16話 カウントダウン
『カウントダウン開始:10……9……8……』
脳内に響き渡る無機質なシステム音声と同時に 世界からすべての色が失われていく
窓の外の景色はドス黒い闇に飲み込まれ 温かかったリビングの温度が一瞬で氷点下にまで冷え込んでいった
「れ……レン様……っ!? 体が……動かないです……!」
ルナが青ざめた顔で助けを求めるように手を伸ばすが その指先から徐々に透明になり始めていた
シルフィアもミーナも そしてエルナも まるで最初からこの世界にいなかったかのように存在が消えかけている
『説明:『全自動の代償』が実行されます システムに依存して得られた人間関係および感情の記憶を消去し 初期状態へと巻き戻します』
「ふざけるな……! 初期化だと……!? みんなと笑い合って過ごしたこの日々が……全自動スキルに頼ったから偽物だって言いたいのかよ!?」
俺は歯を喰いしばり 金縛りのように動かない体に必死で力を込めた
前世の社畜時代 俺はただ上司の言う通りに動き 自分の意思を持たずに生きて命を落とした
だが この世界でみんなと出会ってからは違う
全自動スキルはただのきっかけに過ぎない
みんなで笑い合ったことも イチゴケーキを食べたときの嬉しそうな顔も 俺の手を握ってくれた温もりも……全部本物だ!!
「頼るだけの全自動なら……俺の意思で書き換えてやる!!」
『カウントダウン:5……4……3……』
システムが容赦なく終わりを告げようとしたその瞬間 俺は思考の限界を超えてスキルへ命令を叩きつけた
『思考上書き:【全自動スキル】の管理権限をシステムから『田中蓮』の個人の意思へ強制移行!!』
【警告:システム規約違反です 因果律のバグが発生します】
「うるせぇぇぇ!! バグだろうが何だろうが知るかーーー!!」
俺の魂の叫びとともに 胸の奥からこれまで見たこともない黄金の光が溢れ出した
システムによって奪われかけていたルナたちの消えかけた存在が 俺の放った黄金の光によって強引に繋ぎ止められていく
バチバチバチッと激しい空間の亀裂が走り 全自動スキルの画面が真っ赤に焼き切れるような音を立てた
【緊急処理:ユーザー『田中蓮』による強権発動を検知】
【『全自動の代償』の実行を一時凍結します】
【代償の対象を『記憶の消去』から『世界の因果歪み(封印の解放)』へと変更・分散します】
『カウントダウン:1……エラー……停止』
突如としてドス黒い闇が砕け散り 部屋にパッと元の温かい光が戻ってきた
「はぁ……はぁ……っ!!」
俺はその場に膝をつき 激しい息吐きとともに荒い息を繰り返した
全身の魔力と体力が根こそぎ持っていかれたかのように重い
だが——俺の目の前には 消えることなく無事に姿を保っているみんなの姿があった
「レン様……!? 一体なにが……!?」
ルナたちが駆け寄り 倒れそうになる俺の身体を慌てて支えてくれる
その温かい体温を感じた瞬間 俺は心底安堵して息を吐いた
「よかった……みんな……無事で……」
「レン殿! 顔色が悪いです! 一体何と戦っていたのですか……!?」
シルフィアが心配そうに俺の顔を覗き込み エルナはポロポロと涙をこぼしながら俺の手を強く握りしめた
「レン様……私を助けるために……また無理をしてくれたのですね……っ」
「ううん……無理じゃないよ……大切な家族を守っただけだからさ」
俺はみんなに優しく微笑みかけた
だが 頭の中にひっそりと浮かんだ新しいシステムメッセージを見て 俺は顔を引き締めた
【『全自動の代償』の一時凍結に成功しました】
【警告:システム歪みの分散により 世界各地に眠る『古代のブラック魔王』の封印が解除され始めています】
【目標更新:世界各地のブラック要因を排出し 真の『ホワイト世界』を構築してください】
「なるほどね……システムに決められた幸せに乗っかるだけじゃダメってことか」
俺は自分の手を見つめた
これまでは全自動ハウスの敷地内でスローライフを送るだけだった
だが これからは俺たちの本当のホワイトな平和を守るために この広大な世界へ出て『世界そのものをホワイト化』していかなきゃいけないらしい
「みんな 少し落ち着いたら……もっと遠くの街や国へ冒険に出てみないか?」
俺の提案に ヒロインたちは驚きつつも やがて力強く頷いた
「レン殿が行く場所なら どこへでもお供します!」
「はいっ! レン様と一緒ならどこだって最高の場所になります!」
星谷ブクマなどつけてくれると嬉しいです!




