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鈴鳴る夜のあやかし遊廓  〜花嫁は初恋を思い出さない〜  作者: あげは渓名


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 美樹にその場所を聞いてから私も色々と調べてみたが、確かにSNSではそのパワースポットに行って気の巡りが良くなった気がする、だとか、何か温かい物を感じた、なんていうコメントをいくつか見つけた。


「何かご利益あると良いな~」


 そんな事を言いながら美樹は嬉しそうに私の先を歩く。私はそんな美樹についていくのがやっとだ。


「でも不思議だね。別に神社とかお寺が祀ってある訳でもないんでしょ?」

「そうなのよ。ただしめ縄があるんだって。いわゆる禁足地って奴?」

「禁足地……初めて聞いたかも。それ、どんなとこなの?」


 そういう事に疎い私が尋ねると、そういう事に詳しい美樹が嬉々として色々教えてくれる。


 禁足地の説明を受けた私は背筋に何か冷たい物が流れていくのを感じた。何だかその話を聞いてから、周りの気温が下がったような気さえする。


 やがて私達はその場所に辿り着いた。そこには確かに太いしめ縄が張ってあり、何だかとても仰々しい立て看板が立ててある。


「なになに? この先、禁足地。神々の住まう場所なり。足を踏み入れるべからずだって!」


 美樹はそう言って嬉しそうに言いながら看板の下に置いてあったお供え物を置く場所にそっとお酒を置いている。それを見て私も鞄から酒瓶を取り出す。


「私も持ってきたの。ここの神様、お酒好きなんだよね?」

「小春、ちゃんと調べて来たの?」

「うん。やっぱりそういうのはちゃんとしといた方が良いのかなって思って」


 そういう事はよく分からないけれど、目に見えなくても神様の存在は私も信じている。


 そう言って少しだけ奮発したお酒をそこに置くと、美樹が嬉しそうに微笑んで頷いた。


 そこへ後ろから男女のグループがやってきて、私達を一瞥するなり大声で笑い出した。


「やっば! 女だけでパワースポットとかガチすぎて笑えないんだけど!」

「マジウケる! てか写真撮ってよ、写真!」

「いいぜ。あのーすんません、そこ邪魔なんでどいてもらっていいっすか?」

「ちょ、お前失礼だろー!」


 ギャハハ! と笑いながらそのグループは私達が場所を譲ったのを良い事に、今度は色んな角度から禁足地の写真を撮り始める。


 そんな彼らを見て美樹は大きなため息を落として私の耳元で言った。


「こんな所でよくあんな事するね。罰当たりにも程がある」


 その声はあまりにも真剣だが、私もそう思う。


 私達が顔を見合わせてその場を離れようとしたその時、突然その学生グループが私達がさっき置いた酒を見て叫んだ。


「おい! こんなとこに酒置いてあんぞ!」

「マジじゃん! ラッキー、ちょうど喉乾いてたんだよ!」


 そう言って男子二人が酒瓶に手を伸ばしたその時、とうとう美樹がキレた。


「ちょっとあんた達、それはお供え物よ!?」

「はあ? なに、あんた。俺等に説教?」

「ちょ、止めなよー! ガチの人たちは真剣なんだってー」

「そうそう! 可哀想じゃ~ん!」


 下手に関わるとこういう人たちは何をしでかすか分からない。私はこれ以上絡まれたくなくて美樹の袖を引っ張った。


「美樹、もう行こ」

「でも!」

「こんな所で喧嘩したら運気下がっちゃうよ」

「それはそう……かもだけど」

「運気下がっちゃうよ~だって!」


 美樹が俯いたその時、酒瓶を見つけた男子がシナを作って私の真似をし始めた。よく見ると手に持たれた酒瓶は既に封が切られている。どうやら本当にお供え物に手をつけたらしい。


「ちょっとあんた達!」

「美樹! いいから」

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