24話 過労死の要塞・ガンツ
国境の防衛線を全自動温泉で一瞬にして無力化した俺たちの『キャンピング・キャッスル』は
ドス黒い雷雲を押し分けながら 暗黒帝国ブラックヴァルハラの首都へと無造作に侵入していった
眼下に広がるのは 見渡す限りの鉄と黒煙にまみれた巨大な工場群だ
高くそびえ立つ無数の煙突から吐き出される煤煙が空を汚し 街全体に「ゴトン……ゴトン……」という重苦しい機械音が不気味に響き渡っている
「あそこが……帝国の第一兵器工場よ」
レイラがキャンピング・キャッスルの窓から下を指差し 悲しそうに目を伏せた
「あの中では 何万もの国民や捕らえられた他国の労働者たちが 一日二十時間以上も不眠不休で剣や鎧を作らされているの……休もうとすれば『疲労を麻痺させる呪い』を強制的に流し込まれて……」
「そんなの……人間を機械扱いしているのと一緒です!」
ルナが可哀想そうに胸を痛め シルフィアは「許しがたい悪行……前代未聞のブラック国家です!」と怒りで剣の手元をきつく握りしめる
「よし じゃあさっそく『工場見学』がてら あの不健全な職場環境を全自動でリフォームしようか」
俺は静かに指を鳴らした
『思考:第一兵器工場の全自動構造改修および全自動安全基準適用プロセスの実行』
【全自動ホワイト工場改修:起動】
シュババババッ!!
キャンピング・キャッスルから放たれた眩しい黄金の光が 煤煙に包まれた巨大工場群をすっぽりと包み込んだ
一瞬にして 黒く汚れていた煙突からは有害な黒煙の代わりに『甘いアロマの香り漂う蒸気』がふんわりと立ち上り始めた
工場内の不気味な赤黒い照明は 目に優しい温かみのあるLED風のライトへと切り替わり 冷たく硬かった鉄の床にはふかふかの『衝撃吸収クッションフロア』が全自動で敷き詰められていく
「な……なんだ!? 空気が急に美味しくなったぞ!?」
「身体の痛みが消えた……!? この光は一体……!?」
ボロボロの作業着を着て命を削りながらハンマーを振るっていた数万人の労働者たちが 目を丸くして立ち尽くした
【全自動労働基準法適用:全作業員に『即時特別有給休暇』を付与します】
「「「「えぇぇぇぇぇ!?!?!?」」」」
工場の中央に突如として現れたのは 焼きたてのパンや極上のステーキが食べ放題の超豪華な『バイキング食堂』と ふかふかのベッドが並ぶ『睡眠ラウンジ』だった
さらには 過酷なハンマー打ち作業を一手に引き受ける『最新鋭の全自動ロボットアーム』がズラリと稼働を始め 人間が指一つ動かさなくても高品質な防具が勝手に作られていく
「おい……俺たちが死に物狂いで作っていた作業が……マシンが一瞬で終わらせてるぞ……!?」
「あったかいスープだ……! パンが……お肉が食べ放題だぁぁぁ!!」
「「「うわぁぁぁぁん!! 夢じゃないんだぁぁぁ!!」」」
涙を流しながら抱き合い 美味しい料理に飛びつく労働者たち
過酷な搾取の現場は 一瞬にして笑顔と歓喜があふれる最高天国へと生まれ変わったのだった
「おのれぇぇぇ!! 何をしておるか愚か者どもめぇぇぇ!!」
そこへ 国境から追ってきた七大幹部『過労死の要塞・ガンツ』が 漆黒の超重量アックスを振り回して怒号を上げながら殴り込んできた
「我が帝国の血汗流れる兵器工場を……このような軟弱な娯楽施設に変えおってぇぇ! 全自動の男……貴様をこの斧で叩き潰してやるッ!!」
ガンツが地面を叩き割り 恐ろしい威圧感とともに俺に向かって跳びかかってくる
だが——俺は欠かしそうになる欠伸を手で噛み殺しながら 静かにポケットから手を出した
「君さ……そんなに重い斧を振り回して暴れてるから 肩と腰がガチガチに凝ってるんじゃない?」
『思考:ガンツへの全自動全身骨盤矯正および超強力シップ貼りプロセスの実行』
【全自動カイロプラクティック:開始】
「は……? 骨盤競……バキキキキッ!?」
跳びかかってきたガンツの全身に 全自動で現れた数本の『メカニカル整体アーム』が完璧な角度で吸着した
ボキボキバキッ!!
「ぐあぁぁぁぁぁ!?!?」
ガンツの悲鳴が工場内に轟く
「な……なんだこの技はぁぁ!? 長年の重労働で歪みきっていた我が骨盤と脊椎が……完璧な位置へ矯正されていくぅぅぅ!?」
ペタッ! ペタッ!
さらにガンツの痛む肩と腰へ キンキンに冷えた『全自動特製サロンパスシップ』がスキなく貼り付けられた
「あはぁぁぁんっ……! 冷たくて気持ちいいぃぃぃ……っ! 肩が軽い……腰の重みが嘘のように消えていく……っ!」
地面に倒れ込んだガンツは 斧を手放してうっとりと恍惚の表情を浮かべ 完全に戦意を喪失してゴロゴロと転がり始めた
「ふぅ 長年のコリがほぐれて良かったね」
俺が優しく微笑むと ガンツは涙目になりながら俺を見上げて力なく呟いた
「全自動の男よ……いや 全自動の神様とお呼びすべきか……こんなに身体が軽くなったのは生み出されて以来初めてだ……俺は……俺はもう戦わん……! 今日からこの工場のマッサージ店長として生きるぅぅぅ!」
「あははっ! 幹部さんがすっかり改心しちゃいましたニャ!」
ミーナが大爆笑し ルナやシルフィアたちも呆れつつも楽しそうに笑い合った
こうして 帝国の誇る巨大兵器工場は完全にホワイト化され 数万人の国民が救われたのだった
——だがその時
工場の天井を突き破り 暗黒帝国の中心にそびえ立つ『漆黒の要塞城』から 地響きのような恐ろしい声が響き渡った
『ガンツまで骨抜きにされたか……だが喜ぶのはそこまでだ 全自動の男よ』
「この声は……筆頭幹部グランド様……!」
レイラが表情を引き締める
『我が領域『漆黒の要塞城』へ来い……そこで待つのは お前たちの仲間を一人ずつ引き裂く『絶対絶望の試練』だ……!』
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