第169話 この世は不思議なことが多い。
『ボクと一緒に戦うって……その状態から復活できるの?』
あの宝石……ミュディオ鉱は、寿命で亡くなった妖精なんでしょ?
「いいや、それは無理だ。この状態になったのなら、長い長い時間をかけて大気に溶けてゆく」
だよね~?
えっと、じゃあどうして?
『じゃあ……どうやって戦うの?』
そのまま〇ァンネル的な感じで敵に突撃するの?
『っていうか……あの、意思疎通できるの? ヴァルとか他の妖精は……その妖精さんたちと?』
ボクには浮かんでいる綺麗な蒼い宝石にしか見えないよ?
「他は……どうだか知らんが、ワレにはわかる。といっても流暢に会話ができるような感じではないがな」
「ホヘ~……」
どういう感じなんだろう。
「おぼろげに、何を考えているのかわかるのだ。そして……嫌ならそもそも、お主の前でこのように蒼く輝くことはないぞ。あの者たちが行使していたような、黒く淀んだ色になる」
「ソウナンダ!?」
そういうシステム? なんですか。
「で、どうだムーク?」
『どうだって……ボクとしては……その子? たちは寿命を終えて安らかになってる状態なんでしょ? だから……ゆっくり眠って欲しいんだけど……』
ゾンビ? って言うとちょっとアレだけど、要は仏様なんでしょ?
そんな状態のヒトを戦いに駆り出したくないっていうか……
するとヴァルは、何故だかニッコリ微笑んだ。
「ふふふ……そういうお主だからこそ、こやつらもそう思うのだろうさ。安心せよムーク、こやつらは、心からそれを望んでいる」
浮かぶ宝石が、蒼い輝きを増した。
まるで、『そうだそうだ』とでも言っているみたいに。
「つまり、こちらが望んでいればお主は断らんな?」
「エエ……ソ、ソウダケド……デモ……」
いいのかな……いいのかなあ?
「ワレを出せ」
ヴァーティガを?
ほいほいっと……
「両手で立てて構えよ」
了解……
「『――――』」
おわぁ!? 勝手にパージ状態になった!
「さて……『同居人』くらいは認めてやろう。それではな」
「エッエッ……ウワワ!?」
宝石が飛んできて、ボクの周囲を一周。
そして……ヴァーティガにめり込んだ!? あ、いや違う! 内部にスウーッて入ったんだ!?
コレどうなってんの!? どうなっ――
『『よろしく、優しくて素敵なおにいさん』』
うへへ、素敵なんて照れ――きゅう。
・・☆・・
ぺしぺし、と頬を叩かれている気がする。
なんじゃこれ……フワフワしていい匂いがする……むぎゅぎゅ……
「みゃあっ!? ムークのえっち!」
「ベヘン!?!?」
ほっぺがとても痛い! なんかゴロゴロ横に回ってる!?
お、おお……じ、地面が見える……ゥ?
「フワァア……」
朝か~……なんでボク土の上で寝てるのん?
むくりと起き上がると、尻尾を逆立てて顔を真っ赤にしたマーヤとジト目のアルデアが立っている。
「オハイオ~……」
「なんという寝相の悪さなのナ。武器を握って倒れているから夜中に襲撃でもされたのかと思ったのナ」
呆れた様子のアルデアである。
「ホン~……?」
何故ボクのホッペは割れているのだろうか。
しかし、あの後そのまま昏倒しちゃったんだねえ……ふわぁ……寝たのにまだ眠いよう……
「オヤシュミ……」
たまには草の枕も悪くないよね……ムギュウウウウ!?
アルデアが踏んでる! お腹を踏んでる!!
「せめて屋根の下で寝るのナ。まるで子供ナ、お前は……ホレ、運んでやるのナ」
「メギェギュギュギュ……」
なんで足でボクの足を掴んで引きずるの~! せめて手で持って!
「みゃみゃ……運んであげる」
マーヤは優しいなあ……なんで顔真っ赤なん? 朝からお風呂入った?
