14話 平和な日常になると思ってたのに
俺たちの全自動ハウスは 今日も今日とて穏やかで温かい平和な時間に包まれていた
「レン殿! 見てください! 先日の街で買っていただいた新しい甲冑を着て 庭での素振りを千回完了いたしました!」
シルフィアが額に爽やかな汗を浮かべながら 銀色の甲冑を誇らしげに輝かせて戻ってくる
「千回!? シルフィアは本当に真面目だなあ 全自動で汗を一瞬で流す温水シャワーを用意しておいたから使ってきてね」
「感謝いたしますレン殿! ……あ あの……後でまたレン殿の特製お茶菓子を一緒に食べてもよろしいでしょうか……?」
「もちろん! ルナが全自動オーブンで美味しいケーキを焼いてくれてるからね」
リビングからは「レン様ー! イチゴたっぷりのショートケーキが焼き上がりましたよー!」とルナの弾んだ声が聞こえ ミーナは、「ミーナが一番最初に食べるニャー!」とドタバタ走り回っている
その横で 新しいドレスを着たエルナが ちょこんとソファに座って絵本を開いていた
「エルナ もうすっかり家に慣れたかい?」
俺が隣に座って声をかけると エルナは小さな白い角をピコッと揺らして 満面の笑みを向けた
「はいっ! レン様やみんなが優しくしてくれるので 毎日が夢みたいに幸せです……! 私……生まれてきて本当に良かったって思えます」
「そっか そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」
俺はエルナの銀髪を優しく撫でた
前世では毎日のように上司に怒鳴られ 終電で帰って倒れ込むだけの悲惨な社畜生活だった
それが今では こんなに大切な仲間たちと笑い合いながら過ごせている
この幸せな居場所を絶対に守り抜く——俺は心の中で強く誓った
……だが その穏やかな空間を破るように 全自動防衛システムの無機質なアナウンスが脳内に直接響き渡った
『警告:敷地外縁部にて 広域不可視空間の形成を検知』
『解析:『黒蛇の教団』総力戦部隊および禁忌兵器の接近』
「……来たか」
俺は静かに立ち上がった
「レン様……? どうされたのですか……?」
ルナたちが異変に気付いて俺を見る
「みんな 少し庭で騒がしい害虫が押し寄せてきたみたいだ 全自動ハウスの防衛結界の中にいれば絶対安全だから 少し待っていてね」
「レン殿! 私も一緒に行きます!」
シルフィアが即座に剣を構えようとするが 俺は優しく手を差し伸べて制した
「大丈夫だよ 俺の全自動スキルがあれば一瞬だからさ」
俺は一人で全自動ハウスの庭先へ出た
敷地を囲む広大な森の木々が ドス黒い不気味な魔力によって一瞬で枯れ果てていく
空は赤く染まり 数千を超える黒ローブの教団兵と 見たこともない異形の巨獣たちが森を埋め尽くすように迫っていた
その集団の先頭に浮遊しているのは 禍々しい黒い杖を持った老男だった
「クックック……ついに見つけたぞ……白竜の生き残りを匿い 我が教団の幹部どもを次々と返り討ちにした愚か者め」
老男が邪悪な笑みを浮かべて手を掲げる
「我が名は『黒蛇の教団』最高総帥・ゼノヴィア! 世界中の魔力を奪い 我らこそが新世界の神となるのだ! 貴様のその奇妙な魔法も 我が全軍の圧倒的暴力の前にひれ伏すのだ!」
ゼノヴィアの合図とともに 数千の教団兵と巨獣が一斉に地響きを立てて全自動ハウスへと襲いかかってきた
空からは山を吹き飛ばすほどの極大暗黒魔法が降り注ぐ
だが——俺は欠かしそうになる欠伸を手で噛み殺しながら 静かにポケットから手を出した
「せっかくのみんなとのケーキタイムを邪魔するなんて……本当に救いようのないブラック組織だな」
『思考:全軍の一括全自動無力化および全自動超大型檻への一括収容』
【全自動総力制圧プロセス:起動】
俺が指をパチンと鳴らした瞬間 天と地を揺るがすほどの圧倒的な『光の全自動アーム』が無数に召喚された——
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