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第78話 大陸最強と呼ばれた者

心臓を貫かれた……ここまで追い込まれるのは想定外だった。


メイガスタは少しよろける、だが直ぐに杖を付くとバインド魔法を放った。



「まだ動けんのかよ」



阿毘白は反応が遅れる、だが白銀が魔法で鎖を断ち切ると守る様に立ち塞いだ。


阿毘白は武器を下ろすと勝ちを確信する、そしてメイガスタに近づこうと彼の元へ向かう、だが次の瞬間、白銀は阿毘白を突き飛ばした。


突然の事に困惑する、魂を縛られた者は主である阿毘白に攻撃する事は出来ない、一瞬支配が解けたのかと考えるが、地面から生える土魔法で串刺しにされる白銀を見てそれは無いと察した。



「ありがとうございます」



少女はメイガスタに礼を言った、名も知らぬ少女を死んでいたとは言え、再度殺すのは後味が悪過ぎた。


特別な魔法や能力があった訳では無いが、阿毘白が切り札と言うだけあって、全ての能力が高かった……阿毘白を守らなければ、彼女との一対一ならそこそこ良い線を行っていたかも知れない。



「魔法の心臓は破壊した、俺の勝ちだな」



勝ち誇る阿毘白、だがメイガスタはその言葉に微笑を浮かべた。



「何がおかしい」



「根本的に間違っておる、魔法の心臓を何だと聞いた?」



「そりゃ、永遠の魔力、尽きる事の無い無限の……」



「違う、尽きる事の無い魔力……そう勘違いするのも無理は無いが、魔法の心臓はただ、魔力のキャパが無くなると言うだけじゃ」



「どう言う……」



「お主らの目的がワシを殺すことなら別だが、この国の機能を、魔法を奪う事が目的なら、それは不可能な話しじゃ」



その言葉に阿毘白は眉を顰めた。


彼らの目的は相変わらず分からない、だが魔法の心臓を狙うと言う事はこの国を滅ぼすのが目的な筈、だからワシを狙った。


だが……魔法の心臓はただ際限なく魔力を貯められると言うだけ、魔力を使用すれば減るし、何は無くなる。


つまりは使用者を選ぶ、魔力の回復量が乏しい者が使えば普通の人よりちょっと優れた魔導士で終わる可能性もある。


だが、大陸最強と呼ばれ、この国が魔力に溢れているのはメイガスタの特異な魔力にあった。



「知っておるか、この国、ルデールは元々魔力が乏しい地域じゃった」



何故昔話を……阿毘白は少し疑問を抱いたが魔法の心臓が永遠の魔力出ない事への疑問が勝ってしまった。


魔力の濃度にも地域差がある、濃い地域で有れば良いと言う訳では無いが、薄くてもダメだった。


濃ければ過剰魔力による症状で最悪死ぬケースもある、だが薄い場合は魔法を使わなければ何ら問題はない。


魔力が薄い地域に人が住む、それは問題ない。


だが、国を築くとなれば大問題だった。


理由は明白、この世界には戦争が付き物……そして強く、長く残る国には軍事力が必須だった。


だがルデールは特別地形がいい訳でもない、それに加えて魔力濃度が薄い……そんな場所に国が出来ても直ぐに滅ぼされるのがオチだった。


過去に血の魔法の一族の件が色々とあったが、メイガスタが生まれたのはその50年後、ルデールが小国として少しだけ大きくなり始めた頃だった。


もう街では無く一国として、認められる……そうなれば当然戦争も起こった。


当時は大国と呼ばれる程に力を持つ国も無く、中小国が群雄割拠して居る戦乱の時代だった。


そんな時代にメイガスタは生まれた。


そしてメイガスタの特異な魔力、それは薄い魔力からでも常人の数倍回復出来る圧倒的に優れた魔力回復の能力にあった。


そして膨大な魔力キャパシティ、要するにメイガスタは魔法を使う為に生まれた天才と言う訳だった。


そんな彼がこの国で英雄になるのもそう時間は掛からなかった。


そしてルデールが小国とは呼ばれなくなった頃、国の秘宝であった魔法の心臓を60の頃に国王から譲り受けた。


当時は魔法の心臓は神器と知られて居らず、勲章的な立ち位置でメイガスタに授与された。


そしてそれが神器と知ったのは更に80年後だった。


違和感に気づいたのはもう少し前だった……魔法の心臓を譲り受けた頃から分かりにくいが老化が止まって居た。


そして来る事の無い寿命、それの原因が魔法の心臓だった。


魔力欠乏症が死に繋がるように、魔力は生命維持と密接に関係して居る、魔力量が多い人が長生きするなんて言うのは当たり前、故に凄い魔道士には高齢者が多い。


そして魔法の心臓は際限なく魔力を溜めることが出来る、そしてそれは老いで死ぬ事は無いと言う事だった。


そしてメイガスタは特異な魔力回復の体質に加えて魔法の心臓で様々、各地を旅し、魔力を莫大なまでに溜め込み、その魔力で国を発展させて行った。



「つまり、魔法の心臓を破壊してもこの国は滅びない、既に儂の存在は飾りなんじゃよ……次期賢者もおるしな」



そう言いメイガスタはにかっと笑った。



「強がった所で、心臓を貫かれてんだ、死ぬのも時間の問題だぜ?」



「なに……その間にお主を始末する事くらい容易い」



そう言いメイガスタは杖を地面に突いて鳴らすと阿毘白の身体が突然凄い力で上から押さえつけられて居る感覚に襲われた。


立って居るのすらキツい程に……重力魔法なのは分かる、だがどんな魔力をして居ればこれ程の重力魔法を発動出来るのか、転生者である阿毘白が立って居られないほどの重力がのしかかって居た。



