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第147話 みんな幸せ! 幸せ~!!

 堆肥場の大暴れから、一夜明けて……朝!

あの後、ロロンたちと合流して飛竜に乗って孤児院に帰った。

イセコさん達は、あの場に残って尋問とか調査をするみたい。

拷問とかしてるんだろうけど、同情心なんか微塵も湧きませんね、ええ。


 緊張が解けたボクは、お風呂の中で眠りこけた状態で子供たちに発見されて、ちょっと大騒ぎになっちゃった。

反省しつつ、涙目のロロンに介抱されてぐっすり眠る事になった。


 ……んでんで、朝。

起きたんだけど……真っ暗だ。


「モフフ?」


 まだ夜かと思ったんだけど、体に日の光が当たっている感覚がある。

つまり、顔の上に何かが乗っているんだ。

アカかな……? いや違う、モフモフの感覚だ。


「ドッコイショ」


 起き上がって……顔に手を当てて、モフモフを優しく引き剥がす。

そこにいたのは……


「キミ、昨日ノ……妖精サン?」


 手の中にいるのは、毛玉。

真っ白の、毛玉だ。


「ぴゃう」


 今のって、鳴き声?

そう思っていると……毛玉がもぞもぞ動いて子犬になった。

いや、これ……子犬じゃないぞ。


「狐サン?」


 ボクをつぶらなお目目で見つめているのは、両手に乗るくらいの大きさの子狐だった。

あらか~わいい! かわいい~!


「ぴゃ~、きゅう!」


 狐さんは、目を輝かせてボクにもう一度飛びついてきた。

その後ベロンベロン舐められた! なんかいい匂い!


「元気ニナッタンダネエ、ヨカッタネエ!」


「ぴゃう~!」


 うは~モフモフ!

こうして触っているだけでもわかる、とっても元気! 生命力に満ち溢れてる!

『うれしい』とか『たのしい』とかのポジティブな思念がバンバン伝わってくる!

よかった~……昨日はお部屋の片隅で寝てたから、こんなにアグレッシブな子だったとは~!


「むぅ……騒がしいな……」


 枕に抱き着いて寝ていたヴァルが起きた。


「ぴゃう~!」


「ふわ~!? にゃ、にゃんだお主!?」


 狐さんはヴァルに飛びついてベロンベロン舐めてる。

うーん、スケール感からして猛獣に襲われる子供みたいになってる……微笑ましいけど!


「ぴゃう! ぴゃう~!」


「あっはっは! こら! くすぐったいぞお主! はっはっはっは!」


 うーん、なんてかわいい光景なのだ……


「こらムーク! たしゅけろ! 痴れ者!」


 ごめんなさい!



・・☆・・



「かわいい~!」「もこもこ! もこもこ~!」「あったか~い!」


「ぴゃう~」


 ちょっとドタバタした後、食堂に行くや否や狐さんは子供たちに大人気になった。

昨日帰ってきた時にはまだ元気じゃなかったから、皆には内緒にしてたんよね。


「ヨカッタネエ」


「よかた! よかたね~!」


『すっかり元気! 魔力をお裾分けした甲斐があるわ! あるわ~!』


 子供たちに入れ代わり立ち代わり抱っこされている狐さんを見ながら、妖精と一緒にホッコリ。


「はぐむぐ……あれはまだ生まれたてだな。精々10年と言った所か……んぐんぐ」


 パンを頬張るヴァル。

……え、今なんて言ったの!?


「10年!? アカト同ジクライカト……」


「動物から昇華する妖精は、皆あのような感じだぞ。それに……あの姿を見るに、まだほんの子供だった頃に死んだのだろう……それからの昇華だ、無理もない」


 あ、そうなんだ……よく考えればアカはニセムシ時代から喋れてたもんね。

ピーちゃんみたいに、謎の原因で妖精になった感じか……


「後遺症トカアル? 昨日ノ妙ナ魔法具ノ」


「んぐ……大丈夫だ。アレは恐らく魔力を吸い上げるような用途に使うものだったのだろう……失った魔力はワレとピーちゃんで補填しておいた故、すっかり元通りだぞ」


 よかった~……


「ソレナラ、ヴァルトピーチャンハ大丈夫?」


「んくんく……腹が減っている以外は問題ないな」


『私もよ! いまなら風呂桶一杯でも食べられそうよ!』


 それ大問題じゃんか!?!?

く、空腹……飢餓……瀕死……!!

こうしちゃいられない! バッグから何か食べるものを追加せんと~!


「まあ、それならもっとおかわりがいりますね。取り急ぎこれをどうぞ」


 歩いてきたイリュシム先生から枝が生えた!?

腕からニョキって生えた~!?

その枝はぐんぐん大きくなって……なんか、梨みたいな果物があっという間に生えた!?


「大地の魔力を凝縮した果実です。失った魔力の補填にはコレが一番ですよ」


 そ、そうなんだ……すごいな、ドライアドさん。

歩く果樹園じゃん!


