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第52話 実戦演習

「ふぁ……」



「昨日も遅くまで起きてたけど、何してたの?」



「ちょっと魔導書読んでた」



アルトを先頭に数名の教員と思わしき魔道士を連れてカーニャ達は禁域の森へと向かう、いきなりの実戦演習にワクワクする者、恐怖を抱く者……様々だった。



「もやしっ子は後衛なのだからしっかりしてくださいまし」



「しっかりする為に夜更かししたの」



少し前を歩くルナリスに目を擦りながら告げる、相変わらず昨日解散してからルナリスとアリアは一言も言葉を交わして居なかった。


正直今日の演習も心配でしか無い、だが二人とも命が掛かって居るのだ、流石に実戦中はちゃんとする筈だった。


それに他人を心配するよりもまずは自分、支援魔法や治癒魔法は色々と調べた。


セオリーとしてはまず前衛に防御と強化魔法を、その次に中衛にも役割に沿った支援を与える。


だがルナリスは昨日聞いた通りオールラウンダー、彼女に支援はあまり必要ない、故に私はアリアの支援に集中すれば良い筈だった。



「緊張してるの?」



「うん、自分で戦うのは初めてだから」



「大丈夫よ、今日行動する範囲の魔獣は精々Dランク任務で討伐する低ランク魔獣、確かに死ぬ危険はあるけど……私達なら大丈夫よ」



そうアリアはカーニャを元気付ける、だが手が震えて居るのが見えた。


彼女も怖いのだ。



「禁域の森に着いた、此処からはそれぞれ教員と共に散り散りとなって貰う!A.B班は俺に着いてこい!」



アルトがそう告げると他の生徒達は教員と共に別の場所へ向かう、カーニャ達の班はB、大きな移動の必要はなかった。



「ひゅー、B班は美人揃いだな」



A班の少しチャラついた金髪の生徒がカーニャ達を見てそう告げる、集中しているアリアの耳には届いて居なかったがルナリスは冷ややかな視線を送っていた。



「あんた、アルレア家の跡継ぎ、ルナリスだろ?俺はレンデア家の長男、ブレットだ」



「知ってますわ、貴方のお父上と私のお父上は懇意にしてましたから」



「二人が懇意にしてるって事は……俺達は結婚するかもな」



「あら、そうですか」



ブレットの言葉に塩対応する、良くこんな状況で冗談が言える物だった。


だがどうやら二組で行動する様子、人数は多い方が心強いし戦略の幅も広がる筈だった。



「白い子がカーニャで、赤い方がアリアだろ?俺は一応前衛だからよろしくな」



アリアとカーニャを指差し、自分だけそう告げると前の方へ歩いて行く、取り敢えず彼は貴族でチャラいという事しか分からなかった。


他のメンバーに至って自己紹介すらしない、彼らと共に行動するのが不安だった。



「俺は此処までだ、取り敢えず演習の目的はこの森で6時間生き延びる事、一応2チーム居るが別に協力するかどうかは任せる」



「すみません、この演習はどう言った風に成績に反映されるのでしょうか?」



アルトの言葉にルナリスは手を上げ質問を投げ掛ける。



「基本的にはチームワークを見てるが、目に見えて分かりやすいのは魔獣の討伐数、逃げ回っても良いが、倒した方が成績は良くなるな」



「ありがとうございます」



アルトに礼を言うとルナリスはカーニャ達の方に視線を向ける、この3人で大量討伐は恐らく厳しい……それが彼女の心中だった。



「俺らは俺らで行かしてもらうぜ、精々死ぬなよ美人3人組さんよ」



ブレットはチームメンバーの女子生徒二人を連れて森の中へと消えて行く、気が付けばアルトも居なくなっていた。



「さて、これからどうするカーニャ?」



アリアはルナリスの方を見ようともせずにカーニャに話しかける、だがこれからの事よりも気になる事が一つあった。



「すごく関係ないんだけど……この学院、女性比率高くない?」



「本当に関係ないですわね」



カーニャの言葉に二人は息を揃えて呆れて頭を抱える、だが学院には今思い返せば男子生徒は数える程しかいない。



「男は普通に騎士や兵士になるって道があるから魔法をわざわざ学んでまで魔導兵を目指す人が少ないのよ、別に深い理由なんて無いわよ」



「そうなんだ」



「そうですわ、それよりもアリア……貴女なんでずっと私には黙ってるのかしら?」



