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鉄の守り人  作者: Sangomiya
胎動
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第1話

 空は赤く染まり、大地が荒れる。この世界は終焉を迎えようとしていた。人類対怪物(クリーチャー)の長きにわたる大戦。世界の主要国家はすべて壊滅し、ここ日本に築かれた最後の砦も、今や風前の灯火だった。誰もが生存を諦め、ただの延命だと絶望に暮れる。だが、僕は諦めない。合理的思考の脳は勝率『零』と冷酷な数値を弾き出している。けれど、絶望のどん底だからこそ、希望の火は灯し続けなきゃいけない。それが、生存確率を零から引き上げるための、僕なりの計算(エゴ)だ。


「深神八雲(みかみやくも)隊長! 怪物の増援です!」

 

 海を背にした高台の砦。地の利を活かした防衛線だが、海と空に適応した怪物の圧倒的な物量によって、無残に崩壊しつつあった。


「待ってろ、今行く!」


 大砲やバリスタの迎撃をあざ笑うかのように、空を埋め尽くす異形の群れが砦の内部へと侵入を果たす。


「隊長、ここはもう...... ぐふっ」


 耳を突き刺す、仲間たちの断末魔。


「僕の仲間を……よくも! うおぉ!」


 僕は走りながら、左腕に装着された科学の結晶、変身デバイス『スサノオジェネレーター』に右手を叩きつけ、魂の底から叫んだ。


「激甲(げきこう)!」


『 Drive - Susanoo - System 』


 まばゆいホログラムの光が僕の肉体に重なり、実体化していく。身を包むのは、漆黒の流線型装甲。青いカメラアイが鋭く閃光を放ち、全身のネオンラインが脈動するように輝く。人類が導き出した合理的回答。装甲騎兵(マスクドトルーパー)だ。

 腰の柄を引き抜くと、高エネルギーの青きレーザーブレードが激しく噴出した。光刃を一閃。群がる怪物の肉を焼き切り、次々と一刀両断していく。しかし、敵の物量は文字通りの無限だった。押し寄せる圧倒的な数の暴力が、確実に僕の身体を削っていく。


「うおぉぉぉ!」


 死闘の果て。ついに右肩の装甲が粉砕され、左足に鋭い爪が深く突き刺さる。


「がはっ……ここまで、なのか……っ!」


 漆黒の装甲が激しく火花を散らし、地面へと崩れ落ちた。


『 右肩関節大破、左下肢機能不全。システムエラー 』


 警告音が鼓膜を乱打する。無情にも、大量の怪物が僕の脇をすり抜け、砦の奥へと侵入していく。内部から、人々の、子供たちの悲鳴が響き渡る。


「僕は……みんなを……っ!」


 立ち上がろうとするが、足はピクリとも動かない。 脳は全滅を確信している。合理的に考えれば、ここで僕が死ぬことも、人類が滅びることも、すでに確定した未来だ。だが僕の心が、その冷徹な計算を断固として拒絶する。


「まだだ……。仲間を、明日を諦めるなんて選択肢は……僕の計算にはない……っ!」


 目の前に、一体の巨大な怪物が立ち塞がる。そいつはトドメの一撃となる鋭い爪を、僕の脳めがけて振り下ろした。まさに、その直前だった。突如、天から降り注いだ圧倒的な光が、僕を包み込んだ。怪物の咆哮も、人々の悲鳴も、すべてが白い光の中に消え去っていく。


「一体、なにが......っ」


『 未知の時空歪曲を検知。エラー。時空跳躍を開始します 』


 壊れかけたデバイスの機械音声が、遠くで聞こえた気がした。激しい浮遊感と共に、僕の意識は深い闇へと沈んでいった。

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