「もう儂の魔力も有限……じゃが、お主だけは倒させてもらう」



そう言いメイガスタは近づいて来る、動けない……やばいなんて次元じゃない。


殺される。



「影!!回収してくれ!!」



阿毘白は叫ぶが何も起こらない。


影、恐らく人を召喚して居たあの黒い物を言って居るのだろう。


だが彼を回収しない辺り、何か出来ない理由でもあるのだろう……此方としては好都合だった。



「散々人を殺したんじゃ、今更やめてくれとは言わんじゃろ」



勿論命乞いをしようと阿毘白は声を出そうとする、だが声が出なかった。


メイガスタの魔法で声が出ない様にしてあるのだが、死の危機に焦って居る阿毘白には気付く余裕なんて無かった。



「あまりワシも余裕が無くてな、すまんが直ぐに死んでくれ」



彼の組織や情報を聞き出す余裕は無い、重力魔法だけでもかなりの魔力を消費する、魔力切れ=死の今、あまり時間は掛けられなかった。


確実に一撃で心臓を貫く、阿毘白の生命活動が終了したのを確認すると魔法を解く、予想以上に苦戦した。


あんなのが何人も居て、その上組織化されて居るとは……



「神様も何を考えておるのか……」



メイガスタはため息を吐く、そして土魔法で腰掛けられる物を作ると腰を下ろした。



「少し……休憩じゃ」



メイガスタが一息付いている頃、ブレットはレレリア達と合流し、街の人々の避難を行なって居た。


迫り来るアンデッドを退け、街の人を学院の方へ誘導する、何も考えずただひたすらに……そして終わりは唐突にやってきた。



「アンデッド達が崩れてくぞ」



1人の兵士がそう告げる、そして次々とアンデッドは姿を崩し、消えて行った。


何が起こっているのかは分からない、ただ危機が去った事に兵士達は勝利の雄叫びを挙げる、ブレットも安堵したからなのか、体の疲れや痛みが一気に襲ってきた。



「なんか分かんねーけど、取り敢えず無事だな2人とも」



レレリアとルルノアを見てブレットは笑う、色んな人が死んだ。


一緒に戦って居た兵士や、助けようとした街の人が、いちいち悲しんでいる暇も無く……戦争で戦果を上げて有名になろうとして居たが、戦争は酷く残酷な物だった。


相手が人間で無かっただけマシだが、それでも大勢が死んだ。



「少なくとも……お前らが無事で良かった、心配なのはカーニャ達だな」



「あの2人ならだいじょーぶでしょ」



そんな気もするが、戦争は何があるか分からない……十傑も敵として居る以上は何とも言えなかった。



「はぁ……まじで疲れた、てかなんでアンデッド達消えたんだろーね」



「確かに、推測で言うと召喚者が倒されたんだろうな……まぁメイガスタ様かアルト先生辺りだろ」



「あの2人以外考えられないしね」



「だな、だがこれでひと段落したんじゃ無いか?」



アンデッドは消え、街で鳴り響いて居た轟音も聞こえなくなった、戦闘もして居る様子はない。


周りの兵士も勝利ムードに包まれて居る、だが何処か安堵し切れなかった。



「どうか……したんですか?」



周りを見てあまり浮かない表情をして居るブレットを心配してレレリアが恐る恐る声を掛ける、十傑……やはり彼らの存在が引っ掛かっていた。


中でも1と10の数字を持つあの2人がまだ居るとするのなら……戦況は一瞬でひっくり返る。