「別に深い意味は無いわよ」



そう言いアリアは気まずそうにそっぽを向く。



「一つ、言っておきますわ……確かに私は貴女の事が嫌いですわ……でも恨んではいない、憎んでは居ませんから」



「……そう」



ルナリスの言葉に少しアリアは心なしか安心した様な表情をしていた。


やっぱり二人の関係性は分からない、人間関係は不思議な物だった。



「一先ず私は探知魔法で周囲を警戒しますわ、お二人は視認できる範囲の警戒をしてくださいまし」



ルナリスの指示に頷く、だが幾ら低級の魔獣しか出ない森とは言え視界は悪い、木々が生い茂っていて何処から出て来るかなんて分かった物じゃ無かった。



「周囲に魔獣は居ないようですわ」



そう言い閉じていた目を開くとルナリスは折り畳み式の杖を伸ばした。



「討伐した方が特典高いらしいけどどうする?」



「そうですわね……まずは一匹討伐してから考える、それで宜しくて?」



ルナリスの確認にカーニャは頷く、正直どう行動すれば良いかなんて分からない……ただ従うのみだった。



「戦闘のパターンとしては赤ピーマンにもやしっ子が支援魔法を施す、その次に私……それが終わったら攻撃支援をして欲しいですわ」



「頑張ってみる」



魔法はしっかり覚えて来た……抜かりは無い。



「それじゃあ……行きますわよ」



ルナリスの言葉に二人は頷く、彼女を中心にアリアが数歩先を歩き、カーニャはルナリスの二歩後ろを歩く形で森を進む事になった。


森はクラスメイト合計して40人あまりがいる筈なのに驚く程に静かだった。


何の戦闘音も聞こえて来ない……ただ木々が風に揺れる音が聞こえる、微かに陽の光も入ってそれ程暗くは無かった。



「もやしっ子は庶民の生まれかしら?」



暇を持て余したのか、ルナリスが質問をして来る、出生の話しは申し訳ないが何も覚えていなかった。


だが恐らく貴族では無い筈だった。



「多分そう」



「多分って何ですの、私との実技試験の時、貴女無詠唱で魔法を使いましたわよね?」



「無詠唱?カーニャが?」



ルナリスの言葉にアリアは驚いた様子でコチラを振り返った。



「ええ、攻撃こそしなかったけれど、私でも無詠唱は出来ない……貴女どうやって無詠唱で魔法を?」



どうやって……そう聞かれても私には理屈に叶った説明など出来ない。



「えーっと……なんかイメージしたら出来た」



「イメージしたらって……」



その言葉に二人は呆れる、だが真実だ。


火炎魔法なら火の玉を飛ばすイメージで手のひらを翳すと魔法が出る、やった事はないが大体の魔法はイメージすれば出る筈だった。



「ちょうど近くにウルフが居ますわ、アリアに支援魔法を掛けてくださいまし」



「分かった」



そう言いアリアに強くなるイメージで支援魔法を施す、具体的には筋力が上がり、鋼の鎧を纏わせる感じだ。


手を翳すとアリアの身体が光に包まれる、見た目では何が変わったか分からなかった。



「凄いわね、体が軽いし……」



そう言い近くの石を拾い上げて頭に打ちつける、すると石は粉々に砕け散った。



「貴女……言いたくは無いけど異常ですわね」



「そうなの?」



不思議そうにカーニャは首を傾げた。



「二人とも来るわよ」



そう言いアリアは剣を抜く、そして数秒後、茂みからオオカミの様な四足歩行の魔獣が息を荒げながら現れた。



「魔獣はあの一匹だけですわ」



「了解、一人で行ける」



ルナリスの言葉に頷くとアリアはウルフを上回るスピードで距離を詰める、そして噛みつきの攻撃を腕を噛ませてガードするとそのまま剣で心臓を貫いた。



「余裕ね、カーニャの支援魔法もバッチリ……これならかなりの数討伐できるんじゃ無い?」



「その様ですわね、一時はどうなるかと思いましたが……割といいチームかも知れませんわ」



その言葉にカーニャは少し笑みをこぼす、初めて使った魔法が人の役に立った……それが嬉しかった。



「それじゃあ、どんどん行くわよ」



「ええ、そうしましょう」



予想以上に呆気ない初戦に二人は森の奥へと向かう、魔法への不安も無くなったカーニャも置いてかれ無い様に二人の背中を追いかけた。

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