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追想のヒガンバナ  作者: 希塔司
第2章「戦禍」
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第23話「打開策」

「ちょっと待て、おれたちに依頼したのってまさかそいつらを殺すためにってことか?」



 周も同じことを考えていた。最盛が次々と見せた能力はもう人間のものとは違う。普通はそんなものとまともには戦いたくはない。


 だが今は戦争中で、国どうしが激しい殺し合いを強制させている。そんな中で一個人が兵器として運用されている狂った世界になっている。


 すみれはバレたかという顔をしながら説明する。



「そうですよ。最盛や他の能力を持った人間兵器の排除。これが麦国から2人に依頼した本当の目的です。もちろん私個人としてはやり過ぎな感じはありますが...。」


「冗談じゃないぜ。あんな訳のわからなねぇやつらと戦うなんてごめんだ。」



 これに関しては周の意見と完全に同意だ。金を積まれれば、どんな獲物も殺すのが私たちの仕事。かと言ってこんな理不尽な依頼をされるのははっきり言って理解できない。私たちのことをまるで一軍人のように見ているようで不愉快になる。



「どうしてそれを隠してたの?」



 私は核心に迫りたい気持ちですみれに問いかけてみる。



「知れば絶対に2人はこの件を断ると思ったからです。そりゃ大戦と言っても、帝国はつい先日までは完全に関わりがなかったですから。」



 確かに、大戦に関しては完全に蚊帳の外から見ていたようなもの。帝国は島国のため大戦の主力とされている戦地からかけ離れている。そのため帝国市民も世界中が戦争をしている事実に気づかずに生活を送っている。



「んで、すみれ。お前はおれたちにどうして欲しいんだ?」


「私個人としては、2人を公式で戦死扱いにできればと思ってます。」


「戦死扱い?」


「はい、そうすれば2人はピースマークが資金提供している阿国のチャルヴィッフィ要塞へ潜り込めます。そこにはピースマークが保持している研究資料、血や細胞のサンプルが置かれていると思います。彼らは戦士した人間を密かに回収して実験を繰り返していると情報が入りました。」



 チャルヴィッフィ要塞への侵入、これがすみれがこの大戦における最大の任務。麦国はこの研究資料やサンプルが欲しいのだろう。



「それを回収するのが私たちの仕事ってこと?」


「そうです。それを回収次第、私たちは撤退して任務は終了になります。」


「なんだ、あいつらとはやりあわねぇのか。そうならもっと早く言ってくれよな。それならやりようはなくはない。」


「え?」



 周は少し考えた後、地図を出して私たちに共有してくれる。



「下川戦線は首都から山岳地帯まで広がっている。あやめ、ここの集落は大体どのあたりだ?」


「えーと...。今私たちは大体この辺りだと思う。私たちが上陸したのがそのくねった形の海岸だから間違いないと思う。」



 集落の跡地は下川戦線から南西に数キロ下にある。



「よし、ここに山岳地帯があるだろ。おれたちはここから阿国に入ろう。そうすればまともに戦闘しなくてもいいし、山岳を越えればそこは貿易区だ。行商人に扮すれば楽に行けるはずだ。



 諜報部にいただけのことはある。腐っても情報は周のところに集まるようには今でもなっているそうだ。



「さすが周ね。この短時間で、よくそこまで分析できたこと。」


「昔、藤宮たちと阿国周辺を旅行する計画を立ててたときにちょっとな。そう褒めんなって。」


「いや別に褒めてないからね。」


「でもなぜここからなんですか?この山岳地帯からだとすごく遠回りに見えますが。」



 すみれの言うことも一理ある。チャルヴィッフィ要塞があるのは海岸沿いの国境に位置する。わざわざ山岳地帯から迂回してく提案に乗る理由もない。けど私には周が何も考えずにそんな提案をしているようには聞こえない。



