表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/129

第三十話 右腕の男

アルスフィアに案内され、リリアーナ教の本部へと足を踏み入れる。


教団内部はまるで宮廷の様に豪華な絵画や赤い絨毯が敷かれ、下手をすれば中小国の王宮よりも豪華な内装だった。



「まぁ、宗教って儲かるって聞くしな」



特に価値の分からない絵画を眺めながらぼやく、裕福な家庭の多い日本の宗教が儲かるのは分かるが、劣悪な環境下で過ごす人が多いこの異世界で、どう集金すればここまで豪華な内装になるのか、黒い匂いしかしなかった。



「カーニャはこんな所に住みたいと思うか?」



「落ち着かないからあんまり好きじゃ無い」



そう言い少しカナデの方に寄る、無駄に広い教団内、まだ着く様子も無く暇だった。


すれ違う人はあまり信者には見えない一般人ばかり、宗教と言えば何らかの衣装で統一して居ると思っていただけに、少し違和感があった。



「なんか、臭い」



そう言いカーニャが鼻を摘む、その行為にカナデは少し匂いを確かめるが、何も変な匂いはしなかった。



「誰か屁でもしたんじゃ無いのか?」



その言葉にカーニャはメリナーデに視線を向けた。



「わ、私はオナラなんてしません!おしっこもうんちも何にもしません!!」



珍しく怒って居る様子だった。


だが女神なら本当にしないかも知れないと思ってしまうのが怖いが、先程腹を下してトイレを探し、青ざめて居たのを忘れたのだろうか。


仮面で表情が見えないアルスフィアが何を言って居るんだと言いたげに此方を振り返る、先程のメリナーデの発言で少し注目を買ってしまった様だった。



「悪い、大人しくしとくよ」



『頼むよ』



そう書き、少し怒ったキャラクターを描く、この短時間でよく描ける物だった。



「しかし広いな」



随分と廊下を歩いたが、まだ着く様子はない、外観だけを見ると奥行きが分からなかったが、かなりの広さだった。


だが知れば知る程金の出どころが謎めく、貴族を対象にしてもリターンが無ければ金は払わない筈……俺が殺した四季崎の執着と良い、何かあるのは確定的だった。



『この先に居る』



ようやく長かった廊下を抜け、一枚の扉の前でアルスフィアが立ち止まる、そして此方を振り返るとノートを捲った。



『これから会うのは教団の右腕、教祖が表に出ないこの教団では実質的に教祖となって居る男よ』



「いきなり大物だな」



『かなりの曲者だから気をつける事ね』



そう言い扉を開ける、するとうるさい叫び声と共に1人の青年が駆け寄って来た。



「待ってましたよ!我が家族の一員が増えると聞いて居てもたっても居られず……扉に手が掛かると同時に走り出してしまったよ!」



そう言いアルスフィアの肩を何度も叩く、熱苦しい男だった。


黒い短髪にカナデと変わらない身長、寧ろ高いまである、ガタイも良い……風格はあった。



「おっと、自己紹介をして無かったな、俺は赤井迅堂、この教団で右腕としてやらせてもらって居る」



赤井がそう自己紹介をすると奥で傍観して居た1人の男が少し慌てた様子で此方へ近づいて来た。



「赤井さん!表向きには貴方が教祖で通って居るんですからそれは言っちゃダメですよ!!」



「あれ?そうだったか!?」



そう言い豪快な笑い声をあげる、あっさり重要な事を喋るなんて口の軽い男だった。


だがそちらの方がやり易い。



「俺はカナデと言います、そしてこっちがメリー……」



「此方の少女は?」



カーニャを紹介する前に割り込む様に訪ねて来る、気の所為か……少しカーニャの事が気になって居る様子だった。


ふとそんな時、奴隷商の言葉を思いだした。


妙に熱血という言葉がよく似合う男がカーニャの事を買いたがって居たと……正直そんな条件が当てはまる男は大勢いるが、リスクは犯せなかった。



「この子はソーニャ、メリーの妹です」



「ソーニャちゃんか、良い名前だね」



