あの世でできたお友達
あの世の喫茶店に行きます。そこで顔を合わせたのはまさかの…?
「あの世でできたお友達」楽しんでもらえると嬉しいです。
柔らかい陽光が差し込む。
私は体を起こすと、カーテンを開けた。
ここは三途の川に沿うようにある街。黄泉平坂。
私はそこの隠世荘という集合住宅?で、亡者ライフを堪能していた。
堪能といっても散歩するくらいで、誰かと話すってわけじゃないんだけど。
その日も私は運ばれてくる朝食を胃に詰め込み、ベランダから見える遊園地を眺めていた。
いいかげんあそこに行って見たいのだけど、どうにかならないのだろうか。
(というか、あの雑な説明のユリさんが忘れてるだけで、普通に行っていいんじゃないかな?)
私はそう思い立つと、玄関のドアを開けて廊下に出る。
少しだけあの遊園地を覗いてみたかったからだ。
なんせあの世には娯楽があるようでない。
本やゲーム等も一応あるのだが、自ら借りに行かないと行かないため面倒くさい。
その点遊園地なら手間なく行けると思った。
(決してあの世の遊園地に惹かれて、行ってみたいとか思ったわけじゃない…。)
私は口の中で一人言を転がしんがら玄関の鍵を閉める。
その時、隣の部屋のドアが開いた。
中から大学生くらいの男性が出てくる。
男性はこちらに気がつくと、「こんにちは」と挨拶してきた。私は条件反射で返す。
私はなんとなく思ったことを率直に口にする。
「私、ここで他の亡者に初めて会いました。」
「ここ、亡者同士の交流とかないですからね。俺もあんまり会わないですよ。」
「意外です。亡者同士で慰め合える憩いの場所でもあるのかと思ってたんですけど。」
「ありますよ一応。楽しいんで案内しましょうか?」
随分なスピードで話が進むが、どうせ暇なのでお願いしますと案内を頼んだ。
2人で隠世荘を出る。遊園地の方向に歩き始めた。
「あの観覧車って、輪廻?の何かなんですよね?転生する時に乗るんですか?」
「ええそうです。毎日かなりの人が乗ってますけど、俺は浪人なので乗れてないんですよ。」
初耳の言葉が出てきた。
浪人というと、受験に落っこちて受験生をもう一回やるあれのことだが、亡者に浪人があるのだろうか。
「あの、浪人というのは?」
「49日で転生先が決まらなかったんですよ。ちょっと生前の罪がグレーでね、家族の供養もちょっと足りなかったりして。追試みたいなもんです。」
「はあ、そんなことが。」
「そもそも、49日に1人づつ十王から呼び出されたら3人余るでしょう。残りの3人は死後100日めと一周忌、そして3回忌の審判を担当してるんです。ちなみに僕、もう少しで3回忌です。」
「そうなですか。じゃあもうここの生活も長いですね。」
そんな世間話を交わしながら歩いていく。
(ユリさんちゃんと説明してよ…。)
現世のメイドはかなり優秀な方々がお給仕してるイメージだったけど、あの世のメイドさんは案外ずぼらである。
そうこう言ってる間に大きな建物の前についた。
レトロな煉瓦造り建物は、昔行った珈琲屋さんに似ている気がする。
私はなんだか不思議な気持ちで店内に入った。
中は吹き抜けになっていて、中央に階段がある。そこから2階につながっている。
「こんにちは、いらっしゃいませ。」
と言いながら、ユリさんよりよっぽどメイドらしいメイドさんが席を案内する。
男性は目の前に腰掛けると、メニューを私に手渡す。
内容は現世とほとんど変わらないが、現世の珈琲屋さんより子供が飲める飲み物が多い。
私がメニューを見つめていると、男性は顔をあげていった。
「そういえば申し遅れましたよね、俺の名前、天笠湊といいます。大学2年生です。」
「私城崎綾乃です。高校2年生です。」
お互い会釈をしたのち、またメニューに目を落とす。
しばらくして注文が決まると、メイドさんに注文をする。
湊さんは珈琲を頼んだが、ミルクと砂糖をつけていた。私はカフェラテを頼んだ。
飲み物を待ってる間、あたりを見回しながら世間話を交わす。
「大学で何を勉強してたんですか?」
「法律を勉強してました。城崎さんは将来の夢とかありました?」
「私は水道局員になりたかったです。」
「どうして死んでしまったんですか?」
「自殺です。」
「…そうですか。死んだら楽になりましたか?」
「いいえ全然。むしろここに3年もいると、なんだか虚しくなりますよ。
現世で頑張って、別の方法で楽になればよかったって、ちょっと反省してます。」
私は会話しながら店内の様子を観察する。
店内はかなりの人でごった返していて、ほとんどがお爺さんお婆さんだ。
やはりあの世にたどり着く人は高齢者が多い。
しかし、若年層の人もかなり見かける。向かいの席に座ってるグループもおそらく学生だ。
そんな気はないのだが、つい聞き耳を立ててしまう。
学生らはこんなことを話していた。
「美鈴ちゃん、あのメニューもう一回取ってくれる?」
「うん、いいよいいよー。結衣ちゃん何か気になるものあった?」
「いや、あの世のラインナップが気になってね。」
「結衣ちゃんさ、お母さんには会いに行かなくていいの?」
「あー…。まぁ、気が進んだらね。」
ギリ中学生くらいだろうか。こんなに若いということは、何かの大きな事故か何かだろうか。
そうすると、知り合いと思われる女子3人が合流する。
「2人ともお待たせー。ちょっと審判が長引いちゃって。」
「お疲れ様ー。どうだった六七日は。」
「えっとね、なんか全体的に四角い感じ。」
なんだそりゃ。内心突っ込みながら私はあの学生らを見つめる。
結衣ちゃんと言われていた生徒は、合流した3人のうち1人に声をかけた
「風香さん、お待たせ。遅れてきましたよ。」
「うん、待ってたよ。」
2人は何やらくすくすと笑っている。
…同じ時期に何人死んだんだよ…。
そう思っていると、そのグループの机に置かれたメニューがふわりと風に飛び、こちらに飛んでくる。
それに気づいた5人は、拾おうと手を伸ばすが、私が咄嗟に拾ってしまった。
私は向こうの机にメニューを置くと、5人は少しばつが悪そうにお礼を言った。
「あの、不躾なこと聞くようですけど、みなさんお知り合いですよね?何かあったんですか?」」
失礼と思いながらも気になっていたことを口にする。
5人は顔を見合わすと、結衣と言われていた少女が私に説明をはじめた。
「真空崩壊という現象で地球が滅びましてね。この4人は同じ学校のクラスメイトだったんです。」
そういうと、後から来た3人が口を揃えていった。
「私たち3人はお先に逝ってたんですけど、こっちに来て再会です。」
「久しぶりに会えて嬉しかったよぅ〜。もう先に逝ったりしないでね?」
先に結衣と席に座っていたあどけない顔の少女が3人に言う。
なんだか仲良さそうだな。
死んでもこんなふうに話し合える人がいて、ちょっとだけ羨ましいとも思った。
ここに来たら、また会えないだろうかと安易な考えを抱きつつ、
私はカフェラテに息を吹きかけた。
夜にも朝にも弱くなってる気がします。氷室八弥です。
前作を読んでいただいた方には一目瞭然ですが、今回のお話、結衣ちゃん達「就活メンバー」があの世で復活してます。ちゃんと風香ちゃん達を再会できてよかった…。
あそうそう、湊さんの死因についてですけど、大学生の死因第一位ということでの採用です。他意はありませんので、あまり深く受け止めすぎずお願いいたします。
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