あの2人を倒せるのは間違いなくアルトかメイガスタ様くらい、それくらいその2人の実力は十傑の中でも秀でて居た。



「とは言え、流石に……」



来ないだろう、そんなフラグじみた事を考えたその時、見覚えのある髪色が視界に入った。


同じ髪色なんて彼以外見たことは無い、まるで物語の人物の様な燻んだ灰色の髪……何故此処に居るのか。



「平和ボケしてるから……あんな奴らに此処まで壊滅させられるんだよ」



そう灰色の青年は告げると辺りに残っていた兵士を剣で切り捨てる、すると切られた兵士はボロボロと灰になり崩れて行った。



「グレイさん……」



「あ?ブレットか、お前グレリオを倒すとは強くなったじゃねーか」



「見てたんですか」



「まぁな、しかしこの国の兵士の質も下がったもんだな」



そう言い舞い散る灰を手で払う、彼はグレリオや十傑の1であるクロードとはまた違った強さを持つ。


それが一撃必殺とも言える灰魔法、詳しい事は知らないが、彼しか使えない固有魔法とでも言うべきか、血の魔法の様な血統魔術の持ち主だった。


とにかく灰を付与したあの剣で斬られては行けないという事だけは分かっている……だが強い能力である以上、弱点もある。



「ルルノア、いつもみたいに馬鹿正直に攻撃受け止めるなよ」



「分かってる」



言葉に軽さが無い、流石のルルノアも余裕がない様だった。



「その2人はお前のチームか?」



「はい」



「見ない間に成長してんだな……それで、俺と戦うつもりか?」



その言葉に少し驚きを見せる。



「グレイさん、裏切りましたよね」



「何でそう思うんだ?」



あまり魂を縛り操るという能力を理解していないが、彼らは自分の意志で行動していないのは明白だった……だが、グレイは違う。


なんと言うか、操られて居る感じがしなかった。



「まぁ何となく察しは付く、その通り俺は操られてない、自分の意志で国を裏切った……だから魂も縛られて居ない」



「何で、裏切ったんですか」



正直、彼に至っては完全に裏切る人間じゃ無いと言い切れない、他者にあまり興味を示さず、彼には稽古をつけて貰った記憶もない。


だから成長したと言われた時は少し驚いた。



「裏切りの理由なんてのは何でも良いんだよ」



そう言い脱力した構えで剣を持つ、分かっている事は彼との戦闘は避けれないと言うことだった。


レレリアとルルノアに視線を向ける、3人で果たして勝てるのか。


勝てたとしても、誰か死んでしまうのでは……そんな考えが頭を過ぎる。



「ブレット、余計な事考えず、いつも通りに行こ」



ルルノアはブレットの様子を見てそう一言だけ告げた。


考え事をして居る時の彼は酷く動きが鈍る、恐らく……優しいから私達の心配をして居るのだろう。


ルルノアはレレリアとアイコンタクトして頷く。



「大丈夫、灰魔法は風魔法に弱い、私達ならやれるっしょ?」



「……あぁ、俺たちならやれるな」



ルルノアの言葉にブレットは雑念を振り払った。


最初から負けを考える奴が勝てる訳ない、そして拳を構えた。



「グレイさん、目を覚まさせて上げますよ」



「期待はしてないさ」

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