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鈴鳴る夜のあやかし遊廓  〜花嫁は初恋を思い出さない〜  作者: あげは渓名


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「ねぇ小春、君はこれから毎日ここでこうやって客を取るんだよ。けれど客に心を許してはいけない」


 楼主はそう言って無理やり唇を自身の唇で塞いできたかと思うと、キスはどんどん濃厚になっていく。


「も、やめ……」


 私は懇願するように仮面の男を見上げたが、楼主は仮面の奥の美しい翡翠のような目を細めた。


「駄目だよ。君は思っていたよりもずっと男慣れしていないし小さいから。君が店に出たらあっという間に彼らに魅入られてしまう。そうならないようにちゃんと慣らしておかないと」


 楼主はそう言って私の上に覆いかぶさってきた。


「やぁっ!」


 自分が今何をされているのか、もうよく分からない。


 ただ一つ言えるのは、こんな体の奥から疼くような快楽があるのだと言う事を、私はこの歳になるまで知らなかったという事だ。

 


 広沢小春。私は今年で20歳になる。


 私に両親は居ない。高校までは母方の祖父母と共に暮らしていたが、大学生になったのを機に大学の寮に入り、毎日のほとんどをバイトに費やしていた。


 祖父母には恩がある。両親がどちらも私を引き取りたがらなかった時、祖父母は母親と縁を切ってまで私を引き取ってくれたのだ。それからずっと私の夢は祖父母に恩返しをする事だった。


 その為に祖父母が止めるのも聞かずに一人で上京して、学費を稼ぎながら大学に通っている。


 そんなある日、私は友人の美樹と学食で安いランチをしながら今までの恋愛遍歴の話をしていた。


「えー! それじゃあ誰とも一年もった事ないの!? なんでまた?」

「それがその……」


 私はそこまで言って顔を真っ赤にして俯いた。そんな私を見て美樹は何かを察したかのように頷く。


「あー、夜の悩み?」

「……ん」


 そう、私の悩みの一つ。身長が148センチという小ささの為か、男性との行為がいつも上手くいかないのだ。


 指をもじもじとこすり合わせる私の頭を美樹はまた撫でてくる。


「そりゃ仕方ないね。でもそんな事で別れを切り出してくるような奴は別れて正解だから。それにあれは慣れだよ。慣れ」

「慣れって……」


 そもそも慣れるほど誰かと付き合った事などないし、大体いつも途中で気まずい空気になるのだ。そしてその後、別れを切りだされるまでがセットである。


「ま、今は忙しくてうちら恋愛どころじゃないけどね~」

「そうなの……ほんと、それどころじゃないんだよね」


 目の前のパスタをくるくるとフォークに巻き付けながら、またため息を落とした。美樹も私と同じで毎日をバイトに費やしている苦学生だ。


 私達の毎日は忙しすぎて恋愛どころではない。


「忙しすぎて誰かとそんな雰囲気にすらならないもんね」

「うん。毎日ふらふらになって寮帰って泥のように寝るだけだもん」

「それな~。はぁ、どっか行きたいな~」

「どっかって?」

「どっかはどっかよ。そだ! 今週末バイト休みって言ってたよね? だったらさ、日帰りで出かけない?」


 突然そんな事を言い出した美樹が掲げたスマホを見て苦笑いを浮かべる。


「いいよ。ハイキングだね」


 深く考えずに頷いた私は安易にこの話に乗った事を後からとても後悔するだなんて、この時はまだ思いもしなかった。

 


 週末、動きやすい服で美樹との待ち合わせ場所へ行くと、乗った事もない路線のバスと電車を乗り継いで郊外の隠れたパワースポットと言われている場所へ向かった。


 美樹の話ではそのパワースポットは山の中腹辺りにあり、勘の良い人は本当に何かを感じ取る事が出来るらしい。

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