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 深い眠りに落ちた私は不思議な夢を見た。どこかの森の中で迷子になったのか、小学生ぐらいの私は戸惑いながら歩いている。


 するとどこかから不思議な声が聞こえてきた。


『どうしたの? 迷子かな? 人の子はそれ以上進んではいけないよ』 


 声がした方を見ると、そこには不思議な生き物がこちらをじっと見つめている。特徴的なのはその体に沢山ついた目だ。その脇には真っ白な狐と三毛猫がやはり同じように私を見ていた。


『美味しそう。攫ってしまいたいな』

『馬鹿言うなよ。こんなチビ可哀想だろ? ほらチビ、家はどこだ?』


 動物たちが口々に話すのを見て驚いた私は思わず一歩足ずさりをすると、その場から逃げ出した。


 追ってくる様子も無かったのでホッと息をついて振り返ったのだが、突然何かに腕を掴まれ引っ張り上げられたかと思うと、天地がひっくり返るような感覚がして気がつけば私はだだっ広い野原に一人、取り残されていたのだ。


 何が何だか分からなくて戸惑っていると、突然背後から何かが覆いかぶさってきた。


 首だけで振り返ると、そこには怖い女の人の顔をした怪鳥が鋭い爪で私の体を鷲掴みにしていて、奇声をあげてその場から飛び立とうとする。


 あまりの恐怖に思わず悲鳴を上げると、どこからともなく天狗のお面をつけた人が飛んできて怪鳥に向かって持っていた団扇を振りかざした。


 天狗は躊躇うこと無くその団扇を私達めがけて振り下ろすと、怪鳥は悲鳴を上げて私を掴んだまま真っ逆さまに落ちていく。


 私は恐怖のあまり声も出せずに目を硬く閉じる。


 もう少しで地上に落ちるという所で怪鳥がさらに悲鳴を上げた。


 その声に驚いて目を開けると怪鳥の胸に深々と何かが刺さっていて、私は誰かにしっかりと抱きとめられている。


 顔を上げると私を抱きとめたのは朧月で、そんな朧月の隣に降りてきて天狗の面を取ったのは漣音だ。


『……あり、がとう』


 たどたどしくお礼を言う私を見下ろして二人は眉根を寄せた。


『どういう事だ? 神隠しには時間が早いが』

『僕に聞かないでよ。今日の巡回はあの三人だよ』

『困ったな。とりあえずお前は番人に報せて来てくれ。お前、名は?』

『小春』


 朧月が私に問いかけてきたので私は素直に答える。


 夢の中だからだろうか。見知った顔を見ると警戒心や不安感は和らぐ。


『そうか。では小春、これからお前の世界を探す。それまでしばらく——誰が預かるんだ?』

『さあ? 君じゃないの』

『無茶言うな。まぁ誰かしらが面倒を見てくれるだろう』 


 そう言って朧月は私を抱えて歩き出した。そんな私達を漣音が物凄いスピードで追い抜いて行く。


 しばらくすると江戸時代の映画のセットのような場所に出た。


 沿道には色んな店が並んでいたかと思うと、その奥には長屋が立ち並ぶ通りが見え始め、その一軒に朧月が躊躇うことなく入って行く。


 そこには金髪の美青年と楓雅、そして銀髪の長い髪をしたハッとするほど綺麗な男とも女とも言えない人物が待っていた。


『お前たち、職務怠慢だな』

『忠告はしたんだよ、これでも。君もどうして戻ってきてしまったの?』


 金髪の青年の声は仮面こそつけていないがあまりにも楼主にそっくりで、恐らくこれは楼主に違いないと夢の中で私は納得する。


 楼主は困ったように私の頬を軽く抓るが、その手は今と同じように優しい。


『……腕を掴まれて引っ張られたから……』


 楼主の問いかけに素直に答えると、その場にいた朧月と楓雅と楼主が表情を歪める。


『さっきの奴は狩り場を無視したという事か?』


 眉根を寄せたまま朧月が言うと、楼主も楓雅も苦い顔をして頷いた。


『そうなんだろうね。ところで誰が持って帰る? 私が貰ってもいいかな?』


 銀髪の人が言うと、楼主と朧月と楓雅が同時に首を横に振る。


『お前だけは駄目だ』

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