第四十三話 いざ魔法学院へ
「ねむ……たい」
寝ぼけ眼を擦りながらゆっくりとベットから起き上がる、あまり良くない寝覚めに隣を見るとメリナーデが布団に侵入して来ていた。
「邪魔」
そう言いカーニャはメリナーデの顔を押しのけるとベットから降りる、そして洗面所に行くと髪の毛が爆発していた。
適当に髪の毛をペタペタと触り、歯磨きをしながら自分の顔を見る、昨日の事を思い出しカーニャの顔はみるみる赤面して行った。
何故……カナデに好きと言ったのか、メリナーデのお陰で聞こえては居ない様だったが、昨日の自分はどうかしていた。
美味しい食べ物を食べて、カナデから褒められて……舞い上がっていた。
恐らくカナデは私の事を妹か、若しくは娘としか思ってない筈、彼とは3歳しか歳は離れてないのに。
だが見た目も精神面ももっと大人に見える、とても10代とは思えない……人生二周目の風格があった。
「二人とも起きてるか?」
扉をノックする音と共にカナデの声がする、慌ててカーニャは髪の毛を整えると無駄にはだけて居るメリナーデを布団に包んで扉を開けた。
「カーニャだけか、まぁメリナーデ様は……暫く芋虫でも大丈夫だろう」
微かに動く布団に目線を向けてカナデは呆れながら告げた。
「下で待ってるから準備出来たら降りてきてくれ」
「分かった」
カーニャの返事を確認するとカナデは扉を閉める、最悪メリナーデは寝かせて居ても問題はない筈だった。
それにしても昨日の料理は美味しかった、1日経った今でも余韻がある……食事は毎日あそこでも良さそうだった。
10分ほど宿屋の前で待って居るとカーニャが現れる、急いで居たのか、髪の毛が少し跳ねていた。
「髪、跳ねてるぞ」
「あ、」
カーニャが少し恥ずかしそうに照れる、こう髪の毛が長いと色々と不便そうだった。
「んじゃ、行くか」
カナデの言葉にカーニャは頷く、行くとは言ったがメイガスタの居場所は分からない。
大魔道士と言われ、国の象徴にもなって居る彼が居るとすればやはり城なのだろうか。
魔力探知すれば楽に探せると思いきや、本当の手練れは魔力を抑える、故に探知は当てにならなかった。
とは言え、有名な以上は探すのも苦労はしなさそうだった。
適当に露店を出している店のリンゴを買うと情報を収集する。
「旅の者なんだけど、メイガスタさんって何処で会えるか分かります?」
「大魔道士様なら魔導学院に居ると思うぜ」
「魔導学院?」
「そ、聞いた事ないか?一応ルデールは大陸で唯一魔導士を育成する学校を運営してるんだ、そこの理事長がメイガスタさんなんだよ」
初めて聞いた、ルデールが魔導士大国なのは知っていたが、まさか学校があるとは……少し入って見たかった。
「情報提供感謝します」
店主に礼を言うとリンゴをカーニャにあげて歩き出す、そう言えば上空から街を見下ろした時に城とは別にやけに大きく学校の様な建物があるのが気になっていた。
あれが恐らく魔導学院なのだろう。
「ねぇ、学校って何?」
「何かを学ぶ場所だよ、今回だったら魔法の事を教えてくれる……まぁ人によっては楽しくもあり、嫌でもある場所だな」
俺は勉強が嫌いだったが、友達がいた故に楽しかった、何だかんだ学校滅べとか思いながらも充実していた。
「そんな所があるんだ」
「まぁこの世界では珍しいかもな」
基本的にこの世界に学校なんて無い、あるとしても貴族や裕福な人が行く所、向こうの世界の様に義務では無い。
カーニャが知らないのも無理はない。
「しかし魔導学院か……楽しそうだな」
魔法を学べる学校、異世界といえば魔法、それに学校が加わればもう一つの作品だった。
だが年齢的にも入れる歳では無い、それに魔法を学ばなくても女神の力のお陰で使える……ロマンは無いが便利だった。
「此処か?魔導学院って」
主にカフェなど小洒落た店が立ち並ぶ通りを抜けると学校と呼ぶには大きな施設が現れる、かなり外観は綺麗だった。
まぁ異世界の学校と言っても基本的には向こうの世界と変わらないと思って居たが、想像以上だった。