『(コイツほんま……)』
『(まあまあ、疲れていたのですから大目に見てあげましょう。お隣様もそう思……残像が見えるヘドバン!)』
ふわぁあ……体に力が入んにゃい……
『良いのです、存分に体を休めなさい、虫よ』
ありがと……ママだいすきぃ……
『まあ! なんというかわいい虫!』
『オベーッ!? むしんちゅアームがあーしの鳩尾にィ!?』
・・☆・・
「起きたかムーク殿……大丈夫か?」
「ゴ心配オカケシマシタ」
今度こそスッキリ起きた!
ここは……食堂的な場所! そこのソファーにいる! フカフカ!
「いやなに、昨日は凄まじい働きだったからな。疲れても無理はない……ヤマダ殿もな」
そう言って視線を向けるハンゾさん。
そこには、ギリシャ状態で飼い葉にめり込んで眠るヤマダさんが!
ボクより寝相が悪い!
「あの戦士共を向こうに回したからな……俺達も戦ったが、あの2人は他と隔絶した実力だった……『黒く』なっていたしな」
「マアソウデスネ……シブトカッタ……フワァア……」
スッキリ起きたつもりだけど、油断したらまた眠くなってきた。
な~にこれ~?
「心配せずともゆっくり休んでくれ。もう危険はないし、尋問と宿屋の廃墟での捜索もある……数日はここにいるつもりだ。ムーク殿たちは第一の功労者だからな、寝ていればいい」
「ソウイウワケニハ……フニャア……」
駄目だ、眠気には勝てない……たぶん魔王よりも……強い……
「チュチュピ」
あらピーちゃん……一緒に寝る~……?
「ねんね、ねんね~……」
アカまで……ニャニャム……
もう無理……寝るゥ……
「……ムワ~」
起きた! 今度こそ起きた!
たぶん……お昼!
「ふにゃあ……しゅぴぃ……」「チチチ……ピチチ……」
むむ、アカとピーちゃんが一緒のハンカチで寝てる……ホッコリ虫!
「起きたか」
あ、ヴァルだ。
ボクの横に寝転がってる。
『なんか超眠かったんだけど……ボクに何があったん?』
『昨日の戦いの疲れと……ヴァーティガに『同居人』が増えたことによるのだろうな』
あ、昨日の宝石さんたち!
『『ラール・プロクマ』は妖精の結晶……あれだけの小ささでも、その力は凄まじく強い。それがヴァーティガに馴染む時に、お主から魔力を追加で吸い上げたのだ』
『なるほど……それで、あの妖精さんたちは?』
なんか話しかけられたような気がするんだけど。
『今は眠っている……目覚めるかどうかは、ワレにもわからん』
『えぇ!? それって大丈夫なの!?』
寝転んだヴァルが微笑んだ。
『あやつらは望んでそうなったのだ。昨晩はああ言ったが……ワレの知る知識にも、結晶になった妖精と意思疎通ができるというものはなかった。だが、事実は事実として受け止めねばな』
『そうなんだ……』
この異世界、色々慣れてはきたけどやっぱりわからないことの方が多いや。
あ、トモさんトモさん、これについては――
『開示できる情報にロックがかかっています。私の権能では、まだ無理ですね』
わかりました!
「ドッコイショ」
起きるボク!
うん、今度は頭もスッキリで追加の眠気もないや。
横に置いてあったヴァーティガを持ってナデナデ。
「ヨロシク、ボク……頑張ルカラネ~?」
すると、頼れる相棒はじんわりと蒼く光るのだった。
「お、今のはワレではないぞ。ふふふ……これだからこの世は面白い」
ボクの肩に乗ったヴァルは、ほっぺをぺしぺし叩きながらニッコリ笑うのだった。
なんかくすぐった……あれぇ!? なんでほっぺた割れてるの!?
『寝てる間に割れたんじゃね~? ホラむっくん成長期だし』
あ、そっか~……それならいいや!
起きたらお腹空いちゃった! お米炊いてオニギリ作ろうかな~?
具はオカカオンリーだけど、全然飽きない!
『(マジかコイツ)』
『(私のむっくんがチョロすぎて心配になる今日この頃……)』
「ぐおごごご……ぐががが……」
ヤマダさんが飼い葉に突き刺さりながら寝てる!? 足しか見えない!?
アレ大丈夫なん!?
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