そう言い笑顔を浮かべる、少し危ない奴かも知れなかった。


カーニャも怯えてカナデの背後に隠れる、その行動に少しショックを受けて居る様子だった。



「それで、カナデ達はどんな関係なのかな、一応転生者だから教団には入れてあげたいけど、ある程度審査も必要だからな」



3人の関係……正直聞かれるとは思っていた。


何の用意もして無いほど俺も馬鹿では無い。



「ソーニャとメリーはとある貴族の娘です、そして俺は2人の用心棒、関係はそれだけだ」



「成る程、確かによく似てる、まぁアルスフィアからの紹介だ、深くは聞かないよ」



そう言い赤井は一歩前に出ると握手を求める様に手を出した。


カナデをゆっくり手を差し出すと赤井はその途中で強引に手を握り握手をする、そして笑顔を浮かべた。



「君達は今日から家族だ」



「あ、あぁ……」



正直あっさり行き過ぎて拍子抜けだった。


もう少し一悶着あると構えていただけに、困惑までして居る、アルスフィアの根回しが優秀だったのだろうか。



「さて、家族になって早速だが、我が教団のシステムを説明しようか」



「システム?」



「そう、我が教団には一つ、鉄の掟がある」



そう赤井が話し始めるとそばに居た紹介すらされて居ない男は身を引く様に離れた。



「それは必ず教団の役に立つ、それだけ」



「教団の役に立つ?」



そう目を輝かせながら言う赤井の言葉に疑問を投げ掛ける、少しきな臭くなって来た。



「そう、我が教団は役に立つ者には報酬は弾む、裏を返せば役にたたなければ切り捨てる、至ってシンプルだよ」



簡単に切り捨てる割には家族なんて大層な呼び名をつける事に突っ込みを入れたいが……それよりも気になる事が多過ぎた。



「アルスフィアの紹介では汚れ仕事は何でもすると聞いたが、人を殺した経験は?」



その言葉にアルスフィアの方を見る、意外にもあっさり行き過ぎて居たとは思っていたが……まさか汚れ役として入団するとは思って居なかった。


どう言う作戦なのかしっかり説明して欲しいものだった。



「人殺しの経験は無い、だが実力を疑うならここで手合わせするか?」



そう言い腕を捲る、俺が殺して来たのは転生者ばかり、四季崎もこの教団に関わって居たところを見るに、経験が無いと言った方がリスクは少なそうだった。



「アルスフィアの紹介だ、実力は疑ってない、一応聞いただけだから気にしなくて良い」



そう言い懐を漁ると、赤井はタバコを取り出した。



「それじゃあ、ビジネスと行こうかファミリー」



そう言いタバコに火を付ける、そして赤井は椅子に腰掛けた。



「アルスフィアに聞いた話と相違は無い、カナデは2人を守る為の隠れ蓑が欲しいんだろ?」



赤井の言葉に理解が追いつかない、だがここは話を合わせるしか無かった。



「あぁ」



「それにしても、英雄組合のレイジを殺すとは大した強さだね」



その言葉にカナデは表情には出さなかったが、かなり動揺した。


レイジを殺した事がバレて居る……流石にそれはない筈だった。


そうなれば英雄組合に協力するなんて話しは出ない、彼が死んだ事実を上手く潜入の口実に使って居るだけだった。



「仕方なかった」



「良いや、正直言うとその実力を高く買って居る、英雄組合は精鋭揃い、我々としてもかなり警戒しててな」



その英雄組合関係が2人も潜入して居る時点で警戒がザルなのは言うまでもない。



「……まぁ、ビジネスの詳しい話しは明日、他の者も交えてしよう、今日はゆっくり休んでくれ」



そう言い後ろで待機して居た男に扉を開けさせる、そして退室しようとした時、赤井は最後に一言残した。



「似たもの通し、仲良くしよう」



その言葉に振り向いた頃には扉は閉まって居た。


似たもの通し、その言葉が意味する事は分からないが……リリアーナ教、ただの新興宗教でない事だけは確かだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