思惑と現実の差 2
「勉強不足で、申し訳ございません。陛下のお気遣いに感謝します」
頭を下げ、アレクシは少し黙った後、『そう言えば』と顔を上げた。
「昨晩は、シャルロットが無理にダンスをお願いしたようで、その件も失礼しました」
アレクシは諦めていなかった。
シャルロットの話によると、フェリックスはダンスの時にやたらと体を触ってきたという。それは、どういう事だったのか。
『会話するうちに、何か、こちらに都合が良くなる事を引き出せれば……』
「シャルロットは、陛下にとても親切にしていただいたと申しておりました」
「ああ、早々に足を踏んでしまって、すまない事をしてしまったからな。テラスまでちょっと手を貸したくらいだ、気にしなくていい。私はエリス以外の女性とダンスをしないもので、なんかこう……組んだ時から違和感があって……エリスと違って、腕とか背中とか柔らかくて……」
その言葉に、アレクシは心の中で『よし』とほくそ笑んだ。
言葉巧みに誘導しなくても、フェリックスは自らシャルロットの事を、エリスよりも女性らしく感じたと言ったのだ。
『なんだ、やっぱりそういう気持ちでシャルロットの事を見ていたんじゃないか。彼の母親は平民で、彼自身、子供の頃は平民として暮らしていたと聞く。貴族らしく、駆け引きをしたり、自分に有利な方へ話をもってゆく事なんてできないんだ』
「……それは、何か特別な気持ちで、シャルロットに触れたという事でしょうか?」
わざと深刻な表情で問うアレクシに、フェリックスは気まずそうに言った。
「すまない、悪気は無かったんだが、どうしても気持ち悪くて……」
「……は?」
「いや、なんか、柔らかくて手がめり込みそうな気がして気持ち悪かったんだ。ぐにゃぐにゃして猫みたいで踊りもうまくいかないし、めり込まなそうなところ探してたら、気が散漫になって足を踏んでしまった。ああ、もちろん、シャルロット嬢だけが気持ち悪いという事ではないと思うんだ。エリスに言ったら『自分は剣術や武術を学んで鍛えているからしっかりしているが、普通の女性はそういうものだ』と言っていた。だから、これは私の問題だ、すまない。ドレスはその謝罪の意味も込めての贈り物だ」
「そう、ですか……」
体を触ってきたというのは、触れた感触に違和感があり手を置く位置が定まらなかったからで、未婚である事を再確認してきたのは、胸元が開きすぎているドレスがはしたないと思ったから、だと?
『話が全く違うじゃないか! この王はシャルロットに心を奪われているんじゃなかったのか? それに、エリスの事をあまり好きではないはずじゃあないのか!?』
「今後、エリス以外の女性ともダンスをしなければいけない場面も出てくるだろうからと、今日から早速部下の奥方達に協力してもらって練習をする事になったんだ。はぁ、まったく、面倒だが仕方がない」
「そうですか」
フェリックスの話を適当に聞き流し、アレクシは次の手を探った。
猫ばっかり抱っこしていて、犬を抱いたときに『硬い! 中身が詰まってる!』と驚いた思い出があります。




