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「さっきも言ったように、ここでランクを上げるには手っ取り早く有名になるのが一番の近道だ。その為に馴染の客をつける。馴染の客がついたらそいつらは年末の品評会でお前に票を入れるだろう。その票の多さで翌年のランクが決まる」

「それなら端女郎の方が有利なんじゃないんですか? だって、格子以上の人たちには朧月さまのような方しかいらっしゃらないんですよね? でも数だけで言えば端女郎の方が相手が多いんじゃ……?」

「そうだな。だがこの品評会にはそれぞれに持ち点というものがある。低ランク妖怪の持ち点は1点だ。それを各地にある遊郭の一番の推しに入れる。奴らの票を集めるには、そいつらの1推しにならなければならない。そして中級ランクの妖怪の持ち点は2点。こいつらの点はいつも端女郎と格子で割れるそうだ。そして高位ランクの妖怪の持ち点は5点。その5点は大体格子の間で回る。端女郎が点を食い合うよりも、こいつらの点を根こそぎ持って行ったほうが効率が良い。そして最後に各楼主。こいつらは持ち点が10点ある。端女郎が格子になるには点を最低でも30点稼がなければならない。ちなみに一度太夫になればその地位は任期明けまで落ちない。つまり、どれだけ上客を掴むかがランクを決める。低ランクの妖怪にはそれぞれ既に馴染みの遊女が居るが、俺達のランクの者達はさほどそういう者を作らない傾向にある。それは逆に言えば毎年、点を一人の遊女に貢ぐ傾向にあるという事だ。ここまではいいか」

「……はい」


 何だか凝ったシステムに目を白黒させながら頷くと、朧月は頷く。


「幸いな事にまだ年が明けたばかりだ。これから1年の間にそういう上客を出来るだけ捕まえれば良い。だがお前も見た通り、上客は橋を渡って真っ直ぐにまずは格子の元へと向かう。ほとんどの者は端女郎には目もくれない」

「それはもう無理なのでは……」


 今回はたまたま朧月が私を買ってくれたが、毎回そんな事があるとは思えない。


「難しいだろうな。だから俺が仲間に声をかける。俺は元々遊郭では滅多に遊ばない。戦った後に気を静める為に利用する程度だ。俺の仲間は大体そんな奴らばかりだから、格子や端女郎という役割に囚われる者はあまり居ない。だから小春、そいつらを籠絡しろ。それが一番早い。お前なら出来る」


 真剣な顔で朧月はそんな事を言うが、ほとんど処女だった私にそんな事が果たして出来るのだろうか。それは難しいのではないか。それにどうしてそんなに私の為に働きかけてくれるのだろう?


「あの……どうしてそこまでしてくれるんですか?」

「どうして……そうだな。お前は他の遊女と少し違う。神に背いたという割には悪しき心が見えない。ここへ来て半月程度だと言うのに既に現状を受け入れようとしている姿勢も気になる。何よりも俺はお前の描く絵がもっと見たい」


 それを聞いて思わず私は微笑んだ。世界のどこかにこんなにも私の絵を気に入ってくれる人が居るだなんて思いもしなかった。


「絵を褒められるのは嬉しいのか」

「はい。美大に行きたかったけど行けなくて全部独学で描いてきたので、そんな絵を褒められるのは……嬉しいです。たとえ現実逃避の為に描いていても」

「現実逃避か。ではお前はここで皆とは違う人生を少しの間経験すれば良い。この世界をその目に焼き付けそれを絵に落とし込め。それはお前にしか出来ない事だ」


 朧月に言われて私はハッとした。確かにその通りだ。この世界を知っていて、なおかつ絵に出来るのは私しか居ないかもしれない。そう思うと、何だか無性に絵が描きたくなった。

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