


 小さな声で呟く。


亜美「自分のこと、全然大事にしてないよね」


 答えは返ってこない。

 瑞葵は、ただ静かに眠っている。


 寝顔だけ見れば、昨日のあのかっこよかった姿からは想像もできないくらい、幼くてかわいい表情だった。

 だけどどこか、切なくて、苦しそうにも見えた……。


 亜美はカーテンを開け、街を見下ろす。


 相変わらずゴミが散らばっていて汚い街。

 それを気にも留めず歩く人たち。

 何事もなかったかのように、街は今日も動いている。


亜美(今日は……帰ろう……)


亜美(逃げたくもなるけど……)


亜美(今日のことは、絶対忘れない……)


 亜美はそっと、瑞葵の頬のあざに触れた。


亜美「ありがとう……」


 本人が起きたら、ちゃんとそう伝えよう。


 ――だけど。

 あともう少しだけ……二人だけの時間が続きますように……。


     *


亜美「おはよう」


 目を覚ますと、亜美が優しい表情で声をかけてくれた。


瑞葵「おはよう……」


 瑞葵は「ハッ」としたように飛び起きた。


亜美「どうしたの?」


瑞葵(任務!)


瑞葵「いや……何も……ない……あ……今……何時?」


亜美「六時過ぎ」


 うっかりそのまま眠ってしまった……。

 しかも、柚木と翼がまだ待機していることを思い出し、どうしよう、怒られる、と焦る。


亜美「大丈夫……」


瑞葵「え……?」


亜美「今日は帰るから……家に……」


瑞葵「え……? 本当に……?」


亜美「帰った方が、君には都合がいいんでしょう?」


瑞葵「い……いや……そうじゃなくて……」


亜美「分かってるって……私を思ってでしょ?」


瑞葵「うん」


亜美「ありがとう」


 亜美はまた、やわらかい表情を見せた。

 昨日までとは違う。きっと、これが彼女の本当の顔なんだろうと瑞葵は思った。


亜美「シャワー浴びたい……」


瑞葵「分かった……」


亜美「ねえ? これって……お父さんから頼まれたんでしょ」


瑞葵「うん……」


亜美「じゃあ迎えに来てもらって……。一人じゃ無理だから」


瑞葵「分かった……」


 瑞葵は、亜美がシャワーを浴びている間にイヤモニで柚木へ連絡した。


瑞葵「柚木さん……瑞葵です……」


柚木『うん、どうしたの?』


瑞葵「あの……すみません……しばらく連絡がなくて」


柚木『いえ、こちらから粗方瑞葵くんの居場所は特定できているから大丈夫よ』


瑞葵「すみません……。その……河村亜美さん……家に帰るそうです……その……迎えが欲しいそうで……」


柚木『分かったわ。ホテルを出て左に曲がったところに待機しているから、そこまで来てくれる?』


瑞葵「分かりました」


 柚木への連絡を終えると、ちょうど着替えを済ませた亜美が出てきた。


亜美「お待たせ。君は?」


瑞葵「僕はいいよ……血、もう止まってるし」


亜美「私以上に汗かいてたのにね」


瑞葵「え!」


亜美「ううん……臭くないからいいよ」


 亜美は自分の荷物を持ち、部屋を出ようと扉に手をかけたところで、ふと後ろを振り返った。


亜美「ねえ?」


瑞葵「うん?」


亜美「最後にさ……君の名前教えてよ」


瑞葵「瑞葵……野畑、瑞葵」


亜美「瑞葵くん……いい名前だね」


瑞葵「そっか……」


亜美「私は河村亜美。亜美って呼んで」


瑞葵「分かった」


亜美「……ねえ」


瑞葵「うん?」


亜美「この部屋出たらさ」


亜美「もう、元の生活に戻るんだよね」


瑞葵「……そうだね」


亜美「だったら……」


亜美「瑞葵くんの連絡先、教えて」


瑞葵「え?」


亜美「また……苦しくなったら……支えてくれる?」


瑞葵「………うん」


瑞葵「約束する」


 亜美たちはチェックアウトを済ませ、ホテルを出た。


瑞葵「左に曲がったところに先輩たちがいるから」


亜美「そっか……終わっちゃうんだね……」


瑞葵「大丈夫だよ……。亜美は強いから……」


亜美「……フフ……知ってる……」


 瑞葵と亜美は、柚木たちが停めている車を見つけ、そのまま二人で乗り込んだ。


柚木「こんにちは。河村亜美さん」


亜美「迎え……ありがとうございます。あっ!」


翼 「うっす」


 助手席には翼が乗っていた。


亜美「はあ……全部お父さんね……」


柚木「いいえ……瑞葵くんには何も指示していない。あなたは自分で決めた。それだけ」


亜美「どうも……」


柚木「それじゃあ出発するわ」


 車内にはエンジン音しか聞こえなかった。

 亜美はずっと窓の外を見つめている。


 瑞葵も、これが本当に正解だったのか……この選択が亜美にとって良かったのかは分からなかった。


亜美「……瑞葵くん」


瑞葵「!……うん?」


亜美「ありがとう」


 彼女は一瞬だけ瑞葵の顔を見て、またすぐに窓の景色へと視線を戻した。


 瑞葵は驚きながらも、どこかで確信していた。


 この選択が正しかったのかは、今はまだ分からない。

 だけど――きっと彼女自身が、これから先の人生でこの選択を正解にしていくはずだと……。


 気がつくと車は止まっていた。

 どうやらこの豪邸が、彼女の家らしい。


 車を敷地内に停め、柚木は河村亜美に「行きましょうか」とだけ声をかけた。


亜美「分かりました」


 柚木の誘導に従い、亜美は車を降りる。


亜美「ねえ……また、辛くなったらさ」


亜美「……連絡しても、いい?」


瑞葵「……うん」


亜美「ありがとう……またね」


瑞葵「うん。また」


 瑞葵は、彼女の姿が見えなくなるまでずっと河村亜美を見守っていた。


翼 「大丈夫だよ」


瑞葵「?」


翼 「柚木さんが、あとはなんとかしてくれる。これ以上彼女が誤った選択をしないように」


瑞葵「うん……」


翼 「でも頑張ったな、瑞葵! 今回の任務は瑞葵が……って」


 河村亜美の今後に安心したのか、瑞葵は再び眠りについてしまった。


翼 「やれやれ」


 それからしばらくして、柚木が車に戻ってきた。

 戻ってきた頃には、瑞葵をはじめ、翼まで眠っていた。


 これも今後任務を遂行していくために必要なことだ。

 眠れる時に体力を回復させる。


 柚木は何も言わず、河村亜美の自宅を後にした。


 運転しながら、柚木はそっと翼と瑞葵の寝顔を見た。


柚木「翼くん、お疲れ様」


柚木「瑞葵くん。よく頑張ったわね」


 車内にはエンジン音だけが静かに響いていた。

 そのまま柚木は、二人の自宅へと向かった。


 瑞葵は、夢も見ないほど深く眠っていた。


 それが、初めて「生き延びた夜」だった。

ここまでEP.1を読んでくださり、本当にありがとうございました。

EP.1はいかがだったでしょうか?


瑞葵たちの物語は、まだ始まったばかりです。

ですが、まずはこのEP.1を最後まで見届けていただけたことを、大変嬉しく思っています。


これからも、瑞葵たちの成長を温かく見守っていただけたら幸いです。


そして4月からは、いよいよ EP.2スタート!

活動報告でも改めてお知らせさせていただきます。


ぜひ皆さん、4月からも瑞葵たちの応援をどうぞよろしくお願いします。

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