 ん?まさか...。地図をもう一度見た。そして気づいた私は周の顔を見ると、周は少し微笑みながら理由を話す。私がそれに気づくだろうと確信していたように。



「そうさ、この貿易区から蒸気機関車を経由してその海外沿いまで向かうのさ。ちょうどそこまで鉄道を引っ張っているようだからな。」


「鉄道ですか?」


「なんだすみれ、知らないのか?阿国は帝国と戦う前提ではなから鉄道を引いたのさ。帝国は当時はまだ世界にとっては小さな島国程度の解釈だったからな。奪うつもりで海岸まで引いた。帝国領土まで海を渡る鉄道を引こうとしたがそれは頓挫した。その名残がいまだにあるのさ。」


「で、でも...!」


 顰めっ面をしながらすみれは反論し始めた。



「情報では、確か今はその海岸付近まで鉄道は走らないじゃないですか!それに、その鉄道には阿国の兵士とかもいるだろうし。」


「わかってるさ、それを奪う。」


「奪う!?」


「そうだ、これなら無駄に戦地で大量に殺したりするよりはマシだ。確かにおれたちは殺し屋だが、獲物以外には眼中にはねぇよ。大量に殺したいのならもはやそれはイカれた殺人鬼だ。」


「はぁ!?今は戦争中なんですよ!そんな綺麗事なんて言ってらんないんです。いかに早く戦争を終わらせるか、これが最善策なんです!潔く敵地を抜けた最短距離で向かう方が時間はかからないですよ!なんでわかんないのかな!」



 だんだんと互いが苛立ち始めていく。蚊帳の外にされている私の身にもなって欲しい。



「わかってねぇのはお前だすみれ。例え戦争中だとしても。いや、まさにここが人間の在り方だと思わねぇか?いくら敵の兵士だろうがそいつらにだって大切な人はいんだよ。仮にやっちまったら、その恨みや憎しみは、巡り巡って必ず次に繋がる。そうなったらどうするつもりだ。また戦争するつもりなのかよ。」


「上等ですよ!その時はその恨みごと潰してやりますよ。」


「お前っ!」



 周はすみれの胸ぐらを掴み出す。さすがに互いの緊張状態も限界に達している。



「なんなら今ここでまたやります?周さんの技とかはさっき確認しました。今度は容赦なく殺しますよ?」


「そうか、やれるもんならやってみろよ。今度こそお前の頭に弾をぶちこんでやる。いや、それともさっき見たようにバラバラにされたいか?」



 もう互いにまた殺し合いをし始めようとしている2人を見て元気だなとわかる。止めたいところだけど...。私は今、お腹が空き始めてしまった。それに先ほどの傷がまだ痛む、それなら...。




「あーあ!お腹空いたなー!!」



 私が突然大声を出したことに2人は驚いた顔をむけている。



「え、お腹空いたんですか?今!?」


「おいおい、邪魔すんなよあやめ。おれは今すっごく苛ついてんだよ。」


「あーはいはい。2人は早くご飯食べたくてしょうがないんだよねー!わかるよ!私もだもん!」



 ニヤけながら私は2人をくっつけさせていく。いい加減そんなひりつく空気を変えたいんだから。そう思い肩を組ませて。



「ささ、せっかく私の故郷に来たんだから。ここの郷土料理でも食べようじゃない!ご馳走するわよ。」


「え、先輩が料理してくれるんですか!?」


「そうよ、誰かに料理するの滅多にないから緊張するけど。」


「マジか、あやめの手料理を食べれる時がくるなんて...。」


「いや期待されても困るし、てかあんたの分はないわよ。」


「なんでおれの分は作ってくんねぇんだよ!?」


「あはははは!」


「すみれ笑いやがったな!...ぷっ!」



 2人は思わず吹き出すように笑い合った。やっぱり仲良しが1番よね。そう思いながら私の家に3人で向かう。


 あ、食材用意するのを忘れてしまった。あとで調達しなきゃと思い2人の思い切り笑う顔を見ていた。

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