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第138話 絡まれ虫。

「はァい、お待たせェ。でもォ、本当にこれでいいのォ?」


「イイノデス、十分スギルノデス!」


 ででーん、と目の前に置かれたのは湯気を立てるお皿。

中身は……肉の塊! 塊!

香ばしく焼かれたステーキ! 何の肉かは知らない!


 なんか最後に色々あったけど、無事に荷物運び虫を全うしたボク!

今はタヴィアさんのお店で、お給金であるご飯をご馳走になっているところ!


「沼トカゲのお肉よォ。この時期は脂がのって美味しいのォ」


 ほう、トカゲ!


「あ、大丈夫ゥ? 嫌いじゃないィ?」


「ボクノ嫌イナモノハ生スライムト牙鼠ノ尻尾、ソレニ毒走リ茸クライダカラ大丈夫デス!」


「それって食べ物の枠なのォ!? なんてもの食べてるの、ムークさん……」


 ドン引きしているタヴィアさんを尻目に……おひいさまとママ像を出して、イタダキマス!

むほほ、ナイフがスッと入りよるわ……ぱくり、もぎゅぎゅ。


「――ンマイ! 美味シイ! 最高!!」


 噛むと肉汁がドバドバー! でもお肉は程よい硬さで、噛めば噛む程味が出る……!

一瞬鶏肉っぽいかなって思ったけど、違う感じ! 


「あらァ、うふふ……大きな声! ムークさんは何食べても美味しそうねェ」


「美味シイノデ……ムゴゴゴ」


 このソースがまた……ニンニクっぽい香りに香辛料が調和しててよい! よい!


「沼トカゲッテ美味シインデスネエ!」


「この時期だけよォ? 秋までは味が落ちるだけだけど、冬場は毒があるから食べちゃ駄目なんだからねェ?」


 なんという罠みたいなお肉! この世界の生き物ほんと怖いな……


『ふむ、調べたところそれほど重篤な毒ではありませんね。むっくんなら寿命30日前後で解毒できそうです』


 重篤な毒じゃな~い?

30日分ってかなりのもんですわよ???


「ニャルホド……ムグムグ」


「まだまだあるからァ、どんどん食べてェ。これってお客さんに出さないお肉だから、いっくら食べても大丈夫よォ」


「ムギュン……コンナニ美味シイノニ?」


 それはまた勿体ない気がするけども。


「日持ちしないしィ、干し肉にするとビックリするくらい不味くなるのォ。これは部族の子にもらったものだからァ、知り合いに食べさせるくらいの使い道しかないのォ」


「ニャルホロ……アグアグ」


 希少なお肉ってことね……噛み締めて味わって食べなきゃ……あれぇ? もうない!

美味しすぎてなくなっちゃった!


「健啖家ねえ! おかわり焼くから待っててェ」


 おほほ、ありがたい。

なんて贅沢なバイキングなのだ……!

沼トカゲは美味しい! 虫は覚えた!

冬以外に外で見かけたら狩って、アカにも食べさせてあげたいな~!



「ケプゥ……ゴチソウサマデシタ」


「はァい、お粗末様でしたァ」


 いやーおいしかった、ほんと。

この世界にはまだまだ美味しいものがワンサカあるねえ。


「今日はムークさんのお陰で助かっちゃったわァ。お店も開けられるし、ありがとうねェ」


「エヘヘ」


 手助けになったのならよかったよ。

美味しいお給料も貰ったしねぇ。


「あのオログってねェ、酒癖は酷いし、弱いくせに喧嘩するし、挙句の果てに断っても断っても口説いてくるしィ? ロストラッドに行ってたってのも、絶対嘘よォ? いいとこ荷物持ちだわァ」


「ハハハ……大変デスネエ」


 クソ客の数え役満みたいなやつだったんだねえ。

まあ、あの態度を見るに癖が強そうだったけど。


「デモ、大丈夫デス? 逆恨ミトカ……」


「あんなの、100人来たって皆殺しにしてやるわァ。骨の! 病気! だしねェ! あははは!」


 ツボにはまったみたい……


「だから気にしないでェ? このお店って、実は魔法具をいっぱい使ってるしィ? 許可なく居座ったら大怪我よォ、その後衛兵に突き出すわァ」


 むーん……なら、大丈夫かな?


『この前は言いませんでしたが、ざっと数えるだけで攻撃用の魔法具がドジャドジャありますよ。仮にむっくんがドスケベ虫になって襲い掛かったら……』


 その仮定は無意味だからいいです~。


『はー情けねえ虫だし……』


 ちなみにシャフさん的には無理やり襲い掛かるのって……


『超ギルティ。生殖器とか捥いじゃうの刑』


 ヒィイ! やんないけど!


「ア、ボクハコノ辺デ失礼シマスヨ。ソロソロ暗クナルシ」


「あらァ? そう? なんなら……泊まっていってもいいんだけどォ?」


 つつ、と顎を持ち上げられる……せ、せせせセクシー!


