第114話 訪問、ザヨイ家……さらにお客様!
「到着しました、ムーク様」
「ハイ……!」
竜車が停まり、ドアが外から開けられる。
イセコさんに続いて……ボクは車から降りた。
朝起きて、子供たちと朝食をとって……しばし休憩していたら、迎えの竜車が来た。
それに乗っていたイセコさんに言われて、ボクたちはゲニーチロさんのお家……ザヨイ家へと行くことになったんだ。
ちなみにメンバーはフルです、フル。
ピーちゃんも気になるからってついてきたんだよね。
まあ、ザヨイのお家は前にゲニーチロさんに聞いていたように孤児院の目と鼻の先みたいだからね。
だってほんとすぐに着いたし。
たぶん、ボクがダッシュしたら一瞬で行けるんだろうけど……竜車を使うのはそういうおもてなしなんだろうね。
てなわけで、竜車から出たんですけど……
「おやびん、おっき、おっき~!」
「ダネエ……」
アカが言うように……でっかい!
今現在ボクがいる門は、2メートル超の高さの壁が接続されていて……その壁は、ミカーモ孤児院よりも面積がありそうな敷地をグルっと囲っている。
そして、門の先にあるのは広くって……手入れの行き届いてそうな庭園。
派手じゃないけど、綺麗な花が咲いている。
その庭の先には……二階建ての、木造建築のお屋敷。
語彙が死んでるボクではこれ以上うまく表現できないけど……なんていうかな、豪華! って感じじゃないけど、かといって貧相でもない。
歴史のある重厚なお屋敷……! って感じ?
「お待ち申しておりました、ムーク様」
「ささ、皆様も入られい」
門には、斧槍を持った門番さんが2人立っている。
黒子衣装じゃないけど、彼らも影衆の人なんだろうか。
「では皆さま、こちらへ」
イセコさんがそう言って先に行く。
おお……今気付いたけど、足元の石畳がすっごい綺麗……! 精密!!
『お屋敷よ! とっても素敵なお屋敷だわ~! あ! お邪魔します! 私はピーちゃん!』
「こにちわ! おじゃましまう! しまう~!」
「おう、なんとかわいらしい」「おうおう、ごゆるりとな」
元気に挨拶するピーちゃんとアカに、門番さんたちはホッコリした様子で頷いている。
うーん……やっぱりいい人! いい人しかない!!
「いらっしゃい、ムークさん」
おっかなびっくり石畳を歩いて……お屋敷の玄関までやってきた。
すると、そこには……懐かしい黒子衣装の2人を両脇に従えて、サラコさんが立っていた。
当然だけど昨日とは違う着物だ……こっちも綺麗!
「オ招キ、アリガトウゴザイマス」
皆を代表して、頭を下げる。
「そんなに緊張しないで……実家にでも帰ったと思って寛いでくださいな」
サラコさんはニッコリ笑ったけど、ボクにはこんな豪華な実家の記憶はございませんことよ!
「さあ入って、丁度お茶を用意したのよ」
とんでもないお茶が出てくるんだろうなあ……恐ろしい虫です!
「あは、ムークったらガチガチ……」
マーヤ! 背中をつつかないでください!
「ホワァ……」
そうして招かれた家の中は……外同様に凄かった。
いや、別にピカピカした調度品があるとか、総金箔の壁があるってわけじゃないの。
でもね……全部、しっかりしてる。
壁とか、床とか、絨毯とか。
なんか……いいものを使ってます! って感じなの。
さりげなーく置いてある質素な壺とかも、絶対に高いものなんだろうなあ……って。
そんなわけでそんな廊下を歩き、案内されたお部屋はたぶん応接間。
広い空間に、大きいテーブルとフッカフカのソファがありました。
ここも絶対お高いものが目白押しなんだ……!
あまりにもゲニーチロさんのイメージ通りのお家ですよ……
ボクらはここで待つように言われて、寛いでいる。
……ボクは心理的に寛げてないけど!
「ふむ、流石はザヨイ家……素晴らしい部屋なのナ」
「にゃあ……帝国にある貴族の屋敷みたい。入ったことないけど」
「こ、こげな綺麗な屋敷ば、初めてなのす……!」
アルデアとマーヤは自然体だなあ。
ロロンはこっち側の感想をお持ちなようだ。
「きれい、おへや、きれい~」
『掃除が行き届いてるわ! 素敵よ!』
「ふむ、よい屋敷だな。アカ、おとなしくするのだぞ」
妖精たち3人は、明らかに妖精用に用意されたであろう椅子にちょこんと腰かけている。
綺麗な椅子に、これまた綺麗なクッションを重ねてある。
テーブルの高さにきっちり合ってるね……すごい手際ですわ。
ここに来るまでにもお手伝いさんみたいな方々がいっぱいいたしな……あ。
「今更ナンダケド……トルゴーンッテ貴族トカイルノ?」
ここに至るまで、そういう部分を一切考えてなかったボクです。
だって旅続きだったから……
「お前……」
アルデアが一瞬アホを見る目をしたけど、すぐに思い直した。
「そういえばムークは『帰らずの森』からずっと旅続きだったのナ……それは仕方ない、すまんのナ」
とっても優しい顔になった! いいそらんちゅ! お優しバード!
「私も子細を詳しく知っているわけではないが……ううむ、どうしたものかナ」
腕を組むアルデア……の、横の空間が歪んだ!