正門には見張りの兵士が二人、恐らくメイガスタに合わせてくれと言っても門前払いだろう。
「さて、どうしたものか」
俺一人なら透過魔法でも使えば入れるが、カーニャと一緒に入るとなれば別の手を考えないと行けない、少し遠目から策を練る為頭を働かせた。
「あれ、昨日のお客さんじゃん!」
後ろからの声に振り返る、そこには昨日訪れた酒場の店主が立っていた。
当たり前だが昨日のエプロン姿では無く妙にオシャレな格好、そして隣には彼女にそっくりな少女が立っていた。
「あ、昨日はありがとうございました、そちらの子はお子さんですか?」
「そうなの、今日内の娘が入学の為の試験でね、そちらも?」
入学試験、良い事を聞いた。
「そうなんです、奇遇ですね」
「本当ね!こんな偶然があるものなのねー」
そう母親はしみじみと感心する、だが入学試験に潜入するとしても恐らく名簿確認がある筈だった。
「私アリア、あんたは?」
「カーニャ」
視界の端で二人が挨拶を交わしている、年齢的にも同じくらい、出来る事なら入学させてあげたかった。
魔法の基礎から学べて、尚且つ安全な環境で守られる、そして同年代の人間も居る……確実に俺と旅をするより良かった。
「私の自己紹介がまだだったね、カタリスって言うんだ」
「あ、カナデです」
保護者同士の自己紹介も済まし、カタリス親子に便乗して正門を突破する、運が良かったのか、特に身分確認などは求められなかった。
「しかし大きな学院ですね」
「国からかなりの支援を受けて居る学院だからね、国王が変わって次世代魔道士の育成に力を入れ始めてからは更に規模も大きくなったんだよ」
カタリスの説明を聞きながら学院内を歩く、どうやら寮や他の施設も併設されている様で、学校の中だけで一つの小さな街が出来ていた。
学院の生徒なのか、白を基調とした珍しい制服を着ている、汚れが目立ち易い色をして居るのにも関わらず生徒は皆身だしなみが整っていた。
「そう言えば試験って何をするんですか?」
「筆記と実技の二つだね、筆記は魔法の基礎的な事で、実技は魔法の威力とか正確性ってとこかな?」
「成る程……」
カーニャなら問題は無さそうだった、いつも魔導書を読んでいる故に知識的には問題ない、少し心配な事といえば実技の方、無詠唱をどう受け取られるか……少し心配だった。
「心配せずとも大丈夫だよ、この学院は育成が目的だから試験は割と甘い……その代わり入学後が大変だけど」
「入学後?」
「そう、授業は難しい、実技では死ぬ事は無いにしても大怪我する可能性はある、大変な学院生活が待ってるのよ」
そう言いながらカタリスは笑う、普通の学校とは違う故にある程度の想像は付くが、大怪我するのは少し心配だった。
「さてと……アリア、カーニャちゃん、頑張って来なさい!」
カーニャの心配にグルグルと思考を巡らせて居るといつの間にか試験会場へと到着する、ここから先は試験生のみの入場らしかった。
「カナデ、行ってくる」
「おう、頑張って来い……」
カーニャの言葉に応援の言葉を送る、だが彼女が行く前にやる事があった。
建物の影で透過魔法を使うと先に会場へと入る、そして試験官に近づくと軽い記憶改ざんの魔法を施した。
今日の受験生に急遽メイガスタ推薦のカーニャと言う少女が加わる……簡単な事だった。
念の為に会場全ての試験官に同じ記憶改竄を施すと入り口に戻る、そして透過魔法を解きカタリスの元へ戻った。
「どこ行ってたんだ?」
「トイレですよ、それより試験ってどれくらい掛かります?」
「そう……だね、多分2〜3時間って所かな?」
思ったよりも時間が掛かるようだった。
だが丁度いい、元々メイガスタに用があったのだから。
「そこら辺のカフェで時間でも潰さな……ってあれ?どこ行った?」
少し視線を外していた間にカナデの姿は消えていた。
一瞬疑問を抱くも、幸いにも彼女は細かい事は気にしない性格、直ぐにカフェのパンケーキに思考を持ってかれて居た。
「さてと、久し振りの再会だな」
カナデはそう告げると学院の校舎へと歩いて行った。




