19話 狂乱の暴食伯・グラトニー
地響きとともに鉱山の最深部が大きく崩落し ドス黒い不気味なオーラが空を覆いつくした
「ヒッヒッヒ! 目覚められたぞ! 我が領地の奥底に封印されていた古代の魔王様がぁぁ!」
粘着クッションに挟まった悪徳領主が 狂ったように下品な高笑いを上げる
崩れ落ちた洞窟の奥から姿を現したのは 山のように巨大で不気味な口を無数に持った 異形の怪獣だった
「オオオオオ……! 我が名は『狂乱の暴食伯』グラトニー! 数千年の空腹を満たすため この地の命も 鉱石も すべてを喰らい尽くしてくれるわぁぁ!」
暴食伯グラトニーが吐き出した漆黒の息吹が一瞬で地面を削り取り 恐ろしい圧迫感が鉱山都市全体を包み込む
「ヒッ……! なんて禍々しい魔力なの……!?」
「あんな化け物に勝てるわけがないニャー!」
先ほどまで歓喜していた獣人たちが 再び恐怖で顔を引きつらせて震え上がった
シルフィアとルナが即座に俺の前に立ち 武器を構える
「レン殿! あの巨体と魔力は尋常ではありません! 私たちが時間を稼ぎます!」
「レン様! 後ろへ下がっていてください!」
ヒロインたちが健気に俺を守ろうと背中を向けたが——俺はふっと優しく微笑むと 2人の肩をポンポンと叩いた
「大丈夫だよシルフィア ルナ あんな『過食の塊』みたいな怪獣 全自動スキルの相手じゃないからさ」
俺は一歩前へ出ると 山のように巨大な暴食伯を見上げて静かに指を鳴らした
『思考:古代ブラック魔王の全自動無力化および全自動お掃除&エネルギー変換プロセスの実行』
【全自動害獣清掃システム:起動】
「ハッ! 小さな人間が強がりを——グハッ!?」
グラトニーがせせら笑おうとした瞬間 その巨大な頭上に次元の亀裂がパカッと開いた
そこから現れたのは なんと街一つを丸ごと飲み込むほど超巨大な『全自動ルンバ型巨大吸引機』だった
ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「な……なんだこの恐ろしい吸引力はぁぁぁ!? 体が……引っぱられるぅぅぅ!?」
「オオオオオ!? 我が暗黒魔力が……吸い取られていくぅぅ!?」
暴食伯グラトニーがどれだけ暴れようと 全自動吸引機の圧倒的な超強力ダイソン吸引の前には無力だった
ドス黒いオーラも 山のような巨体も 掃除機の中に掃除されるホコリのようにドババババッと一瞬で吸い込まれていく
【全自動分解・クリーンエネルギー変換完了:鉱山都市の全自動発電燃料として蓄積しました】
ポンッ!という軽い音とともに全自動吸引機が消滅し 空には再び爽やかな青空が広がった
わずか五秒足らずの出来事に 暴食伯も悪徳領主も影も形もなくなっていた
「「「「……えぇぇぇぇぇ!?!?!?」」」」
あまりのあっけなさに シルフィアたちも獣人たちも目を丸くして開いた口が塞がらない
「ふぅ これで鉱山の安全も完璧だね」
俺が何事もなかったかのように微笑むと 鉱山都市全体から地鳴りのような大歓声が湧き上がった
「「「うわぁぁぁぁ!! レン様万歳!! 神様万歳ーーーっ!!」」」
「レン様すごすぎるニャー!」
ミーナが嬉しさのあまり俺の首に飛びついて抱きつき エルナも「レン様……本当に凄いです……!」と瞳を輝かせて袖をギュッと握りしめる
その後 全自動で作られた巨大な食堂で 数千人の獣人たちとの大感謝パーティーが開催された
全自動調理マシンが次々と提供する極上のお肉料理や美味しいスイーツに 長年過酷な労働に苦しんでいた獣人たちは涙を流しながらお腹いっぱい舌鼓を打った
「レン殿……『古代のブラック魔王』を一瞬で掃除機で吸い取ってしまうとは……レン殿の全自動スキルはもはや神の領域ですね」
シルフィアが感心したように美味しいジュースを飲みながら呟く
「ふふっ でもこれで最初のブラック魔王も退治できましたし この街も完璧なホワイト都市になりましたね」
ルナも嬉しそうにケーキをほお張る
「うん でも世界にはまだたくさんのブラックな場所と魔王が残っているからね みんなで美味しく食べて元気をつけたら 次の街へ出発しよう!」
「「「おー!!」」」
みんなの笑顔と美味しいご飯の匂いに包まれながら 俺たちの世界ホワイト化計画は最高の一歩を踏み出したのだった
——だがその頃
遠く離れた巨大帝国の暗闇の中で 残る『ブラック魔王』たちの気配が蠢いていた
『暴食伯が倒されたか……だが奴は魔王の中でも最弱……我ら『ブラック七大幹部』が直々にあの男を潰してやる……』
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