「僭越ながら、私からご説明をさせていただきます。お茶と一緒にどうぞ」
ウワーッ! 黒子さんとお茶のセットが出てきた!
この人の声には覚えがあるぞ……!
「ナハコサン! ゴ無沙汰シテイマス!」
ガラハリで散々お世話になったからね!
「はい、お久しぶりです。イセコから色々と聞いていましたが……ご立派になられましたね、ムーク様」
あれから進化もしたしねえ……
ナハコさんは、素早くボクらの前にお茶のカップと……山盛りのクッキーを置いた。
なにこれ、山? でも美味しそう! アカの目がキラキラしている!
「奥様がいらっしゃるまでまだ間がありますので……どうぞ、お寛ぎながら」
「ハイ、イタダキマス……ンマー!」
なんっじゃこれ!? こんな美味しいお茶飲んだことな……あ。
いかん……アカの教育に悪すぎるし恥ずかしい……!
「ふふふ、ムーク様はそれでよいのですよ」
「むしろ急に畏まったら変な病気だと思うのナ」
アルデアがひどい!
「あはは、ムークのお陰で緊張がどっか行っちゃった。さすがだね」
マーヤさん……それは褒めているんですか?
……まあとにかく、空気が和らいだ感じになった。
「それでは……トルゴーンについてですね。歴史的には色々変遷がありましたが、現在のこの国は『オルドア』『ヨトゥミ』『シカガ』という『御三家』が国の政を行っております」
ほうほう……
「ここに来るときに、大きな『評定所』をご覧になったでしょう? あの施設で月に一回、その『御三家』の皆様が集まって定期的に会議を行っているのです。我らザヨイは、他の家と共に『十傑』の名をいただいておりまして……彼らの補佐をしています」
その格好いい名前の感じからして……10個のお家か。
ええと、3つのお家……『御三家』がいて、その下に10個のお家がある、と。
天皇家のない江戸時代みたいな感じ?
「上から数えて計13の家と、その他にいるいくつかの家がまあ……他国で言う所の貴族でしょうか。ただ、そのいずれも領地も領民もおりません」
「エッ? ジャア収入トカハ……?」
まさか国の上層部が全部ボランティアってことはないっしょ?
「旅の間に『守国協定』という名前をお聞きになったことがありますか?」
「アー! アリマスアリマス!」
トソバ村の時に聞いた! 聞いた!
「それです。我らは民を、そしてこの国の土地を守り……そして、民はその見返りとして我々に様々な『モノ』を収めてくれているのですよ。細かく言うとまだまだありますが……まあ、このような認識でよろしいかと」
あー、あれだ、あれ。
「『御恩ト奉公』? デスカ」
なんかそんな概念を聞いたことがあるような気がしないでもない!
「ムークはたまに深いことを言うのナ……?」
「ほわぁ……ムーク様は博識でござりやんす!」
たまにとは何ですか。
そして全肯定子分の信頼が重い! 重い!
「よい言葉ですね、そのようなものです」
つまり年貢? みたいな感じで一般の方々が色んなものを収めて、上の人たちは一般の人を守るって感じなのね。
ふむん……マジで江戸時代っぽい。
領土を求めての戦争とかをしないなら、これで回ってるんだろうね……むしんちゅさんたち、そういう欲は基本ないみたいだし。
……サジョンジとかいうバグみたいなお家があったけど。
「ナハコサン、教エテモラッテアリガトウゴザイマス!」
「いいえ、そんな……」
恥ずかしそうにしているナハコさん。
いやー、これでまた一つ賢くなったぞ!
「ヒトの世は面倒だな……相も変わらず。なんとなく知っているような気がする……もももも」
『政治の話は難しいわ! 難しいわ~! それにしてもこのクッキーは最高だわ! 細かい木の実が香ばしくって、いくらでも食べられちゃうわ!』
「おいし! おいし! おやびん、これおいし~!」
「モメガフ」
アカがクッキーをお裾分けしてきた……おいっし! なんこれおいっし……あれ?
むっちゃ美味しいけど、このクッキー……
「モググ……前ニ食ベタコトガアル、ヨウナ~?」
「はもも……ムークもそう? 実は私も」
「んぐ……覚えがありやんす! これは……そう! ガラハリで!」
ガラハリ……そうか!
このクッキーのお味は、ガラハリで……ラクサコさんが作ったのによく似てるんだ!
「おや、丁度時間ですね。皆様はそのままで結構ですよ、ここは畏まった場ではないので」
ナハコさんがそう言ったのと同じくらいに、奥の扉が開いた。
そこには、サラコさんと……その後ろに、白いフード付きマントを羽織った人影が!
あの姿には覚えがるぞ! あれは……!
「ひめさま! ひめさま~!」
アカが、ぱあっと顔を輝かせて飛んでいった。
そして、その白フードのヒトも嬉しそうに速足になる。
「おひさ! おひさ~!」
「はぁい、アカちゃん! お久しぶりやなあ!」
そのヒト……ラクサコさんは、フードを脱いでアカをキャッチ。
そして、嬉しそうに頬ずりしている。
当たり前だけど、ガラハリで別れたままの姿だねえ!
「まさか、巫女様がお越しとは……!」
ロロンが目をぱちくりさせている。
「どうりで、食べたことのある味だと思った……ふもも、おいし」
「ほう……あの方が噂の鎮魂の巫女ナ……ももも、美味い」
マーヤとアルデアはマイペースだよねえ……
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