「あははァ、冗談よ、冗談♪ ムークさんはわかりやすくって素敵ねェ? うふふ、でもまた来てね! うんとサービスしちゃうからァ♪」


「ド、ドウモ……アハハ」


 女の人には基本的に敵わないと思う、ボクなのでした。

よく考えたらアカにも勝てそうにないしなあ……



・・☆・・



「フンホンフン~♪」


 タヴィアさんのお店を後にして、再び街ブラ虫。

首都は色んな人がいて、見ていて飽きないねえ……

そして、大きな道路には必ず看板があるから分かりやすい!

お、この近くに市場があるのか~……お土産買って帰ろっかな~!


「オイ」


 ム! あっちに屋台が出てる! なんかいい匂いする! 串焼きかな~?

日持ちしそうなら買って帰ろうかな?


「オイお前!」


 しかし人が多いね、脇道みたいな所なのに……

おお、あっちにいるのはそらんちゅじゃな~い?

首都で初めて見た! アルデアの知り合いとかじゃないかな~?


「お前だよお前! そこのうすらデカイ虫人だよ!!」


 ……むん?

もしかしてボクに言ってる?


 振り向いてみようか……あ。

アレは、タヴィアさんに絡んでたブルドック! オロ……グ? だっけ?

あ、折れた手首が治ってるや。

ポーション使ったのかな?


「お前! とんでもねえことしてくれやがったな! どう落とし前つける気だ!」


「ホエ~……?」


 そんなことを言われましても……?

ええっと、その……


「顔面ガ硬クテ申シ訳アリマセン……?」


「馬鹿にしてんのかテメエ!?」


 もっと怒られた……なんでェ?


『コイツ天然の煽り師だし……』


『前々からむっくんは煽りの才能があると思っていましたが……』


 なんでェ!?

そんなつもりは毛頭ないんですけお!?


「てめえ……妙な魔法でも使ったんだろうが、今度はそうはいかねえぞ! 俺と勝負しろ!!」


 オログはそう言って……剣を抜いちゃった!? 嘘でしょこんな往来で!?


「チョ、チョット待ッテ下サイ! ボクハ雇ワレタ冒険者デシテ!」


「うるせえ! 問答無用だ! 仲間の前で恥ィかかせやがって……!」


 オログは完全にキレてる上にあの時いたお仲間もいない! 誰か止めて! 止めて~!

ここ、結構ヒトがいるんですけお!? 


 っていうか勝手に恥かいたのはお前では!?


「うらぁ! 抜けよ腰抜け!!」


 オログが近くにあった屋台を切りつける。

器物破損ですよ! あああ、店主のお婆ちゃんが逃げようとして転んじゃった!

よりによってオログの目の前で!!


「どけババア!」


 あーっ! お前! それは許されんぞこのブルドック!!

衝撃波ダーッシュ!!

前に割り込む!!

そしてオログが振り下ろした剣を――左手で受け止める!


「なあっ!?」


「ライン超エダゾ、オ前ェ!!」


 剣は棘に食い込んで止まっている。

魔力を循環させたお陰で、この程度か!

ありがとうソイチロ先生!


「オ婆サン、逃ゲテ!」


 けもんちゅのお婆さんは、腰が抜けたようで動けない!

そりゃあ怖いもんね! ごめんなさい!


「剣ヲ引ケ! 今ナラ許シテヤル!」


「っふ……ふざけんな! ぶっ殺してやる!!」


 ぎし、と剣が動く。

駄目だ、完全にキレてる……お婆ちゃんは動けないし、しょうがないか!


「警告ハ、シタゾ!」


「うるせえ! やれるもんならやって――」


 ――拡散衝撃波!!


「――ギャワン!?!?」


 道だから威力を弱めにした衝撃波は、オログのお腹に直撃して――彼を吹き飛ばして、屋台の残骸に直撃させちゃった!? 弁償しますお婆ちゃん!!


「オ婆サン、大丈夫!?」


「ああ、ありがとうねお兄さん……ちょっと! それ、大丈夫かい!?」


 腰が抜けたお婆さんが、ビックリして指差す。

その先には……左腕に食い込んだ剣が!

だけどまあ……人間で言うとちょっと皮が切れたくらいだし、平気平気。


「うぐ……てんめ……!」


 オログがよろよろと起き上がる。

もうちょっと強めの衝撃波にしとけばよかったかなあ?


 剣を引き抜いて、上に放り投げる。

落ちてくるそれに――チェーンソーを展開! 叩きつける!!

回転する鋸刃が、そこそこ高級そうな剣を真ん中からバッキバキに砕いた。


「――次ハ、オ前ヲ……コウスル!」


 剣の破片がちゃりちゃり地面に落ちる向こうで、オログは目も見開いている。

……これでも突っ込んでくるなら、パイルシュートかなあ。

なるべく手足を狙おう。


「――そこ! 何をしているか!!」


 あ、衛兵さんがダッシュで来た。

……過剰防衛にならないといいなあ。



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― 新着の感想 ―
おばあちゃんの屋台修理でちょっとだけお金が使えるんじゃよ。 理由が業腹だけども。
更新ありがとうございます!クモさんにむっくんが食べられちゃう!?食べて♡…失礼。そうだよむっくん…赤ちゃんで森に放置されて、アカちゃんと一緒に必死に戦って。生スライムト牙鼠ノ尻尾、毒走リ茸に雑草を食べ…
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