「せんせーのくだものだ!」「あれおいしいよね~」「だめだよ、ようせいさんのぶんなんだから!」


 しかも定期的にふるまってるっぽい!

ここの子供たち、本当にいい子だねえ……あっ!


「ミンナトッテモイイ子ナノデ、サジョンジカラ貰ッタオ菓子ヲ――」


「ムークさん、めっ! オヤツはオヤツの時間に、ですよ?」


「ファイ……」


 そうだね、よく考えたらみんな朝ご飯食べたばっかりだもんね……

反省虫……



・・☆・・



 午前中の授業休憩時間。

いつものようにベンチに座って木片をサリサリしていると……黒いモフモフが視界に。


「わぅう、おいちゃん、おいちゃあん」


 膝上によじ登ってきたのは、ヘレナちゃんである。

今日も今日とてモフモフですな。


「ホイホイ、ドシタン~?」


 ボクの膝に座ったヘレナちゃんは、体重を預けながらこっちを見上げてきた。


「ねえねえ、あたらしいようせいしゃん、おなまえなーに?」

 

「ム!?」


 ……そういえば、何なんだろう?


「ワカンナイヤ、ボクモ昨日会ッタバッカリダシ」


「そっかあ、しゃべれないもんね? でも、おなまえわかんないとかわいそうね~?」


 確かに……ええと、あの子は……あ、いた。

校庭で子供たちと無限鬼ごっこに興じている。

元気だね~……アカもピーちゃんもおるな。


『ヴァル、ちょっとごめん』


「うにゃむ……にゃんだ……?」


 マントからもそもそ顔を出すヴァル。


「ばるちゃん! おねむさんだ~?」


「うむむ……ヘレナよ。ワレは偉いからいつまでも寝ていてよいのだ」


「そーなんだ!」


 そうなんだ……いやいやそんなわけないか。


「それで……夢うつつで聞いていたが……あやつの名前だったな? そんなものは普通ないぞ」


「ナインダ!?」


 予想外の答え!


「アカの場合はお主という名付け親がいたからな。通常は、妖精が長く生きて自我がはっきりしてから自分で名乗るものなのだ」


「ハエ~……」


 そっかあ、親とかいないもんね。


「じゃあどうしよっか~?」


「ドウシヨッカネエ~?」


 ヘレナちゃんと顔を見合わせて、同時に首をひねる。


「なに、簡単なことだ……ないなら子供たちで好きに名付けてやればよい」


 あ、なるほどそれはいい……待って!


『ボク、アカに名付けた時に魔力ギュン! って持ってかれたんだけど!? 子供たち危なくない!?』


 あの時は虫だったから危うく死ぬところだったよ……後悔はしてないけどね。


『ああ、魔力で繋がった妖精ならそうだろう。さっきも言ったがあやつは10年ほどは生きておるし、そうはならん。既に生まれて時間が経った妖精では厳密に『名付け』とはならんのよ』


 ホッ……ならよかった。


『あやつはどうやらここを気に入ったようだ。流れる空気も清浄であるし、健やかに育つ子供らのお陰で『陽』の気に満ちておる……恐らく、最低50年ばかりはここに落ち着くだろうな』


『長い!?』


『はん、妖精にとってそんなもの……少し逗留する程度の時間だ』


 長生きさんっていいなあ……


「ジャ、ヘレナチャンタチ皆デ……イイオ名前考エテアゲテネ?」


「わぅう! わかった、みんなでかんがえる~!!」


 目を輝かせたヘレナちゃんが、ベンチから飛び降りてみんなの方へ走っていく。

うんうん、仲良きことは美しき哉……


「イリュシム先生よ、というわけで……あやつがここに逗留してもよいかな?」


 うわ、いつの間にかベンチの横にイリュシム先生が!?

ニコニコしながら妖精と遊ぶ子供たちを見つめてる!


「ええ、願ってもいないことです。妖精が気に入ったということは、サチコかあさんの教えが正しかったということ……50年でも500年でも、飽きるまでいてもらいますよ」


 長命種ゆえの! 太っ腹!!

そっか~……よかった! よかった~!


 狐さんを囲んで、ああでもないこうでもないと意見を交わし始めた子供たちを見てボクもニコニコな気持ちになるのだった。


「ふふふ……ああ、なんと幸せに満ちた場所よ……ううむ、良い、良いなあ」


 ヴァルはボクの肩に座って、なにか眩しい物でも見るように目を細めた。

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― 新着の感想 ―
子供を甘やかしすぎて子供の母親に怒られる親戚のおじさんと化したむっくんw
狐ちゃんだったか。 そうか思念であって会話はしてなかったのには気付かなんだ。 そのうち付近の妖精が集まってきて妖精園とか呼ばれそうに。
更新ありがとうございます♪ヴァルさん…ヴァーティガの記憶かな?平和いいよネェ〜。ケツネ(´Д` )好き
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