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転生ボーナスなし、巻き戻し体質あり。死因がダサい俺は108年かけてダンジョン最下層を目指す  作者: 椎間板ベルビビ


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第五話(後編)「師範(パーソナルトレーナー)のいない日」

 重い。

 息ができない。


(あ、これ死ぬパターンだ)


 なんでわかるかというと、一回経験しているからだ。

 高さ五十センチのベンチから飛び降りて死んだ前世のことを思い出した。


(またか。また俺、ダサい死に方するのか)


 必死に押し上げようとした。動かない。びくともしない。

(やばい。本当にやばい。前世はジャンプで死んで、

 今世はバーベルで死ぬのか。成長してない。全然成長してない)


 呼吸が浅くなる。視界がぼやけ始めた。

(嫌だ。まだダンジョンにも行ってない。尚飛に一回も勝ってない。

 プロテインのサーモン風味が普通になってきたところなのに)


 死にたくない。

 絶対に死にたくない——!!


 体の奥で、何かが動いた。

 熱い。腹の底から燃え上がる熱さ。

 筋肉を縮めて——縮めて——一気に——

 手がオレンジに光った。

 バーベルが浮いた。

 ラックに戻した。

 ガシャン。


「バブッ!!(リツ!!)」


 扉が勢いよく開いた。

 尚飛が飛び込んできた。

 俺が咳き込んでいるのを見て、一瞬で顔が青くなった。


「バブバブ!!(大丈夫か!?)」


「……なんとか」


「バブ……(手が、光ってる)」


 俺は自分の手を見た。オレンジに光っていた。

 三秒後に消えた。


「……出た」

 俺は笑った。


「闘気、出た」


「バブ……(そうか)」


「お前のおかげかもしれない」


「バブ(……俺が補助を外したせいで死にかけたのに?)」


「極限状態が必要だったんだよ」


「バブ(それはポジティブすぎる)」


「いいんだよポジティブで」


 尚飛が俺の隣に座った。

 しばらく二人とも黙っていた。


 城に帰ると——BIGヒロが玄関に立っていた。

 腕を組んでいた。目が笑っていなかった。


(あ、これも死ぬパターンだ)


「……二人とも、ここに座れ」


「師範のいない場所で」

 BIGヒロが一歩、近づいた。


「師範の許可なく」もう一歩。

「MAX重量のベンチプレスを」もう一歩。

「補助の確認もせずに」目の前に立った。

「やったのは、お前たちか」


「「……はい」」


「何をやっとるんじゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 城中に響き渡る雄叫びだった。

 窓ガラスが震えた。廊下の兵士が全員転んだ。


(転んだ。あのごつい兵士たちが全員転んだ)


「尚飛!! 補助がなんのためにあると思っとる!!」


「バブ……(友(合トレ仲間)を守るため、です)」


「そうだ!! 補助は命綱だ!! お前はその命綱を外した!! なぜだ!!」


「バブバブ……(友達に呼ばれて、つい——)」


「つい!! つい、で人が死ぬんじゃあ!!」


 尚飛が深く俯いた。


「リツ!! お前も悪い!!」


「俺も!?」


「補助が外れた瞬間、なぜやめなかった!!」


「気づいた時には落ちてきてました!!」


「だから問題だと言っとる!! 常に確認しろ!!」


「確認する余裕がないから補助が必要なんです!!」


「口答えするな!!」


「ごめんなさい!!」


 一頻り怒鳴り終えたあと、BIGヒロはゆっくり膝をついた。

 俺たちと目線を合わせた。


「……リツ。怪我はないか」


「はい。大丈夫です」


「そうか」

 BIGヒロの目が、少し赤くなっていた。


「強くなることは大事だ。だが——生きていることが前提だ」


「「……はい」」


「よし」

 BIGヒロが立ち上がった。


「夕飯は特性プロテインだ。二人とも食べていけ」

(それはいつもと変わらないじゃないか。怒られた後もプロテインなのか)


 夕飯の後。城の裏の広場。

 月が出ていた。二人とも、しばらく黙っていた。


「なあ、尚飛」


「バブ(なんだ)」


「今日、闘気出たんだよな」


「バブ(ああ)」


「お前がいつも一緒にいてくれたから出たんだと思う。

 毎日投げてくれてただろ。毎日付き合ってくれてただろ。

 あれがなかったら今日の極限状態で体が動かなかったと思う」


「バブ……」


「いつも助けてくれてありがとう」


 沈黙。

 尚飛が空を見上げた。




 それから——


「俺のほうこそ」


 普通の声だった。


「ごめん」


 俺は少し驚いた。


「補助を外した。お前が死にかけた。俺のせいだ」


「でも——」


「俺のせいだ」


 尚飛が俺を真っ直ぐ見た。

「お前が闘気で助かったのは事実だ。

 でも——それは俺が守れなかったことの言い訳にはならない。

 補助は命綱だ。俺はお前の命綱だ。これからは——絶対に外さない」



 長い沈黙の後、俺は笑った。

「……なんかかっこいいこと言ってるけど、お前さっきまでバブバブ言ってたよな」


「今は言ってない」


「なんで急に喋れるんだよ!」


「知らん。なんか出てきた」


「都合よすぎだろ!」


 尚飛が拳を出してきた。俺も出した。コツン、と当てた。


「明日から本気でやるぞ」


「ああ」


 月明かりの下、二人で城に戻った。




 翌朝。朝食の席。

 尚飛がプロテインを飲み終わった。俺を見た。口を開いた。


「バブ」


 俺は固まった。


「バブバブ(今日も鍛えるぞ、相棒)」


(戻ってる)


「昨日普通に喋ってたよな?」


「バブ(なんのことだ)」


「ごめんって言っただろ!!」


「バブバブ(たしかに)」


「たしかに じゃない!!」


 BIGヒロが朝食を運んできた。

「どうした、朝から騒がしい」


「尚飛がまたバブバブ言い始めました」


「そうか。昨日の緊張が解けて筋肉が緩んだんだろう」


「筋肉が緩んだら言語能力が戻るんですか!?」


「ノーキンバルクではよくある」


(よくあるのかよ!!)


 尚飛がバブバブ笑っていた。満足げに腹を叩いていた。


「バブ(さあ、プロテインを飲め)」


「……飲むよ」

 サーモン風味のプロテインを一気に飲んだ。

(こいつは——ずっとこういう奴だな)

 でも——それでよかった。



【第五話・了】

【律のステータス・四歳・闘気覚醒後】

■ステータス

体力 :28(+10)

攻撃力 : 8(+4)

防御力 : 8(+4)

素早さ : 8(+3)

魔力 : 2(-1 理由不明)

信仰値 : 2(変化なし)

交渉力 : 3(変化なし)

幸運 :40(+30 闘気覚醒ボーナス)


■習得スキル

闘気(初級) :覚醒・極限状態で自動発動

プロテイン耐性MAX :サーモン風味も制覇

ぶら下がり :両手一時間

BIG3    : 65kg


■今回の学び

補助は命綱(二回目の実感)

極限状態が闘気を引き出す

尚飛は筋肉が緩むとしゃべる

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